hanrei @Wiki H18. 2. 9 名古屋高等裁判所 平成17年(行コ)第45号 消費税及び地方消費税更正処分等取消請求控訴事件



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控訴人(1審被告)が歯科技工業はサービス業に該当するとして,被控訴人(1審原告)に対し,消費税及び地方消費税更正処分等を行ったところ,被控訴人(1審原告)が同事業は製造業に該当するとして,同更正処分等の取消しを求めたが,その取消請求につき認められなかった事例


主         文
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の各請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 当事者が求めた裁判
1 控訴人
主文同旨
2 被控訴人
(1) 本件控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は,控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は,消費税簡易課税制度選択届出書を提出していた被控訴人が,自己の営む歯科技工業(本件事業)が消費税法施行令57条5項3号に定める第三種事業(製造業)に該当し,みなし仕入率が100分の70であるとして,消費税及び地方消費税(消費税等)の申告をしたところ,控訴人から被控訴人の事業は同項4号に定める第五種事業(サービス業)に該当し,みなし仕入率は100分の50であるとして,消費税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定を受けたことから,上記各処分の取消しを求めた抗告訴訟である。
原審は,本件事業は消費税法施行令57条5項3号ヘ所定の「製造業」に当たると解するのが相当であり,同項4号ハ所定の「サービス業」であるとは認められないから,本件事業が第五種事業であることを前提として,みなし仕入率を100分の50とした本件各処分は違法であるとして,被控訴人の本件各請求をいずれも認容したため,控訴人がこれを不服として控訴した。
2 争いのない事実等,争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」1ないし3のとおりであるから,これを引用する。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,被控訴人の営む歯科技工業は消費税法施行令57条5項4号ハ所定の「サービス業」であり,消費税簡易課税制度の適用においては,第五種事業としてのみなし仕入率100分の50を適用するのが相当であり,被控訴人の本件各請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。
2 本件の争点は,前記(原判決)のとおり,本件事業が消費税法施行令57条5項4号ハ所定の「サービス業」に該当するか,それとも同項3号ヘ所定の「製造業」に該当するかであるから,まず,本件事業が上記のいずれに該当するかを判断するに当たっては,租税法規である上記各法条の解釈が検討されなければならない。
憲法84条(課税)は,法律の定めなくしては租税を課すことはないとする租税法律主義の原則を定めており,この定めの趣旨が,課税に対する法的安定性と納税者に予測可能性を与えるものであることにかんがみると,その内容として納税義務者及び課税標準等の課税要件や租税の課税徴収手続が法律によって定められていなければならず,また,上記課税要件について,実体法上,その内容が多義的でなく明確かつ一義的なものであることが要求されている。したがって,租税法規の定めはできるだけ明確かつ一義的であるのが望ましいことはいうまでもない。しかし,租税法規が対象とする課税対象となる納税者側の社会生活上の事象は千差万別であり,特に,納税者の自由な経済活動等による多様な形態による事業,取引等がなされることを前提にすると,それらの全てを法律により一義的に規定し尽くすことは不可能であり,その内容の明確性については自ずから一定の限界があることもやむを得ないというべきである。したがって,租税法規の解釈については,当該法令が用いている用語の意味,内容が明確かつ一義的に解釈できるかをまず検討することが必要であることはいうまでもないが,それができない場合には,立法の趣旨目的及び経緯,税負担の公平性,相当性等を総合考慮して検討した上,用語の意味,内容を合理的に解釈すべきである。
そこで,以上を前提に検討する。
