小説:蘇りし記憶

    
  清々しい朝は、やはり気持ちいいものだ。あまりの気持ちよさに、ついつい二度寝でもしてしまいそうな気分になる。そしてそれに負けてしまったら・・・。
  と、そんな感じで遅刻してしまったオレガイル。いつもなら義妹の雪音(ゆきね)が起こしてくれるのだが、今日はなんたら委員会とかいうので早く学校に行ってしまったのだ。
  まぁ遅刻と言っても、そんな大幅に遅れたわけでなく、一時間目にはちゃんと間に合うくらいにだが。
  「やれやれだぜ」
  オレの名は橘瑩(たちばな あきら)、鬼ごっこで本気になった高校2年生だ。

――――ガラララ・・・
  教室の扉を開け、室内を見渡す。どうやら遅刻したのはオレだけのようだ。
  「あ、橘。あんた、もしかして遅刻初めてじゃないの?」
  扉を閉め、オレがマイデスクにつくと、隣の席の朝比奈千冬(あさひな ちふゆ)が話しかけてきた。
  「ああ、オレとしたことが遅刻だなんて」
今さらだが、遅刻してしまった悔しさが、地味にこみ上げてくる。
  「でもなんか意外よね~、あんたが今まで遅刻ゼロだったってのは」
  「オレもビックリだよ、そんな快挙を成し遂げていたなんてな」
  「ホントねぇ~」
オレと千冬が会話している中、突然教室の扉がガラッと開き、担任が慌てて入ってくる。なんだ、オレが遅刻して来たときにはもう朝のホームルームは終わってたはずだぞ?
  「いやぁ、みんなゴメンゴメン。今日は転校生が来るんだったヨ」
  結構なイベント事なのに、あまり騒がない教室内。すでに転校生の存在を知っていたのだろうか。ていうか、なんでそんな重大なことを忘れるのかなぁ、ウチの担任。どこか抜けている。
  「喜べ橘、女の子だぞ」
なぜオレを指名する、担任よ。地味に教室中の視線を集めてしまったではないか。
  「じゃ、入ってきて」
  そして担任によって扉が開かれ、噂(?)の転校生が姿を現す。

  腰まである長いストレートの髪が特徴的な、明るい感じの可愛い女の子。クラスの男どもの視線が、彼女に釘付けになる。
  「初めまして、夏河美奈(なつかわ みな)といいます。よろしくお願いします!」
見た目に反さず、ありきたりだが、元気のいい自己紹介だ。しかしこの名前、どこかで聞いたような気がする・・・・・・。
  いや、気のせいか?
  ま、考えても無駄無駄無駄ァだな。睡眠学習モードに入ろうか。
  「千冬、昼飯んなったら起こしてくれ」
オレは机にバタッと突っ伏す。伏せたとき頭を打って、ちょっと痛い。
  「ハイハイ、分かったわよ」
  「Zzzz・・・」
  「早っ!」

・・・・・・・・・
  キーンコーンカーンコーン・・・
  「橘~、お昼よ~」
  「う~ん・・・あと5世紀~・・・」
  「そんなに寝たら永眠しちゃうでしょ! 起きなさいよホラ!」
――――ガスッ!
  「グフッ! て、てめぇ延髄をォ・・・・・・」
  「起きないあんたが悪いのよ」
ズキズキと痛みが広がり、頭がクラクラする。運が悪ければ本当に永眠していただろう。
  「昼飯か・・・学食行かねーと。千冬は?」
  「あたしも学食よ」
  「一緒に行くか」
  「そうね」
オレと千冬は、列に並ぶのを覚悟で学食へ向かうことにし、ちょうど教室の扉を開けようとした。そのとき、
  「瑩くん!」
後方からオレを呼ぶ声が。振り返ると、そこには例の転校生がいた。
  しかしなぜ下の名前で呼ぶ? 普通は上だろが。しかも呼ばれたと同時にクラスの男連中から殺意のこもった視線を浴びてしまったではないか。やれやれ。
  「・・・なんだ?」
  とりあえず呼ばれたからには返事をする。あやうくスルーするとこだった。
  「学食行くんだったら、私も一緒にいいかな?」
さらに勢いを増す殺意の視線。早くこの場から逃げたい・・・。
  「オ、オレは構わないけど千冬は?」
  「ん? あたしも構わないわよ。あ、よろしくね、美奈」
  「よろしく、千冬ちゃん!」
  互いに了承を得たようだし、オレは足早に学食へ向かおうとする。しかし話しながらのんびりと歩き出す御二方。頼むから早くしてくれぇ~・・・。

  そんなこんなで学食に着いたオレたち3人。遅めに来たのでやはり混んでいる。
  各自食券を買い、かったるいながらも仕方なく列に並び、数分後、やっとのことでメシをゲットした。
  その後オレたちは近くにあるテーブルへとつき、昼飯を食べ始める。だがオレは昼飯のことよりも、今目の前で千冬と話しながら楽しそうにカツ丼(3人前)を食べてる、例の転校生のことが気になっていた。
  つーか食いすぎだコイツ。

