――数年後――
「…士郎の髪、すっかり白くなったわね」
体質か、魔術の反動か、それとも少し早く老化が始まったのか。
記憶の脳裏に宿る誰かの面影に酷く似ていて、けれど私はそれを思い出せない。
「これはこれで、結構気に入ってるんだ」
「…似合わない、とは言わないけど」
「ほら、イリヤともお揃いだろ」
遊んでいたイリヤが、こちらを振り向く。
「イリヤの髪みたいな綺麗な銀髪じゃないけど、これなら兄妹に見えないか…って、見えないよな」
「お揃い、お揃い!」
今度は縁側で読書していたライダーが、くすり、と可笑しそうに笑った。
「五鈴と私は兄妹に見えない、と、士郎は言いたいようですね」
「…へえ。そうなの、士郎?」
「い、いや、そういう意味じゃなくてさ」
「ちょっと、士郎を虐めないでよ。お兄ちゃんはイリヤだけのお兄ちゃんなんだから」
意地の悪い笑みを浮かべて詰め寄る、私とライダー。
それから庇うように士郎に抱きついて、イリヤは誇らしげに胸を張った。
四人暮らしとなった衛宮邸は、仲睦まじい兄弟姉妹が暮らしていると近所でも評判だ。
親も、生まれた時も、何もかも違うけれど。
そんなことがどうでもよくなってしまうくらい、心地良い日常が、この家の中にはあった。
困っている士郎の表情をみて、とびっきりの悪戯を思いつく。
イリヤが抱きついている方とは反対側の腕をとり、そして体を寄せ合うようにして抱きつく。
「じゃあ、私は士郎のお嫁さんで良いです」
「な、お前っ…」
「五鈴、ずるい! ずるーい!!」
――第五次聖杯戦争、終結――
最終更新:2012年01月15日 15:11