まず,消費税法施行令57条1項ないし4項に掲げられている第一種事業ないし第五種事業については,同条5項1号ないし5号でその区分に属する事業が列挙されているところ,同条6項で「前項第1号の卸売業とは,他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業をいうものとし,同項第2号の小売業とは,他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業で同項第1号に掲げる事業以外のものをいうものとする。」との定義規定が置かれているものの,第三種事業及び第五種事業に属する各事業自体の内容を明らかにした定義規定は存在しない。また,本件において問題となっている第三種事業の一つである「製造業」については,同条5項3号ヘに「(製造した棚卸資産を小売する事業を含む。)」と,第五種事業の一つである「サービス業」については,同項第4号ハに「(飲食店業に該当するものを除く。)」とぞれぞれ付記されているものの,「製造業」又は「サービス業」自体の意味内容が法令によって明らかにはされていない。
そして,「製造業」及び「サービス業」の用語の意味自体は,例えば,「製造業」については,「原料品を加工して新しい品物をつくる生産業。品物をつくる営業」(広辞苑,乙28)とか,「原材料に加工を施して製品を生産する産業」(大辞泉,乙29)とか,「原料に手を加えて品物をつくり上げる産業」(大辞林,乙30)とか,「各種原料を加工して製品をつくる工業の総称。産業分類では鉱業・建設業とともに第二次産業に分類され,重工業と軽工業に区分される。」(日本語大辞典,乙31)とされており,また,「サービス業」については,「日本標準産業分類の大分類の一。旅館・下宿などの宿泊設備貸与業,広告業,自動車修理などの修理業,映画などの興行業,医療・保健業,宗教・教育・法務関係業,その他非営利団体などを含む。」(広辞苑,乙28)とか,「日本標準産業分類による大分類の一。労務・便宜・専門的知識などを提供する業種で,さらに旅館・貸し間などの宿泊設備貸与業,対個人サービス業,対事業所サービス業,自動車修理などの修理業,映画などの興行業,医療・保健業,法務・教育・宗教関係業などに分類される。」(大辞泉,乙29)とか,「日本標準産業分類の一。宿泊設備貸与業,広告業,修理業,興行業,医療保健業,宗教・教育・法務関係など非物質的生産物(サービス)を生産するあらゆる業務。」(大辞林,乙30)とか,「『サービス産業』をいい,『サービス産業』とは,『無形のサービスを生産・提供する産業の総称。商業・運輸業・金融業・観光業・修理業・興行業・教育産業など。第三次産業。サービス業』」(日本語大辞典,乙31)とされており,その意味内容ないし用語例として必ずしも一義的に解釈することが可能なほど明確な概念とまではいえないというべきである。
そうすると,本件において,被控訴人の営む歯科技工所の事業(本件事業)が,消費税法施行令57条5項にいう「製造業」又は「サービス業」のいずれに該当するかを判断するにあたっては,消費税法,特に消費税簡易課税制度の目的及び立法経緯,税負担の公平性,相当性等についても検討する必要がある。
(1) 消費税法の簡易課税制度等について
消費税は,税制全体としての負担の公平を高めるうえで,間接税が果たすべき役割を十分に発揮させ,従前の個別間接税制度が直面していた問題を根本的に解決するという見地から,平成元年4月から導入されたものである(乙18)。そして,消費税は,国内において事業者が行った資産の譲渡等に消費税を課す(消費税法4条1項)ものであり,「事業者」とは,個人事業者及び法人をいい(同法2条1項4号),「資産の譲渡等」ついては,事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう(同法2条1項8号)と定義されている。
ところで,消費税法は,税負担の累積を排除するため,売上げに係る消費税額から仕入れに係る消費税額を実額控除した残額を納税義務者が納付することによる制度(本則計算)を採用している一方,すべての課税事業者に本則計算による税額計算を求めることとした場合には,これらの者が,当該課税期間の仕入れについて課税とそれ以外のものに区分・記帳し,さらに,課税仕入れを課税売上げ・非課税売上げに対応させる等の事務を行うこととなり,これらの事務処理を行うためには,一定の事務処理能力が必要とされるが,そのような能力をすべての課税事業者に期待することは困難であることから,事業者の事務負担に配慮し,その制定当時において,中小事業者(適用上限額を課税売上高が5億円以下の事業者とする。)について,納税者の選択(事業者が所轄税務署長に簡易課税制度選択届出書を提出する。)