hanrei @Wiki H17. 8.30 松山地方裁判所 平成16年(行ウ)第4号 損害賠償請求事件



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判  決

主  文
1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は,Aに対し,金6794万1331円の支払を求めよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
第2 事案の概要
本件は,愛媛県伊予郡a町(平成17年4月1日に愛媛県伊予市と合併して,愛媛県伊予市となった。以下,単に「a町」という。)の住民である原告らが,地方自治法242条の2第4項本文に基づき,被告に対し,a町が平成10年度ないし平成13年度のa町交流促進センター管理運営業務委託契約に係る委託料としてB社に支出した2億6794万1331円のうち6794万1331円につき,①上記委託契約では,委託料はa町交流促進センター(通称「Cホテル」。以下,単に「交流促進センター」という。)に勤務する従業員の給与及び法定福利費に充てるために支払われるものとされているのに,a町長であるAは,上記委託契約に反し,上記金員を交流促進センターで勤務していない従業員の給与に充てるために支払った,②上記委託契約では,委託料は各年度5000万円と定められているのに,a町長であるAは,上記委託契約に反し,上記委託契約所定の委託料合計2億円を6794万1331円超える金員を支払ったとして,上記委託料支出当時a町長であったAに対して上記超過額相当の損害賠償請求をするよう求めた事案である。
第3 前提事実(証拠を掲記したもの以外は,当事者間に争いがない。)。
 1 当事者等
 原告らは,a町の住民である。B社は,農林産物を活用したa町の郷土料理及び特産物の研究開発等を目的とする有限会社である(甲1)。
 2 平成10年度の管理運営業務委託契約の締結等
(1) a町とB社とは,平成10年4月1日,同日から平成11年3月31日までを委託期間として,a町がB社に対し交 流促進センターの管理運営に関する業務を委託する旨の契約(以下「平成10年度委託契約」という。)を締結した。
(2) 平成10年度委託契約に基づいてa町がB社に支払った委託料の支出命令日,支出日及び支出額は以下のとおりであり,支出額の合計は7023万4237円である。
 ア 支出命令日 平成10年 4月23日
支出日      同年 4月24日
支出額    1717万7659円
イ 支出命令日 平成10年 7月13日
支出日      同年 7月15日
支出額         300万円
ウ 支出命令日 平成10年 7月21日
支出日      同年 7月23日
支出額    1524万1902円
エ 支出命令日 平成10年10月12日
支出日      同年10月21日
支出額    2141万3315円
オ 支出命令日 平成11年 1月 7日
支出日      同年 1月19日
支出額     816万7124円
カ 支出命令日 平成11年 3月18日
支出日      同年 3月23日
支出額     414万2915円
キ 支出命令日 平成11年 3月31日
支出日      同年 4月19日
支出額     109万1322円
 3 平成11年度の管理運営業務委託契約の締結等
(1) a町とB社とは,平成11年4月1日,同日から平成12年3月31日までを委託期間として,a町がB社に対し交流促進センターの管理運営に関する業務を委託する旨の契約(以下「平成11年度委託契約」という。)を締結した。
(2) 平成11年度委託契約に基づいてa町がB社に支払った委託料の支出命令日,支出日及び支出額は以下のとおりであり,支出額の合計は6838万4647円である。
 ア 支出命令日 平成11年 4月14日
支出日      同年 4月22日
支出額    1581万9750円
イ 支出命令日 平成11年 7月 5日
支出日      同年 7月12日
支出額    1755万4442円
ウ 支出命令日 平成11年 9月29日
支出日      同年10月20日
支出額    2079万4852円
エ 支出命令日 平成12年 1月 7日
支出日      同年 1月21日
支出額    1083万0956円
オ 支出命令日 平成12年 3月16日
支出日      同年 3月22日
支出額     217万1679円
カ 支出命令日 平成12年 3月28日
支出日      同年 4月 6日
支出額      37万8000円
キ 支出命令日 平成12年 3月31日
支出日      同年 4月21日
支出額      83万4968円
 4 平成12年度の管理運営業務委託契約の締結等
(1) a町とB社とは,平成12年4月1日,同日から平成13年3月31日までを委託期間として,a町がB社に対し交流促進センターの管理運営に関する業務を委託する旨の契約(以下「平成12年度委託契約」という。)を締結した。
(2) 平成12年度委託契約に基づいてa町がB社に支払った委託料の支出命令日,支出日及び支出額は以下のとおりであり,支出額の合計は6787万2256円である。
