小説:崩れゆく平和 (後編)

    
1戦目を勝利した身として、やはり2戦目も勝たなければいけない。
 (やはりキッチンにいるのだろうか)
先ほど新聞紙を消費してしまったので、今のところ使えるのはスリッパしかない。
 (・・・そういやハエタタキどこだろ?)
さっき頭に浮かんでたのに、忘れているとは・・・。
 「雪音ぇ、ハエタタキってどこにあんの?」
 「え?ちょっと待ってね」
そういって雪音はハエタタキを探し始める。
(・・・これで武器はふたつ。といってもスリッパとハエタタキじゃ明らかに後者の方しか使わないよな・・・。)
 「ちょっと先っぽ折れてるけど、これでいい?」
 「あぁ、十分だ!」
オレはハエタタキ(先端傷アリ)を得た!

―――オレはキッチンへとやってきた。今のところ異常はない。
 「そこにいるのは分かってんだ。出てきな、ゴキブリ野郎!」
実際どこにいるか全然分からないが、一応叫んでみる。
(まぁそりゃ出てくるわけないよねぇ~・・・)
カサカサッ♪
 「!!」
音のした方向へ振り向くと、そこにはさっきよりも大き目のゴッキーがいた。
 (ホントに出てきちゃったよコイツ!!)
しかもこのビッグ・ゴッキー、大きいワリに動きが速い!
 「逃がすか!スリッパ、君に決めた!捨て身タックルだ!」
オレはゴキブリめがけ、スリッパを投げつける。文字通り、捨て身タックルだ。
だがビッグ・ゴッキーは鮮やかにかわしやがる!だがオレの方向へと猛進してくる。フッ、計算通りだぜ!(本当は偶然だが)
 「甘いな、まだハエタタキが残っている!」
そしてゴッキーはオレの真正面へと向かってきた。
 「上等だ!邪王炎殺剣 !!」
オレの振り下ろしたハエタタキは確実にゴッキーを捕らえている!
―――ズドオォォッ!!
 「やった!勝った!後編完!」
これで再び平和が訪れる。かに思えた。
カサッ♪
 「な、なにいぃ―――っ!?」
よく見ると、確かにゴッキーにヒットはしているが、先端が折れていたため、そこから素早く逃げていたようだ。しかも叩いた衝撃でハエタタキ、完全にぶっ壊れた・・・。
(だがダメージは負ったはずだ)
ゴッキーはぎこちない動きでピクピクしながらも、逃亡をはかる!
 「観念しな!」
オレはとどめをさそうとハエタタキを構えた。次の瞬間!
 ブウゥ~ン!!
ゴキブリ飛翔!!オレの顔面めがけて飛んでくる!
 「くっ!プロテクト・シェ・・・・」
しかし防御が間に合わない!ゴキブリは、オレの顔面へ・・・・・・!!
 「ぐああぁぁああぁぁあぁっっ!!!」
――――ガンッ!!
 「うっ・・・!?」
オレは足を滑らせ、転倒。テーブルの角に頭を打ちつけてしまった。
鋭い衝撃が頭の中を駆け抜ける。ゴキブリは満足げに去っていく・・・。
 「・・・我が生涯に、一片の悔いナシ!」
オレは手持ちの武器を失った。目の前が真っ暗になった・・・。

