H18. 1.19 名古屋高等裁判所 平成17年(行コ)第34号 A株式会社の延滞金に係る住民訴訟控訴事件

被控訴人が本件延滞金の徴収を怠っていることは,徴収権の裁量を逸脱するもので違法であるとした事例


主        文
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が,A株式会社に対して,不動産取得税(課税対象物件 原判決別紙1物件目録記載1(4)ないし(10),2ないし6の建物,納期限 平成元年12月15日,税額 3297万3700円)の延滞金の徴収を怠っていることが違法であることを確認する。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
4 ただし,原判決別紙1物件目録記載1(9)の建物の床面積(2階部分)につき,「520.50㎡」とあるのを「5207.50㎡」と改める。
事 実 及 び 理 由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
 主文第1項ないし第3項と同旨
2 被控訴人
(1) 本件控訴を棄却する。
(2) 控訴費用は,控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は,A株式会社(以下「A」という。)が原判決別紙1物件目録記載1(4)ないし(10),2ないし6の建物(本件課税対象物件)を取得したことによる不動産取得税3297万3700円を滞納した(法定納期限は平成元年12月15日,その後,平成3年から平成12年3月24日までに分割により本税は完納した。)が,その延滞金2759万1200円(本件延滞金,平成12年3月24日確定)について,被控訴人が違法に徴収を怠った(滞納処分を猶予する措置をとれないのに,事実上の徴収猶予をしたこと,本税と延滞金が一括納付できなければ,延滞金を支払うべきであるのに,本税に充当したこと,地方税法15条1項の徴収猶予の要件も満たさないこと,仮に徴収猶予をするとしても,同法16条の担保を徴求していないこと,徴収猶予の合理的な理由がなく,裁量の範囲を逸脱したことなど)として,三重県の住民である控訴人が,被控訴人に対し,地方自治法242条の2第1項3号に基づき,本件延滞金の徴収を怠っていることが違法であることの確認を,Aに対し,同法242条の2第1項4号(平成14年法律第4号による改正前のもの,以下同じ)に基づき,被控訴人に代位して,被控訴人への本件延滞金残額の支払をそれぞれ求めた(住民訴訟)ところ,被控訴人らは,本件延滞金について,地方税法15条1項に基づく徴収猶予を行ったわけではなく,Aの資力等を考慮して,本件延滞金の徴収につき分割納付の方法をとっているもので,徴収権者としての裁量を逸脱するものではないと主張して争った事案である。
原審は,控訴人の本件請求のうち,Aに対する請求については,地方自治法242条の2第1項4号のいずれの訴訟類型にも該当せず,不適法であるとして却下し,被控訴人に対する請求については,公金の徴収権者には,滞納者に対して滞納処分を行う対象や時期について相当な範囲での裁量が与えられているところ,Aの預金債権等の差押えをしても効果がないことは明らかであることなどから,本件延滞金の徴収について裁量の逸脱はなく,被控訴人が滞納処分をしないことをもって,本件延滞金の徴収を違法に怠っているとは解されないとして,これを棄却したため,控訴人が,被控訴人に対する本件請求部分につき,これを不服として控訴した。
2 争いのない事実
(1) 控訴人は,三重県の住民である。
(2) 被控訴人は,三重県知事から委任を受けて,県税,延滞税等の賦課徴収に関する事務を行う権限を有する。
(3) Aは,本件課税対象物件を取得し,これに関する不動産取得税3297万3700円(本件不動産取得税,法定納期限が平成元年12月15日)を滞納し,平成3年から平成11年まで毎年3月25日に各330万円,平成12年3月24日に327万3700円を納付して完納した。本件不動産取得税の延滞金(本件延滞金)は,同日時点において,合計2759万1200円である。
(4) 控訴人は,三重県監査委員に対し,平成13年9月25日,Aの延滞金に関する住民監査請求を行った。
