hanrei @Wiki H17. 7.21 松山地方裁判所 平成16年(わ)第650号,②同第660号,③同第587号,平成17年(わ)第35号



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事件番号  :平成16年(わ)第650号,②同第660号,③同第587号,平成17年(わ)第35号
事件名   :
被告人A ①殺人,②覚せい剤取締法違反,③詐欺被告事件
        被告人B ①殺人,③詐欺被告事件
        被告人C ①殺人被告事件
        被告人D ①殺人被告事件
裁判年月日 :H17. 7.21
裁判所名  :松山地方裁判所
部     :刑事部


判決
主文
 被告人Aを懲役15年に,被告人Bを懲役13年に,被告人Cを懲役12年に,被告人Dを懲役12年に処する。
 未決勾留日数中,被告人A及び被告人Bに対しては各140日を,被告人C及び被告人Dに対しては各120日を,それぞれその刑に算入する。
 被告人Aから,松山地方検察庁で保管中のプラスチック袋入り覚せい剤白色結晶性粉末0.838グラム(平成16年領第830号符1号)を没収する。
理由
(犯罪事実)
第1 被告人4名は,共謀の上,平成13年10月31日ころ,愛媛県越智郡a町大字b字(現愛媛県今治市a町b)cd番地の山林において,E(当時24歳)に対し,殺意をもって,同人の頸部にシャツ様の衣類を巻き付け,その両端を引っ張って締め付けるなどし,よって,そのころ,同所において,同人を窒息により死亡させて殺害したものである。
  (平成16年12月22日付起訴状分)
第2 被告人Aは,
1 法定の除外事由がないのに,平成16年11月9日ころ,愛媛県新居浜市ef番地のg所在の自宅において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンを含有する結晶性粉末約0.03グラムを含む水溶液を自己の身体に注射し,もって,覚せい剤を使用し
2 みだりに,同月10日午後零時2分ころ,前記自宅において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩酸塩の結晶性粉末約0.848グラム(松山地方検察庁平成16年領第830号符1号はその鑑定残量)を所持し
たものである。
  (平成16年12月27日付起訴状分)
第3 被告人A及び同Bは,Fと共謀の上,故意に交通事故を起こして休業損害補償金等名下に金員を詐取しようと企て,平成14年2月6日午前零時28分ころ,愛媛県今治市h町i丁目j番k号先路上において,GがH保険株式会社(現株式会社I)との間で自動車保険契約を締結し,上記Fが運転する普通乗用自動車を,被告人Aが運転し被告人Bが同乗する普通乗用自動車に殊更追突させて両車両を損壊させる交通事故を起こした上,同年3月中旬ころ,同市l町m丁目n番地o所在のH今治ビル(現I今治ビル)1階において,上記Gをして,保険代理業者Jに対し,真実は,上記交通事故が故意に起こされたものであるのにその情を秘し,あたかも被告人A及び同Bが上記自動車保険契約に基づく保険金の交付を受ける正当な権限があるかのように装って自動車保険金請求書を提出させて自動車保険金の支払を請求し,上記Jから上記H保険株式会社愛媛支店今治サービスセンター課今治サービスセンター専門副長Kを介して,同課課長Lに上記請求書を回付させ,さらに
1 別紙番号1ないし4(省略)記載のとおり,同年3月14日ころ,上記今治ビル内の上記今治サービスセンターにおいて,上記Kに対し,あたかも不慮の交通事故によって被告人A及び同Bが受傷し,これにより稼働できなかったかのように装って被告人A及び同Bの休業損害証明書等を提出するなどして休業損害補償金等の支払を請求し,同証明書等に基づき上記Kが作成した損害額積算明細書等を上記Lらに回付させるなどし,同人らをしてその旨誤信させて支払決裁をさせ,よって,同年3月18日から同年5月15日までの間,前後4回にわたり,休業損害補償金等として株式会社M銀行に開設したB名義の普通預金口座ほか1か所に合計234万1000円を振込入金させ(平成16年12月1日付起訴状分,平成17年1月31日訴因変更)
