小説:ホントウノキモチ

    
桐山月彦(きりやま つきひこ)。ボクの名前だ。歳は15、卒業を控えた中学3年生だ。
すでに行く高校も決まっていて、このまま時間の流れるままに時を過ごせば、じきにこの学校ともお別れになってしまう。
 「はぁ・・・」
はっきり言って、もう学校に来てもこなくても、どっちでもいいし。かといって家でゴロゴロと過ごすのもヒマになるし。
・・・というわけで、仕方なく(?)学校に来ているわけだが・・・。
 「・・・・・・・」
実はもうひとつ、学校に来る理由がある。それは・・・
 「・・・今日も仕事、がんばらないと」
ボクはコレでも図書委員だ。というか、クラスのみんな、クチをそろえて「図書委員的な顔してる」って言うけど・・・。
 「・・・そうなのかな?」
そんな疑問がわきつつ、ボクは図書室に向かった。
 「今日は、がんばらないと・・・!」

余談だが、本好きなのが転じてか、図書委員は1年生の頃からずっとやっている。だからどの棚にどの本があるか・とか、すべて把握してるのだ。
・・・だからって別にどうってことないんだけどね。
 「・・・ふぅ、とりあえず、この棚は終わりかな」
仕事が一段落ついた。仕事といっても、本の整理なんていうありきたりな作業なんだけれども。
というか、こんなこと別にボクがやらなくてもいいんだけれども、先生がヒマなボクを捕まえて・・・要するに、白羽の矢が立ったと。
まぁ先生は「やっても、やらなくても、どっちでもいいよ」って言ってたけど、どうせなら・ってことで、この仕事を引き受けた。

 ガラガラ・・・
唐突にドアが開いた。
 「あ、雨宮さん」
 「お仕事ごくろうさま、桐山くん」
入ってきたこの子は雨宮姫子(あまみや ひめこ)。ボクと同様に3年間、ずっと図書委員をやってきた。
 「私も何かできることないかな?」
雨宮さんがそう尋ねてきた。別にボク一人でもできるんだけど、ふたりでいっしょにやったほうが速いので、
 「そんじゃ窓際の棚を片付けていこっか」
 「うん、わかった」
そういって一緒に目的の棚を整理していく。
 「あれ、この本ってあっちの棚のだよね?」
 「うん、そうだね」
雨宮さんもまた、すべての本の位置を把握している。というかそんな人間、この学校にボクと雨宮さん以外にいないだろうけど・・・。
 「そういえば雨宮さん、高校はどこに行くの?」
何気なく聞いてみる。雨宮さんは惜しむこともなく、
 「呉葉高校よ」
と言った。偶然(?)にも、ボクもそこに行くことになってる。・・・嬉しい限りだ。

ボクがずっと図書委員を続けていたのには、本好きなのとは別に、もうひとつ理由があった。それは、
 『雨宮さんに会えるから・・・』
ボクは3年間、ずっと雨宮さんを見ていた。ボクは元々内気な性格の方だから、最初はなかなか声をかけれなかったけど、雨宮さんの方から声をかけてきてくれたのだ。
そこから徐々に話す回数も多くなり、今では普通に声をかけれるようになった。
・・・僕は雨宮さんに恋をしている。それは自分でもハッキリと分かることだった。
 「はぁ・・・」
でもボクには、そのことを雨宮さんに告白する勇気もないし、度胸もない。こんな性格だからなのかな・・・。
だけどこのままこの気持ちを、ずっと押し殺していくのもイヤだったし、何より自分の気持ちを隠しているみたいで気分が悪い。
だからボクは、今日はいっちょ前に、勇気を出してみようと思う。どんな結果になろうとも、後悔はしないはずだから・・・。
 「よし、がんばるぞ!」

それから仕事は順調に進み、結構片付いた。
 「・・・ふぅ、雨宮さん、そろそろ時間も遅くなってきたし、帰ろうか?」
 「うん、そうだね」
ボクはいつもどおり、雨宮さんと帰る支度をする。
 「・・・・・・」
何かと緊張感が高まってきた。やっぱり、こういうのってドキドキするもんなんだなぁ・・・。
 「どうしたの?桐山くん?顔、赤いよ?」
 「い・い、いや、なんでもないよ・・・」
 「そう?だったらいいけど」
・・・顔に出てたのか・・・。あぶないあぶない・・・。バレてないだろうか・・・。
一抹の不安に駆られながらも、ボクと雨宮さんは下駄箱に向かっていった。

