hanrei @Wiki H18. 2.21 仙台地方裁判所 平成14年(行ウ)第27号 損害賠償履行請求事件



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村田町(以下「町」という。)の住民である原告らが,町発注の5つの工事について,町が指名競争入札の後,落札業者5社と請負契約を締結したことにつき,各請負契約の前提手続として行われた指名競争入札が,落札業者と入札参加業者との間の談合により競争の制限された状態で行われたものであり,町はその談合により談合がなければ形成されたであろう価格と落札価格との差額相当の損害をそれぞれ被ったから,民法709条に基づき,落札業者らに対し損害賠償請求権をそれぞれ有しているのに,町がその行使を違法に怠っていると主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,損害賠償を請求すべき義務を負う村田町長である被告に対し,落札業者らに対してそれぞれ損害賠償の請求をすることを求めた事案(一部認容)


主文
1 被告は,株式会社Aに対し,金84万5000円及びこれに対する平成15年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
2 被告は,株式会社Bに対し,金13万5000円及びこれに対する平成15年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
3 被告は,有限会社Cに対し,金40万円及びこれに対する平成15年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
4 被告は,D株式会社に対し,金24万円及びこれに対する平成15年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
5 被告は,株式会社Eに対し,金64万円及びこれに対する平成15年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
6 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
7 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告らの各負担とし,その余は被告の負担とする。各補助参加により生じた費用は,これをそれぞれ3分し,その2を原告らの各負担とし,その余は株式会社A,株式会社B,有限会社C及びD株式会社の各負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
1 請求の趣旨
(1) 被告は,株式会社A(以下「A」という。)に対し,金253万5000円及びこれに対する平成15年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
(2) 被告は,株式会社B(以下「B」という。)に対し,金40万5000円及びこれに対する平成15年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
(3) 被告は,有限会社C(以下「C」という。)に対し,金120万円及びこれに対する平成15年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
(4) 被告は,D株式会社(以下「D」という。)に対し,金72万円及びこれに対する平成15年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
(5) 被告は,株式会社E(以下「E」という。)に対し,金192万円及びこれに対する平成15年1月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。
(6) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 請求の趣旨に対する答弁
(1) 本案前の答弁
 ア 本件訴えをいずれも却下する。
 イ 訴訟費用は原告らの負担とする。
(2) 本案に対する答弁
 ア 原告らの請求をいずれも棄却する。
 イ 訴訟費用は原告らの負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は,宮城県柴田郡村田町(以下「村田町」という。)の住民である原告らが,村田町が別紙一覧表工事番号1ないし5の各工事(以下,これらの工事を包括して「本件各工事」といい,本件各工事のうちの個々の工事を特定する場合には,同表の工事番号欄の番号を付して「本件工事1」などという。)に係る請負契約(以下「本件各請負契約」という。)を同表の落札業者欄記載の各業者(以下「落札業者」という。)とそれぞれ締結したことにつき,本件各請負契約の前提手続として平成14年1月30日に行われた指名競争入札が落札業者と同表の入札参加業者欄に丸印を付した各業者(以下「入札参加業者」という。)との間の談合により競争の制限された状態で行われたものであり,村田町はその談合により談合がなければ形成されたであろう価格と落札価格との差額相当の損害をそれぞれ被ったから,民法709条に基づき,落札業者である被告補助参加人ら(以下「参加人ら」という)及びEの5社(以下「Aら5社」という。)に対し損害賠償請求権をそれぞれ有しているのに,村田町がその行使を違法に怠っていると主張して,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき,損害賠償を請求すべき義務を負う被告に対し,Aら5社に対してそれぞれ前記第1の1(1)ないし(5)のとおりの各損害賠償金及びこれらに対する各不法行為の日の後である平成15年1月23日(本訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各遅延損害金の請求をすることを求めた事案である。
