hanrei @Wiki H17.12.22 山口地方裁判所 平成15年(行ウ)第3号 損害賠償請求



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 原告らは民法上の組合契約を締結して行った船舶リース事業による所得が不動産所得に当たるとして,その減価償却費等を他の所得と損益通算して所得税を申告したところ,被告らは原告らの締結した契約は民法上の組合契約ではなく,利益配当契約にすぎないことなどを理由に同事業による収益は雑所得であり,損益通算は許されないとして更正処分等をしたので,原告らがその取消を求めた事案について,原告らの主張を認めて上記処分を取り消した事案


平成17年12月21日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成16年(行ウ)第59号ないし第61号 所得税更正処分等取消請求各事件
(以下,個別にはそれぞれの事件番号に即して「59号事件」のように表記する。)
口頭弁論終結の日 平成17年8月25日
           判        決
主        文
 1(59号事件)
(1) 59号事件被告が,平成14年3月13日付けでした59号事件原告の平成10年分所得税の更正処分(ただし,所得金額を6550万1256円として計算した額を超える部分)及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。
(2) 59号事件被告が,平成14年3月13日付けでした59号事件原告の平成11年分所得税の更正処分(ただし,所得金額を5722万7466円として計算した額を超える部分)及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。
(3) 59号事件被告が,平成14年3月13日付けでした59号事件原告の平成12年分所得税の更正処分(ただし,所得金額を5323万4938円として計算した額を超える部分)及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。
2(60号事件)
60号事件被告が,平成14年3月13日付けでした60号事件原告の平成12年分所得税の更正処分(ただし,所得金額を1675万6976円として計算した額を超える部分)及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし,いずれも裁決によって一部取り消された後のもの)を取り消す。
3(61号事件)
61号事件被告が,平成14年3月13日付けでした61号事件原告の平成12年分所得税の更正処分(ただし,所得金額を941万0661円として計算した額を超える部分)及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし,いずれも裁決によって一部取り消された後のもの)を取り消す。
4 訴訟費用は被告らの負担とする。
事実及び理由
第1 原告らの請求
  主文同旨
第2 事案の概要
本件は,原告らが,それぞれ組合員となっている民法上の組合として行った船舶賃貸事業に係る収益が不動産所得(所得税法26条1項)に当たることを前提に,その減価償却費等を損益通算して所得税の確定申告を行ったのに対し,被告らが,原告らの締結した組合参加契約は民法上の組合契約ではなく,利益配当契約にすぎないことを理由に,同収益は雑所得(同法35条1項)であって損益通算は許されないとして,原告らに対し,主文掲記の各更正処分及び各過少申告加算税賦課決定処分(以下,これらを「本件各処分」と総称する。)をしたことから,原告らが,本件各処分(ただし,更正処分については,原告らが自認する総所得金額を前提として計算された額を超える部分。また,60号事件及び61号事件については,裁決で一部取り消された後のもの)の取消しを求めた抗告訴訟である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実,証拠から容易に認定できる事実等)
(1) 課税の経緯
ア 原告らが,前記各年分の所得税についてした確定申告及び修正申告(59号事件原告及び61号事件原告)並びに被告らが平成14年1月18日付けでした上記修正申告に伴う過少申告加算税賦課決定処分及び同年3月13日付けでした本件各処分の経緯は,別表1の1ないし3の当該欄に記載のとおりである。
イ 被告らによる本件各処分(ただし,裁決による一部取消し後のもの)の根拠となった認定に係る原告らの総所得金額は,それぞれ別表2の1ないし3記載のとおりであり,不動産所得に係る収入金額及び必要経費の内訳は,それぞれ別表3の1ないし3記載のとおりである。
(2) 原告らによる不服申立てと本訴提起
原告らは,それぞれ,平成14年5月1日,本件各処分を不服として,被告らに対し異議を申し立てたところ,被告らは,同年8月1日,上記異議をいずれも棄却した。さらに,原告らは,それぞれ,同月29日,審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平成16年7月8日,59号事件原告については棄却する旨の裁決,60号事件原告及び61号事件原告については雑所得の金額をゼロとすることに伴う一部認容の裁決をし,そのころ,原告らに通知した。以上の経緯は,別表1の1ないし3の当該欄に記載のとおりである。
そこで,原告らは,同年10月8日,本件各処分(ただし,更正処分については,原告らが自認する総所得金額を前提として計算された額を超える部分。また,60号事件及び61号事件については,裁決で一部取り消された後のもの)の取消しを求めて,本訴を提起した。
(3) 船舶賃貸事業等の概要
ア 船舶賃貸事業の企画,勧誘
住商リース株式会社(以下「住商リース」という。)は,平成6年ころ,個人を対象として,民法上の組合形式で行う船舶賃貸事業(以下「本件賃貸事業」と総称する。)を企画・研究し,平成7年ころから,「船舶用船事業のご案内」と題するパンフレット(以下「ご案内」という。甲B17,甲C16,乙A1,乙B6,乙C4)等を示して,本件賃貸事業への参加の勧誘を開始した。
イ 本件賃貸事業の基本的な仕組み
住商リースが企画し,勧誘した本件賃貸事業の基本的な仕組みは,以下のとおりである。
まず,住商リース及び同社の100パーセント子会社であるエスシーエル・マリタイム株式会社(以下「SCLマリタイム」という。)は,大型船舶の共有持分権を出資し,これを利用して賃貸事業を行うことを目的とする民法上の組合を設立し,その組合員を募集する。
