hanrei @Wiki H17. 7. 7 東京高等裁判所 平成17年(ネ)第203号 損害賠償請求控訴事件



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主          文
1 原判決中被控訴人株式会社新潮社,同A及び同Bに対する請求に係る部分を次のとおり変更する。
 (1) 被控訴人株式会社新潮社,同A及び同Bは,控訴人に対し,連帯して,300万円及びこれに対する平成15年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 (2) 控訴人の被控訴人株式会社新潮社,同A及び同Bに対するその余の請求をいずれも棄却する。
2 控訴人が当審において拡張した請求及び被控訴人Cに対する本件控訴をいずれも棄却する。
3(1) 控訴人と被控訴人株式会社新潮社,同A及び同Bとの間で生じた訴訟費用(当審において拡張した請求について生じた分を除く。)は,第1,2審を通じて,これを20分し,その1を被控訴人株式会社新潮社,同A及び同Bの負担とし,その余を控訴人の負担とする。
 (2) 控訴人が当審において拡張した請求について生じた費用及び被控訴人Cに対する本件控訴費用は,控訴人の負担とする。
4 この判決の第1項(1)は,仮に執行することができる。
      事実及び理由
第1 控訴人の求めた裁判
 1 控訴の趣旨
  (1) 原判決を取り消す。
  (2) 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して,1億円及びこれに対する平成15年11月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  (3) 被控訴人らは,控訴人に対し,各朝刊日本経済新聞12面下部広告欄,朝日新聞4面下部広告欄,毎日新聞4面下部広告欄,読売新聞6面下部広告欄,産経新聞6面下部広告欄,東京新聞3面下部広告欄,スポーツ報知2面下部広告欄,スポーツニッポン2面下部広告欄,サンケイスポーツ2面下部広告欄,東京スポーツ1面下部広告欄,北海道新聞10面下部広告欄,東奥日報3面下部広告欄,河北新報7面下部広告欄,福島民友3面下部広告欄,新潟日報9面下部広告欄,北国新聞8面下部広告欄,信濃毎日新聞4面下部広告欄,静岡新聞3面下部広告欄,中日新聞5面下部広告欄,京都新聞9面下部広告欄,神戸新聞3面下部広告欄,山陽新聞9面下部広告欄,中国新聞4面下部広告欄,愛媛新聞19面下部広告欄,四国新聞4面下部広告欄,大分合同新聞9面下部広告欄,熊本日日新聞2面下部広告欄,西日本新聞6面下部広告欄,南日本新聞3面下部広告欄に,別紙目録1記載の謝罪広告を同目録2記載の形式で各1回掲載せよ。
  (4) 被控訴人らは,控訴人に対し,JR中央線,JR山手線,JR京浜東北線,東京メトロ銀座線,東京メトロ丸ノ内線,小田急線,京成電鉄,大阪地下鉄,名古屋地下鉄,札幌地下鉄,福岡地下鉄電車内の中づり広告に,別紙目録3記載の謝罪広告を同目録4記載の形式で各1回掲載せよ。
 2 当審において拡張した請求の趣旨
 被控訴人らは,控訴人に対し,株式会社新潮社が発行する週刊誌「週刊新潮」に,別紙目録5記載の謝罪広告を同目録6記載の形式で1回掲載し,同誌目次頁には,謝罪広告が掲載されている頁の案内を縦16センチメートル,横2.5センチメートルの紙面の大きさ,案内が掲載し得る範囲で最大限の活字の大きさで標記せよ。
第2 事案の概要
 1 本件は,衆議院議員である控訴人が,被控訴人株式会社新潮社(以下「被控訴人会社」という。)の発行する週刊誌「週刊新潮」平成15年11月27日号(以下「本件雑誌」という。)に掲載された原判決別紙2記載の記事(以下「本件記事」という。)と本件記事に関する新聞広告及び電車中づり広告の見出しの記載によって名誉を毀損されたと主張して,不法行為に基づき,被控訴人会社,本件雑誌の編集長である被控訴人A,本件記事を執筆した被控訴人B及び被控訴人会社の記者である被控訴人Cに対し,損害賠償及び謝罪広告の掲載を求める事案である。