2 争いのない事実等(末尾に証拠等を掲げたもの以外は当事者間に争いがない。)
(1) 当事者
 ア 原告らは,いずれも村田町の住民である。
 イ 被告は,村田町長である。
 ウ Aら5社は,いずれも建設業を営む会社である。
(2) 本件各請負契約の締結
 ア 村田町は,本件各工事について,予定価格を別紙一覧表の各予定価格欄記載のとおりそれぞれ定めた上,平成14年1月30日,別紙一覧表記載の落札業者と入札参加者による指名競争入札をそれぞれ実施した。
   本件各工事に係る指名競争入札の各入札状況は,別紙一覧表の各欄記載のとおりであるが,詳細は,次のとおりである。
(ア) 本件工事1(第1回入札・入札金額,甲1の1)
 a A                   1690万円(落札)
 b D                       1710万円
 c B                       1715万円
 d C                       1750万円
 e 有限会社F(以下「F」という。)        1780万円
 f E                       1800万円
(イ) 本件工事2(第1回入札・入札金額,甲1の2)
 a B                    270万円(落札)
 b F                        275万円
 c E                        280万円
 d 有限会社G(以下「G」という。)         285万円
 e D                        290万円
(ウ) 本件工事3(甲1の3)
 a 第1回入札(入札金額)
  (a) C                       860万円
  (b) E                       870万円
  (c) H株式会社(以下「H」という。)        875万円
  (d) F                       885万円
  (e) D                       890万円
  (f) A                       895万円
 b 第2回入札(入札金額)
  (a) C                       830万円
  (b) E                       845万円
  (c) H                       850万円
  (d) D                       850万円
  (e) A                       855万円
  (f) F                       855万円
 c 第3回入札(入札金額)
  (a) C                   800万円(落札)
  (b) E                       815万円
  (c) H                       820万円
  (d) D                       820万円
  (e) A                       820万円
  (f) F                       825万円
(エ) 本件工事4(甲1の4)
 a 第1回入札(入札金額)
  (a) D                       565万円
  (b) E                       580万円
  (c) B                       585万円
  (d) F                       594万円
  (e) C                       606万円
 b 第2回入札(入札金額)
  (a) D                       550万円
  (b) F                       557万円
  (c) E                       560万円
  (d) B                       560万円
  (e) C                       562万円
 c 第3回入札(入札金額)
  (a) D                   480万円(落札)
  (b) B                       500万円
  (c) E                       540万円
  (d) F                       546万円
  (e) C                       548万円
(オ) 本件工事5(甲1の5)
 a E                   1280万円(落札)
 b A                       1360万円
 c C                       1370万円
 d B                       1380万円
 e F                       1380万円
 f D                       1400万円
イ 村田町は,そのころ,上記アの落札業者と落札額を契約金額として本件各請負契約をそれぞれ締結し,工事代金をそれぞれ支出した(弁論の全趣旨)。
(3) 原告らは,同年11月1日,村田町監査委員に対し,町長派業者の談合により競争が制限されることによって村田町が被った損害の補てん措置をとるよう勧告することを求める旨の住民監査請求を行った(以下「本件監査請求」という。)が,村田町監査委員は,同月20日,本件監査請求を却下した。
3 争点
(1) 本件監査請求の適法性
(2) 本件各工事における談合行為の有無
(3) 損害額
4 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)について
 ア 被告及び参加人らの主張