上記組合に参加を希望する個人は,SCLマリタイムが取得した大型船舶の共有持分権を購入する(1口5000万円)と同時に,これを出資して,上記組合に参加する旨の契約を締結する。組合参加希望者が上記共有持分権を購入するに際しては,住商リースないしSCLマリタイムから購入金額の70パーセントないし68パーセント相当の金額の融資(セットローン)を受けることができ,その場合には,購入した上記共有持分権に譲渡担保権を設定する。
そして,上記民法上の組合は,英国領ケイマン諸島(以下「ケイマン」という。)において,住商リースの現地法人と共に,同現地法人がゼネラル・パートナー,上記組合がリミテッド・パートナーとなり,双方が最初に100円ずつ出資し,更に上記組合が上記船舶を出資して,リミテッド・パートナーシップ(以下「LPS」という。)を成立させる。
その上で,上記LPSは,事業者と裸傭船契約を締結して上記船舶をリースし,約定に従ったリース料を受領すると,これを出資口数に応じて上記組合の組合員に配分する(ただし,セットローンを利用した者については,まずその返済債務に充当される。)。そして,10年間経過後は,その時点における経済情勢により,上記船舶を売却し,売却代金を同様に配分する。
ウ 住商リースによる本件賃貸事業と59号事件原告の参加
イの構想に従い,住商リース及びSCLマリタイムは,本件賃貸事業を共同して行うことを目的として,民法上の組合であるプロキオン・メンバーシップ組合,ディライト・メンバーシップ組合及びイースタン・メンバーシップ組合(以下,それぞれ「プロキオン組合」,「ディライト組合」及び「イースタン組合」といい,これらの組合を総称して「本件各組合」という。)を設立する(以下,これらの設立契約を「本件各組合設立契約」と,その各契約書を「本件各組合設立契約書」と総称する。甲A1,甲B1,甲C1)とともに,SCLマリタイムは,住商リースのケイマンにおける現地法人(プロキオン組合については,SCL PROCYON
LIMITED(以下「SCLプロキオン」という。),ディライト組合及びイースタン組合についてはSCL DELIGHT LIMITED(以下「SCLディライト」といい,SCLプロキオンと併せて「本件各船舶購入元②」という。))から,大型船舶のNYK PROCYON(コンテナ運搬船。以下「プロキオン号」という。),HOKUETSU DELIGHT(チップ運搬船。以下「ディライト号」という。)及びGAS EASTERN(LPG運搬船。以下「イースタン号」といい,これらの船舶を「本件各船舶」と総称する。)の各購入契約を締結した(以下「本件各船舶売買契約②」と総称する。乙A7の1,甲B7,甲C7)。
また,本件各組合は,ケイマンにおいて,本件各船舶購入元②と共に,LPS(プロキオン組合は,プロキオンLPS,ディライト組合はディライトLPS,イースタン組合は,イースタンLPS。以下,これらを総称して「本件各LPS」という。)を成立させる旨の契約をそれぞれ締結した(以下「本件各パートナーシップ契約」と総称する。甲A3,甲B3,甲C3)。
他方,本件賃貸事業の勧誘を受けた59号事件原告は,SCLマリタイムから本件各船舶の共有持分権を購入する旨の契約を締結する(以下,この契約を「本件各船舶共有持分権売買契約」と総称する。甲イ5,7,9)と同時に,上記各共有持分権を出資して(プロキオン組合につき2口,ディライト組合につき1口,イースタン組合につき2口),本件各組合に参加する旨の契約を締結した(以下「本件各組合参加契約」と総称する。甲A2,甲B2,甲C2,甲イ6,8,10)。その際,59号事件原告は,住商リース(プロキオン組合及びディライト組合について)及びSCLマリタイム(イースタン組合について)との間で「金銭消費貸借および譲渡担保契約」証書を作成して同契約を締結した(以下「本件各セットローン契約」と総称するが,そのうちの譲渡担保契約の部分を特に「本件各譲渡担保契約」ということがある。甲イ12,乙A8,乙C2)。
そして,本件各LPSは,COSMO SHIPHOLDING S.A.(プロキオンLPSについて),CYGNET BULK CARRIERS S.A.(ディライトLPSについて)及びADMIRAL NAVIGATION CORPORATION(イースタンLPSについて)を傭船者とする裸傭船契約を締結して本件各船舶を賃貸した(以下,各傭船者を「本件各裸傭船先」,その各契約を「本件各裸傭船契約」と総称する。甲A4,甲B4,甲C4)。なお,本件各傭船先は,更に海運業者との間で,本件各船舶についての定期傭船契約を締結している(以下,これらの海運業者を「本件各定期傭船先」という。)。
以上の各契約の当事者及び契約関係を図示すると,別表4の1ないし3記載のとおりであり,その締結年月日は別表5,本件各組合の概要は別表6にそれぞれ記載されたとおりである(後記のとおり,本件における主たる争点は,本件各組合参加契約が民法上の組合契約として有効に成立したかどうかであり,それとの関連で,本件各船舶共有持分権売買契約,本件各セットローン契約の成否や有効性も,付随的な争点となっている。)。
(4) 60号事件原告及び61号事件原告による出資持分の譲受け
60号事件原告及び61号事件原告は,平成11年12月8日,プロキオン組合理事会の承認を得て,59号事件原告から,プロキオン組合の出資持分各1口の譲渡を受ける(同月31日付け)とともに,同出資持分に係る住商リースに対する債務を引き受け,プロキオン組合の理事長あてに,その旨通知し,同組合規約を遵守する旨の確認書を差し入れた(甲ロ4,5,7,甲ハ4,5,7,乙A4)。
(5) 関連法令及び通達の抜粋
ア 不動産所得税関係
(ア) 所得税法26条1項
不動産所得とは,不動産,不動産の上に存する権利,船舶又は航空機(以下この項において「不動産等」という。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
(イ) 所得税基本通達26-3(よう船契約に係る所得)
いわゆる裸よう船契約に係る所得は,法第26条第1項に規定する船舶の貸付けによる所得に該当し,船員とともに利用させるいわゆる定期よう船契約又は航海よう船契約に係る所得は,事業所得又は雑所得に該当する。
航空機の貸付けに係る所得についても,これに準ずる。
イ 組合の所得計算について
