小説:翼に託された願い

    
オレはどうすることもできなかった・・・。ただ見ていることしか・・・できなかった。
悔しい。どうしてあの時オレは何もできなかったのか。今でも考えてしまう。
あの時のことを考えると頭の中が真っ白になる・・・。
自分が何もできなかったせいで大切な人を失ってしまった・・・。
後悔先にたたずとはこのことか。
いつもあの時のことを思い、なんとなく時間が過ぎてゆく。
戻りたい。あの時に戻りたい。今ならどうにかなりそうな気がする。
神様・・・もしいるのならオレのこの願いをかなえてくれ・・・。
もう後悔はしないように・・・。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
『・・・間違った未来を・・・変えてください・・・』
・・・・・?
何だ?今の・・・声は・・・?
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

ジリリリリリリ・・・

「・・・んだよ・・・もう朝かよ・・・」
オレの名は矢原祐介(やのはら ゆうすけ)。17歳だ。そこら辺にいるような、ごく普通の高校2年男子だ。
オレはいつもどおりに布団から体を引きずり出し、制服に身を包む。
着替えが終わり、リビングへ行く。いつもどおり、テーブルの上に昼飯代と父さんのメッセージが置いてある。
『今日も遅くなる。 父より』
たったこれだけのメッセージ。いつもこんなカンジだ。
うちの家族は父さんとオレの二人だけ。母さんはオレが物心ついたころからいない。そのことについては別に気にも留めていない。
・・・いまさらどうにかなるものでもないし。
「さて、そろそろ行きますか・・・」
オレはいつもどおりの時間に家を出る。そしていつもどおりの道を通り、学校へ行く。
そう、なにもかもがいつもどおり・・・のはずだった。
・・・・・
・・・
家を出てすぐのところにある、幼なじみの川原雫(かわはら しずく)の家の前でふと足を止める。
「・・・・・・」
あのときのことが頭をよぎる。宙に浮く体、飛び散る赤。オレの目の前で起こった惨劇。
・・・そして、大切な人を失ってしまったという深い悲しみ。
(雫・・・もしあのとき助かっていたら・・・いつもどおりオレと登校していたのかな・・・)
そんなことを思い、足早にその場を立ち去ろうとする。そのときだった。
「あっ、祐介!ちょっと待ってよぉ!」
「!!?」
雫の家の玄関から一人の少女が出てくる。
(・・・し、雫!?)
オレの脚がすくむ。まさか・・・そんなこと・・・。
「もぉ、立ち寄ったなら声くらい掛けてくれてもよかったじゃない!」
「なっ・・・・・!!」
オレはそれ以上言葉が出なかった。目の前にいるのは確かに雫だ。他人の空似でもない。オレの知ってる雫だ。
「・・・雫・・・。どうして・・・?」
ありきたりな言葉が口から発せられる。だがこの言葉意外に掛ける言葉が見つからない。
「?どうしたの祐介?」
不思議な物体を目の当たりにしたような目で雫を見ていたオレに、雫が声を掛けてくる。
「お前・・・本当に雫なのか?」
そう・・・。雫はあのときにもう亡くなっている・・・。今ここに生きているわけないんだ・・・。
「何言ってんのよ祐介。まだ寝ぼけてんの?」
・・・いったいどうなっているんだ?なぜ雫がここにいる?雫はあの時すでに・・・。
「悪い夢でも見てたんじゃない?祐介?」
夢・・・?今までのことが全部?そんなことってありえるのか?まさか・・・雫は本当は生きていたのか!?
「ちょっと、祐介?」
いろいろなことが頭をよぎっていく中、オレの体は勝手に動いていた。
「あ・・・」
まるで失くしたものを取り戻したように・・・。オレは無意識のうちに雫を抱きしめていた。
「・・・よかった・・・。本当に・・・よかった・・・」
オレの目からはかすかに涙が流れていた。この喜びをかみしめるように・・・。
「ちょ、ちょっと!急に何よ祐介!?」
「・・・いや、なんでもない。ただこうしたい気分になっただけだ」
「だ、だからって急に・・そ、その・・・」
「・・・こんなところで時間食ってたら学校に遅れちまうぜ?」
今は余計なことは考えないことにした。こうして雫がそばにいてくれるのだから・・・。
ヘタに考えると、また雫がどこか遠くに行ってしまいそうで怖いから・・・。
「あっ!先に行かないでよ!」
オレは校門までを雫といっしょに走った。こみ上げてくる懐かしさと愛しさを感じながら・・・。

