小説:ちっちゃなお姉ちゃん(第3話)

    

ちっちゃなお姉ちゃん 第3話

  授業も終わり、今は下校時。帰り際、姉ちゃんはなぜかよそよそしい。微妙にオレと距離をおいて隣を歩いている。オレ、なんか悪いことしたかな?
  「姉ちゃん、なんで離れて歩くんだ?」
  オレは目線を下げ、姉ちゃんに話しかける。目線どころか、腰までおろさねば・・・。
  「・・・・・・言っても笑わない?」
  「笑わんよ」
これじゃホント、どっちが上なのか分からないな。
  「・・・ちょっと前なんだけど、祐樹と歩いてたら、後ろから『ロリコン』って声が・・・」
  「オイオイそれオレが犠牲者じゃないのか?」
  「まぁ、そうなるわね」
笑いたいんだけど、なんか怒りたい・・・、そんな絶妙な気分になる。
ていうか、最初に「笑わない?」って聞くのおかしいだろ! 全然笑えんわ!
  「・・・まぁ姉ちゃん、ちっちゃいもんな」
  「ちっちゃいゆーな!」
  そしてお決まりのごとく、オレを見上げてキッと睨んでくる。だから怖くないって。
睨みつけてんのに見上げてるって・・・。逆言うとオレが見下してんじゃん。
  「あんたの身長、20cmほど欲しいわ」
  「そんなに!?」
  「ってそれでも私の方がちっちゃいじゃない~っ!」
ひ、ひとりでツッコんでらっしゃる・・・。冷静さを取り戻してください・・・・・・。
  「あ、そういえばスーパー寄らないといけないのよ」
  「へぇ、そうなんだ」
  急に冷静さを取り戻したのか、現実味のある発言が飛んでくる。スーパーか・・・。
なにか切らしているものがあるのだろうか。それか今日の晩飯のことかな?
  「・・・あんたも行くのよ」
  「えぇ~」
  ここはなんとしてでも断っておきたい。なにより行っても意味ないし、めんどくさいし。
つーか、小学生じゃあるまいし、ひとりで行けるじゃないか。(見た目小学生だけど)
  「えと・・・私一人だと『お嬢ちゃん、えらいね~』とか言われちゃうのよ!」
  「オレと行くと『よくできた妹さんですね』って言われるぞ」
  「それもそ・・・・・・って、どっちにしろ いじめられるの私じゃない!」
途中まで気付かなかったのか、妙なタイミングで2発目のひとりツッコミが。
何気にテンション高いし。そんなに自虐ネタを披露してどうする・・・・・・。
  「ま、姉ちゃん、ちっちゃいもんな」
  「ちっちゃいゆーなって!」
  毎度毎度同じようなことを言っているオレたち二人。そんでオレを睨む姉ちゃん。
あまりの身長差に少し身を屈めるオレ。それでもあんまり変わらないけど。
  と、ふいに姉ちゃんが、
  「あ、でも、もしかしたら『ふがいないお兄さんですね』って言われる可能性も!?」
うわぁ、そう逃げたか。オレを媒介にすることで被害を最小限に・・・・・・
  「・・・ってそれ、ある意味姉ちゃんもなじられてないか?」
  「妹扱いされるよりマシよ」
  「お兄さんって単語が出てる時点で、すでに妹扱いだと思うが・・・」
  「・・・うるさいわね」
変にパニクってるのか、いろいろな盲点を見逃しまくっている。
実際にそう言われたとして、オレは別にそこまでムカつきもしないし、特に何も感じない。
  やはりどう転んでも、姉ちゃんがなじられるのは確実だ。
  「なんにせよ、祐樹も行くのよ?」
  「へいへい・・・」
行くか行かないかでもめてると、延々とループしそうなので、仕方なくオレが折れる。
  若干姉ちゃんに同情してるのかもしれんな・・・・・・。

・・・・・・

  「これも必要ね」
  「あいよ」
  姉ちゃんが指定した商品を、オレがかごに入れていく。姉ちゃんだとカートを押すのがすごく大変そうなので、いつもオレが押している。ついでに言うと、かごの中へ商品を入れるのもオレの役目。ちっちゃいからカートの上のかごまで届かないらしい。
  実際姉ちゃんがしてることといえば、隣を歩いて買う商品を決めてるだけ。
かたやオレは商品をかごに入れてカートを押し、レジ後、袋につめ、それを持って帰る。重労働の嵐じゃないか。この野郎め。
  「なぁ姉ちゃん、この幼児用の椅子に座ってたら楽なんじゃないのか?」
  「なにふざけたことぬかしてんのよ」
ちょっとした冗談のつもりで言ったのに、なにやら本気の目で睨まれた。地味に怖い。
  「まぁイケる冗談さ」
  「古っ・・・」

・・・・・・

  買うものも全て決まり、レジへ通す。するとレジのおばちゃんが、
  「あらぁ、しっかりしたお子さんですねぇ」
  「お子っ・・・・・・!?」
  「・・・・・・」
  思わず吹き出しそうになったのを慌てておさえる。姉ちゃんは黙り込んだままだ。
入店時から今まで、店員には何も言われていなかったが、まさか最後でこんな大爆発が起こるとは。しかも最悪の新パターン。
  「・・・姉ちゃん?」
  「・・・・・・」
  「・・・・・・」
  店員さんもなにかを察したのか、急に黙り込み、しんとした沈黙が訪れる。嗚呼、早くレジ打ち終わって欲しいな・・・・・・。
・・・・・・
  結局、姉ちゃんは家に帰るまで(帰ってからもしばらく)、ずっと黙ったままだった。


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