(ア) 所得税基本通達36・37共-19(任意組合の事業に係る利益等の帰属の時期等)
任意組合(民法第667条《組合契約》の規定による組合をいう。以下36・37共-20において同じ。)の組合員の当該組合の事業に係る利益の額又は損失の額は,当該組合の計算期間を基として計算し,当該計算期間の終了する日の属する年分の各種所得の金額の計算上総収入金額又は必要経費に算入する。ただし,当該組合が毎年1回以上一定の時期において組合事業の損益を計算しない場合には,その年中における当該組合の事業に係る利益の額又は損失の額を,その年分の各種所得の金額の計算上総収入金額又は必要経費に算入する。
(イ) 所得税基本通達36・37共-20(任意組合の事業に係る利益等の額の計算)
36・37共-19により任意組合の組合員の各種所得の金額の計算上総収入金額又は必要経費に算入する利益の額又は損失の額は,次の(1)の方法により計算する。ただし,その者が継続して次の(2)又は(3)の方法により計算している場合には,その計算を認めるものとする。
(1) 当該組合の収入金額,支出金額,資産,負債等を,組合契約又は民法第674条《損益分配の割合》の規定による損益分配の割合(以下この項において「分配割合」という。)に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法
(以下略)
(ウ) 所得税基本通達36・37共-21(匿名組合の組合員等の所得)
匿名組合の組合員が当該組合の営業者から受ける利益の分配は,当該営業者の営業の内容に従い,事業所得又はその他の各種所得とする。ただし,営業の利益の有無にかかわらず一定額又は出資額に対する一定割合により分配を受けるものは,貸金の利子として事業所得又は雑所得とする。
(以下略)
2 本件の争点
本件各組合における一般組合員とされた原告らが,本件賃貸事業における減価償却費等を他の所得と損益通算することができるか。
その前提として,本件各組合参加契約は,民法上の組合契約としては不成立ないし無効であり,利益配当契約に該当するから,本件賃貸事業による収益は雑所得に区分される(被告らの主張)か,それとも,民法上の組合契約として有効に成立しているから,上記収益は不動産所得に区分される(原告らの主張)かが争点とされている(本件各組合における業務執行組合員とされたSCLマリタイムの得た収益が不動産所得に区分されることは,被告らの自認するところである。)。
具体的には,以下の項目が争われている。
(1) 課税要件についての事実認定の在り方
(2) 本件各組合参加契約の契約類型
ア 本件賃貸事業における経済的合理性の有無
イ 民法上の組合契約という法形式の異常性の有無
ウ 民法上の組合契約の成否と利益配当契約該当性の有無
(3) 本件各組合参加契約の無効性
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)(課税要件についての事実認定の在り方)について
(被告ら)
ア 租税法律主義と事実認定について
所得に対する課税は,私法上の行為によって現実に発生している経済効果に即して行われるものであるから,第一義的には私法の適用を受ける経済取引の存在を前提として行われるが,その経済取引の意義内容については,当事者の合意の単なる表面的,形式的な意味によって判断するのは相当ではなく,私法上の真実の法律関係に立ち入って判断すべきであって,その結果,納税者側の主張と異なる課税要件該当事実を認定し,課税が行われることは,私法上の真実の法律関係に即した課税として当然のことである。
契約等において,当事者の選択した法形式と契約当事者間における合意の実質が異なる場合(あるいは,租税回避を目的とする場合のように,意図的に,真に意図している経済関係とは異なる法形式を選択した場合)には,取引の経済実体を考慮した実質的な合意内容に従って契約等を解釈し,その真に意図している私法上の法律関係を前提として課税要件への当てはめを行うべきであり,かかる解釈も,租税法律主義が要請する法的安定性,予測可能性を損なうものではない。
また,法律行為の解釈については,いわゆる意思主義と表示主義の対立があるが,どちらであっても,第1に表示行為の内心的効果意思を検討すべきものであるから,本件においても,まず,契約当事者が真に意図した実質的な合意内容(法的実質)がどのようなものであったかを探求しなければならない。そのためには,当事者が用いた言語・文字に必ずしも拘泥することなく,当事者が企図した趣旨を察知し,この趣旨を合理的に実現させるべく,当事者の目的,慣習,任意法規,信義誠実の原則ないし条理を基準として解釈しなければならない。そして,契約当事者の内心的効果意思の認定に当たっては,それに資する諸般の事情を総合的に考慮しなければならない。
ところで,探求すべき当事者の意図や合意内容は,内心に係る主観的な事実であるため,間接事実による事実認定という手法によらざるを得ないところ,間接事実となり得る事実の範囲は,主要事実の存在に資するものであれば足りるから,理論上限定されるものではない。具体的には,まず,契約成立時における四囲の事情が考慮されるべきことは当然であるところ,これは解釈の対象となる契約に直接関連する事項に限られることはないし,契約締結後に契約当事者がどのような行動を取ったかに関する事実も,かかる行動から契約締結時における当事者の意思を推認し得るから,考慮すべき事情となる。
また,当事者の動機ないし目的は,他の事情と結びついて,契約解釈における重要な間接事実となり得るものである。無論,一口に動機ないし目的といってもその概念は広く,それが事実認定及び契約解釈に与える影響の程度も一様ではないが,当該契約の経済的実質ないし目的は,当該契約の法的性質を決定づけるような重要な間接事実であるし,狭義の動機も,契約解釈の一つの指針となり,また他の間接事実と結びついて契約解釈を左右し得ることは同様である。
イ 処分証書の法理について
本件においては,本件各組合参加契約,本件各船舶共有持分権売買契約等の各契約について,それぞれ契約書が存在する。これらは,処分証書であるかのようにみえるところ,処分証書については,その成立が認められれば,特段の事情がない限り,一応その記載どおりの事実を認めるべきである。しかし,契約書等の外形的資料は絶対的なものではないから,かかる外形に現れない当事者の真の合意内容が認められる場合には,当該契約書は処分証書たり得ず,特段の事情があるとして,契約書等とは異なる認定をすることがあり得るし,契約書等によって契約の成立が認められるとしても,意思表示が虚偽表示であるかなどの契約の効力の点は,これとは別の問題であるから,かかる契約書等から推認される効果意思と内心的効果意思が一致するかどうかの検討は,いずれにしても行わなければならない。