本件は住民訴訟であるから事前に適法な監査請求を経ていなければならないところ,本件監査請求は,添えてある全ての事実証明によっても,財務会計上の行為の違法性・不当性に関し個別的・具体的に摘示されていないとして却下されたのであるから,本件訴えは,適法な監査請求を経ておらず,訴訟要件を欠き,不適法として却下されるべきである。
 イ 原告らの主張
本件監査請求は,業者の談合によって被った町の損害の回復を求める監査請求であり,町の職員の財務会計上の行為の違法性・不当性とは,そもそも無関係であるから,職員の財務会計上の行為の違法性・不当性の個別的・具体的摘示を要件とする監査委員の判断は,誤りである。
したがって,原告らは,適法な監査を経たことになる。
(2) 争点(2)について
ア 原告らの主張
(ア) 村田町の公共工事における指名競争入札では,どの業者が指名業者になったかは,入札日まで明らかにされていない。しかし,指名業者のうちFを除いた落札業者及び入札参加業者は,入札日である平成14年1月30日よりも前に何らかの方法により本件各工事について,その指名業者を知った。そして,Fを除く落札業者及び入札参加業者は,入札日前に村田町内において談合を行い,本件各工事を落札する本命業者を決定した。
(イ)a 本件工事1
本命業者と決まったAは,入札日前に談合の協議に参加しなかったFに対し,電話にてAが本命業者に決まった旨を伝えた。AのIは,入札日の前日,談合札(甲4の3)と工事費内訳書(甲4の2)をFの事務所に持参した。
Aは,Fに対し,上記談合札により1回目は1780万円,2回目は1680万円,3回目は1640万円と入札するように指示するとともに,その入札金額に見合った工事費内訳書を交付し,それと同内容の工事費内訳書を村田町に提出するよう指示した。
Fは,Aが持参した上記工事費内訳書を村田町に提出するとともに,Aの指示どおりに入札した。
b 本件工事2
本命業者に決まったBは,入札日前に,談合の協議に参加しなかったFに,電話にてBが本命業者に決まった旨を伝えた。Bの従業員は,入札日の前日,談合札(甲44)と工事費内訳書(甲5の2・3)をFの事務所に持参した。
Bは,上記談合札に「¥2,750,000」「2回目最低価格より100,000以下下げて下さい」と記載し,Fに対し,入札金額の指示をするとともに,その入札金額に見合った工事費内訳書を交付し,それと同内容の工事費内訳書を村田町に提出するよう指示した。
Fは,Bが持参した上記工事費内訳書を村田町に提出するとともに,Bの指示どおりに入札した。
c 本件工事3
本命業者と決まったCは,入札日前に,談合の協議に参加しなかったFに,電話にてCが本命業者に決まった旨を伝えた。Cの女性従業員は,入札日の前日,談合札(甲6の4)と工事費内訳書(甲6の2・3)をFの事務所に持参した。
Cは,Fに対し,上記談合札により,1回目は885万円,2回目は855万円,3回目は825万円を入札するよう指示するとともに,その入札金額に見合った工事費内訳書を交付し,それと同内容の工事費内訳書を村田町に提出するよう指示した。
Fは,Cが持参した上記工事費内訳書を提出するとともに,Cの指示どおりに入札した。
d 本件工事4
本命業者と決まったDは,入札日前に,談合の協議に参加しなかったFに,電話にてDが本命業者に決まった旨を伝えた。Dの営業部長であったJは,入札日の前日,談合札(甲8の6)と工事費内訳書(甲8の2ないし5)をFの事務所に持参した。
Dは,Fに対し,上記談合札により,1回目は594万円,2回目は557万円,3回目は546万円を入札するよう指示するとともに,その入札金額に見合った工事費内訳書を交付し,それと同内容の工事費内訳書を村田町に提出するよう指示した。
Fは,Dが持参した上記工事費内訳書を提出するとともに,Dの指示どおりに入札した。
e 本件工事5
本命業者と決まったEは,入札日前に,談合の協議に参加しなかったFに,電話にてEが本命業者に決まった旨を伝えた。Eの従業員は,入札日の前日,談合札(甲7の1)と工事費内訳書(甲7の2・3)をFの事務所に持参した。
Eは,Fに対し,上記談合札により,1回目は1320万円以上,2回目以降は1回目の最低価格より30万円以内引きで入札するように指示するとともに,その入札金額に見合った工事費内訳書を交付し,それと同内容の工事費内訳書を村田町に提出するよう指示した。
Fは,Eが持参した上記工事費内訳書を提出するとともに,Eの指示どおりに入札した。
イ 被告
  上記ア(ア)及び(イ)の原告らの主張は不知。
ウ 参加人らの主張
Fが落札業者から交付されたものとして原告らが提出する談合札と称するメモ及び工事費内訳書は,Fの代表者であるKが偽造したものであり,上記ア(ア)及び(イ)に沿う証人Kの供述及び陳述は,全て作り話である。
(3) 争点(3)について
ア 原告らの主張
(ア) 村田町は,落札業者及び入札参加者の談合により,実際の契約価格と談合が行われなかった場合に形成されたであろう契約価格との差額相当分の損害を受けた。
平成13年度及び平成14年度の入札において,L等の反町長派業者(平成13年度ではL,M,N,平成14年度ではこれに加えてF,有限会社O(以下「O」という。),H)が入札に参加すると落札率が70ないし80パーセント台になるのに,反町長派業者が参加しないと概ね95パーセント以上になっており,これは,反町長派業者が入札に参加すると公正な自由競争が行われるが,参加しないと談合が行われることを如実に示すものであるところ,これによれば,反町長派業者が入札に参加した場合と参加しなかった場合の落札率の差が少なくとも15パーセント存するから,本件各工事に関する損害額も,別紙一覧表の落札金額欄記載の各金額に0.15を乗じた金額,具体的には以下のとおりとなる。
a 本件工事1                253万5000円
b 本件工事2                 40万5000円
c 本件工事3                    120万円
d 本件工事4                     72万円
e 本件工事5                    192万円
(イ) 本件各工事の請負代金の中に国からの補助金が含まれているとしても,これは,村田町が被った損害には何らの影響も及ぼさない。