 2 原判決は,①本件記事については,控訴人の社会的評価を低下させるものではあるが,衆議院議員である控訴人の政治資金及び政治的言動に関する事実を摘示するものであるから,本件記事の発表行為は,公共の利害に関する事実に係り,専ら公益を図る目的に出たものと認めることができるとした上,これが真実であるとの証明がされているとはいえないものの,被控訴人らには,本件記事の掲載内容を真実であると信じたことについて相当な理由があると認められるから,本件記事の発表行為について被控訴人らの不法行為責任は成立しないと判断し,また,②本件記事に関する新聞広告及び電車中づり広告の見出しの記載についても,控訴人に対する不法行為を構成するとはいえないと判断して,控訴人の請求をいずれも棄却した。
 3 控訴人は,これを不服として控訴を申し立てるとともに,当審において,上記第1の2の謝罪広告請求を追加して請求している。
 4 前提事実及び争点(争点についての当事者双方の主張を含む。)は,次のとおり訂正するほかは,原判決「事実及び理由」欄「第2 事案の概要」の1及び2(原判決3頁9行目から14頁3行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
  (1) 原判決8頁9行目の「違法性が阻却される事由」を「違法性が阻却される事由又は故意もしくは過失が阻却される事由」に改める。
  (2) 原判決13頁26行目の「前記第1の2(1)及び(2)に記載された内容の謝罪広告」を「前記第1の1(3)及び(4)並びに2に記載された内容の謝罪広告」に改める。
第3 当裁判所の判断
 1 争点①(本件記事が控訴人の社会的評価を低下させる表現といえるか)について
原判決「事実及び理由」欄「第3 争点に対する判断」の1(原判決14頁5行目から17頁14行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
 2 争点②(違法性阻却事由又は故意もしくは過失の阻却事由の存否)について
  (1) 前記前提事実に加え,証拠(甲1,甲2の1ないし7,甲3ないし19,甲23,甲26の1,2,乙1ないし8,乙9の1ないし3,乙11ないし14,乙15号証の1ないし4,乙16ないし25,乙26の1ないし9,乙27,乙28の1,2,乙29,30,控訴人,被控訴人B,被控訴人C)及び弁論の全趣旨によれば,本件の当事者等,控訴人とD及びぱちんこ業界との関係,控訴人と被控訴人Bとの関係,控訴人とEとの関係並びに「J会」及び自民党第17区支部における政治資金収支報告書の記載について,原判決17頁22行目から18頁22行目まで及び23頁11行目から25頁21行目までに記載の事実を認めることができる。
  (2) 民事上の不法行為たる名誉毀損については,その行為が公共の利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的に出た場合には,摘示された事実がその重要な部分について真実であることが証明されたときは,同行為の違法性が阻却され,不法行為は成立しないものと解するのが相当であり,また,同事実が証明されなくても,その行為者においてその事実を真実であると信ずるについて相当の理由があるときには,その行為者には故意又は過失がなく,結局,不法行為が成立しないものと解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第815号同41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁,最高裁昭和56年(オ)第25号同58年10月20日第一小法廷判決・裁判集民事140号177頁,平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁参照)。
  (3) 本件記事は,衆議院議員である控訴人の政治資金及び政治的言動に関する事実を摘示するものであるから,本件記事の発表行為は,公共の利害に関する事実といえる。
 そして,民主的政治制度を採用する我が国においては,公職にある者,とりわけ国民の選挙により選出される議員等の能力,資質及び人格的廉潔性等を明らかにし,公職者としての適格性を国民が議論・検討しうることが,民主的政治制度を維持する前提として不可欠であること,本件記事の内容,被控訴人らが出版に携わる者としての地位に加えて,被控訴人らが,控訴人に対し,個人的な悪意等を抱いて本件記事を執筆・掲載した事実は認められないことから,本件記事の発表行為は,専ら公益を図る目的であると認めることができる。