 ア 支出命令日 平成12年 4月12日
支出日      同年 4月21日
支出額    1465万9623円
イ 支出命令日 平成12年 6月26日
支出日      同年 7月10日
支出額    1733万9510円
ウ 支出命令日 平成12年 8月23日
支出日      同年 9月19日
支出額         100万円
エ 支出命令日 平成12年10月 5日
支出日      同年10月20日
支出額    1700万0867円
オ 支出命令日 平成12年12月 5日
支出日      同年12月19日
支出額         500万円
カ 支出命令日 平成13年 1月11日
支出日      同年 1月22日
支出額         700万円
キ 支出命令日 平成13年 2月 7日
支出日      同年 2月20日
支出額         300万円
ク 支出命令日 平成13年 3月19日
支出日      同年 3月22日
支出額     197万5717円
ケ 支出命令日 平成13年 4月20日
支出日      同年 4月24日
支出額      89万6539円
 5 平成13年度の管理運営業務委託契約の締結等
(1) a町とB社とは,平成13年4月1日,同日から平成14年3月31日までを委託期間として,a町がB社に対し交流促進センターの管理運営に関する業務を委託する旨の契約(以下「平成13年度委託契約」といい,平成10年度委託契約,平成11年度委託契約,平成12年度委託契約と併せて「本件各委託契約」という。)を締結した。
(2) 平成13年度委託契約に基づいてa町がB社に支払った委託料の支出命令日,支出日及び支出額は以下のとおりであり,支出額の合計は6713万8785円である。
 ア 支出命令日 平成13年 4月19日
支出日      同年 4月24日
支出額     510万3461円
イ 支出命令日 平成13年 5月 8日
支出日      同年 5月24日
支出額         900万円
ウ 支出命令日 平成13年 5月31日
支出日      同年 6月21日
支出額         900万円
エ 支出命令日 平成13年 8月 2日
支出日      同年 8月23日
支出額        1500万円
オ 支出命令日 平成13年10月 9日
支出日      同年10月22日
支出額         900万円
カ 支出命令日 平成13年11月27日
支出日      同年12月 7日
支出額          99万円
キ 支出命令日 平成13年12月 7日
支出日      同年12月20日
支出額         900万円
ク 支出命令日 平成14年 1月 7日
支出日      同年 1月22日
支出額         600万円
ケ 支出命令日 平成14年 3月12日
支出日      同年 3月18日
支出額         370万円
コ 支出命令日 平成14年 3月19日
支出日      同年 3月20日
支出額      34万5324円
 6 平成14年度及び平成15年度の管理運営業務委託契約の締結
 a町とB社とは,平成14年4月1日,同日から平成15年3月31日までを委託期間として,a町がB社に対し交流促進センターの管理運営に関する業務を委託する旨の契約(以下「平成14年度委託契約」という。)を締結し,さらに,平成15年4月1日,同日から平成16年3月31日までを委託期間として,a町がB社に対し交流促進センターの管理運営に関する業務を委託する旨の契約(以下「平成15年度委託契約」という。)を締結した。
 7 原告らによる住民監査請求等の経緯
(1) 原告らは,平成16年1月29日,地方自治法242条1項に基づき,a町監査委員に対し,本件各委託契約に係る委託料として支払われた金員につき,本件各委託契約では,委託料は,交流促進センターに勤務する従業員の給与及び法定福利費に充てるために支払われるものとされているのに,a町長であるAは,上記委託契約に反し,上記金員を交流促進センターに勤務していない従業員の給与等に充てるために支払ったと主張して,a町長であるAに対し,平成10年から平成13年までの間に,本件各委託契約に係る委託料としてB社に支払った金員のうち,交流促進センターの従業員ではない者の給与として支払われた金員の支払を請求するよう求める監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。
(2) a町監査委員は,平成16年3月22日,本件監査請求は,地方自治法242条2項の請求期間を徒過しており,しかも,徒過したことに正当な理由があったとは認められないとして,本件監査請求を却下した(乙2)。
 (3) 原告らは,平成16年4月22日,本件訴えを提起した。
 8 a町と愛媛県伊予市との合併
 a町は,平成17年4月1日,愛媛県伊予市と合併して愛媛県伊予市となった。
第4 争点
 1 地方自治法242条2項ただし書所定の「正当な理由」の有無(本案前の争点)。
(1) 原告らの主張
 ア 普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても,客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合に,同項の「正当な理由」が認められると解すべきである。
