初代リプレイ2

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慌ただしい、聖杯戦争の初日が過ぎ去った。 そして迎えた二日目の朝。それは従僕が己を呼び起こす声によって始まりを告げる。 「起きよ、我が愛すべきものよ、今日はどうするのだ?」 「む……今日はどうする、か」  寝起きだからといって思考が鈍るようでは、魔術師とは言えない。  思考を意識的にクリアし、僅かな思案する。選択肢はいくつかあるが。 「学校へ行く」  昼間から他のサーヴァントを捜し歩くのも旨くはないし、学校には凛や士郎がいる。その後の経過が気になる。  それに、聖杯戦争だろうと、自身のリズムを乱す必要はないはないだろう。昼間、戦闘起こすような馬鹿がいるなら別だが。  霊化させたランサーと共に連れておけば十分だ。  そして登校の途中、士郎とすれ違った。 「よう、おはよう士郎」 「ああ一条か、おはよう」  ……が、軽く挨拶を交わしただけだった。  本当に記憶を失っているらしい。一般人の対処の仕方は当然俺も心得てはいるが、それを実行に移したことも実例を見たこともない。  凛を信じていなかったわけではないが、ほっと胸をなで下ろした。上手くいってなによりだ。  そして校門を潜ろうとしたその時、ふと違和感を覚えた。 「……結界?」  学園を覆い隠すように張られた結界  性質までは見抜けないがこれは何だ? 自分の知る既存のどれも、その特徴には当てはまらない。  ランサーの声が頭の中に響く 「……妻よ、これは英霊の宝具だろう」  やはりそうだったのか、これほど大掛かりな宝具使用できるとするならば……。 「いやまさかな……気のせいだろう」 「おお…なんと雄々しい決断か!そうだ、民衆の批評など関係なく、我らが決断こそ正しい!」  こんな昼間から、巨大な宝具を展開する馬鹿はいないだろう。  このランサーが魔術にそれほど詳しい伝承もないはずだし。  きっと、昨日凛が張った結界が残っているだけだ。 (アイツは無駄にスペックが高いからな)  学園に張られている結界は無視をすることにする。  中に入って何の異常も発生しない結界など、あってなきの如しだからだ。  そして授業を順調を終え、昼休みになる。結界は相変わらず存在しているが、やはり何も起こる様子が無い。  放課後にでも調べれば良いだろう。この学園にはマスターであると同時に、管理者である遠坂凛がいる。  その前で違反行為を働くリスクを考えれば、わざわざこの学園を選ぶメリットは薄い。アイツが危険を感じたなら、俺の元に連絡が来る筈だ。  万が一アイツが裏切って何かの準備をしているのだとしても、管理者本人が日中に暴れるはずはない。  とりあえず昼食にしようと席を立つ。  行き先は当然、 (屋上に向かおう)  そこで約束があったはずだ。  だが――。 「あ、れ?」  その約束とは何だっただろうか? つい先程まで覚えていたはずだ、だから屋上に行くのが当然だと考えたのだ。  なのに、その内容が思い出せない。 「……向かえば、わかるはずだ」  自分に言い聞かせるように口に出し、廊下に出る。はやく、はやくおくじょうにいかないと。  しかし異変はそれだけでは終わらなかった。廊下を歩くと、違和感。  そこに居たのは幼い少女だ。ありえない。 「こんにちは、お兄ちゃん」  挨拶を返すと、少女はにっこりと微笑んだ。その笑みが、何故だかどうしようもなく歪んでいる気がして。  ――ゾクリ、と背筋に戦慄が走る。 「お名前、おしえて?」 「お、れは」  必死に自身の名前を答えようとする。  だが、どうしてもその当たり前が思いだせない。しかし感じる、ここで*もい**なければ、?の?**?は??で??る。  そのとき、しらないだれかのことばがのうりにとどいた。 「?っかり*よ! *が**よ!」 「――ッ! そ、ウだ。お*の、ナまえは」  もは?自ブんが何ヲイっているかすラ分からナい。  そレでも、キこえたコと葉にあとおしされて、おレは――『俺』は。 「イ*ジョウ」  ちがう、違う! もっとはっきりと告げろ、俺の名前は! 「イチジョウ……一条、基だ!」  終に呪縛を力尽くで引き引き千切った俺は、自分の名前を叫ぶように答えた。  途端、世界が変色――否、元の色へと戻る。言葉が言葉としての形を取り戻し、意味が意味を示し始める。 「そうだとも、我が妻よ! 我らの真実の愛を忘れられる筈がない!」  突如、霊化を解き、現れたランサー。  少女は驚き、一歩後ずさりをする。 