  (4) そこで,以下,本件記事のうち,前記1で認定・説示した控訴人の社会的評価を低下させる事実摘示部分が真実であるかどうか,真実でなかったとしても,それが真実であると信ずるについて相当の理由があったかどうかについて検討することとする。
   ア まず,本件記事群1(本件記事1ないし3)及び2(本件記事4ないし7)のうち,平成12年(2000年)春の第42回総選挙の際,Dが,ぱちんこ業者(日本国籍を有しないものを含む。)から4000万円の政治献金を集め,4000万円の政治献金を控訴人に渡し,また,第42回総選挙後の同年7月17日,星ヶ岡で開かれた本件会合に出席し,ぱちんこ業者に政治資金の拠出等による選挙協力に対し謝辞を述べ,さらに,約250万円ほどの金員が控訴人の下に渡ったとの事実摘示部分が真実であったかどうか,又は,真実であると信ずるについて相当の理由があったかどうかについて検討する。
   (ア) 証拠(乙1ないし8,乙9の1ないし3,被控訴人B,被控訴人C)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
    a 被控訴人Bは,従前から,控訴人に関する取材活動を行っていたが,道路公団民営化推進委員会の取材が一段落した平成15年4月ころ,控訴人に関する取材を再開し,控訴人に関する取材を続けた後,同年6月ころ,旧知であった被控訴人Cに連絡をし,控訴人に関する取材記事を被控訴人会社の発行する週刊新潮に掲載することが可能かどうか検討してほしい旨告げた。被控訴人Cは,上記事項につき,被控訴人Aの判断を仰いだところ,被控訴人Aから週刊新潮に被控訴人Bの記載した記事を掲載することには問題がない旨の回答を得たことから,被控訴人Bに対し,被控訴人Bの執筆する控訴人に関する記事を週刊新潮に掲載することが可能である旨の回答を告げた。上記回答を受けた被控訴人Bは,控訴人に関する記事のための取材を継続し,被控訴人Cは,被控訴人Bの取材及び記事掲載に関するサポートを行うことにした。
    b 被控訴人Bは,平成15年6月ないし7月ころ,取材の過程で,Dが会長を務めていた同友会の名簿(乙5)を関係者から入手した。同友会のメンバーの中には,日本国籍を有しないものが複数存在していた。
    c 被控訴人Bは,一般客を装って,星ヶ岡に電話をかけ,星ヶ岡における料理のコースの種類,料理の値段,個室の有無及び通常の顧客が支払う金額等の情報を聴取した。
    d 被控訴人Cは,平成15年8月ころ,総務省に赴き,平成11年から同13年の「J会」の政治資金収支報告書を確認したが,4000万円に関する記載は存在しなかった。また,被控訴人Cは,同じころ,東京都庁に赴き,控訴人が支部長を務める「自由民主党東京都第17選挙区支部」の収支報告書を確認したが,4000万円に関する記載は存在しなかった。
    e 被控訴人Cは,被控訴人Bからの指示によって,平成15年11月上旬ころ,被控訴人Bが取材の過程で入手した前記名簿(乙5)に掲載されている同友会のメンバーのうち,これまでの取材過程から資金提供又は本件会合に出席した業者として名称を把握している業者及び無関係なぱちんこ業者を加えた約30社に対して,第42回総選挙の際に,控訴人に対し資金提供をしたか否かの問い合わせをファックス又は電話で行った。
   (イ) また,本件記事には,控訴人とDとの関係に関する記載として,控訴人とDとの交流関係は,控訴人が警察官僚時代にぱちんこカード導入に尽力したことから始まったこと,控訴人が初当選を果たした平成8年(1996年)の衆議院議員総選挙の際からDが控訴人を支持していたこと,Dが開催していた「アジア経済フォーラム」という勉強会に控訴人が多数回参加していた旨の記載が存在するところ,控訴人の供述によれば,控訴人とDの関係については,前記2(1)記載の事実を認めることができるから,本件記事の上記記載内容とおおむね符合しているといえる。
   (ウ) 上記(ア)及び(イ)の事実によれば,本件記事群1及び2の外形的事実については,かなりの部分について相当程度の裏付けがあることが認められる。