(5) 三重県監査委員は,同年11月22日,上記監査請求につき,被控訴人がAから同年3月30日に5万円を納付させて本件延滞金の消滅時効を中断させる措置を取ったこと,同社が被控訴人に対して納付を誓約する旨の書面を提出していることなどを理由に監査請求を棄却した。
3 争点
  被控訴人が本件延滞金の徴収を違法に怠っているか否か。
4 争点に対する当事者の主張
(1) 控訴人
ア 次項で当審での補充主張を追加するほか,原判決「事実」の「第2 当事者の主張」1(5)のとおりであるから,これを引用する。
イ 当審での補充主張
被控訴人は,Aから分割納付の誓約書(本件誓約書)を差入れさせただけで,他に担保を取ることもせず,本件延滞金についてAの自主的な納付に委ねておくことはその裁量の範囲を超えており,どのような手段を尽くしても,本件延滞金の滞納という違法状態を解消する措置をとる義務がある。したがって,被控訴人は,差押えの滞納処分をすべきであり,これをせず放置していることは違法である。また,徴収の猶予は,合わせて2年を超えることができないと定める地方税法15条3項の趣旨に反し,2年を超える分割納付を認める本件誓約書による事実上の徴収猶予を行った被控訴人の措置は違法である。
Aは,固定資産税と本件不動産取得税の滞納税だけで既に9171万9400円と巨額の滞納となっている。そして,固定資産税は累積する一方であり,同社は,既に事実上の破綻状態にあるといってよく,今後17年(Aの提出した本件誓約書に基づき納付がなされたとしても,完納までに約17年かかる。)の間に同社が本件延滞金を完済することは不可能である。他方,滞納処分をしたとしても,「換価の猶予」という方法により,柔軟に滞納税を回収することができる方法を法はあらかじめ定めている(同法15条の5)のであり,差押えが直ちに換価を意味するものでもない。むしろ,滞納処分をしないことによる同法14条の6(差押先着手による地方税の優先)が働かない不利益がある。そして,本件延滞金の納付期限が平成12年3月24日であり,すでに5年以上経過していること,Aの代表取締役として本件誓約書を被控訴人に提出したBは,経営難を苦にして自殺していること,C町の固定資産税の延滞金に対しては,津地方裁判所平成14年(行ウ)第36号固定資産税の延滞金の徴収に係る怠る事実の違法確認等請求住民訴訟事件及び同平成16年(行ウ)第12号怠る事実の違法確認等請求住民訴訟事件につき,それぞれ平成17年2月24日,固定資産税の延滞金の徴収を怠っていることが違法であることを確認する旨の住民側勝訴の判決がでており,同判決は同年3月11日に確定している。したがって,C町によるAに対する滞納処分の実施は,もはや時間の問題となっており,これら競合する各期別の固定資産税の延滞金の差押えや交付要求が先に着手されることにより,被控訴人は,本件延滞金について,C町に劣後してしか差押対象不動産の換価代金からの回収ができなくなるおそれが現実化していることなどからすれば,被控訴人が本件延滞金につき滞納処分をせずに放置する裁量権はないといわなければならない。
(2) 被控訴人
ア 次項において当審での補充主張を追加するほか,原判決「事実」の「第2 当事者の主張」4(3)アないしオのとおりであるから,これを引用する。
イ 当審での補充主張
被控訴人は,Aに対し,本件延滞金がすみやかに納付されるよう要請し,同社と協議折衝を重ねてきた。その結果,平成17年3月28日,Aは,同年4月分から月額12万円,これとは別に年度末までに20万円,年間合計164万円を納付する旨を約し,別紙A株式会社延滞金納付状況のとおり,同年4月から同年8月まで毎月末日ころに12万円が納付され,平成13年3月からの納付総額は505万円である。また,Aは,津簡易裁判所に特定調停を申し立てており,その結果により改めて早期納付案を提出する旨を申し出ているのであり,当初の分割納付期間である17年間より早期に完納される可能性も十分にある。そして,本件延滞金に関しては直ちに滞納処分をすることが完納につながるとはいえず,むしろ,これをしないで納付されていくことの方が完納に至る可能性が大きいのであり,いずれの方法をとるかは徴収権者の裁量の範囲内にあるというべきである。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,被控訴人が本件延滞金の徴収を怠っていることは,徴収権の裁量を逸脱するもので違法であり,控訴人の本件請求は理由があるものと判断する。その理由は,次のとおりである。