により,いわゆる簡易課税制度(実額による控除の代わりに,売上げに係る消費税額を基礎とする金額に一定率を乗じて計算した金額を仕入れに係る消費税額とみなして控除を認める制度)を採用し,みなし仕入率として卸売業者90%,その他の事業者80%という2種類の率を法定していた〔制定時(昭和63年12月法律第108号)の消費税法37条,同法施行令55条ないし57条〕。そして,平成3年(法律第73号)に消費税法の一部改正(平成3年10月1日以後に適用)が行われ,簡易課税制度の適用限度額を5億円から4億円に引き下げるとともに,みなし仕入率について,事業者の仕入れの実態により適合させる趣旨で,事業者の営む事業の区分を4区分に細分化し,第一種事業(卸売業)が100分の90,第二種事業(小売業)が100分の80,第三種事業(農業,林業,漁業,鉱業,建設業,製造業,電気業・ガス業・熱供給業及び水道業,ただし,加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業を除く。)が100分の70,第四種事業(その他事業)が100分の60と改めた〔(消費税法施行令の一部を改正する政令(平成3年政令第201号)〕。その後,平成6年には,所得税法及び消費税法の一部を改正する法律(平成6年法律第109号,平成9年4月1日から施行)により,簡易課税制度の適用限度額が4億円から2億円に引き下げられ,平成8年度の税制改正〔消費税法施行令の一部を改正する政令(平成8年政令第86号),平成9年4月1日から施行〕により,簡易課税制度のみなし仕入率について,最新の仕入率の実態調査結果に基づく見直しが行われ,現行の第四種事業のうち,不動産業,運輸通信業及びサービス業を第五種事業とし,そのみなし仕入率を50%とした結果,第一種事業(卸売業)が100分の90,第二種事業(小売業)が100分の80,第三種事業(農業,林業,漁業,鉱業,建設業,製造業,電気業・ガス業・熱供給業及び水道業,ただし,第一種,第二種事業に該当するもの及び加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業を除く。)が100分の70,第四種事業(第一種,第二種,第三種,第五種事業以外の事業)が100分の60,第五種事業〔不動産業,運輸通信業,サービス業(飲食店業に該当するものを除く。),ただし,第一種ないし第三種事業に該当するものを除く。〕が100分の50とすることとされた。なお,平成15年度の税制改正〔所得税法等の一部を改正する法律(平成15年法律第8号)〕をするにあたり,簡易課税制度について,平成14年11月の政府税制調査会の税制改革答申において「これまで二度にわたり適用上限の引下げやみなし仕入率の改正が行われてきた。しかしながら,基本的にはすべての事業者に対して本則の計算方法による対応を求めるべきである。また,中小事業者の多くが納税額の損得を計算した上で適用している実態が認められる。こうしたことから,免税点制度の改正に伴い新たに課税事業者となる者の事務負担に配慮しつつ,簡易課税制度を原則廃止することが適当である。」との指摘がされ,消費税に対する国民の信頼性や制度の透明性を向上させる観点から,簡易課税制度については,事業者免税点制度の改正に伴い新たに課税事業者となる者の事業負担に配慮し,その適用上限を5000万円に引き下げて存置することとされた(消費税法37条1項)(乙17ないし20,24ないし26)。
(2) 消費税法に関連する通達等について
消費税法の一部を改正する法律(平成3年法律第73号),消費税法施行令の一部を改正する政令(平成3年政令第201号)及び消費税法施行規則の一部を改正する省令(平成3年大蔵省令第34号)の施行に伴う消費税の取扱いについて,みなし仕入率についての事業区分を4つに細分化したことなどに伴い,通達〔平成3年6月24日付間消2-29(例規),暫定的な取扱いを定めたもの〕において,「新施行令第57条第5項第3号(事業の種類)の規定により第三種事業に該当することとされている農業,林業,漁業,鉱業,建設業,製造業(製造小売業を含む。),電気業,ガス業,熱供給業及び水道業(以下「製造業等」という。)の範囲は,おおむね日本標準産業分類(総務庁)の大分類に掲げる分類を基準に判定する。」とし,さらに「なお,日本標準産業分類の大分類の区分では製造業等に該当することとなる事業であっても,他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業は,第一種事業又は第二種事業に該当し,また,加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業は,第四種事業に該当するのであるから留意する。」としている。そして,平成7年に制定された消費税法基本通達〔平成7年12月25日付課消2-25(例規)など〕13-2-4も,上記と同じ内容の定めをして,同様に取り扱うこととされた。