2 別紙番号5ないし8(省略)記載のとおり,同年3月25日ころから同年7月4日ころまでの間,前後4回にわたり,N病院事務員をして上記今治サービスセンターに対し,あたかも被告人A及び同Bが不慮の交通事故により受傷したかのように装って被告人A及び同Bの診療報酬明細書等を提出させるなどして治療費の支払を請求し,同明細書等に基づき上記Kが作成した損害額積算明細書等を上記Lらに回付させるなどし,同人らをしてその旨誤信させて支払決裁をさせ,よって,同年4月8日から同年7月8日までの間,前後3回にわたり,治療費として株式会社O銀行に開設したN病院理事長P名義の普通預金口座に合計123万1680円を振込入金させ
3 別紙番号9(省略)記載のとおり,同年5月16日ころ,有限会社Q代表取締役Rをして上記今治サービスセンターに対し,あたかも不慮の交通事故により上記被告人A運転車両が損壊したかのように装って見積書等を提出させるなどして車両修理代金の支払を請求し,上記今治サービスセンター課係員S及び上記Lらをしてその旨誤信させ,同人らをして支払決裁をさせ,よって,同年5月20日,車両修理代金として株式会社M銀行に開設した有限会社Q代表取締役R名義の普通預金口座に128万円を振込入金させ(上記2及び3につき平成17年1月31日付起訴状分)
もって,いずれも人を欺いて財物を交付させたものである。
(証拠の標目)(省略)
(法令の適用)(省略)
(量刑の理由)
1 事案の概要
  被告人4名が,平成13年10月31日ころ,夜間山林において共謀の上,被害者の首を絞めるなどして被害者を殺害した殺人(判示第1),被告人A及び同BがFと共謀の上,平成14年2月6日ころ偽装事故を起こし,自動車事故を装い保険会社から休業損害補償金等を詐取した詐欺(判示第3),平成16年11月9日被告人Aが自宅において覚せい剤を使用し,同月10日覚せい剤を所持した(判示第2)という覚せい剤取締法違反の事案である。
2 判示第1の犯行(以下,本項において「本件犯行」という。)について
 被告人4名は,本件犯行当時暴力団組員又は関係者であり,かつ,被害者とはショットバーの同僚の関係にあった。同ショットバーにおいて,被告人Cが被害者に対し態度が悪いなどと因縁を付け,暴行を振るい,その後,被告人4名及び被害者が寝泊まりしていたマンションにおいて,被告人Aも加わり暴行を加え,さらに被告人4名が山中で被害者に対して暴行を加えているうちに激高し,遂に殺害の意思を相通じて本件犯行に及んでいる。その動機は自己中心的かつ冷酷なものである。被告人4名は,深夜人気のない山林まで被害者を拉致したうえ,被害者にも穴を掘らせて同人をその穴に突き落とし,さらに,被害者が助命を嘆願したにも関わらず,スコップでその上半身を殴打したり,頭部を蹴るなどの暴行を継続した挙げ句,逃れようとした被害者に対し,殺意をもって,その体を押さえつけて,頸部にシャツ様の衣類を巻き付け,被害者の頸部を絞めつけるなどして窒息死させたというものであり,残虐かつ冷酷な行為である。さらに,本件犯行後,被害者を犯行現場の穴に埋め,スコップ等の証拠品もダムに投棄したのみならず,被害者の家族に同人が行方不明になったかのように装うなどして犯跡を隠滅しており,被告人4名に被害者の生命を奪ったことに対する悔悟の念などはいささかも窺われず,犯行後の情状も極めて悪質である。本件犯行は,前途ある被害者の尊い生命を奪ったものであり,その結果はまことに重大である。その上,被害者は,若年であり,殺害されるような落ち度は何らないにもかかわらず,起居を共にしていた被告人4名から執拗な暴行等を受けた挙げ句,殺害され,約3年間もの長期にわたり山中に埋められるがままにされたのであって,その無念さは察するに余りある。被害者の母親が出廷し被告人らに極刑を求める旨供述するなど遺族が厳しい処罰感情を示しているのも至極当然である。以上からすれば,本件犯行における被告人4名の刑事責任は極めて重大というべきである。なお,被告人B,同C及び同Dの弁護人は,被告人Aが本件犯行の主犯格であり,被告人B,同C及び同Dの犯行は従属的である旨主張する。しかし,結論として被告人4名が同等の責任を負うべきと解する。被告人B,同C及び同Dは,被告人Aが「やってしまえ」などの指示を出したので,被害者の頸部を絞めつける殺害行為を敢行した旨供述し,被告人Aはこの指示を否定する。被告人B,同C及び同Dは,被告人Aが脱退した暴力団の構成員であって,自らの刑事責任を軽減しようとして口裏を合わせている可能性も十分に考えられる。また,被告人Aが山林に至る前から殺害を計画し,他の被告人3名に指示を与えていたというような事実はなく,犯行現場で被告人4名がそれぞれ被害者に暴行を振るうなどしているうちに,被告人B,同C及び同Dが躊躇なく本件犯行に及んでいるのであるから,仮に被告人Aが前記のような文言を述べていたとしても,本件犯行について量刑上に違いが生じるような主従の関係はない。