2 判断の前提となる認定事実等は,原判決を次のとおり改めるほか,原判決「理由」3(1)及び(2)のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決14頁9行目の「53,」の次に「57ないし60,」を加え,10行目の「9」を「9ないし11」に改める。
(2) 原判決17頁1行目の「平成17年1月31日まで」から3行目までを「平成17年3月31日まで,本件誓約書にしたがって月額10万円を納付し(別紙A株式会社延滞金納付状況記載の回数1ないし44までの合計金額445万円),同日時点での残額は2314万1200円(2759万1200円-445万円)となった。」に改める。
(3) 原判決18頁22行目の「4~12」を「4ないし12の各不動産」に改める。
(4) 原判決19頁16行目の次に,行を改めて次を加える。
「セ Aは,C町に対する平成元年度第3期から平成12年度第4期までの各期別の固定資産税延滞金(合計3347万6100円)及び平成13年度第1期から第4期までの固定資産税延滞金(合計179万3600円)の納付を怠っていたところ,C町の住民であるD及びEは,津地方裁判所にC町長らを被告とする固定資産税の延滞金の徴収に係る怠る事実の違法確認等請求住民訴訟〔平成14年(行ウ)第36号,平成16年(行ウ)第12号〕を提起し,同裁判所はこれを認容する判決をし,同判決は,平成17年3月11日に確定した。
ソ Aは,同日,津簡易裁判所にC町,株式会社F銀行,株式会社G銀行,株式会社H銀行,Iを相手方とする特定調停の申立てをした〔同裁判所平成17年(特ノ)第72号,以下「本件特定調停事件」という。〕。同申立書によれば,Aの主な資産は,本件課税対象物件等の施設の土地及び建物(附属設備も含む。)であり,他方,負債は,平成16年3月31日現在,①借入金合計11億9765万円,②未払金合計約3364万円,③預かり保証金合計約2億4388万円,④長期未払金合計8804万円(本件延滞金2345万円を含む。)である。
タ Aは,平成17年3月28日,被控訴人に対し,「不動産取得税に係る延滞金の納付について」と題する書面を提出した。同書面には,「平成17年4月以降は,少しの増額ですが毎月12万円の納付とさせていただきたいと存じますので,ご了承賜りますようお願い申し上げます。」,「現在C町及び金融機関に対し特定調停の申立てを行い,当社の経営継続のための改善策に努めており,その結果により改めて早期納付案を提示させていただきますので,併せて格別のご配慮賜りますようお願い申し上げます。」と記載されている。そして,Aは,本件延滞金につき,同月分から月額12万円を分納している。
チ Aは,平成17年7月15日,津簡易裁判所に本件特定調停事件における再建計画(案)として,次の内容を上申した。
(ア) 公租公課の優先納付
申立人が所有する施設に対する滞納処分等を回避するために,C町に対する固定資産税の延滞金,三重県に対する不動産取得税の延滞金,その他の申立人が滞納している公租公課を,優先して納付する。
a 平成13年度以前分の固定資産税の延滞金 24か月の分納
各金融機関への返済を猶予された月の翌月(試案では,平成17年9月)から,毎月145万円を,24か月にわたって,古いものから順次納付する。
b 平成14年度ないし平成16年度固定資産税の本税 23か月の分納
各金融機関への返済を猶予された月の翌月(試案では,平成17年9月)以後毎月140万円ずつを,23か月にわたって,古いものから順次納付する。
c 平成14年度以後の固定資産税の延滞金 29か月の分納
本税は,各金融機関への返済を猶予された後(試案では,平成17年11月),毎月50万円を,29か月にわたって,古いものから順次納付する。
d 三重県に対する不動産取得税の延滞金 26か月の分納
各金融機関への返済を猶予された月の翌月(試案では,平成17年9月)から,毎月90万円を,26か月にわたって納付する。
