―――目に見えない恐怖は、どんな恐怖よりも厄介だ。
目に見える恐怖は、解決できるから厄介ではない・・・。
チーンコーンカーンコーン・・・
「ふぁ・・・ねむ・・・」
オレ、橘 瑩(たちばな あきら)、少しだけ脚力に自信のある、高校2年生だ。
(そういや授業終わってんだよな・・・)
今は放課後らしいので、眠いし、とっとと帰ることにする。
「ほんじゃ、さいなら~」
寝ぼけてるのか、誰に言うまでもなくあいさつをして教室を出る。
・・・・・・
「ただいま~」
「おかえり、お兄ちゃん」
こいつは雪音(ゆきね)、オレのかわいい義妹だ。
「メシできたら、起こしに来てくれ」
「もう、たまには部屋の掃除もしなさいよ?」
「ヘイヘイ・・・」
家の都合で両親は不在なので、雪音がこの家の全てを仕切っている。
(雪音も大変だな・・・)
そう思いながら、オレは自分の部屋へと入り、速攻でベッドに倒れこむ。
(おやすみ~・・・)
オレは一時の仮眠へと、身をゆだねていった・・・。
・・・・・・
「お、お兄ちゃん、起きてよぅ」
「・・・・・・んん?」
浅い眠りだったのか、オレはすぐに起きることができた。
「メシ、もうできたのか?」
窓の外を見てもまだ日が沈んでないし、メシの時間には早すぎる。
「どうしたんだ?」
「あ、あのね、変な手紙が・・・」
「変な手紙?」
オレはそれが気になり、雪音の言う「変な手紙」を見てみた。
「これか・・・どれどれ・・・」
『橘 雪音タン、僕は君のことを思うと夜も眠れなく、糖尿病になりそうな勢いです。
毎晩はあなたでハァハァ( ´Д`)しています。たまらないです。
この気持ちはきっとアラビア語で言う「恋」なのだと思います。 ~雪音タン命より~』
「雪音、こいつブッ殺しに行くぞ」
これが率直な感想だ。
「あ、あと、こんな写真も・・・」
「なに!?」
雪音に渡されたのは、登下校時に撮られたであろう物や、普段着を着ているものなど、複数あった。
「・・・・・・あ、これいい・・・」
なかにはかなりきわどいアングルからのモノもあり、少し欲しくなる・・・。
「お兄ちゃん??」
「スミマセンデシタ」
雪音のバックにスタンドらしきものが見えたので、身の危険を感じ、とっさにあやまる。
「これはまさか、ストーカーってやつか・・・」
「どうしよう・・・怖いよぉ・・・」
確かに雪音はかわいいし、狙われることも少なくないだろう。かわいい上に、かわいいからな。
「雪音、安心しろ。オレが必ず、守ってみせる!」
「でもまだそうと決まったわけじゃないよね・・・?」
「え?まぁ、うん・・・」
うわ、雪音、空気よめよ・・・。でもま、怖いんだろうし、かわいいから許すけど。
「とにかく、なにかと危険だ。絶対にオレのそばを離れるな」
「わ、分かった・・・」
「・・・・・・風呂もトイレもな・・・」
「・・・今、一瞬お兄ちゃんのこと、かっこいい・って思ったのに・・・」
「雪音はホントにかわいいなぁ~・・・」
雪音はむーっとした表情を浮かべていた。こんなオレを許してくれ。
・・・・・・
やがてメシも食い終わり、明日の準備をして、そろそろ寝る時間になった。
「・・・さぁて、そろそろ寝るか・・・」
と、ベッドインしようとしてたとき、
――バン!
「お兄ちゃん!」
ドアが勢いよく開かれ、雪音が下着姿のまま立っていた。
「Oh!マーヴェラス!!」
求めたのはこの快感。オレは今、天国への階段を上っている。
「いいから早く来てよ!!」
「あぁ、すぐにイくさ~♪♪」
オレは半分、理性を失いかけていた。が、
「真面目に聞いてよおぉーっ!」
――ゴシャ!!
「ごふっ!?」
雪音はドアの近くにあった地球儀でオレを撲殺しようとする!