   (エ) 次に,本件記事群1及び2の事実摘示部分のうち,Dが,ぱちんこ業者(日本国籍を有しないものを含む。)から4000万円の政治献金を集めた事実,Dが,当該現金を控訴人に渡した事実及び本件会合の後,約250万円が控訴人に渡ったとの名誉毀損の核心部分となる諸事実については,次のとおり,被控訴人B及び同C作成の各陳述書(乙第1,第2号証)の記載並びに被控訴人B及び同Cの供述(以下「被控訴人B及び同Cの供述等」という。)にこれに沿ったものがある。
    a 被控訴人Bは,控訴人に関する取材の過程で,3名のぱちんこ業者から,当該3名のぱちんこ業者が,平成12年に行われた第42回総選挙の際,Dに対し,現金を渡したとの情報を入手し,そして,数名のぱちんこ業者から,Dは,第42回総選挙の際,ぱちんこ業者十数社から各自200ないし300万円,合計で約4000万円の資金を集め,控訴人に対し,当該現金を渡したが,控訴人が,当該政治献金を控訴人の政治資金収支報告書に記載していないという趣旨の情報を入手した。
    b また,被控訴人Bは,少なくとも本件会合に参加したという3名のぱちんこ業者から第42回総選挙終了後の平成12年7月17日午後5時ころ,控訴人と資金提供を行ったぱちんこ業者約15名が,星ヶ岡に集まったという情報を入手した。
    c さらに,被控訴人Bは,平成14年ころ,同友会は分裂したが,同友会から離れた一部のぱちんこ業者等に対して,Dと親戚関係にある株式会社グリフィンのFが,第42回総選挙の際に控訴人のために提供した資金を返還するとの連絡を行い,実際,一部のぱちんこ業者には拠出した金員が返還されているという情報を入手した。
    d 被控訴人Bは,本件会合について,①本件会合が行われた個室は,玄関から入って左側の方のフロントを抜けた場所にあること,②本件会合の際,使用されたテーブルは,丸いテーブルであり,当日は,当該テーブル2つがくっつけて並べられていたこと,③テーブルの上座に控訴人が座り,その隣にDが着席したこと,④入り口の方に同友会の事務局員であるGが座っており,会費を集めて,20万円の領収書を発行していたことの情報を得た。
    e 被控訴人Cが,上記のとおり,ファックス又は電話を行った約30社のうち,約15社から回答があり,そのほとんどは,上記事実の存在を否定するもの,ないしは「記憶にない。」という趣旨の回答であったが,1社からは,電話で資金提供及び本件会合に出席したことがあるとの回答を得たため,この者に対する取材を行ったところ,被控訴人Bが聴取した前記a記載の内容に符合する証言が得られた。
   (オ) しかしながら,被被控訴人B及び同Cの供述等は,上記のとおり,その内容が詳細であることに加えて,具体的かつ迫真性に満ちたものであって,相当程度の情報源からの取材に基づくものであることを窺わせるものであるといえるものの,それが真実であることについては,その具体的な情報の入手先は一切明らかにされておらず,したがって,控訴人からの反証の機会も与えられていない状況にあり,結局,これを裏付けるに足りる証拠は提出されていない。
 したがって,名誉毀損の核心部分となる諸事実については,真実であるとの証明があるとはいえない。
   (カ) 次に相当性の有無についてみるに,被控訴人B及び同Cの供述等は,上記のとおり,その具体的な情報の入手先が一切明らかにされていないから,裁判所に提出された他の証拠によって相当性の有無を判断せざるを得ないところ,同被控訴人らがどのような取材によって,本件記事群1及び2の事実摘示部分を真実であると判断したのかも明らかにされておらず,結局,その判断過程が合理的根拠に基づいていたことを裏付けるに足りる証拠はないから,上記事実が真実であると信ずるについて相当の理由があったものと認めることはできないといわざるを得ない。
   (キ) ところで,被控訴人らが,取材源を具体的に明らかにしないのは,報道機関として取材源秘匿の要請があることによるものであり,そのこと自体は民事訴訟においても尊重されるべきである。しかしながら,そのことは取材源についての釈明や証言の拒絶等が許容されるという範囲にとどまらざるを得ないのであつて,取材側が主張,立証すべき事実について,相手方当事者の不利益において,上記主張,立証の程度を緩和し,取材内容等について何ら明らかにすることなく,真実性や真実であると信じたことの相当性についての立証責任を免れ得るとすることは,控訴人の反証の機会を奪うに等しく許されないといわざるを得ない。