(イ) (以下略)
ツ C町は,平成17年7月15日,津簡易裁判所に本件特定調停事件での解決案として次の内容を提示した。
(ア) 公租公課(町の固定資産税)の優先納付
a Aが所有する土地の4分の3を町が買い取る。
① 買い取る土地は,C町a番地b 宅地11,353.79㎡(仮評価額4億2000万円)
② 土地には抵当権(F銀行3億3000万円の根抵当権)が設定されているところから,買い取りは4分の3の担保の設定されていない土地とし,その価格は3億1500万円とする。
③ 残りの4分の1の土地については,Aの所有地(根抵当権設定)とし,J組合の持分はこの土地に含むものとする。
④ 買い取った町の所有地は,Aの存続期間中は固定資産税の税額を基本に賃貸をし,町の損失補償付き債務の金融機関への返済中は,Aの経営の状況により賃貸料の減額を考慮する。
b 固定資産税8153万2000円については,土地代金債務との一括相殺とする。税の内訳は,①平成13年度までの延滞金3456万9000円,②平成14年から平成16年度の本税3224万2000円,③平成14年から平成16年度分の延滞金1472万1000円
(イ) (以下略)」
3 以上の認定事実を前提にして,被控訴人が本件延滞金の徴収を違法に怠っているか否かについて検討する。
(1) 納税者が納期限までに不動産取得税に係る地方団体の徴収金を完納しない場合においては,道府県の徴税吏員は,納期限後20日以内に,督促状を発しなければならず(地方税法73条の34第1項),督促を受けた滞納者が,その督促状を発した日から起算して10日を経過した日までにその滞納になる徴収金を完納しないときは,道府県の徴税吏員は,当該徴収金につき,滞納者の財産を差し押えなければならない(同条の36第1項1号)。他方,地方団体の長は,納税者が一定の事由に該当する場合において,徴収金を一時に納付し,又は納入することができないと認めるときには,1年以内に限り,その徴収を猶予することができ(同法15条1項),また,やむを得ない理由があると認めるときは,2年までその期間を延長できる(同条3項)。さらに,滞納者が,徴収金の納付について誠実な意思を有すると認められるときは,その徴収金につき,1年間に限り,滞納処分による財産の換価を猶予することができ(同法15条の5第1項),また,やむを得ない理由があると認めるときは,2年までその期間を延長でき(同条の5第3項),必要があると認めるときは,差押えにより滞納者の事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある財産の差押えを猶予することができるとしている(同条の5第2項)。そして,地方税法の施行に関する取扱いについて,不動産取得税の「賦課徴収は,不動産の取得の事実があった後なるべく早期に行うべきものであるが,情状によっては,納税者の申請により分割納付の方法等を認めることも差し支えないものであること」(昭和29年5月13日自乙府発第109号各都道府県知事宛自治庁次長通達,乙イ3)とされている。そうすると,徴税をする地方団体の長は,滞納者に対して滞納処分を行う時期やその対象等について,当該滞納者の税の負担能力(担税力)や誠実な納入意思の有無に応じてその事業の継続や経済生活の維持がむやみに損なわれることのないよう配慮しつつ,他方,徴税行為が区々になり,公平を欠き,偏頗なものとならないようにすべきであり,これらを踏まえて,計画的,能率的かつ実質的にその徴収権の確保を図るに相当な範囲での裁量が与えられているものと解される。
したがって,本件において,本件延滞金に対する督促状を発してから10日以内に差押えがなされないからといって,当然にこれが地方税法に違反するとはいえないが,差押え等の滞納処分がとられないことにより,実質的に公金徴収権の確保が図られないと認められる場合,あるいは,一般的にみて公平を欠き,偏頗な徴税行為であると認められる場合等には,地方団体の長は,その裁量を逸脱し,徴収金の徴収を違法に怠るものと解するのが相当である。
(2) そこで,以上の見地に立って,被控訴人において,本件延滞金の徴収について,裁量の逸脱があったか否かにつき検討する。