ウ 複合的契約の解釈について
さらに,本件においては,本件賃貸事業に関連する各契約(本件各船舶の各売買契約,組合契約,組合参加契約,金銭消費貸借契約,譲渡担保契約,パートナーシップ契約,裸傭船契約等)の大部分が,時間的に近接して締結されているだけでなく,内容的にも相互に密接に関連しており,当初から各契約の全体が一体のものとして成立することが予定されていて,その一つでも欠ければ所期の目的を達し得ない構造(以下,これらの仕組みを「本件スキーム」という。)を有している。そして,これら契約の大半は,本件各組合参加契約の当事者の一方であり,本件各組合を構成する住商リース又はその子会社であるSCLマリタイムによって締結されている。
したがって,本件各組合参加契約の実体ないし実質を判断するに当たっては,かかるスキームの全体がどのようなもので,各当事者にとっていかなる意味を持つか,他の契約がどうなっているかも検討する必要がある。
エ 類似事案における先例について
以上のような契約解釈の在り方ないし事実認定の手法は,本件と類似する大阪高裁平成12年1月18日判決・訟務月報47巻12号3767頁,東京高裁平成17年2月8日判決・公刊物未登載及び東京地裁平成15年5月22日判決・公刊物未登載(以下,これらを「映画フィルム判決」という。)においても,承認されている。
(原告ら)
ア 租税法律主義と事実認定について
租税は,公共サービスの資金を調達するために,国民の富の一部を国家の手に移すものであるから,その賦課・徴収は必ず法律の根拠に基づいて行われなければならない(租税法律主義。憲法84条)。そして,租税法律主義については,今日の複雑な経済社会においては,各種の経済上の取引や事実の租税効果について十分な法的安定性と予測可能性とを保障し得るような意味内容が与えられなければならないから,租税法規の解釈及び事実認定も,租税法律主義に則り,納税者に対して十分な法的安定性と予測可能性とを保障し得るようになされなければならない。
ところで,国民が一定の経済的目的を達成しようとする場合,私法上は,複数の手段,形式が考えられる場合があるが,私的自治の原則ないし契約自由の原則が存在する以上,当該国民は,どのような法的手段,法的形式を用いるかについて,選択の自由を有する。もっとも,特段の合理的理由がないのに,通常は用いられることのない法的手段,形式を選択することによって,所期の経済的効果を達成しつつ,通常用いられる法律行為に対応する課税要件の充足を免れる等の場合には,租税回避行為としてその有効性が問題となるが,租税法律主義の観点からは,このような場合であっても,当該法的手段,形式が私法上は有効であることを前提としつつ,租税法上はこれを有効と扱わないためには,これを許容する法律上の根拠を要すると解すべきである。
そして,課税は,私法上の行為によって現実に発生している経済効果に即してなされるものであり,それらの効果は第一次的には私法によって規律されるから,租税法規が課税要件として私法上におけると同じ概念を用いている場合,租税法律主義の要請たる法的安定性と予測可能性の観点から,特に別意に解すべきことが租税法規の明文又はその趣旨から明らかな場合を除き,当該課税要件の意義は私法上におけると同一の意義に解釈すべきである。
また,当該行為の課税要件への該当性を判断する場合にも,その事実認定は私法上におけるそれと同一でなければならず,当事者が選択した法形式が私法上有効に成立しているにもかかわらず,課税庁が「事実認定」の名の下にこれを否認し,その経済的目的なりに即して他の法形式に引き直して課税することは,明文規定のない租税回避行為の否認を行うものとして許されない。
イ 処分証書の法理について
契約書等の法律行為が記載されている文書が存在する場合,特段の事情がない限り,その記載を尊重して事実認定をしなければならない(最高裁昭和32年10月31日判決・民集11巻10号1779頁ほか多数)という法理(処分証書の法理)が確立されている。
被告らは,私法上の事実認定の手法と称して,何らの基準を定立することなく,「当事者が締結したとする契約の形式にとらわれすぎることなく,法的実質の探求がなされるべきである」などと主張するが,「法的実質」とは何を意味するか不明であり,事実認定の手法として,上記の処分証書の法理を一顧だにしない暴論であることは明らかである。
ウ 「複合的契約」の解釈について
被告らは,形式的に理解すれば成立している本件各組合参加契約を含む多数の契約を,その実質に従って認定すべき根拠として,①多数の契約が,時間的に極めて近接した範囲内で締結されていること,②多数の契約が相互に密接し,当初から各契約の全体が一体のものとして成立することが予定され,一つでも欠ければ所期の目的を達し得ないこと,③各契約の当事者は多数にわたっているが,その実態は,住商リース又はSCLマリタイムがその主体となって締結していることなどを挙げている。
しかしながら,①実際の取引社会において,複数の当事者間で,複数の契約が時間的に極めて近接する範囲内で締結されている場面は多数存在するが,かかる場合に複数の当事者間における複数の契約を,その選択された法形式にとらわれず,その実質に従って認定するなどという特別な解釈論は,私法上そもそも存在せず,②「相互に密接」,「一体のもの」,「一つでも欠ければ所期の目的を達し得ない」等が法的にいかなる意味を有するか,いかなる効果が生じることになるかは何ら明らかにされておらず,③「その実態」,「その主体」の意味も不明である。
エ 映画フィルム判決について
被告らは,映画フィルム判決が本件において参照されるべき旨主張するが,映画事業は,フィルムに化体された映画を上映し,あるいは映画を複製して頒布することで収益を上げる事業であるから,事業遂行に必要なものは,映画を上映等するための著作権であり,有体物としてのフィルムの所有権の価値は,著作権と比べてゼロに等しい。そのため,映画フィルム判決は,配給会社に著作権のすべてを付与し,著作権が帰属しない抜け殻の所有権を取得するにすぎない内容の契約を,実体の伴わない単なる形式であると認定し,しかも,借入金が関係当事者間で循環しているという事実を認定して,出資金は,組合員が組合を通じて映画製作会社に融資されたものと判断している。
