十三代目リプレイ0

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そう遠くない昔の話 俺には何もなかった いや、あるにはあった でもそれは、落ちこぼれの烙印だったと思う 「アインツベルン」 錬金術の名門、又は聖杯戦争始まりの御三家、魔法使いを有していた家系 魔術特性をあげるならば、力の流動、転移 そんなの名門中の名門で、直系に生まれた俺を祝福してくれたのは最初だけ 俺に魔術の才能が無いと知るや否や、 親父も、お袋も誰も彼もが落胆し、貶し、俺を生んだ事を後悔する 「お前なんて生まれてこなければ…!」 「どうして…どうして…貴方は生まれて来たの…?」 そんな、怨嗟の声を子守唄にしながら育った俺は 自身に才能が無い事を解っていながらも、魔術の鍛錬を欠かすことはしなかった 努力をすれば、いつかは成就する 努力をすれば、いつかは才能が開花する 努力をすれば、いつかは報われる… 努力をすれば… 青臭い幻想を抱き 同年代の親族に周回遅れにされながらも 俺は、魔術師であろうとした 錬金がダメなら、火属性を 火属性がダメなら、水属性を 水属性がダメなら、風属性を 五大元素全てがダメなら、違う特性を それでもダメなら、特性や理論を だが、何を試しても並み以下の成果しか得られない どうして俺には才能がないのか? 親父の所為? お袋の所為? アインツベルンという偉大なる魔術師の家系の所為? それとも、「魔術師」なんてものに生まれた所為? わからない 何もかもがわからなくらい でも、どうしようもないことはわかっている 自分の周りの全てが悔しくて 自分の周りの全てが羨ましくて 自分の周りの全てが遠すぎて 辛かった 惨めだった 消えてなくなりたいなんて何度も願った でも、諦めきれなかった、泣く事はしなかった 諦めれば楽なのに、泣けば楽なのに、それだけはしたくなかった 諦めたら、泣いたら、俺は此処にはいられないと思ったから だが、十二歳になった頃、俺に一つの転機が訪れた 二百年以来、外部の接触を頑なに拒み続けたア八ト爺が、一人の魔術師を招き入れたのだ その魔術師の名は、衛宮切嗣 「魔術師殺し」の異名を持つ異端者だった 九年後に行われる聖杯戦争において ア八ト爺が必勝を期す為に用意した駒の一つである そんな衛宮切嗣との出会いは俺に衝撃を与えた ある日の冬の夜 冷え切った室内 魔術書を片手に火の魔術を起こそうとしている中、 あの男は俺から本を取り上げて暖炉に放り込み あろうことか、マッチで火を付けた 俺は、急に現れた第三者に戸惑いながらも 鍛錬の邪魔をした奴を睨みつけようと顔を上げた 同年代の親族から、嫌がらせを受けることには慣れている だが、魔術書を燃やすなんて何を考えているのかと 魔術師としての誇りはないのか 初めは暗がりで誰なのかを把握できなかったのだが 暖炉の灯りが強くなるにつれて、男の顔が浮かび上がる 端正の顔立ちだが、顎には無精髭を生やし この城においては珍しい黒髪も無造作で その双眸は、深く何処までも沈みきった濁りを見せている 虚勢を張りながら睨み続ける俺に、衛宮切嗣はただ静かに呟いた 魔術書を読み、魔術の鍛錬をし 火を起こし、暖を取る魔術を修得する労力があるのなら 魔術書にマッチで火をつければ良い 初めは何を言っているのか解らなかった だがその言葉を理解した時、俺は絶句した 今まで苦労してきたものが ずっと辛酸をなめ続けてきたものが こんな一言で片づけられたのだ 俺に怒りなどなかった あったのは万感胸に迫る想いだった そして気付けば、涙が流れていた 今まで涙なんて流した事はないのに とめどなく溢れ出る涙を拭っても、拭っても止まらない まるで、この男と出会うまで溜めて来たかのようだ 急に涙を流す少年にさすがの衛宮切嗣も居心地を悪そうにしていた 俺は、涙を拭いきると目じりを腫らしながら彼に頭を下げた 「俺をアンタの弟子にしてくれ!」 