「・・・なっ!?ウソだろ・・・」
それは突然の知らせだった。

―――――彼女が死んだ。
原因は交通事故。即死だったそうだ。
このことを聞いても、信じ込むのに少々の時間を要した。

だけど葬式の日、不思議と涙が出なかった。泣くことさえ知らないように。

それからオレは学校を休むようになった。行かなければいけないと分かっていても、行く気になれない。

その次の日も、オレは学校を休むことにした。やはり、行く気にはなれない。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
どれくらい時間がたっただろうか。外はもう、日が傾き始めている。
ピンポーン・・・
(ん?誰だろう・・・)
今 家にはオレしかいないので玄関へと行く。
ガチャッ
 「・・・よぉ」
ドアの向こうには勇哉(ゆうや)が立っていた。
 「・・・なんか用か?」
 「いや、お前最近学校休んでるし、大丈夫かな・って・・・」
 「心配すんな、大丈夫だって」
本当は大丈夫じゃない。大切な人を失って、今すぐにでも死んでしまいたい気持ちだ・・・。
 「・・・」
 「どうした?」
 「やっぱお前、大丈夫じゃないだろう?」
 「・・・顔に出てたか?」
 「何年ダチやってると思ってんだよ!」
 「・・・それもそうだな」
こんなときにこそ、なのか。こんな何気ない会話でも嬉しく思える。
 「・・・まぁあがれよ」
 「そうさせてもらうぜ」
寂しさを紛らわすためなのか、それとも友人という理由で・なのか、オレは複雑な気持ちの中、こいつを招き入れた。

そしてオレの部屋にはいり、お互い適当なところに座る。
 「とりあえず今まで配られたプリントとか渡すぜ」
 「・・・サンキュ」
オレはプリントを受け取る。が、それを読む・いや、一瞬でも目を通す気力さえ起きない。
 「・・・ハァ・・・」
自然とため息が出てしまう。あの日からいろんなことを考えすぎて、疲れているのだろうか。
 「なんで・・・こんなことになっちまったんだろう・・・」
 (あっ)
思わず口に出してしまった。よほど追い詰められてるのか。
 「お前・・・あんま無理すんなよ」
それは励ましの言葉なのか、慰めの言葉なのか・・・。
 「いっそ、死んでしまいたいよ・・・」
 「・・・え?」
オレの返事を聞いて、勇哉は驚きの表情を浮かべている。無理もないだろう。
 「そうすれば、あいつのもとへと行けるのかな・・・」
 「ちょっ、お前・・・」
 「そうだよ、そうすればオレはあいつとずっと一緒にいられるんだ・・・」
 「おい!」
―――ドゴッ!
 「・・・痛って・・・!」
オレは勇哉に殴られた。思えば初めてかもしれない。
 「いきなり殴・・・」
―――ドムッ!!
 「ぐぁ・・・!!」
連続で殴られた。しかもモロに入った。
 「勇哉・・・お前・・・!」
―――ガスッ!!!
 「痛ッてぇ・・・!」
野郎、何考えてやがんだ?
 「勇哉、てめぇ・・・!」
 「怒れる、ってことは、生きてる・ってことだ」
 「・・・はっ?」
何を言い出すんだコイツは・・・。
 「お前は今、オレに殴り返したい。そう思ってるだろう」
 「ああ。思いっきりな」
 「それはつまり、オレを殴れるまで死にきれない・ってことだな」
 「・・・あ?」
 「・・・死にたいとか、言うんじゃねえよ・・・」
(・・・・・・!)
急に真剣な顔で言われたからなのか、その言葉が胸を刺激する。
 「お前の彼女だって、死にたくて死んだわけじゃないだろう?」
 「・・・・・・」
 「ここでお前が死んでも、なんの解決にもならねえよ」
 「・・・うるせえ・・・」
痛いところを突かれたのだろうか、感情的になってきそうになる。
 「彼女を失って悲しむお前がいるってことは、お前が死んで悲しむヤツもいるんだぞ」
 「・・・どうせオレが死んでも、誰も悲しまねぇよ・・・」
 「バッキャロー!」
―――ズドッ!!!!
 「うぐぁ・・・!」
またしてもこいつは・・・!!
 「悲しむやつリストォ!」
 「はぁ?」
また急になにか言い出す。悲しむやつリスト??
 「まずお前のおかん、おとん、んでオレ、太一、弘司、ヨッシー、俊平、絵美、理緒、優子さん、霧島、タク、やすー、大輔、えーと・・・その他諸々!」
 「・・・・・・」
いきなり、しかも早口でバーッと言われてしまったので、思わず唖然としてしまう。
 「まだまだ総勢4008人いるんだけどな!どうだ、思い当たるフシありまくりだろ?」
 「・・・・・・」
あながち否定はできないかも知れない。
 「そして1番悲しむのは、他でもない、お前の彼女じゃないのか?」
 「――――!!」
その言葉が一番、オレの胸に突き刺さった。今までの、どの言葉よりも。
 「・・・これでもまだ死にたい・なんて言うのか?」
 「・・・・・・」
 「死にたいなら、このまま殴り殺してやってもいいけどな!」
 「・・・それは困るね・・・」
 「ほ~う・・・」
 「殴られっぱなしでたまるかよ!」
 「上等だ!」

・・・何かが吹っ切れた気がする。完全に、ではないけども。だけど前よりもだいぶ気持ちが楽になったように思う。
勇哉は話術が上手いのか、オレの心が感化されやすいだけなのか分からない。
だけど、さっきまでの暗闇はどこかへ吹き飛んだ。
 「・・・勇哉・・・」
 「ん?なんだ?」
 「・・・サンキュ・・・」
 「ヘヘッ!」

この夜、オレは思いっきり泣いた。全てを洗い浚い吐き出すように、泣いた。


・・・・・・大事な人を失ったことは重いことかもしれない。

しかし、それを克服していかないと前へ進めない。

だけど、忘れることは決して出来ない。どんなことがあっても。

でも、「記憶」として残すことは出来る。

オレは未熟だ。だからまだ「記憶」として残せず、「心の中」に残っているままだ。

いつか完全に「心の中」から「記憶」へと移行するまで、オレは成長しないといけないんだ。

・・・・・・この悲しみを、乗り越えて。



~あとがき~
所要時間、1時間弱!サクッと書いてみました。いやぁ、ホントに短いですね。
ちょっとした息抜きに・と書き始めたんですが、最後らへん終わらそうとする気満々ですね・・・w
たぶん面倒に思ってきたんでしょう、管理人が(ダメジャン)。
まぁ短いし(?)、こんな終わり方でいいのかな?なんて思ってますけど。
ちなみにこの小説は前に言ってた「現在鋭意製作中」のモノではありません。
現在鋭意製作中のやつは、まだまだ時間がかかりそうなんです・・・。
でもいつか完成させるので待っててくださいネ~!
最終更新:2005年08月13日 00:58