小説:逃亡者と追跡者 (後編)

    
~ルールおさらい~
☆鬼になったら腕に赤いスカーフを巻く。
☆制限時間内に勝者一人が決まらない場合、サドンデス。

~前回までのあらすじ~
瑩は原田祐司という男と手を組んだ。

  「時に祐司、50mは何秒だ?」
  手を組んだからには一応相手のスペックを聞いておいたほうがいいだろう。希望としては、やはり速い方が心強いのだが。
  「今のところ最高は6秒フラットだ」
  「へぇ・・・」
思ったより、いや予想外に速いじゃないか。最速コンビも夢じゃないだろう。
  「そういうキミは5秒8だろ?」
オレが聞いたからなのか、祐司もオレのタイムを詮索してくる。っていうか知ってんじゃん。
  「ああ、まあな」
  「いい足を持ってるね」
その言葉、どう受け取っていいのやら。褒められてる気がしないでもないが。

・・・・・・
  オレと祐司は歩いていた。しかし、全く敵が出てくる気配はない。かれこれ10分は歩いている。明らかにおかしい。
  「妙だな、祐司」
  「ああ、絶対何かたくらんでるな、あいつら」
もう気を抜いてられない。他のヤツより速くても、不意打ちをつかれたら終わりだ。それは祐司も分かってるはず。と、
  「ん? なんだ、あいつ」
  オレと祐司の前方30mほどに、腕に赤いスカーフを巻いた、なにかフラフラしたヤツがこっちに向かってきている。パッと見、こいつは遅そうだ。
  「はふぉー、はふぉー・・・」
・・・・・・すっげぇ息遣い荒いし・・・。
  「祐司、逃げるぞ」
  「ダメだ。左右、そして後ろを見てみな」
  「!!」
  どうやらオレたちは囲まれてしまったようだ。目の前にはフラフラボーイ(仮)、左にはやばいくらい細いガイコツ少年、右にはなんか「ケヒッ、ケヒッ」とか言ってるヤツ(相当キテるなコイツ・・・)、そして後方には・・・
  「オイオイ、真悟かよ・・・・・・」
そう、後ろにはこの鬼ごっこの主催者、そして我が悪友が立っていた。
  「フフフフ、瑩よ、このカルテット・シーリング・フォーメーション、完璧だろう?」
  真悟がかなり自慢気にほざく。ただ4人で囲っただけなのに、なんでそんな微妙にかっこいい名前つけるのだろうか。さすが真悟、意味の分からなさではトップクラスだ。
  「行くぞおぉぉあぁ!」
  「ふお!」 「カツカツ!」 「ケッヒ!」
真悟が合図を叫び走り出すと、周りのアブない(?)やつらも同時に走り出してきた。陣形からして確実にこっちが不利。かといって考えているヒマも無い。
  「「グレート・ダッシュ!!」」
  オレと祐司は同時に叫び、それぞれ違うルートへと走り出す。なぜこうも打ち合わせもせずハモれたのかは謎だ。てか祐司ってこんなキャラだったのか。
  「は、はふぅー、はふ!」
  「カツカツカツカツ!!」
オレの逃げた方向にはフラフラボーイとガイコツ君が。
  「ケヒッ、ケヒュ・・・ゲヒュッ!」
  「逃がさん!」
祐司にはなんかケヒケヒ言ってるやつ、そして主催者・真悟が追っ手に。
  「チョロいな」
  オレの方の追っ手は、足元のおぼつかないフラフラボーイ(すでに疲れ気味、しかもコケそう・・・)と、カツカツと骨同士がぶつかってるような音を立てているガイコツ君だ。ガイコツの方が、若干フラフラより速いが、両方ともオレの敵ではない!
  「はふっぷぉああ!」
フラフラボーイが意味不明なことを叫び、オレのロードを邪魔する。しかし、極端に足が遅いため、避けるのはたやすい。
  「フン・・・」
  問題はガイコツだ。超細身のボディに似合わず、割と速い。なにかとアゴがカツカツ鳴っているが。