なぜなら,地方公共団体は,談合をした業者から損害賠償金の支払を受けた場合,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「補助金適正化法」という。)15条,16条,18条2項により,その受領額に補助率を乗じた金員を国庫に返還する義務を負い,これによれば,地方公共団体が談合等の不法行為によって被る損害は,固有財源からの出捐分と国に対する補助金返還義務分を合わせたものになるからである。
イ 被告及び参加人らの主張
(ア) 原告らの主張は争う。
(イ) 本件各工事は,補助金適正化法に基づく国の補助金を財源としており,補助金を本件各工事以外の用途に流用することはできないから,補助金額分については村田町に損害は生じない。
第3 争点に対する判断
1 争点(1)について
  (1) 村田町監査委員は,住民監査請求につき,財務会計上の行為において,町長始め職員等がいつ,どのような違法又は不当な行為を行ったのか,具体的な事実証明を添えて請求がされなければならない旨前置きした上で,本件監査請求は,添えてある全ての事実証明によっても町長が財務会計上の行為において,いつ,どのような違法又は不当な行為を行ったのかという財務会計上の行為の違法性・不当性に関し個別的・具体的な摘示がなされていないから不適法であるとしてこれを却下した(甲12,13)。
  (2) しかし,原告らの本訴請求は,本件各工事について村田町と落札業者であるAら5社との間で締結された本件各請負契約に関し,その前提手続として行われた指名競争入札が談合により競争の制限された状態で行われたため,村田町はその談合がなければ形成されたであろう価格と落札価格との差額相当の損害を被ったのに,被告がAら5社に対して上記損害の賠償を求めないという不作為を違法として,Aら5社に対し民法709条に基づく損害賠償請求をすることを求めるもので,法242条の2第1項4号所定の請求のうち,「怠る事実に係る相手方に損害賠償の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関に対して求める請求」である。したがって,本訴の前提としての住民監査請求の対象は,法242条1項所定の事項のうち,「違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実」であるといわなければならない。そして,被告が村田町に帰属する損害賠償請求権を行使しないという事実は,債権という財産の管理を怠るという財務会計上の違法又は不当な事実にほかならない上,上記損害賠償請求の発生原因として原告らの特定する本件各請負契約は,被告が村田町の執行機関として行う財務会計上の行為そのものであって,原告らは,その本件各請負契約に不可欠の前提手続として行われた指名競争入札が談合により違法に競争が制限された状態で行われた旨主張するとともに,その事実を証明するため,談合札及び積算内訳書等の資料を提出している(甲12)のであるから,原告らがした本件監査請求は,住民監査請求に要求されている諸要件を充足した適法なものというべきである。
  (3) したがって,本件監査請求を不適法として却下した村田町監査委員の判断は失当といわなければならず,本件訴えは適法な監査請求を経ていないから訴訟要件を欠くとする被告及び参加人らの主張は採用することができない。
2 争点(2)について
 (1) 当裁判所は,前記第2の2の事実に,本件各証拠(後掲のもの)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件各工事に係る指名競争入札において,入札の前に落札業者及び入札参加業者による談合が行われ,この談合(以下「本件談合」という。)により,本件各工事を落札すべき本命業者が決定された上で入札が実施された結果,上記本命業者がいずれも本件各工事を落札し,その本命業者と被告との間で本件各請負契約が締結されたことが認められると判断する。その理由は以下のとおりである。
ア 証人Kは,本件談合の存在を肯定する旨の供述及び陳述(甲14,16)をしている(以下,上記供述及び陳述を併せて「本件K供述1」という。)ところ,当裁判所は,本件K供述1の信用性は高いと判断する。その理由は以下のとおりである。
(ア) 本件K供述1の骨子は次のとおりである。
a 本件工事1については,事前にAから「うちに決まった」との電話があり,入札日(平成14年1月30日)の前日,Aの社長の息子であるIが入札金額を指示するメモ(甲4の3)と工事費内訳書(甲4の2)をFに持ってきた。
b 本件工事2については,事前にBから「うちに決まった」との電話があり,入札日(平成14年1月30日)の前日,Bの従業員であるPが入札金額を指示するメモ(甲44)と工事費内訳書(甲5の2・3)をFに持ってきた。
c 本件工事3については,Cから「うちに決まった」との電話があり,入札日(平成14年1月30日)の前日に,Cの女性の事務員が,入札金額を指示するメモ(甲6の4)と工事費内訳書(甲6の2・3)をFに持ってきた。
d 本件工事4については,入札日(平成14年1月30日)の何日か前に,Dから「うちに決まった」との電話があり,入札日の前日,Dの営業部長のJが入札金額を指示するメモ(甲8の6)と工事費内訳書等(甲8の2ないし5)をFに持ってきた。
e 本件工事5については,事前にEから「うちに決まった」との電話があり,入札日(平成14年1月30日)の前日,Eの社長又は従業員が,入札金額を指示するメモ(甲7の1)と工事費内訳書(甲7の2・3)をFに持ってきた。