他方,本件においては,原告ら一般組合員は,本件各船舶の共有持分権を売買によって取得し,その後,本件各船舶は,本件各組合員から本件各組合に,本件各組合から本件各LPSに,それぞれ出資されたのであって,本件各組合から本件各船舶購入元②に所有権が移転して循環した事実はないし,資金の循環もなく,しかも,本件各船舶は,映画フィルム判決における著作権のような所有権とは別個の「船舶に係る権利」などは存在しないので,事案が全く異なる。
(2) 争点(2)(本件各組合参加契約の契約類型)について
(被告ら)
本件各組合参加契約は,以下のとおり,民法上の組合契約としては成立しておらず,原告ら一般組合員は,本件各組合の組合員としての資格を有効に取得していない。残る実体は,原告ら一般組合員の参加していない本件各組合(住商リース及びSCLマリタイムのみが組合員である組合)が本件各LPSを通じて本件各船舶を本件各裸傭船先に賃貸するという事業を行い,この事業に対して原告らが出資し,事業発足後6年目以降に傭船料分配金を受領しているという事実のみであるから,これらの事実を法的に構成すれば,利益配当契約に当たる。
ア 本件賃貸事業における経済的合理性の欠如
(ア) 原告ら一般組合員にとっての投資効果
a ご案内に掲載されている損益予想表によれば,10年目の購入オプションが行使された場合の終了時収支見込みは3805万3000円とされているが,このうち損益通算による課税額減少効果(1441万6000円)から譲渡所得に対する税額(737万円)を差し引いたトータルでの課税額減少効果である704万6000円を除く,いわゆるキャッシュ・フロー・ベースでの収支見込みは3100万7000円である。そうすると,投資金額は3000万円であるから,キャッシュ・フロー・ベースでの利益は100万7000円にすぎないところ,これを年利換算すると,10年複利で0.33パーセントにしかならない。
このように,本件賃貸事業においては,投資することによって得られる収入は皆無に等しく,船舶の売却による収入を加えてもキャッシュ・フロー・ベースでの利益は極めて少ないものであり,得られる利益の大部分(上記の場合,約87パーセント)が損益通算による課税額減少の利益に基づいている。
なお,本件各裸傭船契約の付加条項などによれば,本件賃貸事業においては,同契約において定められた見直日に本件各船舶の購入オプションが行使され,契約を終了させることが予定されていると考えられるところ,大きな現金収入が得られるのは事業開始から11年目以降であるから,傭船料収入が主目的であるならば,11年目以降も傭船契約を継続するはずであるにもかかわらず,これが全く想定されていないというのは,課税額減少効果を主目的としていることを示すものである。
b また,「ウィンズの譲渡に関するシュミレーション」(乙A3)によれば,3000万円を出資して得た船舶共有持分権2口を事業開始後5年で簿価で譲渡した場合においては,譲渡者及び被譲渡者合計の利益においては,なお贈与税608万6637円を回避することが可能とされている。これは,二次取得者(被譲渡者)の所得税率が65パーセントであることを前提としているが,この税率がこれよりも低い相手(子又は孫若しくは所得の少ない配偶者等)に譲渡する場合においては,「損が生じている期間は高税率の親の損として損益通算により租税負担を回避し,収益が生じ始めたところから低税率の子の所得として所得税を負担する」ことにより,トータルとして一層の租税回避が図り得るのである。
c さらに,ご案内では,「メリット」の第一に「当初の6年間で投下資金(自己資金)とほぼ同額の所得圧縮効果があります。」と記載され,課税額減少効果を本件賃貸事業のメリットの中心として紹介しており,また,Dなる人物から59号事件原告にあてた手紙(乙イ1)も,本件賃貸事業のメリットを「最初の5,6年間は収入のある私が節税に利用し,節税メリットがなくなり,収益が生まれそうになった頃に収入のない(又は少ない)子供に贈与できる。」と紹介し,本件賃貸事業が損益通算等による課税額減少自体を目的としていることを明らかにしている。
d 以上のとおり,投資家の立場から見れば,本件賃貸事業は,まず事業それ自体についての利益があり,これに付随して節税効果もあるというものではなく,課税額減少効果それ自体が目的であり,本件賃貸事業はかかる効果を得るために存在すればよいだけのものとなっている。
(イ) 住商リースグループが得る利益
a 本件賃貸事業によって住商リースグループが得る利益
住商リース,SCLマリタイム及びSCLプロキオンは,キャッシュ・フロー・ベースで以下の利益を得る。
(a) 住商リース 約2億8342万円
       ① 傭船料分配金               約1880万円
       ② 船舶売却代金分配金            約1042万円
 ③ 販売委託手数料 約2億5420万円(b) SCLマリタイム   約1億6861万円
       ① 傭船料分配金               約4022万円
       ② 船舶売却代金分配金            約2230万円
       ③ 業務執行報酬               約4964万円
       ④ 船舶の売買差益              約4825万円
       ⑤ 組合設立費用等                820万円
(c) SCLプロキオン              約4964万円
b 住商リースグループが利益を得る仕組み
住商リースグループは,大きな負担なしに本件賃貸事業から総額約5億0167万円の利益を得ている。ところで,同グループとしては,自ら船舶を購入して,これを賃貸事業に供することも考えられるが,それでは巨額の船舶購入代金を自ら負担しなければならず,借入資金をこれに充てる場合には借入利息も負担しなければならない。しかし,本件のように,投資家らに船舶の共有持分権を購入させ,これを組合に現物出資させれば,住商リースグループとしては購入代金の自己負担を免れることができるのみならず,共有持分権の販売や組合における業務執行の報酬を得ることができ,さらに,共有持分権の購入代金の一部を貸し付ける形式(セットローン)を用いることで,金利も得られるのである。