また,平成10年に一部が改正された消費税法基本通達〔平成10年3月31日付課消2-9(例規)など〕13-2-4では,事業区分が5つに分けられたことから,第三種事業及び第五種事業の範囲として,「令第57条第5項第3号(事業の種類)の規定により第三種事業に該当することとされている農業,林業,漁業,鉱業,建設業,製造業(製造小売業を含む。),電気業,ガス業,熱供給業及び水道業(以下「製造業等」という。)並びに同項第4号の規定により第五種事業に該当することとされている不動産業,運輸通信業及びサービス業(以下「サービス業等」という。)の範囲は,おおむね日本標準産業分類(総務庁)の大分類に掲げる分類を基礎として判定する。なお,日本標準産業分類の大分類の区分では製造業等又はサービス業等に該当することとなる事業であっても,他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業は,第一種事業又は第二種事業に該当するのであるから留意する。また,製造業等に該当する事業であっても,加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業は,第四種事業に該当するのであるから留意する。」とされている。そして,後記のとおり,平成14年3月に総務省の日本標準産業分類が改訂された(一部の事業をサービス業から分離した。)ため,消費税法基本通達が一部改正(平成14年9月25日付課消1-40など)され,上記部分に「この場合において,サービス業等とは,日本標準産業分類の大分類に掲げる不動産業,情報通信業,運輸業,飲食店・宿泊業(飲食店に該当するものを除く。),医療・福祉,教育・学習支援業,複合サービス事業及びサービス業(他に分類されないもの)をいうものとする。」を付加している。
(3) 日本標準産業分類について
日本標準産業分類は,統計法に基づく指定統計調査及び届出を要する統計調査の結果を産業別に表示する際の基本的事項を定めた統計基準として,事業所において社会的な分業として行われる財貨及びサービスの生産又は提供に係るすべての経済活動を分類するものであり,統計の正確性と客観性を保持し,統計の相互比較性と利用の向上を図ることを目的として,昭和24年10月に設定されたものであり,設定当時は,法令上の根拠を有していなかったが,「統計調査に用いる産業分類並びに疾病,傷害及び死因分類を定める政令」(昭和26年政令第127号)が昭和26年4月に公布され,同時に上記分類の第1回改訂が行われ,これにより,指定統計調査及び国,日本銀行等が行う届出統計調査の結果を産業別に表示する場合においては,日本標準産業分類を原則としてそのまま用いることが義務付けられたものである(乙5,6)。そして,日本標準産業分類は,第2章「日本標準産業分類一般原則」第1項「産業の定義」において,日本標準産業分類にいう産業を「事業所において社会的な分業として行われる財貨及びサービスの生産又は提供に係るすべての経済活動をいう。」と定義し,その分類は,事業所において行われる経済活動すなわち産業を,主として,①生産される財貨又は提供されるサービスの種類(用途,機能など),②財貨生産又はサービス提供の方法(設備,技術など),③原材料の種類及び性質,サービスの対象及び取り扱われるもの(商品など)の種類に着目して区分した上で体系的に配列している(前同)。
平成14年3月改訂前の日本標準産業分類によれば,歯科技工所は,大分類「Lサービス業」,中分類「88-医療業」に分類されていた(乙6)が,平成14年3月の改訂により,「Lサービス業」が,全産業の事業所数及び従業者数の約4分の1を占めており,各種の経済活動が混在していることから,産業の実態をより明確にするため,「Lサービス業」のうち,医療,福祉に関する分野については,介護福祉に係る新産業の出現・多様化等がみられ,産業規模も拡大してきていることから,Lサービス業から分離して,大分類を新設し,大分類「N医療,福祉」,中分類「73-医療業」,小分類番号736,細分類番号7361の「歯科技工所 歯科医師又は歯科技工士が業として特定人に対する歯科医療の用に供する補てつ物,充てん物又は矯正装置の作成,修理又は加工を行う事業所をいう。」に分類され,中分類「73-医療業」の総説において,「この中分類には,医師又は歯科医師等が患者に対して医業又は医業類似行為を行う事業所及びこれに直接関連するサービスを提供する事業所が分類される。」としている。
なお,日本標準産業分類の内容については,官報等で公表されている。
(4) 被控訴人の営む事業(本件事業)について