 イ 本件では,本件各委託契約についてa町議会で審議されていないので,a町議会議員でさえ本件各委託契約の存在について知らなかったのであるし,a町議会議事録にもa町が発行する「広報a」にも,本件各委託契約が締結され,委託料として約6800万円が支出されていることについて明記されていないなど,本件各委託契約及び本件各委託契約に係る委託料支出の存在及び内容について周知されていなかった。
 そして,原告らが,B社の平成13年度及び平成14年度の決算報告書を入手したのは,平成15年3月26日であり,本件各委託契約の存在及び本件各委託契約所定の委託料が5000万円であることを知ったのは,原告らがa町長に情報公開請求をして平成13年度委託契約に係る契約書の写しの交付を受けた平成15年5月29日である。また,原告らは,平成14年度の委託料の支出額については,平成15年8月12日付け「住民監査請求に基づく監査結果について(通知)」と題する書面によって知ることができたが,本件各委託契約のうち平成13年度以前のものに係る委託料の支出額については,平成13年3月31日以前の公文書の情報公開請求ができないので知ることができなかった。
ウ このように,原告らは,平成15年8月まで本件各委託契約及び本件各委託契約に係る委託料支出の存在及び内容を知ることができなかったのであるから,本件監査請求が支出後1年を経過した後になされたことについて正当な理由があるというべきである。
(2) 被告の主張
 ア 地方自治法242条2項ただし書の「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が,相当の注意力をもって調査しても客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,又当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである。
 イ a町の住民は,本件各委託契約の存在については毎年12回(毎月20日ころ)発行されてa町住民に配布される「広報a」を通して知り得たはずであるし,本件各委託契約に基づく委託料に関する予算は,毎年3月に開催されるa町議会で,また決算は毎年9月に開催されるa町議会で各議決され,その議事録は会議終了後速やかに調製されるので,それ以降であれば,議事録を閲覧して委託料の支出額を知ることができたはずである。また,本件各委託契約に係る契約書については,各年度当初(4月1日)に委託契約が締結されており,各年度のB社の決算報告書については,毎年12月31日現在で事業期間経過後2か月以内に調製されており,いずれも,それ以降であれば,a町の住民は,a町情報公開条例に基づく手続に従って閲覧し,又は写しの交付を受けることができたはずであるし,情報公開条例施行日以前においても,公開されないということはなかったはずである。
ウ 以上より,a町の住民は,相当な注意力をもって調査すれば,本件各委託契約に基づく委託料支出後1年以内には支出行為の存在及び内容を知ることができたのであるから,本件において正当な理由があったということはできない。
 2 当時a町長であったAは,本件各委託契約に反し,本件各委託契約に係る委託料を交流促進センターの従業員の給与及び法定福利費以外に充てるためにも支出したか(本案の争点)。
(1) 原告らの主張
 ア 本件各委託契約では,委託料は交流促進センターの従業員の給与及び法定福利費に充てるとされているが,当時のa町長であったAは,交流促進センターの従業員の給与及び法定福利費だけではなく,B社の従業員で交流促進センターに勤務していない者の給与及び法定福利費に充てるものとして,本件各委託契約に係る委託料を支払った。
 イ B社の平成13年度決算報告書は,交流促進センター部分を除いた,B社部分についてのみの決算報告書であるが,同報告書の「C給料手当」欄に1280万9888円が差し引かれて記載されているのは,B社の従業員の給与を本件各委託契約に係る委託料から支払っていたからにほかならない。平成10年度から平成12年度にかけても同様である。
(2) 被告の主張
  B社は,平成10年度から平成13年度において,交流促進センターに勤務するB社の従業員の給与及び法定福利費を前払いし,各決算期において算出された精算額を,委託料として約定に従いa町から受領していたのである。B社の平成13年度決算報告書の「C給料手当」欄に記載されている金額である1280万9888円が,交流促進センターに勤務する者以外の者に対して支払われたという主張は,原告ら独自の推論でしかない。
 3 当時a町長であったAが,B社に対し,本件各委託契約に係る委託料として各年毎に5000万円を超える支出をしたことは違法か(本案の争点)。
(1) 原告らの主張
  本件各委託契約では,委託料が5000万円と定められているにもかかわらず,a町はそれを超えた額の公金を支出しているので,本件各委託契約所定の5000万円を超える支出は本件各委託契約に違反した違法な支出である。
(2) 被告の主張