また,住商リース及びSCLマリタイムにおいては,本件各組合に出資するための船舶共有持分権取得のための資金が必要となるはずであるが,SCLマリタイムは,プロキオン号をSCLプロキオンから79億0575万円で購入し,これを一般組合員に82億円で販売して売買差益2億9425万円を得ている(このことは,原告ら投資家の利益に反する。)のであるから,SCLマリタイムが有する持分1口を無償で入手したこととなり,住商リースが負担する現金出資2336万7375円も販売委託手数料により賄うことができるのである。
このように,住商リースグループが一方的に利益を得ることができるのは,一般投資家らのキャッシュ・フロー・ベースによる利益を低く抑えつつ,税額減少効果によりこれを補っているためである。
(ウ) 経済的合理性に係る主張の位置づけ
以上のとおり,本件賃貸事業は,租税負担が軽減される点を考慮しない限り,原告ら投資家にとって利益となる点は見られず,むしろ,その利益に反する点が多々見られるなど,経済的合理性からの検討結果と一致ないし符合する実態が見られる。
また,本件スキームは,住商リースグループにとっては少ない出資で大きな利益を生み出すものといえるが,これはあくまで,すべてSCLマリタイムが業務執行者となり,本件各船舶の購入や賃貸,売却等を住商リースグループが主体的に行うなど,住商リースが事業の遂行をその支配下においてこそ成り立つものである。そうすると,民法上の組合契約という法形式は,得られる利益も共通のものでなければならないし,場合によっては業務執行者が解任されることもあり得るものであるから,法形式どおりであれば,住商リースグループにとってその望むところを実現するものではないといえる。かかる観点から本件の実態を見ると,住商リースグループと一般組合員らとの利益を共通にしておらず,現実的には解任権を行使できないようにしているとの事実が見られ,上記の経済的分析からうかがわれる経済的実質と一致ないし符合している。
被告らの経済的合理性に関する主張は,上記のとおり,事業の経済的合理性についての内容が本件スキームの経済的実質を示す一面であり,被告らの認定ないし契約解釈を裏付ける一つの間接事実であるとの趣旨である。
イ 民法上の組合契約という法形式の異常性
契約自由の原則の下,当事者に法形式の選択の自由があることは一般論としてそのとおりであるが,選択することができるのは双方の法形式をいずれも有効に成立させ得ることが前提である。それゆえ,後記のとおり,本件各組合参加契約が民法上の組合契約としての成立要件を欠いている本件は,法形式の選択の自由が働く場面ではないから,法形式の選択の自由があることを理由として,本件各組合参加契約が民法上の組合であるなどといえるものではない。
更に付言すれば,民法上の組合契約は,業務執行者に善管注意義務が課されるという点だけを取ってみれば,一見,投資家の利益に配慮できる法形式のようにも見えるが,投資家が自ら事業に参加することを求められ,また原則として対外的に無限責任を負わなければならないこととなるなど,投資とそこから得られる経済的利益の獲得のみを求める投資家にとってはかえってリスクないしデメリットの高い法形式であるともいえる。投資家が当該事業についての素人であった場合は特にそうであり,共同事業者としての判断などなし得るはずもないにもかかわらず,当該賃貸事業についての専門的判断を求められ,事業者の一員としての責任をも負わなければならないこととなるため,事業の円滑な遂行にも支障となり得るし,投資家のニーズにも合致しない。それゆえ,当該事業ないし取引の性質によっては,民法上の組合という法形式はそもそも投資家の利益にはならない法形式といえるのである。実際,船舶賃貸事業においては,個人投資家を対象とする民法上の組合という法形式は,賃貸業界の実態ないし常識として用いられておらず,むしろ民法上の組合という法形式の方が異例であるとすらいえるのである。
したがって,当該取引の性質等を考慮せずに,単に法的効果等の面から法形式の(表面上の)合理性を検討し,法形式の選択の自由の問題として実体面の検討を行わずとも外形上の法律関係どおりの成立及び効力を認めるなどとすれば,まさしく事の本質を見誤ることになる。本件における事業も,船舶賃貸事業という,専門的知識・ノウハウ等が強く求められる事業なのであるから,全くの素人である投資家らを事業主体の一員とするにはそもそもなじまない取引類型といえるのであり,にもかかわらずあえて民法上の組合(に参加させる)という法形式を用いている理由はどこにあるのか,検討がなされなければならないし,かかる観点から本件各契約の実体を総合的に検討すれば,後記のとおり,利益配当契約ともいうべき非典型契約とみるほかはない。
ウ 民法上の組合契約の不成立と利益配当契約の該当性
(ア) 民法上の組合契約の成立要件
本件各組合参加契約のように,既に成立している組合に参加する契約について,民法上の定めはないが,可能と解されている。その場合,組合への加入は,加入しようとする者と組合員全員との合意のほかは,通常の組合契約とおよそ同様の要件が必要である。
ところで,民法上の組合の成立要件は,民法(以下,平成16年法律第147号による改正前の民法で表記する。)667条1項が,「組合契約ハ各当事者カ出資ヲ為シテ共同ノ事業ヲ営ムコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス」と定めていることからすれば,①2人以上の当事者の存在,②出資の合意,③共同事業目的の合意が必要となる。
そして,③の共同事業目的の合意といえるためには,組合の目的たる事業は,すべての当事者にとって共通のものでなければならないから,各当事者が,事業の執行に関与する権利を持ち,しかも,事業の成功に利害関係を有することを要する。また,共同事業目的の合意が認められるには,検査権や解任権が各組合員に保障されていることを要するが,検査権や解任権は,共同事業目的の存在を示す一つの外部的徴表であり,共同事業目的を実現するための手段でしかないから,「共同事業」という要件を,検査権,解任権,事業の成功に利害関係を有していることなどの要件に分解することなく,端的に「共同事業」の要件を備えていることを要すると解すべきである。
しかるところ,共同事業目的は,あくまでそれが組合員全員の共同の事業であって,そこから得られる利益も共通であることに本質があると考えられ,検査権及び解任権の存在が共同事業目的の存することを示し,共同事業であることを具現化する手段足り得るのも,事業が組合員全員にとって共同のものであり,得られる利益も共通のものであることが前提であると解されるから,利益が共通でない場合には,共同事業性は認められず,共同事業目的についての合意は認められない。