「驚いた、強いのね……お兄ちゃん」  当然だと俺は胸を張り、ランサーに命ずる。 「――やれ、ランサー!」 「――応とも! 喰らえ、我が真実の一撃を!」  阿吽の呼吸で飛び出したランサーの槍を受け、甲高い叫び声を上げ、少女は窓から落下した。  だが手応えがなかったのか、ランサーの表情は浮かないものになっていた。 「……宝具が解除されている?」  ランサーの言葉通り、周囲には結界の痕跡すらも既にない。 (まあいい)  とりあえず、学園の平穏は戻ったようだ。  まさか本当に、白昼堂々、外部から学校に仕掛けてくるサーヴァントがいるとは思わなかったが。 (だが、あの結界……きっとあ少女は)  効果の詳細はわからずとも、その繊細にして巨大な結界の在り方を見れば分かる。  十中八九、キャスターのサーヴァントだろう。 「それにしても強力な宝具だった……自己を失わせる効果か?」  しかし、そのような能力を持つ英雄……思いつかない。  宝具から推測できなければ、サーヴァントの正体を突き止める事は至難の業となってしまうが――。 「一条! 大丈夫だったの!?」  俺の思考が迷路に迷い込みそうになったところで、混乱を滲ませた声音が掛けられた。 「遠坂、無事だったか」 「無事も何も今来たところよ……でも、何で、こんなに派手な宝具なのに発動まで気づかなかったの!?」  なるほど、凛がいない中で俺があの結界をスルーしたから、こんな結果になったのか。  確かに、責められる理由は自分にあるようだ。 「ふむ、凛が早めに起きておけばこうなることもなかっただろな」 「しょうがないじゃない!アンタのせいで魔力使いすぎたのよ!」  アーチャーと共に凛に鋭く睨まれた。弁解の余地もないので、黙っておくことにする。  それに此処でうだうだと話し合っている時間はない。凛が無事だったと分かったのなら、俺のやる事は一つしかない。 「キャスターを追おう」  正体不明の敵は戦うのも難儀だが、同時に放置するのも問題だ。  特にキャスターは正面から来ない分太刀が悪い、少なくとも情報の一つでも入手しておきたかった。  凛にキャスターの宝具の特性について掻い摘んで報告すると、俺は窓から飛び降り、ランサーの力を借り着地する。  さて、今からでも追いつけるといいが。 「ここの処理は私がやっておくから、アンタはしっかり情報収集!」  と、凛の声が上から聞こえる。了承の意を手を挙げる事で示し、走り出した。  アーチャーは既に霊化しているのか、その姿は既になかった。  何をしているのは不明だが、まあ同盟相手の不利になるようなことはしないだろう。  さて、俺は宛もなくキャスターを探さなければならない。  何処へ向かう? キャスターが行きそうな場所、いそうな場所……ダメだ、すぐには思い付かない。 「そうだ、教会」  一度あそこへ向かうべきか。  そう言えば『ルーラー』の話は聞いては居たが、審判役への挨拶を忘れていたし。 「教会、教会、教会ィ!!」 「どうしたんだランサー……ああ、いややっぱり言わなくていい」  ランサーが騒いでいるので霊化させておくことにする。  審判役に多数の人間を巻き込もうとした、キャスターの情報を提示を求めてもいい。  ペナルティの一環ならば、こちらに有利な情報が聞き出せる可能性はあるだろう――。  * * *  そうした期待を胸に教会にやってきたわけだが。 「間桐……?」  教会の前、そこに立っていたのは、浮かない顔をした間桐桜だった。  サボってきた俺が言うのもなんだが、何故此処にいる? 今はまだ学園に居る時間だろうに。  だが、あの宝具に彼女が巻き込まれていなかった、と思うと安堵の溜息が出た。凛と同じく、彼女も幼少の頃よりの既知だ。 「……あれ? こんな所でどうしたんですか、先輩?」  桜は、こちらに気付いたらしく挨拶と共に軽く頭を下げた。  翳っていた表情も、もう何時ものソレに戻っている。  サボりだ、と告げると桜が困ったように笑う。 「実は私もなんです、兄さんの頼まれ事で……」 「慎二が教会に用か、世も末だな」 「クス、兄さんが聞いたら怒りますよ、先輩」  だが、ならば桜が危険を免れたのは慎二のお陰らしい。  不幸中の幸いとはこの事か。 (たまにはやるじゃないか、慎二。――ん?)  内心で珍しく慎二に評価を送りながら、ふと、桜の手の甲に視線を向ける。  そこには包帯が巻かれていた。 「間桐、その包帯はどうしたんだ?」 「料理中に失敗しちゃって……」  と、可愛らしく微笑む。  なるほど、士郎が言っていた弟子はまだまだ修行中のようだ。 