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小説:ホントウノキモチ」(2005/08/01 (月) 03:33:34) の最新版変更点

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桐山月彦(きりやま つきひこ)。ボクの名前だ。歳は15、卒業を控えた中学3年生だ。 すでに行く高校も決まっていて、このまま時間の流れるままに時を過ごせば、じきにこの学校ともお別れになってしまう。  「はぁ・・・」 はっきり言って、もう学校に来てもこなくても、どっちでもいいし。かといって家でゴロゴロと過ごすのもヒマになるし。 ・・・というわけで、仕方なく(?)学校に来ているわけだが・・・。  「・・・・・・・」 実はもうひとつ、学校に来る理由がある。それは・・・  「・・・今日も仕事、がんばらないと」 ボクはコレでも図書委員だ。というか、クラスのみんな、クチをそろえて「図書委員的な顔してる」って言うけど・・・。  「・・・そうなのかな?」 そんな疑問がわきつつ、ボクは図書室に向かった。  「今日は、がんばらないと・・・!」 余談だが、本好きなのが転じてか、図書委員は1年生の頃からずっとやっている。だからどの棚にどの本があるか・とか、すべて把握してるのだ。 ・・・だからって別にどうってことないんだけどね。  「・・・ふぅ、とりあえず、この棚は終わりかな」 仕事が一段落ついた。仕事といっても、本の整理なんていうありきたりな作業なんだけれども。 というか、こんなこと別にボクがやらなくてもいいんだけれども、先生がヒマなボクを捕まえて・・・要するに、白羽の矢が立ったと。 まぁ先生は「やっても、やらなくても、どっちでもいいよ」って言ってたけど、どうせなら・ってことで、この仕事を引き受けた。  ガラガラ・・・ 唐突にドアが開いた。  「あ、雨宮さん」  「お仕事ごくろうさま、桐山くん」 入ってきたこの子は雨宮姫子(あまみや ひめこ)。ボクと同様に3年間、ずっと図書委員をやってきた。  「私も何かできることないかな?」 雨宮さんがそう尋ねてきた。別にボク一人でもできるんだけど、ふたりでいっしょにやったほうが速いので、  「そんじゃ窓際の棚を片付けていこっか」  「うん、わかった」 そういって一緒に目的の棚を整理していく。  「あれ、この本ってあっちの棚のだよね?」  「うん、そうだね」 雨宮さんもまた、すべての本の位置を把握している。というかそんな人間、この学校にボクと雨宮さん以外にいないだろうけど・・・。  「そういえば雨宮さん、高校はどこに行くの?」 何気なく聞いてみる。雨宮さんは惜しむこともなく、  「呉葉高校よ」 と言った。偶然(?)にも、ボクもそこに行くことになってる。・・・嬉しい限りだ。 ボクがずっと図書委員を続けていたのには、本好きなのとは別に、もうひとつ理由があった。それは、  『雨宮さんに会えるから・・・』 ボクは3年間、ずっと雨宮さんを見ていた。ボクは元々内気な性格の方だから、最初はなかなか声をかけれなかったけど、雨宮さんの方から声をかけてきてくれたのだ。 そこから徐々に話す回数も多くなり、今では普通に声をかけれるようになった。 ・・・僕は雨宮さんに恋をしている。それは自分でもハッキリと分かることだった。  「はぁ・・・」 でもボクには、そのことを雨宮さんに告白する勇気もないし、度胸もない。こんな性格だからなのかな・・・。 だけどこのままこの気持ちを、ずっと押し殺していくのもイヤだったし、何より自分の気持ちを隠しているみたいで気分が悪い。 だからボクは、今日はいっちょ前に、勇気を出してみようと思う。どんな結果になろうとも、後悔はしないはずだから・・・。  「よし、がんばるぞ!」 それから仕事は順調に進み、結構片付いた。  「・・・ふぅ、雨宮さん、そろそろ時間も遅くなってきたし、帰ろうか?」  「うん、そうだね」 ボクはいつもどおり、雨宮さんと帰る支度をする。  「・・・・・・」 何かと緊張感が高まってきた。やっぱり、こういうのってドキドキするもんなんだなぁ・・・。  「どうしたの?桐山くん?顔、赤いよ?」  「い・い、いや、なんでもないよ・・・」  「そう?