 また,被控訴人らは,当審において,上記名誉毀損の核心部分となる諸事実を立証する目的で,星ヶ岡での本件会合に出席した者に対する調査嘱託の申立てをしたが,調査嘱託が証拠調べの方法として認められる根拠は,証拠方法として規律される必要のない程度の公正さを有する者で,その報告作成過程においても過誤のないことを期待される者について,証人尋問に代えて簡易迅速な証拠調べを行おうとすることにあるものであるところ,上記調査嘱託事項は,当事者の反対尋問権が保障されるべき内容のものであり,かつ,その調査対象は,報告者が主観を交えるおそれのない客観的な事項であって,手元にある資料から容易に結果の得られるものに限られるべきであるところ,上記調査嘱託事項は,これにも該当しないものであるから,当裁判所は,これを却下した次第である。
   (ク) なお,証拠(乙1ないし8,控訴人,被控訴人B,被控訴人C)によれば,被控訴人B及び同Cは,本件記事を掲載する前に本件の一方の当事者であるDに対し,取材を試みたが,何らの回答を得ることができなかったこと,また,控訴人に対しても取材を試みているが,控訴人は,被控訴人B及び被控訴人Cの取材要請を拒絶していたことが認められるが,このことだけで,他の裏付けなしに,上記記事が真実であることや相当性があることが根拠づけられるということもできない。
   イ 次に,本件記事群4(本件記事11及び12)について,Dが,区議や都議に対して現金を供与するといった違法・不適切な選挙活動を行った結果,控訴人が平成8年の衆議院議員選挙に初当選したとの事実摘示部分が真実であったかどうか,又は,真実であると信ずるについて相当の理由があったかどうかについて検討する。
   (ア) 本件記事群4の事実摘示部分のうち,上記2(1)のとおり,控訴人とDとが親密な関係にあり,特に,平成8年の衆議院議員選挙の際,Dから,控訴人に対し,選挙協力の申出があった事実が認められるほか,名誉毀損の核心部分となる諸事実については,被控訴人B及び同Cは,上記ア(エ)に記載したものとともに,Dの秘書が,控訴人の選挙を応援するための資金として,区議に10万円,都議に100万円を渡したという情報を現職の葛飾区議及び都議,元職の都議及び区議の4名から入手した旨の被控訴人B及び同Cの供述等にこれに沿った記載等がある。
   (イ) しかしながら,上記被控訴人B及び同Cの供述等は,それが真実であることについて,その具体的な情報の入手先は一切明らかにされておらず,したがって,控訴人からの反証の機会も与えられていない状況にあり,結局,これを裏付けるに足りる証拠は提出されていないものであって,他に上記名誉毀損の核心部分となる諸事実が真実であることを裏付ける証拠は提出されていないから,これが真実であるとの証明があるとはいえない。
   (ウ) また,被被控訴人B及び同Cの供述等は,上記のとおり,その具体的な情報の入手先が一切明らかにされていないから,裁判所に提出された他の証拠によって相当性の有無を判断せざるを得ないところ,同被控訴人らがどのような取材によって,本件記事群4の名誉毀損の核心部分となる諸事実を真実であると判断したのかも明らかにされておらず,結局,その判断過程が合理的根拠に基づいていたことを裏付けるに足りる証拠はないから,上記事実が真実であると信ずるについて相当の理由があったものと認めることはできないといわざるを得ない。
   ウ さらに,本件記事13について,控訴人が,Eに対し,偽りごとを述べて,自らの選挙区に連れていった結果,Eから激怒されたとの事実摘示部分が真実であったかどうか,又は,真実であると信ずるについて相当の理由があったかどうかについて検討する。
   (ア) 本件記事13の事実摘示部分のうち,外形的事実については,かなりの部分について相当程度の裏付けがあることが認められるものの,名誉毀損の核心部分となる諸事実については,被控訴人B及び同Cは,上記ア(エ)に記載したものとともに,被控訴人Bにおいて,控訴人が,Eに対し,Eの母親の知人が葛飾区にいると告げて,Eを自らの選挙区である葛飾区に連れて行き,Eが,控訴人の言動に不信感を抱き,控訴人に会いたくない旨の発言を行ったとの情報を,「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟」(いわゆる新拉致議連)所属の国会議員と「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(いわゆる救う会)の関係者の2名から入手した旨の被控訴人Bの供述等にこれに沿った記載等がある。