・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
 「・・・・・・」
ふと目を開ける。オレは生きているのか・・・?
 「あ、お兄ちゃん、目、覚めた?(いろんな意味で)」
 「雪音・・・?」
目の前には雪音の顔があった。それにこの頭の下の感触は・・・!
 (ほほう、膝枕か・・・)
妹に膝枕されるのもなんとなくシャクだが、気持ちいいのでこのままでいとく。
 「お兄ちゃん、急に倒れて、どうしちゃったの?」
ふと雪音が問いかけてくる。それもそうだろう。
 「あぁ、ゴッキーがオレめがけて飛んできて・・・それでテーブルにゴーンって頭打っちゃってさ・・・」
 「お兄ちゃん、頭、大丈夫?(いろんな意味で)」
 「・・・まだ大丈夫じゃない・・・」
 「・・・・・・」
雪音は複雑そうな表情を浮かべている。そんなに心配しなくていいのに。
 (ちくしょう・・・完敗を喫してしまった・・・)
まさかあんな昆虫1匹ごときに気絶させられるとは・・・。どの怪獣よりも恐ろしいぜ・・・。
 「あ、そうだお兄ちゃん、コレ」
 「そ、それは・・・オベリスクの巨・・・」
 「殺虫剤ね」
いつのまに探したのやら、オレの追い求めた、対ゴキブリ用最終兵器、殺虫剤!!
 「雪音、どうしたんだ、コレ?」
 「お兄ちゃんが倒れてる間に、探したの」
 「でかした!さすがオレの大好きな雪音だ!」
 「ちょっ、ちょっと、こんなときに何言ってんのよぉ!」
膝枕されている状態だから、普通に会話してても自然と目が合ってしまう。だけど、このときはそれ以上に目があってしまった。
 「雪音・・・・・・」
 「お、お兄ちゃん・・・?」
クッソォウ・・・だがこういう空気は苦手なんだよ・・・!
 「・・・その殺虫剤、本当にゴキブリ用なのかね?」
 「・・・・・・お兄ちゃんのバカ・・・」
 「・・・ゴメンナサイ・・・」
なんでそんな深刻な顔すんだよ、マイシスター・・・。
その後しばらく沈黙が続いた・・・・・・。

・・・・・・・
・・・・
 「さて、そろそろ最終決戦だ。」
ある程度HPも回復したし、戦いに行くことにする。
 「がんばってね、お兄ちゃん」
 「あぁ、オレは絶対に負けない!」
ふと時計を見る。計算して、オレは約20分間、闇の世界を彷徨っていたわけか・・・。(要するに気絶してた時間)
 (そんな闇の中、手を差し伸べてくれたのは雪音、お前なんだ・・・)
オレは対ゴキブリ用最終兵器・殺虫剤を片手に、キッチンへと旅立つ。
 (ありがとう、雪音・・・。もう、迷わない!!)
全ての想いを胸に、オレは最後の戦いへ挑む。

・・・・・・
何度ここへ来たことか。すっかり荒れ果てた、キッチン・・・。(あんだけ暴れれば、そりゃね・・・)
 (おそらくコレが最後の戦い、全力で行かなければいけない)
 「黒き暗黒の支配者よ、決着をつけるぞ・・・」
・・・カサッ
ゴキブリがオレの背後から現れる。不意打ちをかけるつもりだったのか?
 「行くぞ・・・」
―――ザッ!
ゴキブリも身を構える。どうやら予感したようだな。
 「卍・解!!」
オレは殺虫剤のふたを開け放ち、トリガーへと指をかける!!
 「ギャリック砲!!」
―――プシューーッ!
オレは殺虫剤をゴッキーへと噴射!しかし!
ブゥン・・・シャッ!ブウゥーン!
 「な!?コイツ、かわしただと!?」
そしてまたもやオレの顔面へと突っ込んでくる!くそ、殺虫剤を構えられない!
 「バーン・ナッコォ!!」
オレは一か八か、空いてる手でゴキブリへとストレートを叩き込む!
―――ベシッ!
 (うわ、当たっちゃったよ!!)
リアルな音を立て、見事にヒットした!ゴッキーは空中から床へと不時着!
 (よし、今だ!!)
 「ゴッド・ブレイズ・キャノン!!」
―――ドブシュ――――ッ!!!
オレはゴッキーめがけて、勢いよく殺虫剤をぶっかける!
 「ハラワタを、ぶちまけろ!」
ゴキブリはもう瀕死状態だが、まだ生きようとするのか、かなりヨロヨロとした動きで逃げようとする。
 「!!」
そのとき、目の前に親父のお気に入りのミニカーコレクションが置いてあった!偶然かどうか分からないが、とにかく置いてあったんだ!
その中から一番大きな、かつ親父が1番気に入ってるであろう、モデルナンバー0249、「ロードローラー」を持ち出す!(やりたいこと見え見え・・・)
そしてピクピクしてるゴキブリめがけ、
 「ロードローラーだっ!!!WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!」
―――ドグシャアァァッ!!
勢いよくゴッキーがブッ潰れた!が、まだ手足がピクッ、ピクッと動いてやがる!
 「もう遅い!脱出不可能よ!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄アアァッ!!」
―――ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン!!
オレはさらに複数回、ゴッキーへとロードローラーの上から制裁を加える!!
さすがにもう、観念しただろう。いや、観念したくてもできねえか・・・。
もうゴキブリは全ての装甲が粉々に砕け散り、体液を放出しつつも、完全に沈黙していた。
 「これが、最後の真実」
全てに決着を付け、オレは雪音のいる本部へと帰る。
 「っと、その前に手・洗っとこ」