だったらいいけど」 ・・・顔に出てたのか・・・。あぶないあぶない・・・。バレてないだろうか・・・。 一抹の不安に駆られながらも、ボクと雨宮さんは下駄箱に向かっていった。 ・・・・・・どうしよう。いつ切り出せばいいんだろう・・・。 ボクは今まで告白なんて考えたこともなかったから、どう話し始めればいいのかなんて思いつくはずもない。 しかも、ボクと雨宮さんは家の方向が反対だから、校門を出ればもうお別れになってしまう。  (・・・言うなら、今しかないのかな・・・) あぁ、でも、断られたらどうしよう。気まずくなっちゃうかも・・・。  「桐山くん、ボーっとしちゃって、どうしたの?」  「うえぃあ!?なな・なんでもないよ・・・」 思わず変な声を出してしまった。・・・うわぁ、最悪じゃん・・・?  (いっそのこと、今度にしちゃおうかな?) そんな考えが、僕の頭の中をよぎる。そうだよ、別に今日じゃなくてもいいじゃないか。  (いや、それじゃダメなんだ!ボクは今日言う って、決めたじゃないか!) 頭の中で複雑に葛藤した挙句、ボクは、  「雨宮さん・・・!」  「ん?なに?」 ボクは唐突に切り出していた。クチが勝手にしゃべっていた、とでも言うように。  「え・・えぇと、その・・・」 まさにマンガのセリフみたいに出だしが詰まる。ああぁ・・・、ダメじゃんボク・・・。  「なにかな?」 雨宮さんは、このセリフの続きを待ってる。・・・どうしようどうしようどうしよう・・・。  「・・・・・・実は・・・」 ボクは覚悟を決めた。たった一言、言うだけでいいんじゃないか。たった一言、ボクの気持ちを伝えるだけで・・・。  「・・・ずっと前から、雨宮さんのこと・・・好き・・・だったんだ・・・」 言い切った。ボクは、ボクのすべての想いを言い切った。  「・・・・・・ありがとう、桐山くん♪」  「・・・あ、いや・・・」 『ありがとう』 そう、返ってきた。・・・・・・ありがとう? ボクは雨宮さんに本当の想いを伝えた。だけど、その答えに、ボクはどんな反応を示せばいいのか分からない。 YESなのか?NOなのか? ボクの頭の中でこの二つの意味がぐるぐる回っている。  「あ・あの、雨宮さん。それはどう・・・・・・」  「―--------お礼に・・・」 雨宮さんはボクの言葉をさえぎり・・・  「!!」 ―――――ボクと雨宮さんは、唇を重ね合わせた。これがファーストキス。この一瞬の間が、何時間にも感じられた。  「えと、あの、雨宮さん・・・?」  「やだなぁ、私のことは姫子って呼んでよ、月彦くん!」  「・・・・・・分かった・・・姫子」 ボクのこの想いは、しっかりと、姫子へと届いた。 そしてボクと雨み・・・・姫子は、下駄箱から校門までの短い距離を一緒に歩き出す。  「あの・・・、姫・・・子?本当にボクなんかでよかったの?」  「・・・・・・月彦くん、さっきのはお礼のキス、だったよね」  「うん、さっきもそう言ってたね」 今思い出すと、下駄箱の前で堂々とするとは・・・。結構・・・というかかなり大胆なことをやったもんだな・と思う。  「―――――じゃぁ これは、『これからもよろしく』のキス!」  「―――!」 そういうと、ボクと姫子は、本日2回目のキスを、校門のド真ん中で交わした。先ほどのキスより、大胆で深い、キスを・・・・・・。  「ん・・・んむ・・・・んふ・・・」 深く、長く、ボクと姫子は互いに唇を求め合った。 やがて時間は過ぎ行き、卒業を迎えた。この学校とも、ついにお別れだ。  「卒業おめでとう、月彦くん!」  「姫子こそ、卒業おめでとう」 体育館から出ると、泣いてる人やら、喜んでる人やらいっぱいいる。そんな中、結構簡単に姫子を見つけることが出来た。  「最高の想い出を、ありがとう、姫子」  「私も、忘れられない想い出をありがとう、月彦くん」 ボクも姫子も、いろいろな喜びで満たされていた。 ふとボクは、卒業した高揚感からか、あることを思いついた。  「姫子、ここでキスしない?」  「え?えぇ!?」 そこは大衆のど真ん中。もう大胆どころの騒ぎではない。  「月彦くん、さすがにここではまずいよぅ!」 顔を赤らめながら姫子が言う。そんなこと、僕も分かってるって。  「・・・・・・そういえば、いつも姫子からだったよな?」  「へ?」  