hanrei @Wiki H18. 1.25 静岡地方裁判所 平成17年(わ)第638号 危険運転致死



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 本件は,被告人が,静岡県内の最高速度が40キロメートル毎時と指定された右方に緩やかに湾曲した道路において,進行を制御することが困難な時速145から155キロメートルという高速度で自車を走行させたことにより自車を対向車線に進出させ,同車線を進行してきた被害車両に激突させ,同車を横転炎上させて,同車に乗車していた3名を死亡させた危険運転致死の事案。
判 決 要 旨
                       被告人  甲
主     文
被告人を懲役11年に処する。
未決勾留日数中90日をその刑に算入する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理     由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成17年8月28日午前11時22分ころ,普通乗用自動車を運転し,静岡県牧之原市落居1097番地の2先の最高速度が40キロメートル毎時と指定されている右方に緩やかに湾曲した道路を進行するに当たり,その進行を制御することが困難な時速約145から155キロメートルの高速度で自車を走行させたことにより,自車を道路の湾曲に応じて進行させることができず,道路左側のガードレールに自車左後部を衝突させた上,右斜め前方へ暴走させて対向車線に進出させ,折から対向直進してきたA(当時60歳)運転の普通乗用自動車前部に自車前部を激突させて,同人運転車両を横転炎上させ,よって,そのころ,同所において,同人を焼死させたほか,同車後部座席に乗車していたB(当時86歳)を外傷性ショックにより死
亡させ,さらに,同車後部座席に乗車していたC(当時30歳)に外傷性クモ膜下出血等の傷害を負わせ,同日午後2時22分ころ,同県a市bc番地所在のD総合病院において,同人を上記傷害に基づく外傷性ショックにより死亡させたものである。
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,最高速度が40キロメートル毎時と指定された右方に緩やかに湾曲した道路において,進行を制御することが困難な高速度で自車を走行させたことにより自車を対向車線に進出させ,同車線を進行してきた被害車両に激突させ,同車を横転炎上させて,同車に乗車していた3名を死亡させたという危険運転致死の事案である。
 本件事故現場は,最高速度が上記のとおり制限されている湾曲した道路であるのに,被告人は,制限速度を100キロメートル毎時以上も超過する約145から155キロメートル毎時という極めて危険な高速度で自車を走行させたものであり,あまりに無謀,悪質な運転行為というほかない。被告人がこのような運転をした経緯,動機についてみると,被告人は,高性能の限定仕様車を所有し,これまでも,およそ週1回の間隔で本件事故現場を走行する際,制限速度を大幅に上回る速度を出していたというものであるところ,更に,本件事故当時は,事故現場手前の直線道路で,「段付き感」すなわち,時速100キロメートル以上に加速した際,たまに発生する運転席下からのドーンという衝撃と音の症状を確認しようと思い付き,普段以上の高速度を
出して,そのまま,本件事故現場に至ったというのであって,被告人の交通法規軽視の態度は顕著であるとともに,その動機は自己中心的なもので,酌量の余地は全くない。被害車両は,自車線を普通に進行中,突然極端な高速度で向かってくる被告人車両に激突されて横転し,衝突地点から40メートル近くも押し戻されて炎上し,乗車していた一家3代にわたる被害者ら3名全員の尊い命が奪われるという最悪の結果が生じている。何らの落ち度もないのに,突如として,このような無惨な形で生涯を閉じることを余儀なくされた被害者らの無念さは,察するに余りあり,遺族らの悲しみも極めて大きい。結果は余りに重大で悲惨であり,遺族らの処罰感情が厳しいのも当然といえる。被告人は自動車会社に長年勤務しており,一般人以上に交通法規を遵守
し安全運転を心がけるべき立場にいたといえるのであり,この点の犯情も悪い。これらによると,被告人の刑事責任は相当に重いというほかない。
 しかしながら,他方で,被告人は,本件犯行を素直に認め,当公判廷においても深く反省悔悟の情を示すとともに,今後の人生を贖罪に捧げると述べていること,本件事故直後,真摯な救護活動を行っていること,被告人の加入する対人無制限の任意保険により,遺族らに対し,相応の賠償がなされる見込みがあること,被告人の母や弟が,被害者らの通夜や葬儀に参列し,香典として計○○○○円を包み,その後も何度も謝罪とお参りに遺族宅などを訪れていること,被告人には前科がないこと,被告人の弟が公判に出廷し,被告人のために証言していることなど,被告人にとって酌むべき事情もある。
 そこで,以上の事情を総合考慮し,被告人に対しては,主文の刑を相当と認める。
(求刑 懲役13年)
  平成18年1月25日
    静岡地方裁判所刑事第1部


裁判長裁判官    竹  花  俊  德

裁判官   友  重  雅  裕

裁判官   荒  井  智  也