  ガイコツは、フラフラボーイを避けたオレのほぼ直線状に構えている。このまま走り続ければ当然捕まるだろう。
  (ここはサイドステップで逃げてみるか?)
  直後、オレは利き足に力をいれ、思いっきり横に飛び、軸足から地面に足をついて
いき、再び利き足で力を込め、地面を蹴る。
  「これであいつは・・・・・・げっ!」
  「カツカツカツカツカツカツ!!」
  逃げ切れたと思ったが、このガイコツ、なかなかやるヤツだった・・・。オレがステップした瞬間からなのか、今さっきからなのか分からないが、この骨野郎、横方向にカサカサカサ・と、カニっぽい動きでオレを追跡してやがる! しかもなぜか微妙に・・・・・・いや結構速いし! 動きはかなり気持ち悪いが・・・。
  「こ、怖えぇ~!!」
アゴが今にもハズれそうな程カツカツと音が鳴ってるガイコツ面、空気でも抜けたかのようにプランプランした細い腕、内臓が本当に入ってるのか疑わしいくらい超華奢なウエスト(服の上からでも分かる)、そして極めつけはそのカニ走りだ。正直、気持ち悪いを通り越して、怖いの域だ。夜中こんなやつに追いかけられたら、絶対泣くな・・・・・・。
  「う、うわ! こっち来んなって!」
  「カツカツカツ! カコッ! ブッ・・・!」
  「!?」
  妙な音がしたと同時に、ガイコツはスピードを落としていく。
  「ど、どうし・・・うっわ・・・・・・」
オレが見たものは果てしなくグロかった。どうやらガイコツ君はアゴが外れてしまったらしく、ムンクの叫び状態だ。しかも白目むいて、穴という穴からいろんな液体が垂れてるし。
目からはビーム・・・いや涙、鼻からは鼻水、口からはよだれと血、そして耳からは・・・・・・
  「って、耳!?」
なんでそんなとこから液体出とんねん! こいつ早く病院行けよ! むしろもう逝けよ!
  「ウヒッ・・・ウヒッ・・・ウッヒ・・・」
  ガイコツ君、なにやら白目で声にならない声を上げているが、どうやら泣いているらしい。だが、第3者から見たらただのヤクチューにしか見えない。
  「ま、こういうのは無視に限るな」
オレは誰かに見られて勘違いされたら困るため、この場を立ち去ろうとした。が!
  「はふ! もう逃げられないんだなぁ~」
  「な!? しまった!」
  この、デブでもないのに息遣いがやたら荒いフラフラボーイは、いつのまにかオレの背後に立っていた。しかもほぼゼロ距離。まずいぜ・・・・・・。
  「つっかまっえ――――」
  「食らえ! 羊肉ショット!」
フラフラボーイがタッチしようと手を伸ばしてきた刹那、オレは瞬時に軸足を高速回転させ、逆の足に力を込め、後ろ回し蹴りを放つ。そしてフラフラボーイの、男の子にとって大切かつ遺産である部分に直撃し、鈍い轟音が鳴り響いた。
  「fjkldさjhgvdskhvjンjvskンあjふじこヴぁksdmcアン!!」
もはや地球の言葉ではない。フラフラボーイは、局部を押さえ込み、地面でバタバタとのた打ち回っている。
  「うグ・・・ごっはぁあっ!!」
――――ビチャビチャビチャッ!
  「・・・って吐血!?」
フラフラボーイは痛さのあまり(?)、大量の血をこの公園へぶちまけた。そのうちハラワタもぶちまけるんじゃないか?
  「ふひゃ、はふ・・・ごぷっ・・・ハァハァ、ぼ、ボクの、人・・・生は、ホントに、よかっ、良かった・・・。母上、そんで・・・おとん、ワイを生んでくれて、ホンマありが・・・」
  「いやもういいから」
――――ゴスッ!
  オレは再び、やつの遺産部分に蹴りを入れる。サッカーボールを蹴るような、そんな軽いキックだ。が、
  「うっ・・・・・・・・・・・・」
失神、いや逝ったか。
  「やれやれだぜ」