・・・・・・
 「雪音、オレは勝ったぞ・・・!」
体中疲れ果て、勝利の雄叫びをあげたいが気力がない。というか近所迷惑だ。
 「お兄ちゃん、ガンガンガンガンって音してたけど、なに?」
 「ゴッキーを殺害した音さ!」
 「・・・」
雪音は黙ったまま立ち上がり、スタスタとキッチンへ歩いてく。
 「お兄ちゃん・・・」
 「んあ?」
 「床、どうすんのよぉ・・・」
・・・・・・そこはまるで地獄絵図かのごとく、飛び散った茶色い破片、広がる黄色い粘液、鼻を突く異臭、そしていびつにヘコんだフローリングの床・・・。
見てるだけでも倒れそうになる。これはグロい・・・。
 「ねぇ、お兄ちゃん・・・」
 「クッ・・・オレの手が・・・動かなくなって・・・!」
 「ねぇ、アレ(グロイの)片付けてくれないの?」
 「くそ、足まで動かなくなってきやがった・・・!」
 「今日はお兄ちゃんと一緒にお風呂入ろうと思ってたのになぁ・・・」
 「雪音、あとは全部オレがやっとくから、この部屋で自由にしていてくれ」
 「ありがとう、お兄ちゃん♪」

・・・・・・・・・・
 「ゆっきね~、片付いたぞ~!」
 「えっ?もう!?」
 (さ、さっきから1分も経ってないよ・・・?)
・・・・・・
 「・・・お兄ちゃんって、エスパー?」
雪音は驚愕の表情を浮かべている。何せさっきまで、もんじゃ焼き状態だったからなぁ。
 「雪音、汗かいたし、風呂はい・・・」
 「ゴハン、食べよっか、お兄ちゃん♪」
さっき話したことなどまるで記憶にないように、雪音はさわやかに振り向いた。
 「ねっ♪」
 「・・・そうだな」
・・・確かにハラ減ってるし、まぁ風呂はあとでいいか・・・。

・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
 「雪音、ゴハンってこれか?」
 「・・・うん、時間、なくて・・・」
オレの前には、2つのカップ麺。オレと、雪音の分。
 「ま、しゃーねーか・・・」
 「・・・ゴメンネ・・・」
 「気にすんなって」
さすがにもう作ってる時間もないだろうし、今日はコレで我慢することにする。
とは言っても、コレで満腹になるわけないだろうが・・・。

・・・・・・
カップ麺を食った後、オレと雪音はボーっとテレビを見ていた。
 (・・・やべぇ・・・ハラ膨れたら眠くなってきやがった・・・)
普段ならここで問題なく寝落ちしてしまうのだが、
 (今日は・・・重大な・・・イベントが・・・残さ・・・れ・・・)
あー・・・限界かも・・・。
オレは目を閉じて、意識を眠りへと落としていった・・・。

・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
 「お兄ちゃん、寝ちゃったんだネ」
あたしはお兄ちゃんが寝付いたのを確認して、小声でつぶやく。
 「お風呂、一人だと寂しいなぁ~・なんちゃって」
一緒に入ってもいいかな、ってちょっと思うけど、やっぱり恥ずかしい。
 「・・・・・・今日は、ごくろうさま♪」
お兄ちゃんはスースーと寝息を立てて気持ちよさそうに眠ってる。
 「・・・・・・・・・・大好き、だよっ!」

   チュッ♡

これが、あたしの精いっぱいの気持ち――――。



―――――今日も、平和な時間が流れてゆく―――。

~完~



あとがき
前編・後編に分けた作品は思えば初めてです。両方あわせてもたいした量にはなりませんけどね。
ちなみに瑩くんの妹の雪音、実は両親の都合によりそうなった、いわゆる義理の妹です。血は繋がってません。そんなわけでかなり過保護な瑩くん。しかも両親は家におらず、海外出張中です。
そして今回は、身近な敵についていろんなネタをつぎ込んで書いたわけですが、どうでしたか?
管理人的には結構楽しく書けたほうです。
ちなみにこれも現在鋭意製作中のものではありません。
完成するまでにはもう少しかかりそうです。待っててください~w
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