H17. 6.20 名古屋簡易裁判所 平成16年(ハ)第5661号 立替金等

判示事項の要旨:
信販業者である原告と被告夫妻が締結した屋根補修工事代金立替払契約並びにその連帯保証契約はそもそも被告らには契約する意思がなかったと認定して請求を棄却した事例


平成17年6月20日判決言渡 
平成16年(ハ)第5661号立替金等請求事件
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求の趣旨
被告らは,原告に対し,連帯して,金80万円及びこれに対する平成16年6月29日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1請求原因の要旨
(1)原告は,平成16年3月29日,被告Aとの間において,原告が,被告Aの,補助参加人株式会社Bに対する屋根補修工事の代金80万円を立替払する旨の契約をした。
(2)原告は(1)の契約に基づき,Bに対し,平成16年6月7日に金80万円を立替払いした。
(3)被告Cは,上記契約の日に,(1)の契約に基づき被告Aが原告に対して負担する一切の債務について連帯保証した(以下「本件連帯保証契約」という。)。
2被告らの主張
被告らと,Bとの屋根補修工事契約及び上記立替払契約(以下「本件契約」という。)は,B社員DとEが何回も被告ら方を訪れ,被告らに対し,屋根をこのまま放っておくと大変な事になるなどと,長時間にわたり執拗に契約を迫り,被告らが高齢であるためこれに抗しきれずに契約したもので,被告らの無知,困惑に乗じた公序良俗に反する無効の契約であり,また,本件契約は,Bが,被告らに,本件屋根補修工事の内容についても立替払契約であることも知らせずに契約させたもので,被告らの真意によらない無効の契約であって,本件契約の成立を争う。更に,原告は被告らから本件契約の解除通知を受けながら,その後に立替払いをしたもので,本件請求は権利の乱用である。
3原告の主張
Bは,被告らが主張するように,本件契約を無理矢理に締結させた事実はなく,本件契約は正当に成立しているし,原告は,被告らに対し,本件契約締結の意思確認をしている。
4争点
本件契約の成否
第3当裁判所の判断
1Fクレジット契約書(甲1号証。以下「本件契約書」という。)の被告らの印影は同人らの印章により顕出されたものである事実及び被告ら両名の同契約書への署名はDがなした事実に争いはない。
2しかし,陳述書(乙10号証),被告A,被告C及び弁論の全趣旨によれば,
(1)被告ら方の屋根は,昭和62年10月に陶器瓦屋根に葺き替えたものであり,雨漏りなどはなかったこと
(2)被告らは,E,Dらから,本件屋根補修工事の内容についても,原告が立替払いをすることについても説明を受けていなかったこと
(3)被告らは字を書くことができること(このことは,本訴訟で宣誓書に署名したことからも認定できる)
(4)本件契約申込をした平成16年3月28日には,Eが被告らに印鑑を持って来るように言い,被告Aが被告Cに命じて印鑑を持って来させたが,被告Aがその印鑑を炬燵の上に置いていたところ,Eがそれを勝手に取り上げて,被告Aが駄目だと言うのに,Eが立ち上がり,手を上げて被告Aの手が届かない高いところで本件契約書に勝手に押印したこと
(5)(4)の本件契約申込時,被告Cが,EかDか分からないが,立ち上がって,被告Aが困ると言って,2人がやりあっているところを目撃したこと
の各事実が認められる。この認定に反する証人Eの証言は採用できない。
3以上の事実からすれば,被告らには本件契約をする意思はなかったと認められる上,被告両名は自分で字を書くことができるのであるから,同人らがDに対し,自分らは字が書けないから代わりに署名してくれと依頼することは考えられず,Dが被告らの意思に反して勝手に被告らの署名をしたと認められる。このことは被告Cの名前を「G」と誤記入していることからも推認できる。また,押印については,2で認定した押印時の状況によれば,被告Aには本件契約をする意思がないのに,Eがその意思に反して勝手に本件契約書に被告Aの印鑑を押印したものと認められる。
4そうすると,そもそも被告らには本件契約をするという意思表示が欠けていたのであり,被告Aの本件契約は不成立と認められ,被告Cの本件連帯保証契約も成立していないというべきである。
5なお,原告は,被告らの契約意思を確認したと主張するが,被告C及び弁論の全趣旨により成立が認められる録音テープ反訳書(甲3号証及び甲4号証)によれば,平成16年3月29日の意思確認の際も,同年5月19日の意思確認の際も,被告A本人に確認をしていないし,被告Cに確認したその内容をみても,契約内容の具体的説明はなく,意思確認をしたとまでは到底いえないものである。特に,同年5月19日の意思確認の際には,その前にすでに被告らは本件契約を解除したと原告に通知しているのであって,原告もその事実を認めていることからすれば,さらに厳格に意思確認をすべきであり,原告が主張する確認の程度では被告らの意思確認をしたと認めることはできない。いずれにしても,上記認定のとおり本件契約はそもそも成立していないのであるから,原告のこの主張は理由がない。
6よって,原告の請求は理由がない。
名古屋簡易裁判所
裁判官野首泰吉   

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最終更新:2005年08月05日 11:29
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