しかも,組合は,目的団体の一種であり,各組合員が何らかの事業を共同の目的とすることが必要であるとされており,組合の目的たる事業は,すべての当事者にとって共通のものでなければならないから,各当事者の利益の性質が異なったものでもよいとしても,ある当事者は利益を得,別の当事者は損をするというように,「利」と「害」が不一致であってはならない。のみならず,営利事業を目的としながら,利益を一部の者だけに配当し,他の者は全くそれに与らない,いわゆる獅子組合は民法上の組合ではないとされているから,本件賃貸事業のように営利事業を目的とする組合においては,利益の配分を受けること,すなわち経済的利益の享受についても共通でなければならない。
(イ) 民法上の組合契約の不成立を推認させる間接事実
a 組合員名簿の不整備
本件においては,原告ら一般組合員に組合員名簿が配布されていない。そして,本件各組合の規約(以下「本件各組合規約」という。)において,一般組合員も組合員名簿を閲覧することができるとされているが,この名簿には,組合員の氏名,口数,持分しか記載されておらず,住所等の記載がないから,組合員名簿を閲覧しても,他の組合員に連絡することはまず不可能であり,総出資口数の過半数を有する組合員を組合員総会に出席させ(本件各組合規約13条7項),更に総出資口数の3分の2以上による決議を必要とする解任権の行使(同規約12条4項)どころか,総出資口数の10分の1以上の賛同を必要とする組合員総会の開催要求(同規約13条2項)さえ全く現実的でない。
これは,本件各組合を設立した住商リース及びSCLマリタイムが,一般組合員に他の組合員の住所・氏名等を知らせる意図がなかったことを示すものであり,原告ら一般組合員が組合員総会の決議事項を除く各事項については,その意思を反映させ得る状況にないことも考慮すれば,本件各組合がそもそも一般組合員が解任権を行使することを予定していない組合であり,本件各組合参加契約の一方当事者である発起人(住商リース及びSCLマリタイム)が,一般組合員に解任権を認めない意図の下に本件各組合参加契約を締結したことを示すものである。
また,共同事業目的の合意には,その事業を共同で営むことの合意を含むものであるところ,「共同」する相手の存在を知らず,また知り得ずして「共同」することなどできるはずもないのであるから,本件において,他の組合員の住所・氏名等が一般組合員に知らせない仕組みとなっていること自体が,共同事業目的の合意を欠いていることを示すものである。
b SCLマリタイムによる販売価格のかさ上げ
SCLマリタイムは,前記のとおり,プロキオン号の売買によって差益2億9425万円を得ているところ,内金約2億5420万円は,販売委託契約6条に基づいて住商リースが販売手数料として取得している。しかし,SCLマリタイムが上記船舶を購入したのは,住商リースのケイマン法人であるSCLプロキオンからであり,かつ上記購入契約(船舶売買契約②)の締結日は平成7年3月23日,船舶共有持分権売買契約の締結日は同月22日であって,後者が前者に先行するという不合理性はさておいても,この間に高額の費用を要することは考え難いから,価格のかさ上げが行われていることは明らかである。
このことは,キャッシュ・フロー・ベースで見る限り,住商リースらの利益を増加させるばかりで投資家らの利益の減少にしかならないため,住商リースグループは一般個人投資家の利益を減少させてその分を利得するという,両者の利益が相反する行為を行っていることを示している。ところで,上記のとおり,民法上の組合における共同事業目的は,あくまでそれが組合員全員の共同の事業であって,そこから得られる利益も共通であることにその本質があると考えられる。しかるに,SCLマリタイムは,船舶共有持分権の売買に当たって,価格のかさ上げを行い,原告ら一般個人投資家の利益を減少させ,住商リースらはその分を利得して自己の利益としているのであるから,両者の間には利益相反関係が存し,共同事業目的についての合意が欠けていることを如実に示している。
また,SCLマリタイムらは,上記の価格のかさ上げについて,本件各組合に参加しようとする投資家らに知らせることもなく,ただ組成したとおりのスキームに参加するかどうかを選択させているにすぎない。SCLマリタイムのこのような行為は,業務執行者の善管注意義務に反すると考えられるが,これが当初より本件スキームに組み込まれている。このような一般組合員の利益に反する行為は,業務執行者としてのSCLマリタイムに対する解任の正当な事由になり得るにもかかわらず,これを一般組合員に知らせていないことからすると,解任権は有名無実のものであり,真にその存在について合意があったとは認められない。
c SCLマリタイムによる「理事長」僭称
SCLマリタイムが本件各組合の理事長に就任するのは,創立総会においてであるところ,その前に締結されている本件各パートナーシップ契約(書)においては,SCLマリタイム(の代表取締役)が本件各組合の「理事長」の肩書で署名している(甲AないしCの各3,乙A9,乙B2,乙C3)。
そうすると,本件各パートナーシップ契約(書)における本件各組合の代理ないし代表権限を示す記載が,本件各組合設立契約及び本件各組合規約に反することになるから,本件各パートナーシップ契約の効力について疑問を呈さざるを得ない(それゆえ,本件各パートナーシップ契約書は処分証書たり得ないものとなる)。また,このように,原告ら一般組合員の関与し得ない形で本件各パートナーシップ契約が締結されていることは,住商リースないしSCLマリタイムが,原告ら一般組合員の議決権を認めていないこと,ひいては原告ら一般組合員を組合員として扱っていないことを如実に示すものである。
したがって,本件各組合規約9条で「組合員総会の決議で理事を選任する」,同規約10条で「理事会の決議により理事長を選任する」と定めているのは,原告ら一般組合員を「組合員」として扱う外形を整えるためにすぎないというべきである。
d 出資履行前の創立総会開催
本件各組合設立契約12条によれば,発起人(住商リース及びSCLマリタイム)は,総出資口数の出資の完了を確認した後,理事の選任のため創立総会を招集することとされている。しかるに,ディライト組合及びイースタン組合においては,59号事件原告らが自己資金を出捐する前に創立総会が開催されており,原告ら一般組合員が共有持分権を取得して出資した後に創立総会が招集されたとはいえない。