・・・・・・どうしよう。いつ切り出せばいいんだろう・・・。
ボクは今まで告白なんて考えたこともなかったから、どう話し始めればいいのかなんて思いつくはずもない。
しかも、ボクと雨宮さんは家の方向が反対だから、校門を出ればもうお別れになってしまう。
 (・・・言うなら、今しかないのかな・・・)
あぁ、でも、断られたらどうしよう。気まずくなっちゃうかも・・・。
 「桐山くん、ボーっとしちゃって、どうしたの?」
 「うえぃあ!?なな・なんでもないよ・・・」
思わず変な声を出してしまった。・・・うわぁ、最悪じゃん・・・?
 (いっそのこと、今度にしちゃおうかな?)
そんな考えが、僕の頭の中をよぎる。そうだよ、別に今日じゃなくてもいいじゃないか。
 (いや、それじゃダメなんだ!ボクは今日言う って、決めたじゃないか!)
頭の中で複雑に葛藤した挙句、ボクは、
 「雨宮さん・・・!」
 「ん?なに?」
ボクは唐突に切り出していた。クチが勝手にしゃべっていた、とでも言うように。
 「え・・えぇと、その・・・」
まさにマンガのセリフみたいに出だしが詰まる。ああぁ・・・、ダメじゃんボク・・・。
 「なにかな?」
雨宮さんは、このセリフの続きを待ってる。・・・どうしようどうしようどうしよう・・・。
 「・・・・・・実は・・・」
ボクは覚悟を決めた。たった一言、言うだけでいいんじゃないか。たった一言、ボクの気持ちを伝えるだけで・・・。
 「・・・ずっと前から、雨宮さんのこと・・・好き・・・だったんだ・・・」
言い切った。ボクは、ボクのすべての想いを言い切った。
 「・・・・・・ありがとう、桐山くん♪」
 「・・・あ、いや・・・」
『ありがとう』 そう、返ってきた。・・・・・・ありがとう? ボクは雨宮さんに本当の想いを伝えた。だけど、その答えに、ボクはどんな反応を示せばいいのか分からない。
YESなのか?NOなのか? ボクの頭の中でこの二つの意味がぐるぐる回っている。
 「あ・あの、雨宮さん。それはどう・・・・・・」
 「――――お礼に・・・」
雨宮さんはボクの言葉をさえぎり・・・
 「!!」
―――――ボクと雨宮さんは、唇を重ね合わせた。これがファーストキス。この一瞬の間が、何時間にも感じられた。

 「えと、あの、雨宮さん・・・?」
 「やだなぁ、私のことは姫子って呼んでよ、月彦くん!」
 「・・・・・・分かった・・・姫子」
ボクのこの想いは、しっかりと、姫子へと届いた。

そしてボクと雨み・・・・姫子は、下駄箱から校門までの短い距離を一緒に歩き出す。
 「あの・・・、姫・・・子?本当にボクなんかでよかったの?」
 「・・・・・・月彦くん、さっきのはお礼のキス、だったよね」
 「うん、さっきもそう言ってたね」
今思い出すと、下駄箱の前で堂々とするとは・・・。結構・・・というかかなり大胆なことをやったもんだな・と思う。
 「―――――じゃぁ これは、『これからもよろしく』のキス!」
 「―――!」
そういうと、ボクと姫子は、本日2回目のキスを、校門のド真ん中で交わした。先ほどのキスより、大胆で深い、キスを・・・・・・。
 「ん・・・んむ・・・・んふ・・・」
深く、長く、ボクと姫子は互いに唇を求め合った。

やがて時間は過ぎ行き、卒業を迎えた。この学校とも、ついにお別れだ。
 「卒業おめでとう、月彦くん!」
 「姫子こそ、卒業おめでとう」
体育館から出ると、泣いてる人やら、喜んでる人やらいっぱいいる。そんな中、結構簡単に姫子を見つけることが出来た。
 「最高の想い出を、ありがとう、姫子」
 「私も、忘れられない想い出をありがとう、月彦くん」
ボクも姫子も、いろいろな喜びで満たされていた。
ふとボクは、卒業した高揚感からか、あることを思いついた。
 「姫子、ここでキスしない?」
 「え?えぇ!?」
そこは大衆のど真ん中。もう大胆どころの騒ぎではない。
 「月彦くん、さすがにここではまずいよぅ!」
顔を赤らめながら姫子が言う。そんなこと、僕も分かってるって。
 「・・・・・・そういえば、いつも姫子からだったよな?」
 「へ?」
 「今日は、ボクからだ!」
 「!」
―――――初めて、ボクから姫子にキスをした。姫子は少し驚いていたけど、優しく受け止めてくれた。
・・・回りの人たちは、おぉっ!?とか歓声を上げてるし、中には校門から飛び出して車にはねられた人もいる。←?
 「ん・・・む・・・はぁ・・・」
お互いに唇を離し、ふと目が合う。
 「・・・もう、はずかしいよぅ・・・」
 「ハハハ、いいじゃないか」
正直、なんでこんなことを思いついたのか、自分でも分からない。
 「お前たちも見せ付けてくれるねえ・・・」
ウチのクラスの担任だった先生が、そう言って近づいてくる。
 「いや・・・別にそういう意味でやったわけでは・・・」
急に恥ずかしさがこみ上げてくる。やっぱやらない方がよかったかな・・・。
 「なんにせよ、お前たち、行く高校も一緒なわけだし、仲良くやってけよ!」
 「もちろんですよ」
 「・・・・・・それとな、お前らの行く高校に先生の知り合いがいてな・・・」
 「はい?」
先生の知り合い?どういうことだろう?
 「お前らのことを思ってな・・・」
 「・・・なんですか?」
 「お前と雨宮、同じクラスにしてやったぞ!」
 「・・・・・・へ?」
今、なんて?
 「なんだ、その顔は。迷惑だったのか?」
 「いや・・・迷惑なわけないですよ。ってそれ本当ですか?」
 「フフフ、先生に不可能はない!」
あえて突っ込みたいことは言わず、ボクは姫子の方を見る。すると姫子は、
 「じゃぁ先生、私と月彦くんを、ずっといっしょのクラスにする・っていうのは可能ですか?」
 「・・・まかせておけ!!」
 「「やったぁーっ!!」」
ボクと姫子は思わず同時に叫んでしまった。また周りの人々に注目されてしまった。そしてまたさっきの人が、車にはねられた。
 「先生、ありがとうございます!」
 「おうよ!んじゃ、達者でな!」

ボクと姫子は、壮大な青空の下、学校を後にした。



――――ボクは変わってゆく。いや、正確には変わり始めている。

この流れゆく時の中で、つまづきながらも、歩き続けてゆく。大切な、大切な人とともに・・・。

「月彦くん」「姫子」


「「大好き!!」」


――――ボクの毎日が変わっていく。その第一歩を、今、歩き始めた。姫子と、ともに―――――。

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