「ちょっ、マジですいませんっした!!」
オレは顔面を殴られ、鼻血がドピャドピャと出ていた。ついでにじんわりと涙も。
「謝んなくていいから、早くぅ!」
「何をそんなに・・・」
雪音にしてはめずらしいあわてようだ。相当大変なことなんだろう。
オレの顔面も十分大変なことになってるが。
そしてオレは雪音の部屋に案内され、
「い、家の前に、知らない人が!」
「あぁ?そんなん、いつも通ってるだろうが・・・」
「ちがうの! ずっとこっち見てたのぉ!」
「・・・ホントかよ」
とりあえず、窓の外を見てみる。
「・・・・・・」
なんだよ、誰もいないじゃないか・・・。
「雪音、たぶん思い過ご・・・」
「・・・ひっく・・・ぐす・・・」
「・・・・・・雪音?」
「ふぇ・・・ホントに・・・怖いの・・・ぐす・・・」
雪音はウソ泣きなんかしない娘だ。長年一緒にいたからそれは1番分かってる。
「・・・雪音、ごめん・・・」
オレは優しく雪音を抱きしめる。
「お前の気持ち、分かってあげられなくて・・・」
雪音はオレの胸の中で泣き続けてる。すると雪音が、
「クスン・・・さっきもね、手紙とね、同じようなね、メールが・・・・・・ひっく・・・」
「なんだって?」
なんてやつだ・・・。ここまで雪音を追い込みやがるとは・・・。
「雪音、大丈夫だ。オレがいるから・・・」
オレはそういい、雪音をさらにぎゅっと、深く抱きしめる。
「お兄ちゃん、い、痛いよぅ・・・」
「あ、あぁ、ゴメンゴメン」
思わず力を入れすぎていたようだ。
「あ、あのね、お兄ちゃん・・・」
「なんだ?」
泣き止んできたのか、話し方が落ち着いてきた。
「今日、一緒に・・・寝て・・・」
「・・・へ?」
雪音サン、今なんて・・・?
「は、恥ずかしいけど、怖いから・・・」
「大丈夫、オレが守ってみせる」
なーんて、上辺ではこう言ってるオレだが、実際かなり舞い上がっている。
(ストーカーよ、貴様がいなければ、こんなオイシイ思いは出来なかったかもしれない・・・)
さきほどまでの殺意がウソみたいに薄れていく。むしろ敬意を示したいくらいだ。
「お兄ちゃん、怖いから、くっついて寝てもいい?」
「かまわないさ」
(ストーカーよ、礼を言おうか。でもこんなに雪音を怯えさせたわけだし、やっぱりブッコロ♪)
・・・・・・
そしてオレと雪音は同じベッドに入る。
「雪音、安心して寝ていいぞ」
「うん・・・ありがとう、お兄ちゃん」
「気にするな」
そしてオレと雪音は布団を被り、眠りにつく。
(・・・・・・)
オレは平静を保つのが必死だった。少しでも気を抜くと、顔がニヤけてしまいそうだ。
(ウヘヘェ・・・)
おっとヤバイヤバイ。よだれが垂れていたではないか。
(雪音、早く寝付いてくれないかな・・・)
じゃないと、オレが天国へ逝けないじゃないか・・・。
・・・・・・
それから20分がたった。雪音はスースーと寝息を立てている。
(キタ――――――(゚∀゚)――――――ッ!!)
オレはこのときを待っていたんだ・・・! 雪音が眠りに落ちるのを!
(ヘヘヘ・・・そんじゃ、じっくり楽しませてもらいますよ・・・)
オレはゆっくり起き上がり、雪音へと手を伸ばす。
と、そのとき!
「・・・お兄ちゃん・・・」
「!!?」
なっ?起きていたのか・・・!?
「・・・・・・スー・・・」
なんだ、寝言かよ・・・。(ベタだな)
これで起きられたら困るが。寝言でよかった・・・。
「・・・・・・迷惑かけて・・・ごめんね・・・」
(・・・・・・)
雪音、本当は起きてるんじゃないのか・・・?
そう思い、ほっぺたを突っついて確かめてみる。
「・・・スー・・・」
反応がない。眠ったまま、相変わらずぷにぷにのほっぺただ。
(・・・オレがバカだったよ・・・)
さっきまでの高揚した気分がウソみたいに冷めていく。
雪音が寝付いたらいろいろするつもりだったが、やっぱりできない。
(雪音、オレの方こそ、エロいことばっか考えててごめんな・・・)
自分があわれに思えてくる。オレを頼ってくれている雪音に、そんなことをしようとしていたとは。
「おやすみ、雪音・・・」
オレは雪音にそういい、眠りにつく。聞こえてないだろうけど。
(・・・・・・・・・)
でもやっぱりもったいないので、おっぱいだけでも触っておく。(・・・最悪 by作者)
オレは雪音の胸に、そっと手を伸ばす。
―――ぷょん
(わぁ~、やわらけぇ~♪)
心地よい感触が、手のひらに伝わってくる。丁度いい弾力もあり、すごく柔らかい。
(もう一回さわっとこ)
雪音が起きないように、またそっと手を伸ばす。
―――ふに もみもみ・・・
(おおぉ、すげぇ・・・)
あまりの気持ちよさに、思わずもんでしまった。
「あん・・・」
「!!?」
雪音が声を上げたのであわてて手を離す。が、雪音は眠ったままだ。
(あ、あぶねぇ~・・・)
もし目を覚ましたらオレの命が危ういので、ここらへんで終わりにしとく。
(ま、いい収穫だったし。堪能させてもらいましたよ♪)
オレは余韻の残った手のひらをきゅっと握りしめた。
「そんじゃ、おやすみ、雪音」
オレはそういい、眠りに落ちていった・・・。
最終更新:2005年08月21日 22:40