この点について,原告らは,創立総会の開催は,自己資金の出捐や送金を条件としていないし,自己資金出捐前に持分権が引き渡されていることについては,本件各船舶共有持分権売買契約7条に,「本契約に基づく売主の引渡義務は,引渡時において,以下の条件が全て満たされているか売主に放棄される」場合にも成立するから何らの違反もないと反論するが,放棄される条件は,「引渡時までに,債務者が,本契約に従い,売買代金の支払を完了したこと」だけでなく,「住商リースとの間で金銭消費貸借契約及び譲渡担保設定契約が締結されているときは,同契約により期限の利益を喪失し又は喪失するおそれがあると認められる事情が生じていないこと」も放棄の条件とされているところ,期限の利益喪失の事情は除名事由ともなっているから,このような事由に該当する事項まで放棄するなどという主張が真実のものとは考えられず,これらによっても,創立総会を原告らに組合員としての地位を与えた上で行ったとの形式を作出したにすぎないことに変わりはない。
また,プロキオン組合においても,原告らは,プロキオン号の共有持分権を取得した日(平成7年3月24日。甲イ5)以前に,同持分権を出資する旨の契約を交わしており(同月22日。甲イ6),上記2組合とは異なり,出資日という点では整合することになるが,逆に契約書作成時点で取得していない権利を出資する契約を締結したことになり,やはり不自然な契約が締結されたことになるから,原告らが上記共有持分権を取得して出資したとはいえない。
e 一般組合員の本件各船舶処分権限の欠如
原告ら一般組合員が本件各船舶の共同所有者であり,本件各組合の構成員であれば,組合財産となった本件各船舶の処分権限を有するはずであるが,原告ら一般組合員はこれも有していない。
すなわち,本件各裸傭船契約上の見直日までは,同契約33条は,「本件各パートナーシップは,傭船主の事前の書面による許可なく傭船主以外の者に当該船舶を売却してはならない。」と定め,見直日以降は,本件各組合規約32条が,「本件各組合の理事長は,理事会の同意を得てパートナーシップに本船を処分させることができる。」と定めている。そのため,原告ら一般組合員の処分権限は,裸傭船期間全般を通じて制限されており,現実的にはこれに関与することは全くできないことになる。
この点,原告らは,本件各裸傭船契約が終了した場合,本件各組合は,本件各船舶を売却し,その売却収入を分配して,解散することについて,ご案内やリファレンス・ブックで説明され,これに同意して参加したのであるから,売却時期や売却方法についても関与しており,その意思を反映させている旨反論するが,これは,理事長が自由にできることに同意して参加したのであるから,あとは理事長が何をしようとも,それは関与し,意思を反映させているとの主張に等しいものである。出資の目的物であり,組合員の共有財産でもあるはずの本件各船舶の処分という最も重大な局面において,原告ら一般組合員を関与させずに処分が可能であるということは,いかにその概念が広い民法上の組合契約といえども不自然というほかない。したがって,「関与し,意思を反映させることができない」ものへの参加を目的とする本件各組合参加契約は,民法上の組合への参加契約ではあり得ない。
また,ディライト組合においては,裸傭船契約の締結日(平成9年12月10日。甲B4)が,59号事件原告に係る船舶共有持分権売買契約の日付(同月12日。乙イ14)及び譲渡証の日付(同月12日。乙イ7)の前となっており,59号事件原告らが船舶共有持分権を取得する前,すなわち組合に参加できる状態になる前に裸傭船契約が締結されているのであって,裸傭船契約締結についても,原告ら一般組合員が,これに全く関与できない状態となっている。
f 59号事件原告の意思
59号事件原告の質問てん末書(乙全4)によれば,59号事件原告は被告らの調査担当者に,「(船舶賃貸事業の)ノウハウはありません。」,「(他の組合員は)興味がありません。知る必要もありません。運用についてもすべて住商リース㈱にまかせています。」,「(組合が締結した契約書などを見たことが)ない。契約の内容など考えたこともない。」,「(船の所有権について)そういうところまで考えてなかった。」,「(商品について)株ではないが損はないだろうということです。」旨供述している。また,59号事件原告は,組合に出資するための自己資金分3000万円を東海銀行(現UFJ銀行)から借り入れているが,その融資申込書(乙イ13)の資金の使途欄に「船舶投資商品購入」と記載している。
このように,原告ら一般組合員は,具体的な契約内容など承知せず,ただ住商リースを信頼して損をしない商品だと思ったから投資したにすぎず,本件各船舶の共有持分権を取得することになることや組合員になることなど何も認識していないから,船舶の共有持分権を購入してこれを現物出資することにより本件各組合に参加するという,本件各組合参加契約に対応する内心的効果意思など有していない。
g 本件各船舶の所有権の循環
(a) 他人物売買
SCLマリタイムは,SCLプロキオンからプロキオン号を購入する旨の船舶売買契約②の締結(平成7年3月23日。乙A7)以前に,同船の共有持分権を原告ら一般組合員に販売する旨の契約を締結している(同月22日。乙イ2)。したがって,同船の共有持分権を販売した時点では,他人物売買であったことになり,不自然な契約といわざるを得ない。
(b) 船舶譲渡証
本件各船舶の売買に当たって作成された譲渡証(以下,これらを「本件各譲渡証」という。乙A6,乙B1,乙C1)によれば,本件各船舶は,以下のように譲渡されている。
① プロキオン号
1995年(平成7年)3月24日に,シルヴァナス・シップホールディングからプロキオンLPSに,直接譲渡されている。
② ディライト号
1997年(平成9年)12月12日に,SCLディライトからディライトLPSに,直接譲渡されている。
③ イースタン号
1999年(平成11年)6月9日に,SCLディライトからイースタンLPSに,直接譲渡されている。
この点について,原告らは,本件各譲渡証が交付される理由は,中間省略登記登録の目的を達成させるためである旨主張するが,仮にそうであったとしても,不自然であることに変わりなく,中間者である原告ら及び本件各組合の登録が省略されることについて,これらの者が承諾したとの事実はうかがわれないから,原告らの存在が軽視されていることを示すものといえる。
また,中間省略登記登録の目的であったとすれば,本件各LPSへの本件