「すみません先輩、そろそろ行かなければいけないので……」  もう一度軽く頭を下げると、桜は間桐の家の方へ歩いて行ってしまった。僅かな違和感を覚えたが、その理由は分からない。  首を捻りながら教会の扉を開いたが、中に誰かがいる気配はなかった。 (踏み込んで探せば誰かいるかもしれないが)  聖杯戦争中にそんなことをすれば、こちらがペナルティを受ける可能性がある。  キャスターについての情報を集めなければ、とは思うものの……相手のペナルティを期待して来たのに、それでは本末転倒だ。 「諦めるか」  やはり旨い話などそうそうない。探すなら自分の足だ。  だが相手はキャスター。変幻自在の魔術師のクラスだ。  正面からならば最弱とも評されるが、コチラが追う側となれば罠に掛けられぬ保証も――。 「そうか、罠」  普通の魔術師は、相手と正面から戦わない。  学校の時と同じように、場所に罠を仕掛けて敵を嵌める。それは何処までも、英霊のキャスターとて同じはず。  ならば取り得る策は限られる。遭遇戦より篭城戦。陣地作成、道具製作のスキルを生かして敵を迎え撃つのが常道。 「柳洞寺なら、或いは」  篭城戦で大切なのは兵糧だ。この場合、本人の魔力がそれに当たる。  逃走が出来ない故に、攻め続けられても十分に防ぎきる魔力がなければ、敗北は時間の問題となる。  ましてや、この戦争の敵は六組――簡単なようで、生易しいものではないのが篭城だ。  確かあそこは魔力の集まりやすい地形の筈。キャスターが拠点とするならば、都合がいい。  閃きを元に、急いで柳洞寺へと向かう。  だが、到着しても変わった雰囲気は見受けられなかった。陣地を敷いてしまえば、外からでもその痕跡は分かる。  それすらもキャスターによって隠蔽されているのかと思ったが、慎重に中に入っても、仕掛け1つなかった。 (どうやら無駄足、か)  もうそろそろ、夕方になってしまいそうだ。  このまま宛のもなく日が落ちた街を歩き回るのは、他のマスターに奇襲して下さいと言っている様なもの。  キャスターのことは気になるが、ここは諦めるしかない。 (とりあえず落ち着くべきか)  俺は近くのトイレに行って一息ついた。 「そういえば、士郎はどうしているだろうか?」  もうすぐ夜になる。  昨日の戦闘で傷ついているとは言えセイバーが再度、士郎を襲わないとも限らない。  士郎を守りセイバー討つために同盟を組んだのだ、ここで士郎の危険を見過ごしては何にもならない。  心配になった俺は、一度士郎の家に向かうことにした。 「よう、どうかしたか? 取り敢えず上がって行けよ」  突然、尋ねたにも関わらず、快く士郎は家にあげてくれた。  丁度、夕食時らしい。そんなつもりは毛頭なかったはずだが、夕餉の香りを嗅ぐと途端に胃が主張しだした。 「今から食事の調達も面倒だな、貰っていくか……」 「ダメー!士郎のご飯はあげないから!」  虎が吠えているが、無視することにする。っていうか何故あんたがここにいるのか。 「ふふーん、私は士郎のお姉ちゃんだもーん。だから士郎のモノは私のもの、私のモノは私のモノなのだー!」 「SSF」 「ふぇ? 桜ちゃん何かいった?」 「いえ別に。それにしても先輩、急にどうされたんですか?」  軽く虎の追求を避けて、こちらに話を振ってくる桜。どうにも、今日の夕飯は彼女の登板らしい。  士郎は仕事を奪われた、と軽く凹んでいた。一高校生男子として、その姿はどうかと思わないでもない。 「お邪魔しまーす」  居間に入るなり、陽気に言ってみたつもりだが、3人はポカンと呆けてしまった 「お、おう……いらっしゃい」 (外したか)  士郎が湯のみと大量のみかんを運んできてくれた。食事が出るまでの繋ぎに、ということだろうが。  どうにも腐る前に消費したいらしい魂胆がアリアリと見て取れた。  お腹が空いているならどうですか? と虎にみかんを与えてみるが、どうも飽きてしまっているらしい。 (むしろこの腐敗必至の山、元凶はアンタだろう?)  外を見れば紫と黒の中間のような色が一面を照らしている。  そろそろ、陽が沈む。  そういえば、遠坂はどうしているだろう?  考えながらも立ち上がる。桜ばかりに働かせる、というのは何か申し訳ないと思った。  だがソレが良くなかったのだろう。完全に気を抜いていて、自分の身体がふらついていることに気付かなかった。 「間桐、俺も何か手伝いを……」 「あ、いえ、大丈夫――」  手を伸ばした瞬間ぐらりと身体が傾く、踏みとどまったものの、予定していたよりも先の方に腕が伸びる。  