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
キーンコーンカーンコーン・・・

昼休みになった。・・・展開が速いというのは気にするな。by 作者
朝はいつも食べてないので腹が減っている。授業中はずっと寝てるから気にならないのだが。
「雫、食堂行かないか?」
いつもどおりオレは隣の席の雫に声を掛ける。いつもと、なんら変わりない日常・・・。
「うん、行こう」
そう言って雫は自分のカバンから弁当を取り出す。雫はいつも弁当を持ってきているのだ。そんでオレが毎日食堂派。いっしょに食べるために食堂まで着いて来てくれるのだ。つーことで、雫は

食堂で弁当を食ってることになる。なんとも異様な光景だが。
「そういえば雫、今日は神社で祭りがあるんじゃないのか?」
「?何言ってるのよ。お祭りは来月でしょ?」
「・・・えっ?」
今、なんて?
「今からお祭り気分?祐介、ちょっと浮かれすぎじゃない?」
「・・・!?」
オレは急いでポケットからケータイを取り出し、日付を確かめる。
・・・6月・・・13日・・・。そう表示されていた。
「本当だ・・・。今・・・6月?」
「そうよ。お祭りは来月の13日。気が早いんじゃない?」
「あ、あぁ・・・。そうかもしれないな・・・」
・・・ウソだろ!?今日は7月13日じゃないのか!?昨日オレは確かに確認した・・・。昨日は7月12日だったはずだろ!?
「・・・ところで雫、昨日って何月何日?」
「何当たり前なこと聞いてるのよ。昨日は6月12日。分かった?」
「・・・うん」
どうやらオレは何かよくない目にあってるのでは?昨日は確かに7月12日だった。そして一昨日は7月11日だった。それなのになぜ今日は6月13日なんだ!?なんで日付が進んで月が

戻ってんだ!?・・・ケータイがおかしいのか?いやそんなはずは・・・。
何もかもワケが分からない・・・。なんで・・・6月13日に・・・?
(・・・あ!)
そうだ・・・思い出した・・・。今日(?)・・・6月13日は・・・雫が亡くなった日だ・・・。
オレが昨日(?)夢の中で『あのときに戻りたい』と願ったからか?だからオレは時をさかのぼった??
・・・なんて非現実的なことなんだ?アリエナイ・・・。俗に言うタイムスリップ?まさか本当に神様がオレの願いを?
・・・いや。今はオレのことはどうでもいい。もう一度この日をやり直せるのだから。
そう思ったとき、あのときのことが鮮明に甦る。もう同じ過ちは繰り返さない。オレは・・・雫を絶対に死なせたりはしない!!
「雫・・・」
「ん?なに?」
「今日はオレのそばを離れるな」
「!?な、なによまた急に!」
「いや、理由は聞かないで欲しい。とにかく今日はオレといっしょにいてくれ」
「わ、分かったわよぅ・・・」
少し顔を赤くしながら雫がうなずく。
(本人を前に、『今日死ぬから』なんて言えるわけないし)
変に誤解されてもいい。ただオレは雫を守り抜くと決めたのだから・・・。

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
キーンコーンカーンコーン・・・

放課後。オレはいつもどおり雫といっしょに下校していた。
「ね、ねぇ祐介。今日はどうしたの?」
「別になんでもないよ。あまり気にしないでくれ」
「そ、そうはいっても・・・」
「・・・・」
確かに雫の言うとおり、いつもより二人の距離はだいぶ近かった。あと数ミリで体が触れ合うくらいに。
オレは雫と歩きながらあの時のことを考えていた。帰り道に通る、あの交差点での出来事を。
(あれは・・・全部オレのせいだな・・・)
・・・・・
あのできごとは下校時、通学路の途中にある交差点の横断歩道で起こった。その交差点はこの町の中で一番でかい。
・・・そしてそれはちょうど信号が点滅してるとき・・・
「雫!急げ!赤になっちまう!」
「あ、ちょっと待ってよぉ!」
オレと命は交差点を走った。全速力で。
「ゼィ、ゼィ・・・。あぶなかったな、しず・・・」
雫の姿が隣にいない。ふと後ろを見てみる。
横断歩道の真ん中で雫がカバンから落ちたらしいペンケースを拾っていた。
「!!雫!あぶない!!」
「えっ?」
「!!!」
・・・・・・
・・・・
・・
宙に浮く体、飛び散る赤。大型トラックが猛スピードで命に突っ込んだ。雫は・・・即死だった・・・。その大型トラックの運転手は居眠り運転で、道の車をなぎ倒しながら走ってきたため、けが