本件延滞金の徴収についての滞納処分の対象となり得るAの各財産についてみるに,まず,F銀行等の金融機関に対する預金債権については,仮に差押えをしても,前記(原判決)のとおり,1億6000万円を超える反対債権があることから,これにより相殺され,徴収の効果のないことは明らかである。したがって,上記預金債権の差押えをしないとしても,当然に本件延滞金の徴収を違法に怠っているとはいえない。また,本件施設に入店するテナントに対する賃料債権についても,仮に差押えをしても,前記(原判決)のとおり,F銀行が平成元年5月15日付け根抵当権(極度額3億3000万円)を設定していることからして,これに基づく物上代位を行使すれば,前記のとおり法定納期限がこれに遅れる本件延滞金は劣後し,その徴収に効果がないことは明らかである。したがって,上記賃料債権の差押えをしないとしても,本件延滞金の徴収を違法に怠っているとはいえない。
しかし,A所有の原判決別紙1物件目録記載の1(4)ないし(10),4ないし12の各不動産については,前記(原判決)のとおり,本件延滞金に優先するF銀行等の被担保債権が相当程度弁済されている(甲50の3,乙イ11,弁論の全趣旨)ことから,滞納処分としての差押え等をすれば,本件延滞金の徴収が可能であることが推認し得る。その上,前記のとおり,Aは,C町に対する固定資産税の延滞金も滞納しており,C町の住民からの固定資産税の延滞金の徴収に係る怠る事実の違法確認等請求住民訴訟の判決が確定していることからすれば,C町が,同社に対する上記延滞金を回収するための滞納処分を近い将来行うことは十分に予測でき,差押えの先行着手により地方税が優先する(地方税法14条の6)ことからすれば,被控訴人による本件延滞金の徴収が困難となる可能性がある。さらに,Aには前記不動産以外にめぼしい資産がない上,前記のとおり,平成17年3月11日,C町,F銀行等の金融機関を相手方として(なお,被控訴人は本件特定調停事件の相手方とされていない。),津簡易裁判所に特定調停の申立てをし,これが係属している状況にあることを考慮すれば,たとえ,Aから本件誓約書に従って月額10万円の納付がされ,平成17年4月分からは月額12万円に増額された納付が実際に行われているとしても(今後も年間164万円支払われるとしても),本件延滞金が完済されるまでにはこの後14年あまりかかることになるなどの諸事情に照らして考慮すると,被控訴人が,現時点においても,本件延滞金の徴収を図るための何らの担保も取ることなく,Aの上記分割納付を事実上認めることにより,本件延滞金の滞納処分を怠ることは,合理的な根拠がなく,もはや実質的に公金徴収権の確保が図られない蓋然性が相当程度高く,徴収権者としての裁量を逸脱しているものといわざるを得ない。
なお,被控訴人は,滞納処分を行うことは,かえってAを倒産に追い込み,その結果本件延滞金の徴収が確定的に不可能となるおそれが大きいと主張するが,前記したとおり,C町が固定資産税の延滞金による滞納処分をする可能性があることや前記した同社の債務の負担状況とその返済状況等に照らすと,被控訴人の滞納処分がそのままAの倒産に直接結びつくものとは認められない(むしろ,他の要因によって,そのような状況になり得る可能性も否定できない。)。また,本件延滞金の滞納処分を行わないことが本件延滞金の完納に結びつくものと考えることも困難であり,被控訴人の上記主張を採用することはできない。
(3) したがって,被控訴人が本件延滞金の徴収を怠っていることは,その裁量を逸脱するもので違法である。
第4 結論
以上のとおり,控訴人の本件請求は理由があり,これを認容すべきところ,これと結論を異にする原判決は不当であるので,これを取り消すこととする。
よって,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第1部
裁判長裁判官     田  中  由  子
裁判官     佐  藤  真  弘
裁判官     山  崎  秀  尚

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最終更新:2006年03月06日 17:54
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