「今日は、ボクからだ!」  「!」 ―――――初めて、ボクから姫子にキスをした。姫子は少し驚いていたけど、優しく受け止めてくれた。 ・・・回りの人たちは、おぉっ!?とか歓声を上げてるし、中には校門から飛び出して車にはねられた人もいる。←?  「ん・・・む・・・はぁ・・・」 お互いに唇を離し、ふと目が合う。  「・・・もう、はずかしいよぅ・・・」  「ハハハ、いいじゃないか」 正直、なんでこんなことを思いついたのか、自分でも分からない。  「お前たちも見せ付けてくれるねえ・・・」 ウチのクラスの担任だった先生が、そう言って近づいてくる。  「いや・・・別にそういう意味でやったわけでは・・・」 急に恥ずかしさがこみ上げてくる。やっぱやらない方がよかったかな・・・。  「なんにせよ、お前たち、行く高校も一緒なわけだし、仲良くやってけよ!」  「もちろんですよ」  「・・・・・・それとな、お前らの行く高校に先生の知り合いがいてな・・・」  「はい?」 先生の知り合い?どういうことだろう?  「お前らのことを思ってな・・・」  「・・・なんですか?」  「お前と雨宮、同じクラスにしてやったぞ!」  「・・・・・・へ?」 今、なんて?  「なんだ、その顔は。迷惑だったのか?」  「いや・・・迷惑なわけないですよ。ってそれ本当ですか?」  「フフフ、先生に不可能はない!」 あえて突っ込みたいことは言わず、ボクは姫子の方を見る。すると姫子は、  「じゃぁ先生、私と月彦くんを、ずっといっしょのクラスにする・っていうのは可能ですか?」  「・・・まかせておけ!!」  「「やったぁーっ!!」」 ボクと姫子は思わず同時に叫んでしまった。また周りの人々に注目されてしまった。そしてまたさっきの人が、車にはねられた。  「先生、ありがとうございます!」  「おうよ!んじゃ、達者でな!」 ボクと姫子は、壮大な青空の下、学校を後にした。 ――――ボクは変わってゆく。いや、正確には変わり始めている。 この流れゆく時の中で、つまづきながらも、歩き続けてゆく。大切な、大切な人とともに・・・。 「月彦くん」「姫子」 「「大好き!!」」 ――――ボクの毎日が変わっていく。その第一歩を、今、歩き始めた。姫子と、ともに―――――。
桐山月彦(きりやま つきひこ)。ボクの名前だ。歳は15、卒業を控えた中学3年生だ。 すでに行く高校も決まっていて、このまま時間の流れるままに時を過ごせば、じきにこの学校ともお別れになってしまう。  「はぁ・・・」 はっきり言って、もう学校に来てもこなくても、どっちでもいいし。かといって家でゴロゴロと過ごすのもヒマになるし。 ・・・というわけで、仕方なく(?)学校に来ているわけだが・・・。  「・・・・・・・」 実はもうひとつ、学校に来る理由がある。それは・・・  「・・・今日も仕事、がんばらないと」 ボクはコレでも図書委員だ。というか、クラスのみんな、クチをそろえて「図書委員的な顔してる」って言うけど・・・。  「・・・そうなのかな?」 そんな疑問がわきつつ、ボクは図書室に向かった。  「今日は、がんばらないと・・・!」 余談だが、本好きなのが転じてか、図書委員は1年生の頃からずっとやっている。だからどの棚にどの本があるか・とか、すべて把握してるのだ。 ・・・だからって別にどうってことないんだけどね。  「・・・ふぅ、とりあえず、この棚は終わりかな」 仕事が一段落ついた。仕事といっても、本の整理なんていうありきたりな作業なんだけれども。 というか、こんなこと別にボクがやらなくてもいいんだけれども、先生がヒマなボクを捕まえて・・・要するに、白羽の矢が立ったと。 まぁ先生は「やっても、やらなくても、どっちでもいいよ」って言ってたけど、どうせなら・ってことで、この仕事を引き受けた。  ガラガラ・・・ 唐突にドアが開いた。  「あ、雨宮さん」  「お仕事ごくろうさま、桐山くん」 入ってきたこの子は雨宮姫子(あまみや ひめこ)。ボクと同様に3年間、ずっと図書委員をやってきた。  「私も何かできることないかな?」 雨宮さんがそう尋ねてきた。別にボク一人でもできるんだけど、ふたりでいっしょにやったほうが速いので、  「そんじゃ窓際の棚を片付けていこっか」  「うん、わかった」 そういって一緒に目的の棚を整理していく。  