小説:ちっちゃなお姉ちゃん(第7話)

    

ちっちゃなお姉ちゃん 第7話


  夜。姉ちゃんとテレビを見ている。2時間スペシャル、ホラー映画だ。
  オレは今日買った本でもゆっくり読もうかと思っていたが、姉ちゃんに
  「いっしょに見るのよ!」
と、せがまれ仕方なく見ていたが、見始めると案外面白いもので、本の事も忘れてハマッているオレがいる。
  いや、それ以上に姉ちゃんの反応がなかなかに面白い。狙ったかのような恐怖シーンがあるたびに、
  「わっ!」
  「はぅ!」
  「やー!」
と、よく分からん奇声を発する。挙句、
  「ね、ね・ねぇ、今の怖くなかった? ねえ、やっぱり祐樹も怖かったよね!?」
嗚呼、なぜ自身の感じた恐怖を擦り付けてくるんだ。
  「さっきから姉ちゃん、ビビリすぎじゃない?」
  「そんなワケな・・・あぅ!」
姉ちゃんが返答しようとした瞬間、例の如く恐怖シーンが流れる。
  数秒後、
  「ぜ、全然怖くないわよこんなの!」
どのツラ下げて言ってるんですか姉さん。説得力なぞ微塵もありませんよ?
  「ハハハ・・・」
言ってるコトとアクションが矛盾している姉ちゃんを見て、思わず吹き出した。
  「ん、今笑うシーンなんてあった?」
  「うん、目の前に」
  「??」
どうやら気付いてない様子。いやまぁ、気付かれても困るけど。

  2時間。
  映画も終わり、部屋に戻って本でも読もうと思い、立ち上がる。
  「ん?」
  「・・・・・・何よ?」
  オレが立ち上がると同時に、姉ちゃんも立ち上がる。
  「いや、別に」
  「あ、そう」
  部屋へ向かって歩き出す。姉ちゃんが後ろをトテトテと着いて来る。
  「・・・・・・姉ちゃんさ、そんなに映画怖かったの?」
振り返って向き合い、問いかけてみる。
  「なっ、ちょっ、バッ・・・、そんなワケないじゃない!」
  「ふーん・・・・・・あ、そう・・・・・・あれ?」
  「? どったの?」
  「なんか、変な音しない?」
  「えっ?」
オレがそう言い、お互いに黙り込む。

  数秒の沈黙が流れ、姉ちゃんがキョロキョロしだし、背後に何かを感じたのか、ふと後ろを振り返る。瞬間、
  「がああぁあぁあっ!」
  「ひいぃいっ!」
オレが思いっきり叫んだのと同時に、今まで聞いた事のないような悲鳴を上げ、必死な顔でオレにしがみつく姉ちゃん。って、速っ!
  「っていうか、プッ、ハハハハハ!」
  笑いを堪え切れなかった。
  「こんなのに引っかかるの、今時いないって!」
  作戦(?)は見事コンプリート、姉ちゃんを驚かすのに成功した。
  「ゆ、祐樹のばかぁーっ!」
しがみついた状態からポカポカと攻撃をし始めた。
  「マジに怖かったんだからね!? ちょっと泣いてるよ私!?」
かなり動揺してるのか、疑問系イントネーション乱用。
  ってマジにちょっと泣いてるよ!
  「面白かったなぁ、今の。姉ちゃんビビリすぎだって!」
  「あーもう! 乙女の涙を無駄に流させるな!」
何が乙女なモノか、幼児体型が! と言いたいのを堪えつつ、
  「怖いのは分かったから、離してくんない? 部屋戻りたいんだけど」
まだガッチリと姉ちゃんにホールドされてたので、解除を要求する。
  「まったく、昔は祐樹な・・・・・・」
  「子供の頃から姉ちゃん、怖がりだったよね」
  「誇れる嘘くらい吐かせろ!」
反論の余地すら与えてやらない。

  各々の部屋へ着き、ドアノブへ手をかける。
  「祐樹ぃー、どうせ本読むんだったら、私が寝るまで傍にいてよー」
  「なにそれ、姉ちゃんの部屋で本読めってこと?」
  「だってなんか怖いんだもん」
  「偶然にもオレの読む本、ホラー小説なんだけど」
  「む、なんてピンポイントな」
  「そういうワケだから、おとなしく一人で寝なさい」
これで諦めてくれただろう。やっと、ゆっくり本が読める。
  手を掛けっぱなしのドアノブを回し、部屋へ入ろうとする刹那、
  「じゃあ私が祐樹の部屋に行く!」
  「ッ!? なぜにホワイ!?」
な、何を言い出すんだ、ウチの139cmは!
  「怖いもの見たらよく、夢に出るって言うじゃない」
  「・・・・・・」
  「怖い夢見てハッと目が覚めたとき、一人だとすごく怖いじゃない?」
  「・・・・・・ハイハイ、わかったよ、いいよ、来ても」
  「ふふん、それでこそ私の弟だ」
  これ以上言い合ってるのも時間の無駄だし、本を読む時間を削られるのもイヤだったので、仕方なくオレが折れる。

  オレはベッドで横になりながら本を読むはずだったのだが、姉ちゃんがオレのベッドに潜り込んだので、机で読むハメに。
  「ていうか、オレどこで寝ればいいの?」
オレ用のでかい布団から、小さな顔をヒョコッと出している姉ちゃんに聞く。
  「ん? なによ、一緒に寝ればいいじゃない」
  「オレそんなに寝相良くないよ? 姉ちゃん、潰されるんじゃない?」
  「なっ! そこまで小さくないよ私は! ノミかダニの一種か私は!」
  ・・・・・・ノミとしてはでかすぎる、しかし人間にしては小さい。なんて中途半端な生物になったものだ、ウチのミニ姉は。

  「じゃあ、おやすみ、祐樹ぃー」
  そう言って目を閉じた姉ちゃん、これで本が読める。

  数分後、早くもスースーと寝息を立てている姉ちゃんがそこにいた。
  「そんなスピーディーに寝れるなら、来るなっての」
本を読みながら、オレはそう呟いていた。


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