人多数の大事故となった。そして、亡くなったのは雫だけ・・・。なぎ倒しながら走ってきたんなら音で分かるだろうとも思うが、雫は落としたペンケースを拾うのに集中していたため、聞こえなかっ

たのだろう。もし聞こえたとしても人間の本能だ、恐怖で動けなくなっている。
「・・・すけ」
・・・オレが雫を助ける時間は十分にあった。なのになぜか体が動いてくれなかった・・・。そんな自分が情けない・・・。
「・・・うすけ」
今思えばオレが急がず次の信号を待っていればよかったものを・・・。こんなささいなことで人は亡くなってしまうものなんだな・・・。
・・・いや、こんな沈んでいてどうする。オレは雫を守るんだ!
「・・・ゆうすけ!」
雫の声で我に返る。
「!え?あぁ、なに?」
「どうしたの?さっきからボーッとしちゃって。あぶないよ?」
「あ、あぁ悪い。気をつけるよ」
こんな調子でどうするんだオレ。このままじゃオレがはねられるぞ?
(・・・・・・)
そんなことを考えて歩いてるうちに、例の交差点が近づいてきた。ドキドキしてきた。緊張感が高まる。
「・・・雫、カバン持ってやるよ」
「えっ?あ、ありがとう・・・」
オレは雫からカバンを預かる。オレが持っていれば問題ないだろう。
・・・・・・
そして横断歩道に差し掛かる。やはり信号は点滅している。
「雫、もうすぐ赤になるな。次のを待とう」
「うん」
オレは走り去っていく車を眺めていた。大型トラックの来る気配は今のところない。
「もうすぐ青になるよ、祐介」
「ああ」
信号のランプが黄色・・・そして赤になり、車が止まり始める。車は少なめだ。
オレはもう一度確かめる。トラックは・・・来ていない。
「じゃ、行こうか雫」
「うん」
オレは雫が後ろについて来ているのを確認し、歩き出す。ここを渡りきればいいだけだ。なんてことはない。
・・・・・・
・・・そして問題なく横断歩道を渡りきった。雫もオレの後ろにいる。
雫を・・・守り抜いた・・・。もう失うものなんてない・・・。
「・・・あっ、猫・・・」
「猫?」
横断歩道の真ん中あたりをホントに小さな子猫が歩いてきている。このままだと渡りきる前に信号が変わってしまう。
・・・あれ?あのとき猫なんていたっけか?
記憶があいまいだ。いたのかいなかったのかハッキリしない。
「祐介、ちょっと待っててね」
「ん?ああ・・・」
雫は子猫のそばに歩み寄る。雫は動物が好きだからな。ほっとけないんだろう。
・・・そのとき、トラックがやってきているのに気が付いた。さっきは遠くて見えなかったんだろう。オレ目悪いし。トラックのスピードはゆっくりで、もうすぐ停車するってくらいだ。距離こそ、雫に近いが。
――――これなら別に大丈夫だろう。
・・・そう思った。
だが・・・その考えが甘かった。