折り悪く振り返った桜の胸が偶然にも、手に触れてしまった。  顔を赤く、青く、忙しなく変化させ、ペタンと座り込む桜。  むにょり、という感覚がはっきり手に残っていた。  やっちまったと極大の後悔が脳裏に走り回る。 「す、すまない間桐! だがこれはわざとじゃなくてだな、その……!」 「い、いえ、でも」    必死に、謝罪をするが桜は顔を伏せるだけ。 「わ、悪い、俺はこれで!」  三十六計逃げるに如かず。今ここでどんな言葉を紡いだ所で状況は好転しない。  いたたまれなくなった俺は衛宮宅を飛び出し、路上まで走り去った。  そこで気付く。目前で幽鬼のような殺気を放つあかいあくまに。  「こんばんは、いい夜よね。そう、本当に――死ぬには良い夜じゃない?」 「ま、まて遠坂! これには訳が!」  一秒足りとすら弁解を待たず、いきなり飛んできたのは凛の得意技、ガンド。  咄嗟に障壁を全開にして遮断するが、危うく突破されかけた――たかがガンドになんて魔力篭めてやがる! 「アンタ、心配して探してあげたっていうのに! 何してんのよ!」 「やれやれ、同盟相手がこれではな……」 「あれは事故だ過失だ不可抗力だ! ――ってかそろそろやめろ魔力足んねぇんだよ!」  俺はなんとかガンドの雨を掻い潜り、凛に謝罪しつつも抗議するという荒業を余儀なくされた。  口調がべらんめぇになるほど余裕がなかった。本日最大の危機といってもいいかもしれん。 「……で、なにか収穫はあったの?」 「教会と柳洞寺に行ったが、キャスターはいなかった」  日が落ちたので捜索を断念し、士郎が襲われるのではないか、と此処に来た事を凛に告げた。 「……そう、怒って悪かったわね」  一応心配してくれてたんだ、と一転して態度を和らげる凛。 「なら、そうならそうと言ってくれれば良かったじゃない」 「告げるすべがなかった」  自分でも苦しい言い訳をしてみる。  ぶっちゃけ凛のことは欠片も頭に入っていませんでした、なんて言えばまたガンドの嵐に見舞われること請け合いである。 「アンタ、使い魔一つ使えないわけ?」 「だから魔力がだな……」  そんな会話をしていると、ふと誰かの気配が近づいてくることに気付く。  振り返ると士郎が屋敷の方から走ってくる姿が確認できた。 「おーい、まだいるか……って、遠坂?」 「あら衛宮くん、こんばんは、今彼に此処で偶然会った所なんです」  素早く猫を装着した凛が士郎の対応をする。  俺は苦笑する事しかできない。何時見ても舌を巻く、見事過ぎる猫被りである。ぶっちゃけ詐欺の類だ。 「あーそれで一条、その申し訳ないんだけど、今日は……」  士郎が言いにくそうにしているので、俺は自分から帰ることを告げた。 「悪いな、偶然だったんだって桜には伝えておくから」 「いや、事故とはいえアレは全面的に俺が悪い……だから許せよ、遠坂」 「ん? 遠坂が何で怒るんだ?」 「え? あ、あの、あはは、何訳の分からないこと言っているのかしら一条くんは! そ、それじゃ衛宮くん、また明日ね!」 「あ、ああ。またな遠坂」  士郎は別れの挨拶を告げ、家の中へと戻っていった。  被った猫の皮を突いたせいだろう。余計なことを言うな、とギロリとこちらを睨む凛。 「はぁ……で、これからアンタはどうするの?」 「とりあえず、拠点に戻ろうと思う」 「……そう、なら此処の守りはアーチャーに任せておくわ」  凛は意外そうな顔で貴方を見つめていた。  コイツは、俺の事を底なしの魔力タンクのように思っている節があるが、はっきり言って買い被りが過ぎる。  実際には遠坂自身と比べればそう変わらない量であるはずだ。――まあ、一般の魔術師に比べれば底なしと言っても良いかもしれんが。  だが、それでも今日は少し疲れた。これほどの消耗は久しぶりだ。回路が成熟してきた最近では、全くないと言っていい。  キャスターの宝具のせいだろうか、体が重くこのままでは戦闘は儘ならないだろう (もし昼間キャスターを発見できたとしても、戦えたかは怪しいな)    ならば、休息し英気を養い、明日に繋げるべきだ。  俺はランサーに警戒を命じながら、足早に拠点へと戻るのだった。 &font(15pt){【ニ日目、終了】} ---- [[一日目>初代リプレイ1]] - 二日目 - [[三日目>初代リプレイ3]] - [[四日目>初代リプレイ4]] - [[五日目>初代リプレイ5]] - [[六日目>初代リプレイ6]] - [[七日目>初代リプレイ7]] - [[八日目>初代リプレイ8]] - [[三年後>初代リプレイ9]]