  放課後。いつもどおり掃除も終わり、帰る準備をする。カバンを持ち、下駄箱へ向かう。そして校門を出ようとしたとき、ふと横から声がした。
  「瑩くん!」
  またか。
  そこにいたのは、昼食時と同じ明るさでオレを呼ぶ例の転校生。
  「一緒に帰らない?」
  ここでこんな可愛い子の誘いを断る男はそうそういないだろう。実際オレもそのひとり。断るはずがない。
  「ああ、いいよ」
オレたちは歩き出した。

  ―――今日あったことや最近の話題など、他愛無い会話が続く。それでも、下校時の会話にしては盛り上がっている方だ。
  そしてふと、
  「・・・・・・覚えてないかな? 私のこと」
  「・・・・・・」
彼女はそう言った。夏河美奈。オレのことを知っている・・・・・・夏河美奈。
オレの朝からずっと感じていた違和感はなんだ。この、初めて会った感じがしないのは。  オレとコイツは一体・・・・・・。
  「えーと、ちょっといいか?」
  「うん?」
こいつはオレを知ってて、オレもこいつを知ってる・・・はずなんだが、どうにもオレは・・・。
  しかし黙ってるのもアレなので、失礼ながらも、言うことにした。
  「覚えてない?ってまぁ、覚えてないんだけど、でもなんか完全に覚えてないわけじゃなくて、ふとした時に思い出せそうな、今はそんなカンジなんだ」
  複雑な心境だ。存在しているのか分からない記憶が絡み合う。
  「そうかぁ・・・ちょっと残念だなぁ」
彼女は「ちょっと」と言った割りに、ずいぶんと沈んでしまった。
  「あ、これ見たら思い出してくれるかな・・・」
  彼女は首に手を回し、ペンダントらしきものを外した。小指の爪くらいの、本当に小さなペンダント。そしてそれを、オレに渡してくる。
  「・・・・・・あ、これ・・・」
瞬間、記憶が舞う。
  「・・・オレがあげたヤツじゃん」
やけにあっさりと、しかも鮮明に思い出せた。彼女、「夏河美奈」のことを。昔、家が隣でよく遊んでいたこと。そして、オレが渡したこのペンダントのこと。その他にも、まだまだたくさんの思い出がある。
  「・・・思い出してくれた? 瑩くん」
  「ああ、美奈・・・だよな? あんときの・・・」
  「そうだよ~! えへへ、瑩くんだ~い好き!」
そう言うと美奈はオレに飛びついてきた。避けることも可能だが、快く受け入れる。
  「はは、お前のこのクセも変わってねぇのな」
オレの胸をギューッと締め付けてくる美奈。昔から、こいつはオレに抱きついてくるのがクセだった。昔は何も感じなかったが、今思うとかなりオイシイな・・・。
  ・・・久しぶりに食らったので、一瞬ドキッとしてしまったのは秘密だ。
  そして、あのときから成長した結果なのか、2つの膨らみがオレを襲う。ムニュ~ッと心地よい感覚が、全身へと伝わっていく。
  「・・・ぬふふ、大きくなったな、美奈」
しまった、ついオヤジ発言&怪しい笑みがこぼれてしまった!
  「えへへ~」
そんな笑い声でさらっと流されたが、今はそれが逆によかった。ていうか助かった・・・。

  それから、昔のことについて盛り上がった。そのおかげか、いつも通ってるはずの通学路がかなり短く感じた。少し前に腹が痛かったときは、すごい長く感じたのに。
  「そういえば美奈、家どこに引っ越してきたんだ?」
  「もうちょっと行ったとこだよ」
  今のところオレと美奈は全く同じ道を歩いている。オレの家の近くなのだろうか。
そこの角を曲がれば、オレの家である。さて、美奈とはここでバイバイだな。
  「あ、私の家そこだよ」
そう言って美奈が指差したのは、オレの家・・・・・・の隣にある、黒い屋根に謎のシンボルがついた家。まさか・・・
  「美奈・・・お前の家って、あの黒い・・・」
  「うん、そうだよ♪」
こ、これは一体・・・
  「オレの家、その隣なんだけど・・・」
  「え! そうなの!?」
ものすごい驚きようだ。実際オレもかなりビックリしている。
  「また昔みたいにお隣さんだね、瑩くん!」
  「そうだな」
  そう言って、ものすごくはしゃぎまくる美奈。
  正直こんな偶然があるものだろうか、と思う。

・・・・・・あぁ、またこれから騒がしくなるなぁ・・・。
  「そういえばさっき、おっぱいに反応してたね~」
何気にちゃんと見てやがったのかコイツ・・・。


~あとがき~
このシリーズの小説をすごく久々に書いた気がするなぁ。
今回は新キャラで幼なじみの美奈登場というわけで、サクッと書いてみました。
若干いつものような面白みには欠けているような、そんなカンジはしますが。
それではまた。・・・って短っ!


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