「あれ、この本ってあっちの棚のだよね?」  「うん、そうだね」 雨宮さんもまた、すべての本の位置を把握している。というかそんな人間、この学校にボクと雨宮さん以外にいないだろうけど・・・。  「そういえば雨宮さん、高校はどこに行くの?」 何気なく聞いてみる。雨宮さんは惜しむこともなく、  「呉葉高校よ」 と言った。偶然(?)にも、ボクもそこに行くことになってる。・・・嬉しい限りだ。 ボクがずっと図書委員を続けていたのには、本好きなのとは別に、もうひとつ理由があった。それは、  『雨宮さんに会えるから・・・』 ボクは3年間、ずっと雨宮さんを見ていた。ボクは元々内気な性格の方だから、最初はなかなか声をかけれなかったけど、雨宮さんの方から声をかけてきてくれたのだ。 そこから徐々に話す回数も多くなり、今では普通に声をかけれるようになった。 ・・・僕は雨宮さんに恋をしている。それは自分でもハッキリと分かることだった。  「はぁ・・・」 でもボクには、そのことを雨宮さんに告白する勇気もないし、度胸もない。こんな性格だからなのかな・・・。 だけどこのままこの気持ちを、ずっと押し殺していくのもイヤだったし、何より自分の気持ちを隠しているみたいで気分が悪い。 だからボクは、今日はいっちょ前に、勇気を出してみようと思う。どんな結果になろうとも、後悔はしないはずだから・・・。  「よし、がんばるぞ!」 それから仕事は順調に進み、結構片付いた。  「・・・ふぅ、雨宮さん、そろそろ時間も遅くなってきたし、帰ろうか?」  「うん、そうだね」 ボクはいつもどおり、雨宮さんと帰る支度をする。  「・・・・・・」 何かと緊張感が高まってきた。やっぱり、こういうのってドキドキするもんなんだなぁ・・・。  「どうしたの?桐山くん?顔、赤いよ?」  「い・い、いや、なんでもないよ・・・」  「そう?だったらいいけど」 ・・・顔に出てたのか・・・。あぶないあぶない・・・。バレてないだろうか・・・。 一抹の不安に駆られながらも、ボクと雨宮さんは下駄箱に向かっていった。 ・・・・・・どうしよう。いつ切り出せばいいんだろう・・・。 ボクは今まで告白なんて考えたこともなかったから、どう話し始めればいいのかなんて思いつくはずもない。 しかも、ボクと雨宮さんは家の方向が反対だから、校門を出ればもうお別れになってしまう。  (・・・言うなら、今しかないのかな・・・) あぁ、でも、断られたらどうしよう。気まずくなっちゃうかも・・・。  「桐山くん、ボーっとしちゃって、どうしたの?」  「うえぃあ!?なな・なんでもないよ・・・」 思わず変な声を出してしまった。・・・うわぁ、最悪じゃん・・・?  (いっそのこと、今度にしちゃおうかな?) そんな考えが、僕の頭の中をよぎる。そうだよ、別に今日じゃなくてもいいじゃないか。  (いや、それじゃダメなんだ!ボクは今日言う って、決めたじゃないか!) 頭の中で複雑に葛藤した挙句、ボクは、  「雨宮さん・・・!」  「ん?なに?」 ボクは唐突に切り出していた。クチが勝手にしゃべっていた、とでも言うように。  「え・・えぇと、その・・・」 まさにマンガのセリフみたいに出だしが詰まる。ああぁ・・・、ダメじゃんボク・・・。  「なにかな?」 雨宮さんは、このセリフの続きを待ってる。・・・どうしようどうしようどうしよう・・・。  「・・・・・・実は・・・」 ボクは覚悟を決めた。たった一言、言うだけでいいんじゃないか。たった一言、ボクの気持ちを伝えるだけで・・・。  「・・・ずっと前から、雨宮さんのこと・・・好き・・・だったんだ・・・」 言い切った。ボクは、ボクのすべての想いを言い切った。  「・・・・・・ありがとう、桐山くん♪」  「・・・あ、いや・・・」 『ありがとう』 そう、返ってきた。・・・・・・ありがとう? ボクは雨宮さんに本当の想いを伝えた。だけど、その答えに、ボクはどんな反応を示せばいいのか分からない。 YESなのか?NOなのか? ボクの頭の中でこの二つの意味がぐるぐる回っている。  「あ・あの、雨宮さん。それはどう・・・・・・」  「――――お礼に・・・」 雨宮さんはボクの言葉をさえぎり・・・  「!!」 ―――――ボクと雨宮さんは、唇を重ね合わせた。