慌ただしい、聖杯戦争の初日が過ぎ去った。 そして迎えた二日目の朝。それは従僕が己を呼び起こす声によって始まりを告げる。 「起きよ、我が愛すべきものよ、今日はどうするのだ?」 「む……今日はどうする、か」  寝起きだからといって思考が鈍るようでは、魔術師とは言えない。  思考を意識的にクリアし、僅かな思案する。選択肢はいくつかあるが。 「学校へ行く」  昼間から他のサーヴァントを捜し歩くのも旨くはないし、学校には凛や士郎がいる。その後の経過が気になる。  それに、聖杯戦争だろうと、自身のリズムを乱す必要はないはないだろう。昼間、戦闘起こすような馬鹿がいるなら別だが。  霊化させたランサーと共に連れておけば十分だ。  そして登校の途中、士郎とすれ違った。 「よう、おはよう士郎」 「ああ一条か、おはよう」  ……が、軽く挨拶を交わしただけだった。  本当に記憶を失っているらしい。一般人の対処の仕方は当然俺も心得てはいるが、それを実行に移したことも実例を見たこともない。  凛を信じていなかったわけではないが、ほっと胸をなで下ろした。上手くいってなによりだ。  そして校門を潜ろうとしたその時、ふと違和感を覚えた。 「……結界?」  学園を覆い隠すように張られた結界  性質までは見抜けないがこれは何だ? 自分の知る既存のどれも、その特徴には当てはまらない。  ランサーの声が頭の中に響く 「……妻よ、これは英霊の宝具だろう」  やはりそうだったのか、これほど大掛かりな宝具使用できるとするならば……。 「いやまさかな……気のせいだろう」 「おお…なんと雄々しい決断か!そうだ、民衆の批評など関係なく、我らが決断こそ正しい!」  こんな昼間から、巨大な宝具を展開する馬鹿はいないだろう。  このランサーが魔術にそれほど詳しい伝承もないはずだし。  きっと、昨日凛が張った結界が残っているだけだ。 (アイツは無駄にスペックが高いからな)  学園に張られている結界は無視をすることにする。  中に入って何の異常も発生しない結界など、あってなきの如しだからだ。  そして授業を順調を終え、昼休みになる。結界は相変わらず存在しているが、やはり何も起こる様子が無い。  放課後にでも調べれば良いだろう。この学園にはマスターであると同時に、管理者である遠坂凛がいる。  その前で違反行為を働くリスクを考えれば、わざわざこの学園を選ぶメリットは薄い。アイツが危険を感じたなら、俺の元に連絡が来る筈だ。  万が一アイツが裏切って何かの準備をしているのだとしても、管理者本人が日中に暴れるはずはない。  とりあえず昼食にしようと席を立つ。  行き先は当然、 (屋上に向かおう)  そこで約束があったはずだ。  だが――。 「あ、れ?」  その約束とは何だっただろうか? つい先程まで覚えていたはずだ、だから屋上に行くのが当然だと考えたのだ。  なのに、その内容が思い出せない。 「……向かえば、わかるはずだ」  自分に言い聞かせるように口に出し、廊下に出る。はやく、はやくおくじょうにいかないと。  しかし異変はそれだけでは終わらなかった。廊下を歩くと、違和感。  そこに居たのは幼い少女だ。ありえない。 「こんにちは、お兄ちゃん」  挨拶を返すと、少女はにっこりと微笑んだ。その笑みが、何故だかどうしようもなく歪んでいる気がして。  ――ゾクリ、と背筋に戦慄が走る。 「お名前、おしえて?」 「お、れは」  必死に自身の名前を答えようとする。  だが、どうしてもその当たり前が思いだせない。しかし感じる、ここで*もい**なければ、?の?**?は??で??る。  そのとき、しらないだれかのことばがのうりにとどいた。 「?っかり*よ! *が**よ!」 「――ッ! そ、ウだ。お*の、ナまえは」  もは?自ブんが何ヲイっているかすラ分からナい。  そレでも、キこえたコと葉にあとおしされて、おレは――『俺』は。 「イ*ジョウ」  ちがう、違う! もっとはっきりと告げろ、俺の名前は! 「イチジョウ……一条、基だ!」  終に呪縛を力尽くで引き引き千切った俺は、自分の名前を叫ぶように答えた。  途端、世界が変色――否、元の色へと戻る。言葉が言葉としての形を取り戻し、意味が意味を示し始める。 「そうだとも、我が妻よ! 我らの真実の愛を忘れられる筈がない!」  突如、霊化を解き、現れたランサー。  少女は驚き、一歩後ずさりをする。 「驚いた、強いのね……お兄ちゃん」  当然だと俺は胸を張り、ランサーに命ずる。 「――やれ、ランサー!」 「――応とも! 喰らえ、我が真実の一撃を!」  