ヤクモダケ

ナサカダケ夜雲竹学名: Phyllostachys Yakumo)は、夜雲群島の固有変種であるの一種。別名アブラダケ、カグヤダケ。
炭化水素(スクアレン)化合物を含んだ「稈油」(かんゆ)と呼ばれる植物油を生成・蓄積する性質を持ち、「軽油を作る竹」として知られる。

特徴

稈の高さは10m〜20mに成長し、太さは最大10cmに達する。葉は8〜12cm、幅2〜2.5cm程。2本の隆起線がある節を持ち、節からは枝が2本伸びる。
高さ最大(約20m)ほどになると成長を止め、母竹から太く長い地下茎を地面に張り巡らし、地中からタケノコを生やすことで竹林面積を急速に拡大する。
この地下茎が地中を広く覆うため、竹林は地震や崖崩れに非常に強くなる一方、一度竹林が形成されると土壌から地下茎を取り除くのが困難となる。
成長力が旺盛で、ピークの時は1日で1メートル以上成長し、劣悪な土壌環境でも約3~6ヶ月ほどで最大まで成長する。
桿ははじめ緑色で、夏を過ぎるとだんだん黒くなり、2年ほどで真っ黒になる。開花はおよそ120年周期で、群落ごとに実を付け、その後一斉に枯れるとされる。
ヤクモダケは夜雲群島の特定の標高でしか生育しないことで知られるが、その理由は明らかにされていない。

炭化水素の生産

タンチクハチクといった竹は、火で炙ることで竹癧(ちくれき)と呼ばれる液汁を分泌することで知られており、喘息・肺炎などの民間薬として用いられた。
この竹癧の成分であるポリフェノール・クレオソート・クロロフィルなどは炭素や水素を多分に含んでいる。
ヤクモダケは他の種と異なり、これらの炭素や水素を炭化水素(スクアレン)化合物を含む植物油として大量に生成し、桿や地下茎に蓄積する性質を持つ。
夜雲ではヤクモダケから採れる植物油を「稈油」や「竹之油」(たけのゆ)などと呼び、照明用燃料として古くから利用されてきた。
現在の夜雲では稈油をバイオマス燃料として生産・利用するためにヤクモダケの栽培が盛んに行われており、主要な産業の一つとなっている。
現在のヤクモダケは品種改良や遺伝子組み換えによって、稈油の生成効率が向上しており、最大まで成長したものであれば、
光合成によって1日で約1.5リットル、面積1ヘクタールの竹林で年間最大約3万トンの稈油を作り出せる。
通常、生成された稈油は稈や地下茎に一定量蓄積されると生成されなくなってしまうが、採油するとまた生成が始まる。
ヤクモダケは他の竹類と同じく、地下茎によって周囲のクローンとつながっているため、母竹付近の地下茎に小さな穴を開け、
圧力式のパイプを接続することで蓄積された稈油を竹林全体から一斉に採取することができる。

生態

他のタケ類と同じく、太く長い地下茎を地面に張り巡らし、地中からタケノコを生やすことで生育範囲を拡張する。
有性生殖能力は失われており、開花はせず、実が実ることもない。
稈の高さは、条件が良ければ10m〜20mにも成長し、太さは10cm近くに達する。2本の隆起線がある節を持ち、節からは枝が2本伸びる。
また竹林は地下茎が地面を広く覆うため、地震・崖崩れに強い。稈鞘は大きく濃い黒色の斑点があり無毛。葉は10〜12cm、幅2〜2.5cm程になる。
驚異的な生命力を持ち、稈は1日に1m以上伸び、3~6ヶ月ほどで最大まで成長する。また、地下茎によって増殖し、竹林面積は1年ほどで約30倍ほどに拡大する。
稈はある程度まで育つと成長を止め、光合成による余剰エネルギーによって炭化水素を産生するようになる。
産生された稈油は地下茎の油送管と呼ばれる管によって、油蓄茎と呼ばれる部位まで運ばれ、そこで蓄積される。
本来、この稈油は開花後の実に送られ、川などに落下した際の浮力確保に使われるものである。

利用

マダケと同じく稈は肉が厚く弾力性があり、曲げや圧力に対する抵抗性が強いことから、弓、定規、笊、籠、扇子、茶道具などの細工物・工芸品などに利用できる。
青竹は容易に入手できるが、耐久性に問題があり、晒し竹や炭化竹に加工する事でその問題点は改善する。
タケノコは収穫後時間を経過するとエグみが生じ、あく抜きが必要なるが美味とされる。
掘りたてのものにはエグみがほとんど存在せず、そのままさしみにして食しても美味しい。
最終更新:2024年01月11日 22:46