   (イ) しかしながら,上記被控訴人B及び同Cの供述等は,それが真実であることについて,その具体的な情報の入手先は一切明らかにされておらず,したがって,控訴人からの反証の機会も与えられていない状況にあり,結局,これを裏付けるに足りる証拠は提出されていないものであって,他に上記名誉毀損の核心部分となる諸事実が真実であることを裏付ける証拠は提出されていないから,これが真実であるとの証明があるとはいえない。
   (ウ) また,被被控訴人B及び同Cの供述等は,上記のとおり,その具体的な情報の入手先が一切明らかにされていないから,裁判所に提出された他の証拠によって相当性の有無を判断せざるを得ないところ,同被控訴人らがどのような取材によって,本件記事13の名誉毀損の核心部分となる諸事実を真実であると判断したのかも明らかにされておらず,結局,その判断過程が合理的根拠に基づいていたことを裏付けるに足りる証拠はないから,上記事実が真実であると信ずるについて相当の理由があったものと認めることはできないといわざるを得ない。
   (エ) なお,E作成のものと思われる手紙(乙31の1)及びH作成の「拉致議員連盟の先生方へ」と題する書面(乙32)には,Eが控訴人の地元の柴又に招待された際には,母親の知人ではなく,母親の友人の妹がいたにすぎなかったこと,Eがマスコミの取材等で嫌な思いをした旨の記載があるが,Eが控訴人に対して激怒したとの事実までは窺われず,また,上記新拉致議連所属の国会議員からの情報の裏付けも示されていないのであるから,上記判断を左右するものとはいえない。
   エ 被控訴人らの責任について
 以上によれば,被控訴人Bは,週刊新潮に掲載することを前提に本件記事を執筆し,被控訴人会社の発行した週刊新潮で本件記事を発表した行為について,民法第709条に基づき,控訴人に対する不法行為責任があることが認められる。
 また,被控訴人Aは,上記のとおり,「週刊新潮」の編集責任者兼発行人たる編集長であり,被控訴人Bに対し,その執筆する控訴人に関する取材記事を週刊新潮に掲載することには問題がない旨の回答を被控訴人Cを通じて与えたことを始め,週刊新潮の編集長として本件記事に目を通し,必要な指示を与える立場にあり,本件記事にも目を通しているものと認められ,本件記事の掲載された雑誌の発行に実質的に関わったものであるから,被控訴人Aについても,民法第709条に基づき,不法行為責任がある。
 さらに,被控訴人会社については,書籍及び雑誌の出版等を業とする会社であり,週刊誌「週刊新潮」を発行しているところ,上記のとおり,被控訴人Aにおいて,本件記事の掲載された本件雑誌を発行し,被控訴人会社の事業の執行について控訴人に損害を加えたものであるから,被控訴人会社は,民法第715条第1項による使用者責任を負う。
 そして,被控訴人B,同A及び被控訴人会社は,共同不法行為者としての責任がある。
 ただし,被控訴人Cについては,被控訴人会社の週刊新潮の記者として,被控訴人Bの取材及び記事掲載に関するサポートを行い,本件記事の取材に関わるなどして本件記事の掲載に関与したことが認められるが,本件全証拠によるも,具体的な本件記事の内容及び発表に実質的な決定権をもって関わったと認めるに足りないから,不法行為責任を負うものとはいえない。
 3 争点③(本件中づり広告及び本件新聞広告が控訴人の社会的評価を低下させる表現といえるかどうか)について
  (1) 一般に雑誌に関する中づり広告及び新聞広告は,雑誌に掲載された記事の内容を簡略かつ端的に表示したものであり,中づり広告及び新聞広告に記載された見出しの表記は,記事本文を広く大衆に閲読してもらうため,広告閲覧者の興味・関心を引くように省略,誇張及び脚色される傾向にあることが一般人に十分理解されているといえるものの,本件においては,前記2で説示したとおり,本件記事の掲載自体が,控訴人に対する不法行為を構成するものであるところ,本件中づり広告には,「パチンコ業者から『I』代議士に渡った『4000万円』 拉致問題で名を売る一方で,朝鮮系業者からも『裏献金』を受け取っていたトンデモ政治家の仮面を剥ぐ!」などと,青地に白抜きされた文字によって,大きく記載されていること,また,本件新聞広告にも,同様の内容が記載されていることに照らすと,これらを一般通常人が眺めれば,控訴人が「裏献金」という不正な金員を秘密裏に受領していた「トンデモナイ政治家」であるという印象を抱かせるものといえるから,本件中づり広告及び本件新聞広告の掲載は,控訴人の社会的評価を低下させるものと認められる。