(イ) 本件各工事に係る指名競争入札について,入札の前に落札業者及び入札参加業者によって行われた談合の結果,Fが入札すべき金額を指示する内容が記載されたメモないし書面(本件工事1については甲4の3,本件工事2については甲44,本件工事3については甲6の4,本件工事4については甲8の6,本件工事5については甲7の1。以下,上記書証を「本件談合札」という。)が存在する。本件談合札は,いずれも原本が書証として提出されており,そのうち,甲4の3は黄色の付箋に鉛筆による手書きで3個の数字と「F」の文字が記載されたもの,甲44は使用済みの白い用紙を切り取った裏側に鉛筆による手書きで1個の数字と「2回目最低価格より100.000以下下げて下さい。」という文字が記載されたもの,甲6の4は青色の付箋に手書きによる黒色のペン字で3個の数字と「F様」の文字が記載されたもの,甲8の6は黄色の付箋に鉛筆による手書きで3個の数字と「f様」の文字が記載されたもの,甲7の1は「平成13年災害復旧工事実施設計書」という表題のA4版の書面の上下欄外に「配布された仕様書に写して下さい。1320万以上でお願い致ます。」「2回目以降最低価格より30万以内引きでお願い致ます」という文字が印刷された透明のシール(いずれのシールも数字部分が橙色でマークされている。)が貼り付けられたものである。本件談合札のうち,手書きされた甲4の3,6の4,8の6及び44の筆跡は,それぞれ異なると判断される。
 以上のように,本件談合札として提出された書証の体裁及び筆跡はそれぞれ全く異なっており,同一人によって作成されたものとは考えにくい。
 また,本件談合札のうち,甲8の6(本件K供述1は,本件工事4を落札したDから受け取った談合札であるとする。)の筆跡は,Dの事務員Qが作成した積算書(甲20の2,証人J)の筆跡に酷似している。
(ウ) 本件各工事におけるFの実際の入札金額は,本件談合札に記載された金額と完全に一致しているか,その記載内容と矛盾しない(甲1の1ないし5,4の3,6の4,7の1,8の6及び44)。
(エ) 本件談合札については,その記載内容に符合する工事費内訳書がいずれも原本として提出されている(甲4の2,5の3,6の2・3,7の2・3,8の2ないし5)。そのうち,甲8の2ないし5(本件K供述1は,本件工事4を落札したDから受け取った工事費内訳書であるとする。)を除くその余の工事費内訳書(以下「本件工事費内訳書」という。)は,その記載内容はもちろん,書式,体裁,印刷の字体,印刷や罫線の汚れ及び数字の筆跡が,Fが本件各工事に係る指名競争入札に際して村田町に提出した工事費内訳書の写し(甲17の7,18の6,19の7,21の7)と一致している。この事実は,本件工事費内訳書(甲4の2,5の3,6の2・3,7の2・3)が,上記入札(平成14年1月30日)当時において既に存在しFがこれを所持していたこと(上記入札後に作成された文書ではないこと)を裏付ける事実である。また,本件工事費内訳書は,その書式,体裁及び筆跡が本件各工事(ただし,本件工事4を除く。)ごとに異なっているところ,Fが本件各工事(ただし,本件工事4を除く。)に係る指名競争入札に際して村田町に提出した上記工事費内訳書の写しは,本件工事費内訳書の写しに表紙を付けずに社判だけを押印した状態で村田町に提出されていることが認められる(甲4の2,5の3,6の2・3,7の2・3,17の7,18の6,19の7,21の7)。このように,Fが,同一日に行われた複数の入札において,書式,体裁及び筆跡がそれぞれ全く異なり,表紙もなく社判だけが押捺された上記工事費内訳書の写しを村田町に提出していたという事実は,本件各工事に係る指名競争入札において,Fは本件談合によって決定された本命業者から渡された本件工事費内訳書の写しをそのまま村田町に提出したとする本件K供述1の信用性を裏付けるものと言える。
 なお,原告らが,本件工事4を落札したDから渡された工事費内訳書であるとして提出した甲8の2ないし5(特に8の4)は,Fが本件工事4に係る指名競争入札の際に村田町に提出した工事費内訳書の写し(甲20の6)と明らかに筆跡が異なるから,甲8の2ないし5(特に8の4)が上記入札当時において既に存在しFが所持していた書面であるかどうか(したがって,上記入札前にDから渡された書面であるかどうか)は疑問である。しかし,それによって,本件K供述1の信用性が減殺されるものではないというべきである。なぜなら,Fが本件工事4に係る指名競争入札の際に村田町に提出した工事費内訳書の写し(甲20の6)の筆跡は,本件工事4に係る指名競争入札の前にDから渡されたとされる(本件K供述1)本件談合札(甲8の6)の筆跡と酷似しているばかりか,Dの事務員Qが作成した上記積算書(甲20の2)の筆跡及びDが本件各工事に係る指名競争入札の際に村田町に提出した工事費内訳書の写し(甲17の3,18の2,19の3,20の2,21の3)の筆跡に一致することが認められるからである。すなわち,Fが本件工事4に係る指名競争入札の際に村田町に提出した工事費内訳書の写し(甲20の6)は,Dによって作成されFに渡された工事費内訳書の原本を元に作成されたことが推認される(その限度で,本件K供述1は信用できる。)のである。
(オ) 本件工事1及び3ないし5の各工事については,落札業者からそれぞれ連絡を受けた際にKの妻が記載したメモ(甲28,証人K)が存在し,その記載内容は,落札業者から入札について指示を受けたという本件K供述1の内容と符合する。
(カ) 本件各工事の落札率はいずれも92パーセントを超えており,宮城県発注の工事にかかるD及びEの落札率と比較しても極めて高くなっている(甲38の1,42の1・3,証人J,同R)。
(キ) 本件K供述1が,本件工事3を落札したCから受け取った工事費内訳書であるとする甲6の2・3は,Cが本件各工事に関して村田町に提出した工事費内訳書と同じ書式である(甲17の4,19の4,20の3,21の4)。
(ク) 本件工事3に係る入札は3回行われたが,その3回の入札ともCが最も低い金額の入札を行っており(甲1の3),その結果は不自然である。また,本件工事4に係る入札も3回行われ,その3回の入札ともDが最も低い金額の入札を行っているが(甲1の4),その結果はやはり不自然といわざるを得ない。これは,いずれも本件談合の存在を肯定する本件K供述1に符合する事実というべきである。