  本件各委託契約では,精算の結果足りないときは,その精算しなければならない精算額をもって委託料とすると定められているのであるから,本件各委託契約に係る委託料が5000万円を超えていても違法であるということはできない。
第5 当裁判所の判断
1 争点1(地方自治法242条2項ただし書所定の「正当な理由」の有無)について
(1) 事実経過
 前提事実に証拠(乙3の1)及び弁論の全趣旨を総合すると,本件監査請求に至る経緯等に関し,次の事実が認められる。
ア 原告らは,平成15年3月10日,a町長に対し,B社の平成11年度以降の各年度の決算報告書等の公文書公開請求を行ったところ,同月26日,a町長から,B社の平成13年度及び平成14年度の決算報告書等の各写しの交付を受けた(乙3の8)。このうち,平成13年度(平成13年1月1日から同年12月31日まで)の決算報告書では,「販売費及び一般管理費」欄における「C給料手当」欄に「△12,809,888」と記載されている(甲9,乙3の6)。
 イ 原告らは,平成15年5月19日,a町長に対して公文書公開請求を行ったところ,同月29日,a町長から,平成13年度委託契約に係る契約書及び平成14年度委託契約に係る契約書各写しの交付を受けた(甲12)。
ウ 原告ら外3名は,平成15年6月13日付けで,a町長らがB社に対して平成14年度委託契約に係る委託料として支払った1億0379万7655円及び損失補償金として支払った3604万9000円のうち1121万0025円の合計1億1500万7680円の支出が違法であるとして,同額の金員の返還をa町長らに求める旨の住民監査請求を行った。原告らの上記住民監査請求は棄却され,原告らは,平成15年8月12日付けの「住民監査請求に基づく監査結果について(通知)」と題する書面を受け取った。
エ 原告らは,B社の上記平成13年度及び平成14年度の決算報告書の写し,平成13年度及び平成14年度の委託契約書の写しにより,上記平成13年度のB社の決算報告書の「販売費及び一般管理費」にはC給与手当として1280万9888円がマイナス計上されていることを知るとともに,同年8月12日付けの上記「住民監査請求に基づく監査結果について(通知)」によって平成14年度委託契約に係る委託料が6765万7796円であることを知り,これらの事実に基づき,平成16年1月29日,本件監査請求を行った。
(2) 検討
 ア 前記前提事実のとおり,本件各委託契約に基づく委託料の最終支出は,平成10年度が平成11年4月19日に,平成11年度が平成12年4月21日に,平成12年度が平成13年4月24日に,平成13年度が平成14年3月20日にそれぞれ行われ,本件監査請求が,上記各最終支出日から1年以上経過した平成16年1月29日にされたことは当事者間に争いがないから,本件監査請求につき,地方自治法242条2項ただし書所定の「正当な理由」があったかにつき,検討する。
イ 地方公共団体の住民が相当な注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,地方自治法242条2項ただし書所定の正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものであるが,当該普通地方公共団体の一般住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて上記の程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなくても,監査請求をした者が上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される場合には,上記正当な理由の有無は,そのように解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁平成14年10月15日第三小法廷判決・裁判集民事208号157頁参照)。
 そして,前記認定のとおり,原告らは,B社の平成13年度及び平成14年度の決算報告書の写し,平成13年度及び平成14年度の委託契約書の写しを入手して,上記平成13年度のB社の決算報告書の「販売費及び一般管理費」にC給与手当として1280万9888円がマイナス計上されていることを知るとともに,平成15年8月12日付けの「住民監査請求に基づく監査結果について(通知)」によって平成14年度委託契約に係る委託料が6765万7796円であることを知り,これに基づいて本件監査請求をしているのであるから,原告らは,上記各書面を取得した平成15年8月12日ころには,本件各委託契約に係る委託料支出について監査請求をするに足りる程度にその存在及び内容を認識していたというべきである。そうすると,同日から約5か月も経過した後にされた本件監査請求は前記の相当な期間内にされたものということはできず,本件監査請求に地方自治法242条2項ただし書所定の「正当な理由」があるということはできない。
 ウ 以上より,原告らの本件訴えは,監査請求前置の要件を欠き不適法というほかない。
2 結論
よって,原告らの本件訴えは,その余の点について判断するまでもなく,不適法であるから却下することとし,主文のとおり判決する。
松山地方裁判所民事第2部


裁判長裁判官   坂倉充信


裁判官   角谷昌毅


裁判官   齊藤貴一