  (2) そして,本件中づり広告及び本件新聞広告の掲載は,前記2(3)で説示した本件記事の発表行為と同様に,公共の利害に関する事実について,専ら公益を図る目的であると認めることができるものの,その摘示した事実につき,真実であるとの証明があるとはいえず,かつ,真実であると信ずるについて相当の理由があったものと認めるに足りないことは,上記2(4)で説示したとおりである。
  (3) 証拠(乙1ないし8,被控訴人B,被控訴人C)及び弁論の全趣旨によれば,本件中づり広告及び本件新聞広告は,本件記事の内容をもとに編集部で作成されること,その内容については,執筆者である被控訴人Bに対しても最終的に確認を取っていることが認められるから,被控訴人Aは,本件中づり広告及び本件新聞広告を作成した「週刊新潮」の編集責任者兼発行人たる編集長として,また,被控訴人Bは,本件記事の執筆者であるとともに,本件中づり広告及び本件新聞広告の内容について最終的に確認し,承認を与えたものとして,さらに,被控訴人会社は,その被用者である被控訴人Aが被控訴人会社の事業の執行について控訴人に損害を加えたものとして,共同不法行為が成立するものというべきである。
 4 争点④(損害賠償額)について
 控訴人は,被控訴人会社,同A及び同Bらの名誉毀損行為によって,精神的損害を被っているところ,控訴人が現職の衆議院議員であること,本件記事,本件中づり広告及び本件新聞広告の内容に加え,本件においては謝罪文の掲載までは命じないこと等を総合考慮すると,本件名誉毀損により控訴人が受けた精神的損害を慰謝するには300万円をもって相当と認める。
 5 争点⑤(謝罪広告の適否)について
 控訴人は,損害賠償のほか,名誉回復処分としての謝罪広告を請求している(民法723条)。
 しかしながら,控訴人が本件記事,本件中づり広告及び本件新聞広告によって被った社会的評価の低下の程度,上記金額の損害賠償を認容していることに加え,本件記事の内容は,控訴人が謝罪広告の内容として求めているように,ほとんどが事実無根かつねつ造であるとまで認められるものではなく,前記のとおり,相当程度の情報源からの取材に基づくものであることは窺われるものの,その具体的な情報の入手先は一切明らかにされていないことから,摘示さた事実が真実であること及びそう信ずるについて相当の理由があることについて,これを裏付けるに足りないというものにすぎないこと,控訴人は,被控訴人B及び同Cから,取材の申込みを受けながら,その取材要請を拒絶して本件記事に対する釈明を何らしようとしていなかったこと,また,本件中づり広告及び本件新聞広告については,一定程度の事実摘示がされてはいるものの,その内容は抽象的なものにとどまるものである上,元々中づり広告及び新聞広告については,前記のとおり,記事本文を広く大衆に閲読してもらうため,広告閲覧者の興味・関心を引くように省略,誇張及び脚色される傾向にあることは一般人に十分理解されているといえるものであること等の事実を考慮すると,控訴人の被った損害を回復するためには,慰謝料の支払をもってすれば足り,謝罪広告の掲載を命ずるまでの必要はないものというべきである。
 6 結論
 以上の次第で,控訴人の本件請求は,被控訴人会社,同A及び同Bに対し,連帯して,300万円及びこれに対する不法行為の後で本件訴えを提起した日である平成15年11月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余はいずれも理由がない。
 よって,控訴人の当審において拡張した請求及び被控訴人Cに対する本件控訴は理由がないから,これを棄却し,控訴人の被控訴人会社,同A及び同Bに対する本件控訴は一部理由があり,これと異なる原判決は相当でないから,原判決を上記判断と抵触する限度で変更し,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第21民事部


裁判長裁判官 浜   野       惺



裁判官 今   泉   秀   和



裁判官 長 久 保   尚   善