阿吽の呼吸で飛び出したランサーの槍を受け、甲高い叫び声を上げ、少女は窓から落下した。  だが手応えがなかったのか、ランサーの表情は浮かないものになっていた。 「……宝具が解除されている?」  ランサーの言葉通り、周囲には結界の痕跡すらも既にない。 (まあいい)  とりあえず、学園の平穏は戻ったようだ。  まさか本当に、白昼堂々、外部から学校に仕掛けてくるサーヴァントがいるとは思わなかったが。 (だが、あの結界……きっとあ少女は)  効果の詳細はわからずとも、その繊細にして巨大な結界の在り方を見れば分かる。  十中八九、キャスターのサーヴァントだろう。 「それにしても強力な宝具だった……自己を失わせる効果か?」  しかし、そのような能力を持つ英雄……思いつかない。  宝具から推測できなければ、サーヴァントの正体を突き止める事は至難の業となってしまうが――。 「一条! 大丈夫だったの!?」  俺の思考が迷路に迷い込みそうになったところで、混乱を滲ませた声音が掛けられた。 「遠坂、無事だったか」 「無事も何も今来たところよ……でも、何で、こんなに派手な宝具なのに発動まで気づかなかったの!?」  なるほど、凛がいない中で俺があの結界をスルーしたから、こんな結果になったのか。  確かに、責められる理由は自分にあるようだ。 「ふむ、凛が早めに起きておけばこうなることもなかっただろな」 「しょうがないじゃない!アンタのせいで魔力使いすぎたのよ!」  アーチャーと共に凛に鋭く睨まれた。弁解の余地もないので、黙っておくことにする。  それに此処でうだうだと話し合っている時間はない。凛が無事だったと分かったのなら、俺のやる事は一つしかない。 「キャスターを追おう」  正体不明の敵は戦うのも難儀だが、同時に放置するのも問題だ。  特にキャスターは正面から来ない分太刀が悪い、少なくとも情報の一つでも入手しておきたかった。  凛にキャスターの宝具の特性について掻い摘んで報告すると、俺は窓から飛び降り、ランサーの力を借り着地する。  さて、今からでも追いつけるといいが。 「ここの処理は私がやっておくから、アンタはしっかり情報収集!」  と、凛の声が上から聞こえる。了承の意を手を挙げる事で示し、走り出した。  アーチャーは既に霊化しているのか、その姿は既になかった。  何をしているのは不明だが、まあ同盟相手の不利になるようなことはしないだろう。  さて、俺は宛もなくキャスターを探さなければならない。  何処へ向かう? キャスターが行きそうな場所、いそうな場所……ダメだ、すぐには思い付かない。 「そうだ、教会」  一度あそこへ向かうべきか。  そう言えば『ルーラー』の話は聞いては居たが、審判役への挨拶を忘れていたし。 「教会、教会、教会ィ!!」 「どうしたんだランサー……ああ、いややっぱり言わなくていい」  ランサーが騒いでいるので霊化させておくことにする。  審判役に多数の人間を巻き込もうとした、キャスターの情報を提示を求めてもいい。  ペナルティの一環ならば、こちらに有利な情報が聞き出せる可能性はあるだろう――。  * * *  そうした期待を胸に教会にやってきたわけだが。 「間桐……?」  教会の前、そこに立っていたのは、浮かない顔をした間桐桜だった。  サボってきた俺が言うのもなんだが、何故此処にいる? 今はまだ学園に居る時間だろうに。  だが、あの宝具に彼女が巻き込まれていなかった、と思うと安堵の溜息が出た。凛と同じく、彼女も幼少の頃よりの既知だ。 「……あれ? こんな所でどうしたんですか、先輩?」  桜は、こちらに気付いたらしく挨拶と共に軽く頭を下げた。  翳っていた表情も、もう何時ものソレに戻っている。  サボりだ、と告げると桜が困ったように笑う。 「実は私もなんです、兄さんの頼まれ事で……」 「慎二が教会に用か、世も末だな」 「クス、兄さんが聞いたら怒りますよ、先輩」  だが、ならば桜が危険を免れたのは慎二のお陰らしい。  不幸中の幸いとはこの事か。 (たまにはやるじゃないか、慎二。――ん?)  内心で珍しく慎二に評価を送りながら、ふと、桜の手の甲に視線を向ける。  そこには包帯が巻かれていた。 「間桐、その包帯はどうしたんだ?」 「料理中に失敗しちゃって……」  と、可愛らしく微笑む。  なるほど、士郎が言っていた弟子はまだまだ修行中のようだ。 「すみません先輩、そろそろ行かなければいけないので……」  もう一度軽く頭を下げると、桜は間桐の家の方へ歩いて行ってしまった。僅かな違和感を覚えたが、その理由は分からない。  