(ケ) 本件談合札やこれと共に本命業者から渡された本件工事費内訳書は,談合の事実の発覚を未然に防止するため,本来であれば入札終了後に速やかに処分されるはずの書面である。それにもかかわらず,Fがこれまで本件談合札や本件工事費内訳書を処分せず,本件訴訟において書証として提出することに協力した理由について,証人Kは,談合破りをされた仕返しの気持ちであったとして,大要次のとおり供述及び陳述(甲26)している。
 Fは,平成13年1月17日に行われた村田町の平成12年度丙地区公共下水道工事(第3工区)の指名競争入札に参加した。上記入札には,Fのほか,B,H,株式会社S(以下「S」という。),C,Oの5社が参加した。Kは,上記工事につき,現場説明会があった平成13年1月10日から入札日である同月17日までの間に,同工事を受注したい旨B,H,S,C,Oに電話等で伝えたところ,全ての業者の同意が得られたので,全ての業者に入札金額を指示したメモをそれぞれ配布したが,同日実施された入札において,Bがその指示に従わずにFよりも低い価額で入札するいわゆる談合破りをしたため,Bが上記工事を落札した。Kは,Bのこの談合破りによって,FがいわゆるAグループであるAやBらから甘く見られていることを認識して腹が立ち,仕返しとして談合の内部告発をしようと考え,本件談合札や本件工事費内訳書を処分せずに保管しておいた。
 以上の談合破りの件に関する証人Kの供述及び陳述(以下「本件K供述2」という。)は,その供述内容に沿う入札経過が存在すること(甲25,30の1・2)や同年4月23日,Bが談合破りの謝罪金の趣旨でF宛に219万7125円を振込送金した事実が窺われること(甲24)に照らし,信用に値すると言える。これに対し,参加人A及び同Bは,Bが上記談合に参加したことはなく,談合破りをしたこともない,BからFに対する上記振込送金は,上記工事をFへ下請発注した工事代金の支払であると主張するが,Bが相指名業者であったFに落札額と同額で上記工事を一括下請に出したとする証人Tの供述及び陳述(丙A12)の内容は不自然であること,Fが上記工事を中途で放棄したため,後の工事を引き継いだBが,Fの施工した部分とBが施工した部分とを出来高で評価し,発注額の15パーセント相当をFに送金したとする(証人Tの供述及び陳述(丙A12))が,その出来高評価の具体的内容を裏付けるに足りる証拠が提出されていないこと等に照らすと,本件K供述2の内容と矛盾する証拠(丙A1,2の1・2,3ないし8,12,証人T)はこれを採用することはできないというべきであり,他に本件K供述2の信用性を覆すに足りる証拠はない。
 したがって,本件K供述1の信用性は,本件談合札や本件工事費内訳書が保管されていた動機の面からも,これを肯定することができるというべきである。
イ 参加人らは,本件談合札及び本件工事費内訳書はKが偽造したものであり,本件K供述1は全て作り話であると主張するが,以下のとおり,その主張はいずれも採用できるものではない。
(ア) 参加人らは,原告らから当初提出された談合札(丙B5)と同じものとして提出された談合札(甲8の6)は,丙B5とその筆跡等が異なり,原告らが提出する本件談合札の作成過程に疑問があると主張する。
 これに対する原告らの説明は次のとおりである。丙B5は,原告らが甲8の6の写しを作成する際に,「f様」部分を消去し,さらにその写しを上からなぞって作成したものである。原告らは,平成14年8月ないし9月ころ,Fが所持していた甲8の6をコピーして村田町議会議員や原告らの間で配布した。その際,Fの名前を消去して配布したが,甲8の6は鉛筆で書かれており,コピーすると記載されている数字が薄くなってしまったため,コピーした談合札の数字がはっきりと読みとれるように上からなぞった。原告ら代理人は,本件訴訟を受任するに当たり,原告らから丙B5を受け取ったが,訴え提起段階では,出訴期間の制約もあり,詳しい打合せができず,その後,打合せをする中で丙B5の原本に当たる甲8の6の存在を確認したため,これを改めて書証として提出した。
 本件談合札の書証提出の経緯に関する原告らの上記説明は,鉛筆で書かれた文字を何度もコピーすると次第に薄くなることはしばしば経験することであること,丙B5には,原告らの説明するとおり,薄い文字を上からなぞった痕跡が認められることに照らすと,首肯できないものではないというべきである。そして,上記ア(イ)のとおり,本件談合札のうち,甲8の6は,本件工事4を落札したDから受け取った談合札の原本として提出されたものであり,その筆跡がDの事務員Qが作成した積算書(甲20の2)の筆跡に酷似していることも考え合わせると,丙B5と甲8の6の筆跡等が異なっていても,この事実は,甲8の6が偽造されたものであるとする参加人らの上記主張を裏付けるには足りないというべきである。
(イ) 参加人らは,本件各工事の入札時には,指名業者一覧表の開示及び現場説明会といった制度は廃止され,入札日にならないと指名業者が分からないようになっていたため,談合を実行しにくい状況であったと主張する。
 確かに,村田町は,平成13年8月ころの入札から,指名通知の方式を,それまで指名業者が役場に出向き指名通知を受領し,全ての指名業者が記載された指名業者一覧表に受領印を押すという方式であったのを,指名通知を郵送する方式にするとともに,指名業者を一堂に会した上で工事内容を説明する現場説明会を廃止し,相指名業者を公表することなく入札を実施するように改めたことが認められる(甲15)。
 しかし,指名業者一覧表の開示及び現場説明会といった制度が廃止されたことにより,従前よりも入札時まで誰が相指名業者なのかを把握しにくい環境となったとは言えるとしても,建設工事等特定の種類の工事1件当たりに指名される業者の数は限られている上,同種の工事に指名される業者が重複することもしばしばある(前記第2の2のとおり,本件各工事においても,各工事1件当たりの指名業者数は5ないし6業者であり,同じ業者が複数の工事に指名されている。)ことが窺われる(乙3の1・2,証人K)から,指名業者間で電話等で連絡を取り合うことにより,相指名業者を把握した上で談合することが困難であったとは言い難い。したがって,参加人らの上記主張は採用できない。