・・・・・・・・・
  さて、祐司と合流せねばならんな。祐司はオレと反対方向に逃げていったから、正
直合流するのは難しいだろう。あいつ、捕まってるなんてことはないだろうな・・・・・・?
  「おっと・・・」
  前方に赤いスカーフを巻いた2人組が見えた。オレは音を立てず踵を返す。やつら
には気付かれていない。この辺りも危険だな。
  「瑩!」
と、突然どこからかオレを呼ぶ声が。
  「って、祐司?」
それは先程までオレが探していた祐司だった。
  「ふぅ、なんとか合流できたぜ。瑩、残りはオレたちと2~3人程度だ。なんとしても、生き残るぞ!」
  「その意気だぜ、祐司!」
制限時間も残りわずか。オレたち二人が生き残った場合はサドンデスに突入するが、オ
レはそれで仮に負けても後悔はしない。祐司は共に戦った、戦友だからだ。

・・・・・・
  そして5分が経過した。何回か敵を回避し、ゲームエンドまでもう少しだ。
  「もう少し、あと少し・・・」
  オレと祐司は結構体力を消費している。不意打ちでもされようものなら、即ゲーム
オーバーになってしまうだろう。
  そしてヤツは現れた。
  「瑩、そして原田祐司・・・よ、残りは貴様らだけになった・・・・・・」
祐司の名を言い終えたあと、若干の間があったが気にしてはいけない。
  「フッ、まるで最後のボスのようだな、真悟!」
  「・・・・・・」
オレたちの目の前に現れたのはそう、この鬼ごっこの主催者、真悟だった。そのとき、なぜか祐司は無言のまま、若干冷えたような目つきをし、真悟を見ていた。
  「残り1分もないだろう。決着をつけるぞ、瑩ァ!」
  「望むところだぜ、真悟ォ!!」
オレと真悟の間にはいつも渦巻くなにかが存在する。それはお互いから溢れ出る闘気と
いう名のジェネシックオーラだろうか。
  「「勝負!!」」
と、そのとき!
―――ガシィッ!!
  「なにぃ!?」
  「すまないね、瑩・・・」
  オレは突然、動けないように足と腕をホールドされてしまった。こうもガッチリと固められてしまっては逃げられない!
  「クッ・・・祐司、てめえ・・・・・・!」
オレを捕らえやがったのはなんと、先程まで共に戦っていた、祐司だった。
  「さあ真悟! オレが捕まえている間に、早く瑩を!」
オレと手を組んだのは、こういうことだったのか!? はじめからオレを捕獲するためだけに・・・・・・! くそ、ハメられた!
  「・・・・・・」
  しかし、真悟はなぜか攻撃してこない。沈黙を続けたままだ。
  「真悟! 何をしてる! 早くするんだ!」
祐司は呼びかける。が、
  「オレ様にも気に入る勝ち方と気に入らねえ勝ち方があんだよ・・・!! 引っ込んで
な!! 祐司!」
  「・・・・・・っ!」
  真悟がそう叫ぶと、祐司は聞こえないような舌打ちをし、オレへのホールドを解く。何気に結構かたく捕らえられていたため、地味な痺れと痛みが残っている。
  「祐司・・・お前・・・・・・!」
  「すまない・・・。こうするしか、なかったんだ・・・・・・」
祐司はオレへ謝罪の言葉を向ける。だが、そんな言葉だけで、許せるはずもない。オレ
は裏切られるのがなにより1番嫌いなんだ。
  「瑩ァ!」
  真悟が急にオレの名を叫ぶ。空気読めよこいつ・・・。
  「今ゲームエンドの時間になった。だが最後の1分、邪魔が入ってしまった。そこでさらに残り1分、オレとお前でのサドンデスを行いたいと思う」
  真悟がオレに一騎打ちを申し込んできた。
  「こいつはどうなる?」
と、オレは祐司を指差す。祐司は自分のしたことを悔いているのか、下を向いている。
  「これはオレとお前の一騎打ち。そいつには無関係だ。ま、鬼ごっこが終了している今、優勝者は祐司になるだろうがな」
  つまり、オレと真悟の勝敗はこの鬼ごっこに関係ないと。じゃあ最初からこんな盛大なことするなよオイ! とツッコミたいが、そういう空気でもないので黙っておく。
  「戦士として・・・・・・」
  一騎打ちを始めようとした最中、ふいに祐司が口を開く。
  「戦士として、プライドを捨てて生きるくらいなら、戦って死んだ方がマシだ!!」
祐司は熱く気合がこもったボイスでそう叫ぶと、真悟の方へ歩み寄る。そして、
  「お前と瑩以外のここにいる鬼全員と、同じく1分間戦い抜いてみせる」
そう、言った。20人もの敵を相手に逃げ切るというのか。時間は1分。短いようで長い戦いになる。しかもオレより遥かに困難な状況でだ。
  「なかなか見上げた闘志だな。よし、お前ら、オレと瑩の一騎打ちと同時に、そいつに襲いかかれ!」
  「ウィ~ッス!!」
真悟が赤スカーフ鬼軍団にそう明命した。オレと真悟のスタートが、最終戦争の幕開けになる。
  「瑩・・・」
  またもやふいに祐司が口を開く。今度は一体何を言う気だ?
  「さっきのことは本当にすまないと思っている。悪かった・・・」
繰り返すように謝罪の言葉を浴びせてくる。正直聞き飽きたぜ・・・。
  「・・・・・・で?」
  「少しの間だったが、共に戦ってきた戦友として、ここはお互い勝利を収めたいと思っている」
  「ワンツーフィニッシュ・・・か」
  「・・・・・・ああ」
  「フン・・・」
  オレは笑みを浮かべると、戦いの姿勢を整える。同時に祐司も、戦闘態勢へ。
  「瑩、幸運を祈る」
  「・・・グッドラック、祐司」
オレと祐司は握り拳を作り、ガッとお互いの拳を軽くぶつけあった。戦友、か。
  「いくぞ皆の衆ウゥーッ!!」
  真悟が最終決戦の火蓋を切った。同時に、周りの群集も祐司に襲い掛かる。
  「ウオオォォォオオォオオォォォオオオォオオォッッ!」
  そして時は動き出す・・・・・・。

・・・・・・・・・
  ちなみにあの軍団が引き付けられた例の写真とは、オレのマイシスター、雪音(ゆきね)の秘蔵ショットだった。もちろんこのことを知ったオレは、真悟をシメた。
  そして祐司がなぜあんな行動に出たかというと、大切なレポートを真悟にパクられて返して欲しくば・・・みたいなことをさせられていたらしい。もちろんそれを知ったオレは、再び真悟をシメた。

・・・あの熱い最終戦争は、オレたちの勝利で幕を閉じた。


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