 他方,本件犯行は計画的なものではないという事情も認められる。
3 判示第3の犯行(以下,本項において「本件犯行」という。)について
 本件犯行は,合計485万2680円を詐取したというものであり,被害額は多額である。被告人Aは,Fに対する貸金を回収するためという利欲的な動機で本件を敢行しており酌量の余地はない。被告人Bは,当時暴力団事務所に出入りしていたところ,兄貴分であった被告人Aの前記動機を知りながら,協力しようとの意図に基づき本件を敢行しており,やはり動機に酌量の余地はない。また,本件犯行は判示第1の犯行の約3か月後に敢行されたものであり,被告人A及び同Bの規範意識の鈍麻は顕著である。加えて,本件犯行は,偽装事故に基づく保険金詐欺であって,利欲的かつ模倣性の高い犯行であることからすれば,保険制度に対して与えた影響は軽視できない。また,何らの被害弁償もなされていない。以上からすれば,本件犯行における被告人A及び同Bの刑事責任は重いというべきである。特に,被告人Aは,本件犯行の主犯格と認められる。なぜなら,前記動機に加え,犯行の計画,偽装事故の実行,その後の被害会社係員との交渉などにおいて主導的地位にあること,被告人Aや被告人Bの口座に入金された合計234万1000円を全て管理していたこと(なお,被告人Aが,約110万円を被告人Bの借金の返済に充てたかについては争いがある。そもそも被告人Bの借金の経緯や残額に不自然な点もあるが,いずれにせよ被告人Aが前記入金額全額を管理していたことは明らかであり,被告人Aが主犯格であることを基礎づける事実としては十分である。)からである。
4 判示第2の犯行について
 被告人Aは,喘息の発作が治まると言われたことから,17歳のころ初めて覚せい剤を使用した旨供述し,その後も同様の理由により断続的に使用していたようである。仮に,喘息の発作が事実としても,医者の治療を受けるべきであり,覚せい剤を使用するというのは余りにも短絡的であり,動機に酌量の余地は乏しく,覚せい剤に対する親和性には看過し得ないものがある。その所持していた覚せい剤の量も約0.848グラムと少なくない。したがって,判示第2の各犯行における被告人Aの刑事責任は軽視できない。
5 被告人Aについて
  被告人Aは,被告人4名のうちで最初に判示第1の犯行を認め,判示第2及び第3の犯行も一貫して認めるなど,本件各犯行を反省していること,父親が情状証人として出廷し,服役後の援助を申し出たこと,判示第1及び第3の犯行後に犯した傷害罪による罰金前科しかないことなどの事情もあるが,判示第1の犯行の刑事責任は重大であるうえ,判示第3の犯行において主犯格であったこと及び判示第2の犯行を敢行していることにかんがみると,判示第1の犯行において主犯格にあったとまでは認められないことを勘案したとしても,その刑事責任を他の被告人と同列に扱うことはできない。
6 被告人Bについて
  被告人Bは,判示第1及び第3の各犯行を終始一貫して認めていること,情状証人が出廷し,服役後の雇用及び指導を約束したこと,業務上過失傷害罪による罰金前科しかないことなどの事情もあるが,判示第1の犯行のほか判示第3の犯行も敢行していることにかんがみるとその刑事責任はなお重大というべきである。
7 被告人Cについて
 被告人Cは,判示第1の犯行を終始一貫して認めていること,元妻が情状証人として出廷し,復縁した際の指導監督を約束したこと,判示第1の犯行後に犯した暴力行為等処罰に関する法律違反による罰金前科しかないことなどの事情もあるが,判示第1の犯行の刑事責任はなお重大である。
8 被告人Dについて
  被告人Dは,判示第1の犯行を終始一貫して認めていること,判示第1の犯行から約13年前の自転車競技法違反罪による懲役(執行猶予付き)及び罰金前科しかないことなどの事情もあるが,判示第1の犯行の刑事責任はなお重大である。
9 よって,不利,有利の一切の事情を考慮して,主文のとおり判決する。
(求刑 被告人A・懲役18年と覚せい剤の没収,被告人B・懲役16年,被告人C・懲役15年,被告人D・懲役15年)
平成17年7月21日
松山地方裁判所刑事部
裁判長裁判官   前田昌宏



裁判官   武田義德



裁判官   酒井英臣