首を捻りながら教会の扉を開いたが、中に誰かがいる気配はなかった。 (踏み込んで探せば誰かいるかもしれないが)  聖杯戦争中にそんなことをすれば、こちらがペナルティを受ける可能性がある。  キャスターについての情報を集めなければ、とは思うものの……相手のペナルティを期待して来たのに、それでは本末転倒だ。 「諦めるか」  やはり旨い話などそうそうない。探すなら自分の足だ。  だが相手はキャスター。変幻自在の魔術師のクラスだ。  正面からならば最弱とも評されるが、コチラが追う側となれば罠に掛けられぬ保証も――。 「そうか、罠」  普通の魔術師は、相手と正面から戦わない。  学校の時と同じように、場所に罠を仕掛けて敵を嵌める。それは何処までも、英霊のキャスターとて同じはず。  ならば取り得る策は限られる。遭遇戦より篭城戦。陣地作成、道具製作のスキルを生かして敵を迎え撃つのが常道。 「柳洞寺なら、或いは」  篭城戦で大切なのは兵糧だ。この場合、本人の魔力がそれに当たる。  逃走が出来ない故に、攻め続けられても十分に防ぎきる魔力がなければ、敗北は時間の問題となる。  ましてや、この戦争の敵は六組――簡単なようで、生易しいものではないのが篭城だ。  確かあそこは魔力の集まりやすい地形の筈。キャスターが拠点とするならば、都合がいい。  閃きを元に、急いで柳洞寺へと向かう。  だが、到着しても変わった雰囲気は見受けられなかった。陣地を敷いてしまえば、外からでもその痕跡は分かる。  それすらもキャスターによって隠蔽されているのかと思ったが、慎重に中に入っても、仕掛け1つなかった。 (どうやら無駄足、か)  もうそろそろ、夕方になってしまいそうだ。  このまま宛のもなく日が落ちた街を歩き回るのは、他のマスターに奇襲して下さいと言っている様なもの。  キャスターのことは気になるが、ここは諦めるしかない。 (とりあえず落ち着くべきか)  俺は近くのトイレに行って一息ついた。 「そういえば、士郎はどうしているだろうか?」  もうすぐ夜になる。  昨日の戦闘で傷ついているとは言えセイバーが再度、士郎を襲わないとも限らない。  士郎を守りセイバー討つために同盟を組んだのだ、ここで士郎の危険を見過ごしては何にもならない。  心配になった俺は、一度士郎の家に向かうことにした。 「よう、どうかしたか? 取り敢えず上がって行けよ」  突然、尋ねたにも関わらず、快く士郎は家にあげてくれた。  丁度、夕食時らしい。そんなつもりは毛頭なかったはずだが、夕餉の香りを嗅ぐと途端に胃が主張しだした。 「今から食事の調達も面倒だな、貰っていくか……」 「ダメー!士郎のご飯はあげないから!」  虎が吠えているが、無視することにする。っていうか何故あんたがここにいるのか。 「ふふーん、私は士郎のお姉ちゃんだもーん。だから士郎のモノは私のもの、私のモノは私のモノなのだー!」 「SSF」 「ふぇ? 桜ちゃん何かいった?」 「いえ別に。それにしても先輩、急にどうされたんですか?」  軽く虎の追求を避けて、こちらに話を振ってくる桜。どうにも、今日の夕飯は彼女の登板らしい。  士郎は仕事を奪われた、と軽く凹んでいた。一高校生男子として、その姿はどうかと思わないでもない。 「お邪魔しまーす」  居間に入るなり、陽気に言ってみたつもりだが、3人はポカンと呆けてしまった 「お、おう……いらっしゃい」 (外したか)  士郎が湯のみと大量のみかんを運んできてくれた。食事が出るまでの繋ぎに、ということだろうが。  どうにも腐る前に消費したいらしい魂胆がアリアリと見て取れた。  お腹が空いているならどうですか? と虎にみかんを与えてみるが、どうも飽きてしまっているらしい。 (むしろこの腐敗必至の山、元凶はアンタだろう?)  外を見れば紫と黒の中間のような色が一面を照らしている。  そろそろ、陽が沈む。  そういえば、遠坂はどうしているだろう?  考えながらも立ち上がる。桜ばかりに働かせる、というのは何か申し訳ないと思った。  だがソレが良くなかったのだろう。完全に気を抜いていて、自分の身体がふらついていることに気付かなかった。 「間桐、俺も何か手伝いを……」 「あ、いえ、大丈夫――」  手を伸ばした瞬間ぐらりと身体が傾く、踏みとどまったものの、予定していたよりも先の方に腕が伸びる。  折り悪く振り返った桜の胸が偶然にも、手に触れてしまった。  顔を赤く、青く、忙しなく変化させ、ペタンと座り込む桜。  むにょり、という感覚がはっきり手に残っていた。  やっちまったと極大の後悔が脳裏に走り回る。 