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書物という異界6:死者たちの視線

漆原友紀
『フィラメント』(講談社)

『蟲師』の作者による作品集。以前に志摩冬青という名で出し,今は絶版となっている『バイオ・ルミネッセンス』(ラポート)から抜粋・再編集し,新たに2本加えての作品集である。
『蟲師』といえば,<蟲>と呼ばれる原-生命体と人間との関わりが主題のマンガである。毎回いろんな<蟲>が出てくるが,話の展開に都合のよい性質を持った<蟲>が毎回設定されていて,「ムシのいい話だ」と思ってしまうのは無粋だろうか。しかし生命が分化・進化する以前の生命,形を得る前の生命を見つめることは,生命の起源,生命そのものを見つめることでもある。それ故,様々な<蟲>のエピソードは,生命そのものの力,多様性を描こうとしているのかもしれない。上野の国立科学博物館に<系統広場>というのがあるが,そこで生命の始原と多様性に触れるのに似た感興を,『蟲師』は呼び起こす。
深夜テレビでアニメも放映されているが,こちらも美しい。

さて短編集の方に戻ろう。全てではないが,<あの世>や<亡霊>が出てくるものが目立ち,その点では『蟲師』よりも異界色が濃い。

《小景雑帳》というアンソロジーは,一つ一つが僅か4ページからなる超短編を集めたものだが,どれも静謐な情景を繊細に描いているように思える。とくに良かったのは<花咲く家路>。お盆をこのように描いたものは他にないのではないだろうか。

そこにあるのは視点の換位である。あの世はこの世から見て<あの世>であるが,この世もあの世から見れば<あの世>なのである。そしてお盆こそは,普段は別々の二つの世界が交わる時なのだ。
死者たちの視線をなぞることで,我々自身の異界への感覚を研ぎ澄ますことができる一篇。

  

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