(ウ) 参加人らは,証人KがA及びBに対し私怨を抱いていることから,参加人らを陥れるために虚偽の供述・陳述をしていると主張する。
 上記ア(ケ)のとおり,同証人がBによる談合破りに対して憤慨していたことは確かであるが,その事実は,本件談合を内部告発した動機としても理解できるものであって,必ずしも本件K供述1の信用性を覆すに足りる事実であるとは言えない。
(エ) 参加人らは,本件工事1につき,原告らが提出する工事費内訳書(甲4の2)は,A作成の工事費内訳書(甲17の2)と書式が異なるし,Fが村田町の提出した工事費内訳書(甲17の7)と比べて外枠の実線が細いなどの相違点があること,本件工事2につき,原告らが提出した工事費内訳書(甲5の3)は,B作成の工事費内訳書(甲18の5)と書式が異なるし,Fが村田町に提出した工事費内訳書(甲18の6)と文字の明瞭さが異なること,本件工事5につき,原告らが提出する工事費内訳書(甲7の2・3)は,E作成の工事費内訳書(甲17の5,18の4,19の5,20の4,21の5)と書式が異なるし,Fが村田町の提出した工事費内訳書(甲21の7)と比べて罫線の太さが違うなどの相違点があることから,甲4の2,甲5の3及び甲7の2・3はFが自ら作成したものであると主張する。
 しかし,A,B及びEが,談合の結果本件工事1,2及び5の本命業者と決まったとすれば,談合の事実が発覚するのを防止するため,自らが村田町に提出する予定の工事費内訳書と異なる書式の工事費内訳書をFに交付しようとするのがむしろ自然であるといえるから,甲4の2と甲17の2の書式,甲5の3と甲18の5の書式及び甲7の2・3と甲21の5等の書式が異なることは何ら不自然ではない。また,上記ア(エ)のとおり,甲4の2と甲17の7,甲5の3と甲18の6及び甲7の2・3と甲21の7がそれぞれ同一の文書と認められることは,甲4の2,甲5の3及び甲7の2・3の各原本を確認すれば明らかである。したがって,参加人らの上記主張は採用できない。
(オ) 参加人らは,Gは本件工事1の指名業者となっていないにもかかわらず,Kの妻のメモ(甲28)にはGから同工事について連絡があった旨の客観的真実に反する記載がなされているから,上記メモの記載は信用できないと主張する。
 しかし,参加人らの指摘する上記記載部分は「TEL下さい g,東山線 つづきなので」と記載されているだけであり,指名業者でないGが本件工事1の本命業者としてFに連絡してきたとしか読めないものではない。証人Kは,確かに上記記載部分が上記の趣旨の記載であることを前提に供述しているが,妻からの伝言を誤解している可能性がないとは言えない(Gが仮に本件工事1の現場の隣接部分を工事していたのであれば,Fが本件工事1を落札した場合には下請に入りたいから電話連絡をして欲しいという趣旨の連絡をしてきた可能性もあり得る。)。
 したがって,上記記載部分の存在は,本件K供述1の信用性を覆すに足りる事実ではないというべきであり,参加人らの上記主張は採用できない。
(カ) 参加人らは,Cが本件工事1及び3ないし5に係る指名競争入札の際に村田町に提出した工事費内訳書の写し(甲17の4,19の4,20の3,21の4)は,一般に出回っている土木工事積算システムを使用して作成したものであるから,その書式や文字の書体が本件工事3にかかる本件工事費内訳書(甲6の2・3)と同一であるとしても,甲6の2・3をCが作成したものとは言えないと主張する。
 しかし,上記ア(エ)のとおり,甲6の2・3は,本件工事3に係る指名競争入札(平成14年1月30日)当時において既に存在しFがこれを所持していたと認められるところ,それが一般に出回っている土木工事積算システムを使用して作成されたものであるとしても,上記入札前に,Fが,偶然にあるいは本件工事3をCが落札することを予想して,Cと同じシステムを使って甲6の2・3を作成した(そして,その写しを村田町に提出した。)と見るのは不自然に過ぎる。上記ア(エ)のとおり,Fは,同日に行われた本件各工事に係る複数の入札において,書式,体裁及び筆跡がそれぞれ全く異なり,表紙もなく社判だけが押捺された工事費内訳書の写しを村田町に提出しているところ,C作成の上記工事費内訳書の写し(甲17の4,19の4,20の3,21の4)と書式が一致する工事費内訳書の写しを村田町に提出したケースは,まさにCが落札した本件工事3のケースのみである(甲19の7)。この事実に照らすと,本件工事3に係る指名競争入札において,Fは本件談合によって決定された本命業者であるCから渡された本件工事費内訳書(甲6の2・3)の写し(甲19の7)をそのまま村田町に提出したと推認するのが最も自然である。
 したがって,参加人らの上記主張は採用できない。
(キ) 参加人らは,本件K供述1の内容は変遷しているとしてその信用性に疑問を指摘するが,参加人らの指摘する証人Kの供述の変遷や不明確性は,本件談合の存在を肯定するという供述の基本的内容の信用性(その信用性は,これまで詳述した数々の状況事実によって裏付けられている。)に影響を与えるものとまでは言えないから,参加人らの上記主張は採用できない。
ウ 以上のとおりであるから,本件K供述1の内容と矛盾し,本件談合の事実を否定する証人Tの供述及び陳述(丙A12),証人Uの供述及び陳述(丙A10),証人Jの供述及び陳述(丙B4),証人Rの供述及び陳述(丙B3)並びに証人Vの供述及び陳述(丙C1)は,いずれもその部分について採用することができず,他に本件K供述1の信用性を覆すに足りる証拠はない。
エ 本件K供述1によれば,上記ア(ア)のaないしeの事実が認められるところ,これらの事実に,上記アの(イ)ないし(ケ)の事実及び前記第2の2の事実を総合すると,本件各工事に係る指名競争入札において,入札の前に落札業者及び入札参加業者による受注調整のための話し合いが行われ,その話し合いの中で,当該工事を落札すべき本命業者と本命業者に落札させる手段としての各入札参加業者の入札予定価格の決定が行われ,その話し合いを受けて入札が実施された結果,上記本命業者がいずれも本件各工事を落札し,その本命業者と被告との間で本件各請負契約が締結されたことが高度の蓋然性をもって推認できるというべきである。