ゴオオォォッ!
「!!?」
いきなりトラックがスピードをあげて猫を抱えた雫に突っ込んでくる。どういうことか分からない。
くっ、なぜだ!?あくまで雫は死んでしまう未来なのか!?そんなことさせてたまるか!!
「雫ッ!!」
オレは夢中で走った。だが、どう考えてもオレの脚力じゃ雫のところに行く前に、雫がトラックにはねられてしまう。
(くそっ!オレの足、もっと、もっと速く走ってくれえぇ!!)
自分の身体的欠陥を嘆いているとき、もう雫の目の前までトラックが迫ってきている。くそっ!!
――――雫は恐怖で身体が固まってしまっているのか、そこから全く動かない。あげくに顔は真っ青。
(雫!!!)
だめか!?
だめなのか!??
――――そのときだった。
『あきらめないで・・・』
(!?)
まただ・・・。どこから聞こえたのか分からない。誰の声かも分からない。だがその声を聴いた瞬間、オレの身に変化が起きた。
まるで・・・オレの背中に翼が生えたように・・・オレは自分でもありえないくらいの速さで命のもとへたどり着いた。
「雫!!!」
オレはその加速のついた身で命に思い切りぶつかり、雫をはじき飛ばす。
「きゃっ!?」
雫はオレにはじかれ、地面に転げる。だがそのおかげで雫はトラックの射程距離内から外れた。
・・・だが、オレは・・・
――――徐々にオレの身体に鉄のかたまりが触れ始める。きしみ始めるオレの身体。折れていく骨の数々。
もう、逃れられない。
「ッ!!!」
声を出す時間さえない。もう間に合わない・・・。すでにオレの身体の半分は砕け始めているのだから。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・オレの体は、美しい曲線を描きながら宙を舞った。オレを取り巻く物体の流れが遅く感じられる。
そして同時に、少しにごった赤色の液体がオレのそばを舞っているのに気が付いた。
その後、身体に2度目の鋭い衝撃が走る。今まで宙を舞っていたのか、どうやら地面に落下したようだ。
「・・・・・・」
オレはまだかろうじて意識があるようだ。よく生きてるな、オレ。
地面に倒れていると、近づいてくる人の気配を感じる。
「・・・うすけ・・・、ゆ・・・すけ!!」
雫がオレのそばに歩み寄ってきてオレの名前を連呼している。オレは所々にしか聞こえない。
――――泣いてるのか?
そう言いたくても口が全く動かない。というか身体自体、動かなくなっている。当たり前か。
・・・少し遠くでトラックの運転手と・・・警察か?・・・なにやら話し合っている。オレは耳の神経を集中させる。
・・・・・・
・・・
「・・・・・・」
いきなりトラックが突っ込んできた理由。それは、運転手の疲労が原因か、ブレーキとアクセルを間違え、思い切り踏み込んだということだった。なんて初歩的なミスを犯すんだろうと、思った。
「・・・・・・」
視界がぼやけてきた。そして徐々に何も聞こえなくなってきている。
「ゆ・・・す・・・、・・・う・・・けっ!!」
雫が必死にオレの名前を叫び、滝のように涙を流している。オレの耳でも聞こえるのだから、相当大きな声で叫んでるんだろう。
――――心配するな。
そう言いたいのに、全く口が動かない。
いますぐ手を握って、そう言いたいのに、手はおろか、指の1本すら動いちゃくれない。
手を伸ばせば・・・ほんの少し手を伸ばせば雫に触れられるのに・・・。
こんなに近くに・・・、こんなにぬくもりを感じるのに・・・、すごく遠くて、すごく冷たい・・・。

『正しい未来へ・・・導いてくれて・・・ありがとう・・・』

・・・またあの声だ。礼を言われてる。

・・・正しい未来?あぁ、あのとき雫は死ぬべき人間ではなかったってワケか。あのとき死ぬべきだったのは・・・オレだ。

・・・これで、よかったんだ。

オレの命はともかく、雫の命が助かったんだ。オレは正しい未来を歩んだわけだ。

・・・これで、よかったんだ・・・。

目の前がもうほぼ何も見えなくなってきた。そしてもう何も聞こえない。自分の思考が停止し始める。
オレは雄大な青空の広がる小さな町の、大きな交差点で静かに目を閉じる。
(じゃあな、しずく・・・)
――――ゆうすけ・・・
最後に、そう聞こえた気がした。
(・・・今日も・・・空は青いなぁ・・・)
・・・そしてオレは、深い眠りへと全てをゆだねていった。
翼に託された願いと共に・・・。



~あとがき~
いやぁ、コレ作ったのって確か中2か中3の時だった気がする。当時オレは「最高のできやんw」とか思ってたのだろうけど、今掘り起こしてみると突っ込みどころ満載だったりするネ。タイトルもワケわかんないし。
まず自分で読み返して思ったのが、例のあの声、誰のやねん!ってとこかな。最後に礼言ってるけど、自己紹介してない時点で怪しいし!
まぁ、今となっては天使の声・とか、正しい未来にいる雫の声・っていう勝手な介錯をしています。というかそうでないと無理・・・。
それとまぁ、相変わらず文章力皆無なので意味不明なところも多いです。
なんにせよ、読んでくれたみなさん、本当に感謝です!

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