これが『魔術師殺し』衛宮切嗣との出会いであり 俺が、『魔術師』から『魔術使い』へと変革した瞬間だった 城の奴らは衛宮切嗣…切嗣の評判に眉を顰めて嫌悪した 悪名高い魔術師、フリーランスの魔術師、誇りを持たない魔術師 しかし、それは身勝手な嫌悪なのだ 何故なら切嗣は魔術師なんかではない だから魔術師の誇りなど持たない 魔術とは、道具のように使用し、効率よく物事を運ばせるための手段の一つ そう、切嗣は『魔術使い』なのだ だから、俺は切嗣の弟子になった 切嗣こそ、俺が目指すべき場所だから 切嗣の教えは厳しかったが、それだけ得る物全てが俺の糧になる そして何より、俺は「道具を扱う」という事に関して相性が良かったのだ 俺にとって、錬金は武器の形質操作に適した手段になる 千里眼などで魔力を消費するならスコープを使えばいい 殺傷力を求めるなら銃を使えばいい 俺にとって魔術も、武器も、敵を倒せるなら変わらないものになっていた 切嗣が師事するようになってから、俺は飛躍的に力を増していった 力といっても魔術ではなく、敵を倒すことだ 如何にして敵に先手を取らせないか、如何にして敵を無力化するか 理論を学び、実践することで確信する 切嗣や、時にはマイヤとかいう女が相手になった 広場で、森で、廃墟で、冬山で 気付けば、親族同士での戦闘において 俺に敵う奴はいなくなった また、切嗣はホムンクルスとの間に子を授かった 名前は、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン アインツベルンの秘術を込めて造られた奇跡の存在 年を重ねる毎に、俺を兄と慕ってくる少女 俺も妹のように可愛がった 他にも、セラとリーゼリットの存在だ 失敗作のホムンクルスである、セラとリーゼリットだが 俺とイリヤの口添えにより廃棄を免れた 恩義を感じているのか、身の回りの世話の他にも、 セラは家庭教師、リズは護衛、実践の相手といった形で 俺とイリヤに尽くしてくれていた イリヤの母親であるホムンクルスは苦手だが、まぁ我慢できた はっきり言って充実していた いつまでもこんな日々が続けばいいと願った だが、そんな幻想は無残にも打ち砕かれた それは突然の知らせだった 聖杯戦争の開始まであと僅か… 切嗣は、アインツベルンを去ったのだ いや去った、などと称するべきではない 逃げた、奪った、蹂躙した イリヤを捨て置き、使命を投げ捨て、我が子から親を奪う 俺は幾度となく願っていた 嘘だ、逃げるはずがない、きっと使命を果たして帰ってくる しかし、そんな願いは当然のように否定される いつしか俺は、心に誓っていた 切嗣…衛宮切嗣を必ずこの手で ―――[殺す]――― この誓いを、この憎悪を胸に抱き続けて数年 アインツベルン当主であるア八ト翁から、俺は勅命を受けた ア八ト翁「此度、『監督役』から聖杯戦争の開始を告げられた」 ア八ト翁「親族でも位の低いお前を重宝し」 ア八ト翁「此度の聖杯戦争に抜擢した理由は理解しておろうな」 ‘俺以外にいなかった‘の間違いだろうが…等とは口が裂けても言えない 俺は、黙って頭を下げる ア八ト翁「かねてより、コーンウォールで探索させていた聖遺物がようやく届けられた」 ア八ト翁「これを使い、‘七’のサーヴァント全てを狩り尽くし」 ア八ト翁「必ずや第三魔法『天の杯』を成就せよ!」 この耄碌爺は、随分と御大層な事を仰ってくれる 俺は、心の中でそう呟いた しかし、爺もよくこんなモノを発掘できたものだ 遺跡から発掘された聖剣の鞘 これは間違いなくかの騎士王サマだ なるほど、最優のセイバーとして考えうる限り最高のサーヴァントだろう だが、正直芳しくはない そんな名高い騎士王サマが、俺の在り方を見たらどう思うだろうか 返ってきよう反応を考えるだけで辟易する そうして迎えた召喚の儀式 「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」 無色をした魔力の濃度は段々と増していき、エーテルに集まり人の形を造っていく だが、召喚が終わろうとしたその時… 触媒である聖剣の鞘に亀裂が走る そして瞬く間に無残にも砕け散り、魔力は一気に奔流して辺りを吹き飛ばした 俺は、荒々しい風と光に一瞬目を瞑った セイバー「契約は此処に完了した、我が剣はそなたと共にある」 周囲から、黒く輝く魔力が広がっていくのを感じる 徐々に目を開き、声の主に顔を向ける そこに居たのは、黒い騎士 バイザーで顔を隠しているが、間違いなく少女だ しかし、その風貌は『暴君』と称してもおかしくはない 清廉で高潔な偉人だと思っていた騎士王が、まさか少女であったとは… 事実は小説よりも奇なり、とは正に此の事だ こうして俺の聖杯戦争は始まった 【第十四次聖杯戦争、開始】

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