「す、すまない間桐! だがこれはわざとじゃなくてだな、その……!」 「い、いえ、でも」    必死に、謝罪をするが桜は顔を伏せるだけ。 「わ、悪い、俺はこれで!」  三十六計逃げるに如かず。今ここでどんな言葉を紡いだ所で状況は好転しない。  いたたまれなくなった俺は衛宮宅を飛び出し、路上まで走り去った。  そこで気付く。目前で幽鬼のような殺気を放つあかいあくまに。  「こんばんは、いい夜よね。そう、本当に――死ぬには良い夜じゃない?」 「ま、まて遠坂! これには訳が!」  一秒足りとすら弁解を待たず、いきなり飛んできたのは凛の得意技、ガンド。  咄嗟に障壁を全開にして遮断するが、危うく突破されかけた――たかがガンドになんて魔力篭めてやがる! 「アンタ、心配して探してあげたっていうのに! 何してんのよ!」 「やれやれ、同盟相手がこれではな……」 「あれは事故だ過失だ不可抗力だ! ――ってかそろそろやめろ魔力足んねぇんだよ!」  俺はなんとかガンドの雨を掻い潜り、凛に謝罪しつつも抗議するという荒業を余儀なくされた。  口調がべらんめぇになるほど余裕がなかった。本日最大の危機といってもいいかもしれん。 「……で、なにか収穫はあったの?」 「教会と柳洞寺に行ったが、キャスターはいなかった」  日が落ちたので捜索を断念し、士郎が襲われるのではないか、と此処に来た事を凛に告げた。 「……そう、怒って悪かったわね」  一応心配してくれてたんだ、と一転して態度を和らげる凛。 「なら、そうならそうと言ってくれれば良かったじゃない」 「告げるすべがなかった」  自分でも苦しい言い訳をしてみる。  ぶっちゃけ凛のことは欠片も頭に入っていませんでした、なんて言えばまたガンドの嵐に見舞われること請け合いである。 「アンタ、使い魔一つ使えないわけ?」 「だから魔力がだな……」  そんな会話をしていると、ふと誰かの気配が近づいてくることに気付く。  振り返ると士郎が屋敷の方から走ってくる姿が確認できた。 「おーい、まだいるか……って、遠坂?」 「あら衛宮くん、こんばんは、今彼に此処で偶然会った所なんです」  素早く猫を装着した凛が士郎の対応をする。  俺は苦笑する事しかできない。何時見ても舌を巻く、見事過ぎる猫被りである。ぶっちゃけ詐欺の類だ。 「あーそれで一条、その申し訳ないんだけど、今日は……」  士郎が言いにくそうにしているので、俺は自分から帰ることを告げた。 「悪いな、偶然だったんだって桜には伝えておくから」 「いや、事故とはいえアレは全面的に俺が悪い……だから許せよ、遠坂」 「ん? 遠坂が何で怒るんだ?」 「え? あ、あの、あはは、何訳の分からないこと言っているのかしら一条くんは! そ、それじゃ衛宮くん、また明日ね!」 「あ、ああ。またな遠坂」  士郎は別れの挨拶を告げ、家の中へと戻っていった。  被った猫の皮を突いたせいだろう。余計なことを言うな、とギロリとこちらを睨む凛。 「はぁ……で、これからアンタはどうするの?」 「とりあえず、拠点に戻ろうと思う」 「……そう、なら此処の守りはアーチャーに任せておくわ」  凛は意外そうな顔で貴方を見つめていた。  コイツは、俺の事を底なしの魔力タンクのように思っている節があるが、はっきり言って買い被りが過ぎる。  実際には遠坂自身と比べればそう変わらない量であるはずだ。――まあ、一般の魔術師に比べれば底なしと言っても良いかもしれんが。  だが、それでも今日は少し疲れた。これほどの消耗は久しぶりだ。回路が成熟してきた最近では、全くないと言っていい。  キャスターの宝具のせいだろうか、体が重くこのままでは戦闘は儘ならないだろう (もし昼間キャスターを発見できたとしても、戦えたかは怪しいな)    ならば、休息し英気を養い、明日に繋げるべきだ。  俺はランサーに警戒を命じながら、足早に拠点へと戻るのだった。 &font(15pt){【ニ日目、終了】} ---- [[一日目>初代リプレイ1]] - 二日目 - [[三日目>初代リプレイ3]] - [[四日目>初代リプレイ4]] - [[五日目>初代リプレイ5]] - [[六日目-1>初代リプレイ6]] - [[六日目‐2>初代リプレイ6-2]] - [[七日目>初代リプレイ7]] - [[八日目-1>初代リプレイ8]] - [[八日目-2>初代リプレイ8-2]] - [[三年後>初代リプレイ9]]

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