本件事業の具体的内容については,原判決「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」2のとおりであるから,これを引用する。
(5) 本件事業の事業区分について
本件事業は,上記のとおり,日本標準産業分類の事業区分によれば,平成14年3月の改訂前には大分類「Lサービス業」に分類されていたところ,上記改訂後には大分類「N医療,福祉」に分類されており,前記した消費税法基本通達に従えば,消費税法施行令57条5項4号ハ所定の「サービス業」に該当することになるところ,TKC経営指標(平成13年版)の資料(乙39)によれば,1企業当たり平均の課税仕入れ〔最大見込額,純売上高-(役員報酬+人件費+労務費+営業利益)〕及び構成比(課税仕入れ額の純売上高に占める割合)は,製造業が70.7%,歯科技工所が42%であることが認められ,消費税法施行令57条の定めでは,みなし仕入率は,「製造業」が第三種事業として100分の70,「サービス業」が第五種事業として100分の50とほぼ符号するものである。したがって,歯科技工所を営む事業者が,簡易課税制度の適用を利用する場合の税負担の公平性,相当性等の面からみて,上記「サービス業」に分類することに不合理性は認められない。
3 以上で検討したところを前提にして,本件事業が消費税法施行令57条5項所定の「サービス業」に該当するのか,「製造業」に該当するのかについて判断するに,消費税法の簡易課税制度が,納税事務の簡素化を目的としつつ,税負担の公平性の実現のために改正が重ねられてきた経緯,前記各消費税基本通達が,消費税法施行令における事業の範囲判定の基準として,いずれも日本標準産業分類を掲げているところ,同分類は,本来,統計上の分類の必要から定められたものではあるが,前記のとおり,日本における標準産業を体系的に分類しており,他にこれに代わり得る普遍的で合理的な産業分類基準は見当たらないことなどから簡易課税制度における事業の範囲の判定に当たり,同分類によることの合理性は否定できないこと,本件事業が前記のとおり,歯科医師の指示書に従って,歯科補てつ物を作成し,歯科医師に納品することを業務内容としており,歯科医療行為の一端を担う事業である性質を有すること,また,1企業当たり平均の課税仕入れ(最大見込額)及び構成比に照らしても,みなし仕入率を100分の50とすることには合理性があること及び税負担の公平性,相当性等をも考慮すると,本件事業は,消費税法施行令57条5項4号ハ所定の「第五種事業」中の「サービス業」に該当するものと判断するのが相当である。
なお,被控訴人は,義肢製作業が,医師の指示に従って義手や義足を製作して納品する事業であり,歯科技工と同様に資格を必要とし,医師の指示に従う必要があり,高度な専門知識,技能,技術が必要であって,医療行為の一環として行われるものであるところ,簡易課税制度における事業分類上,「製造業」とされており,歯科技工を「サービス業」とするのは,課税の公平を害すると主張するが,義肢装具士法によれば,「義肢」とは上肢若しくは下肢の全部又は一部に欠損がある者に装着して,その欠損を補てんし,又はその欠損により失われた機能を代替するための器具機械をいうとされているところ(2条1項),義肢装具士が医師の具体的な指示を受けて行う業務は,手術直後の義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の身体への適合させることであって(38条,平成11年12月22日法律第160号一部改正後のもの),義肢の製作については何らの医師の制限を受けるものではなく,義肢の製作業自体は,義肢装具士の資格の有無に左右されず,かつ,医師の指示も必要としないのであるから,その販売も医師のみに限らず,義肢を必要とする者へ直接販売できること(乙9)などからすれば,義肢の製作業が歯科技工所の行う医療行為に付随するサービス提供と同様に解することはできない。さらに,前記したとおり,歯科技工所において仕入率の実態等を考慮すれば,義肢製作業が「製造業」として「第三種事業」としてみなし仕入率が100分の70とされていることをもって,税負担の公平性を害するものとはいえず,被控訴人の上記主張は採用できない。
第4 結論
以上のとおり,被控訴人の本件各請求は理由がなく,これらをいずれも棄却すべきところ,これと結論を異にする原判決は不当であり,本件控訴は理由がある。
よって,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第1部
裁判長裁判官     田   中   由   子
裁判官     佐   藤   真   弘
裁判官     山   崎   秀   尚