(2) 以上のとおり,本件各工事に係る指名競争入札に先立ち,落札業者及び入札参加業者の間で受注調整を目的とした上記内容の話し合いが行われたと認めるのが合理的であるところ,上記の話し合いはいわゆる談合行為(本件談合)にほかならず,本件談合は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)3条の不当な取引制限に該当すると同時に,民事上も明らかに自由競争のルールを逸脱した違法な行為というべきであるから,本件談合に参加した上で被告と本件各請負契約を締結した落札業者であるAら5社は,民法709条に基づき,被告に対し,被告が本件談合によって被った後記損害を賠償すべき責任があるというべきである。
3 争点(3)について
(1) 本件談合は,指名競争入札前に受注予定者を決め,その者が落札できるように互いに入札予定価格を調整し,受注予定者に希望どおりの価格で落札させるというものであって,指名業者間で公正な競争をすることを回避することにより,落札価格の低落を防ぎ,受注した業者の利益を図ることを目的とするものであるから,上記のとおり,本件各工事に係る指名競争入札に先立ち,本件談合が行われたことが認められる以上,本件各工事の発注者である村田町は,本件談合が行われなかった場合に形成されたであろう公正な競争を前提とする価格よりも高額な金額で本件各請負契約を締結した蓋然性が高いというべきである。したがって,本件談合によって村田町が被った損害とは,本件談合がなければ指名業者間の公正な競争を経て入札され形成されたであろう契約金額(又は想定落札価格)と現実の契約金額(又は落札価格)との差額相当額であると推認するのが合理的である。
 しかし,個々の業務の入札において公正な競争を経て形成される落札価格は,入札に係る業務の規模,種類や特殊性のほか,入札指名業者の数や各業者の事業規模,入札当時の社会経済情勢,入札が行われた地域の特性など,さまざまな要因が複雑に影響し合って形成されるものであるから,これらの要因を具体的に検証することなく,当該年度の他の業務の入札における落札価格や他の地方公共団体における指名競争入札を例にとって調査した場合の想定落札価格と対比するのみでは,必ずしも上記損害額を合理的に推計したとは言えないというべきである。
 もっとも,上記のとおり,本件談合により村田町に上記差額相当額の損害が生じた蓋然性が高いと認められるところ,指名競争入札における落札価格を形成する要因は多種多様であることに鑑みると,入札談合を不法行為とする損害は,その性質上その額を立証することが極めて困難であるというべきであるから,民事訴訟法248条を適用して村田町が被った損害額を認定するのが相当である。
(2) 原告らは,反町長派業者の参加の有無により落札率の差が少なくとも15パーセントは存するから,落札価格の15パーセントが村田町の被った損害額であると主張する。
 しかしながら,原告らが反町長派業者と主張する業者が参加している入札においても落札率が95パーセントを超えるケースが少なからず見られること(甲23の61・80,乙3の2),原告らが反町長派業者と主張する業者が参加していない入札において,恒常的に談合が行われていたと認めるに足りる的確な証拠はないこと,原告らが主張する町長派と反町長派という業者の区分自体,必ずしも合理的な根拠に基づくものではないことが窺われること(証人K,同W)に照らすと,村田町が被った損害額を推計する根拠として,原告らの上記主張を採用することは合理性に欠けるといわざるを得ない。
(3) そこで,当裁判所は,本件談合行為の態様,本件各工事の予定価格及び契約金額,入札における落札率等本件に現れた一切の諸事情を総合考慮し,本件談合により村田町の被った損害の相当額を,本件各請負契約の契約価格の5パーセントに相当する金額と認定することが相当であると判断する。具体的には以下のとおりとなる。
ア 本件工事1                  金84万5000円
イ 本件工事2                  金13万5000円
ウ 本件工事3                      金40万円
エ 本件工事4                      金24万円
オ 本件工事5                      金64万円
(4) 被告及び参加人らは,本件各工事が補助金適正化法に基づく国の補助金を財源としており,補助金を本件各工事以外の用途に流用することはできないから,補助金額分については村田町に損害は生じないと主張する。
 しかしながら,本件工事2については,弁論の全趣旨によれば,国の補助金が財源とされていないことが認められることから,被告及び参加人らの上記主張は,失当である。
 また,本件工事1及び3ないし5については,被告及び参加人らの主張するとおり国の補助金が財源とされている部分があるけれども,村田町は,損害賠償金を回収した場合,補助金適正化法15条,16条,18条2項により,国に対し,回収した損害賠償金に応じて補助金相当部分を返還しなければならないと解されるから,補助金交付部分についても村田町の損害賠償請求権は発生すると解するのが相当である。
 したがって,被告及び参加人らの上記主張は採用できない。
4 結論
 以上のとおりであるから,原告らの本訴請求は,被告に対し,Aに対して金84万5000円,Bに対して金13万5000円,Cに対して金40万円,Dに対して金24万円及びEに対して金64万円並びにこれらの各金員に対する不法行為の日の後である平成15年1月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ請求するよう求める限度で理由があるからいずれもこれを認容し,その余の請求は理由がないからいずれもこれを棄却すべきである。
5 よって,主文のとおり判決する。
   仙台地方裁判所第1民事部

   裁判長裁判官     潮   見   直   之



   裁判官     岡   田   伸   太



   裁判官     佐   藤   久   貴