これがファーストキス。この一瞬の間が、何時間にも感じられた。  「えと、あの、雨宮さん・・・?」  「やだなぁ、私のことは姫子って呼んでよ、月彦くん!」  「・・・・・・分かった・・・姫子」 ボクのこの想いは、しっかりと、姫子へと届いた。 そしてボクと雨み・・・・姫子は、下駄箱から校門までの短い距離を一緒に歩き出す。  「あの・・・、姫・・・子?本当にボクなんかでよかったの?」  「・・・・・・月彦くん、さっきのはお礼のキス、だったよね」  「うん、さっきもそう言ってたね」 今思い出すと、下駄箱の前で堂々とするとは・・・。結構・・・というかかなり大胆なことをやったもんだな・と思う。  「―――――じゃぁ これは、『これからもよろしく』のキス!」  「―――!」 そういうと、ボクと姫子は、本日2回目のキスを、校門のド真ん中で交わした。先ほどのキスより、大胆で深い、キスを・・・・・・。  「ん・・・んむ・・・・んふ・・・」 深く、長く、ボクと姫子は互いに唇を求め合った。 やがて時間は過ぎ行き、卒業を迎えた。この学校とも、ついにお別れだ。  「卒業おめでとう、月彦くん!」  「姫子こそ、卒業おめでとう」 体育館から出ると、泣いてる人やら、喜んでる人やらいっぱいいる。そんな中、結構簡単に姫子を見つけることが出来た。  「最高の想い出を、ありがとう、姫子」  「私も、忘れられない想い出をありがとう、月彦くん」 ボクも姫子も、いろいろな喜びで満たされていた。 ふとボクは、卒業した高揚感からか、あることを思いついた。  「姫子、ここでキスしない?」  「え?えぇ!?」 そこは大衆のど真ん中。もう大胆どころの騒ぎではない。  「月彦くん、さすがにここではまずいよぅ!」 顔を赤らめながら姫子が言う。そんなこと、僕も分かってるって。  「・・・・・・そういえば、いつも姫子からだったよな?」  「へ?」  「今日は、ボクからだ!」  「!」 ―――――初めて、ボクから姫子にキスをした。姫子は少し驚いていたけど、優しく受け止めてくれた。 ・・・回りの人たちは、おぉっ!?とか歓声を上げてるし、中には校門から飛び出して車にはねられた人もいる。←?  「ん・・・む・・・はぁ・・・」 お互いに唇を離し、ふと目が合う。  「・・・もう、はずかしいよぅ・・・」  「ハハハ、いいじゃないか」 正直、なんでこんなことを思いついたのか、自分でも分からない。  「お前たちも見せ付けてくれるねえ・・・」 ウチのクラスの担任だった先生が、そう言って近づいてくる。  「いや・・・別にそういう意味でやったわけでは・・・」 急に恥ずかしさがこみ上げてくる。やっぱやらない方がよかったかな・・・。  「なんにせよ、お前たち、行く高校も一緒なわけだし、仲良くやってけよ!」  「もちろんですよ」  「・・・・・・それとな、お前らの行く高校に先生の知り合いがいてな・・・」  「はい?」 先生の知り合い?どういうことだろう?  「お前らのことを思ってな・・・」  「・・・なんですか?」  「お前と雨宮、同じクラスにしてやったぞ!」  「・・・・・・へ?」 今、なんて?  「なんだ、その顔は。迷惑だったのか?」  「いや・・・迷惑なわけないですよ。ってそれ本当ですか?」  「フフフ、先生に不可能はない!」 あえて突っ込みたいことは言わず、ボクは姫子の方を見る。すると姫子は、  「じゃぁ先生、私と月彦くんを、ずっといっしょのクラスにする・っていうのは可能ですか?」  「・・・まかせておけ!!」  「「やったぁーっ!!」」 ボクと姫子は思わず同時に叫んでしまった。また周りの人々に注目されてしまった。そしてまたさっきの人が、車にはねられた。  「先生、ありがとうございます!」  「おうよ!んじゃ、達者でな!」 ボクと姫子は、壮大な青空の下、学校を後にした。 ――――ボクは変わってゆく。いや、正確には変わり始めている。 この流れゆく時の中で、つまづきながらも、歩き続けてゆく。大切な、大切な人とともに・・・。 「月彦くん」「姫子」 「「大好き!!」」 ――――ボクの毎日が変わっていく。その第一歩を、今、歩き始めた。姫子と、ともに―――――。

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