+ユートピア―夢幻の楽園+ 【A heart of ice】―始まり―

もくじは
ありません。


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世界が闇に包まれていく……。
世界が闇に落ちてゆく――。
光が消える――。

精霊達の声など聞こえるわけがない……。

私にどうしろと言うのだろう――?
私に何をさせるのだろう――?
神は、何を思い私を此処に送り込んだのだろう――?
その答えは、神が知っている――。

その答えは、 神 し か 知 ら な い ―― 。

闇の世界から解放されるように朝日が昇り――。
闇の世界から解放された時、空は、紅く染まり。
それを人々は朝日と言う――。


「何を考えているの――?」

感傷に浸る私。紅き魔導師は、親友の声で我にかえる。

「ええ、この世界に来てから初めて見た朝日だから。」

そう言って私は、紅き魔導師と呼ばれる理由の1つ。
深紅の髪をゴムで両サイドで結う。

「そうね。でも、これが目的じゃないわ。」

親友、白き聖剣の異名を持つ金髪の少女は、美しい金髪を風に靡(なび)かせこう付け加える。

「私達の使命は、この世界を変える事。この世界が闇に落ちてゆくために――」

親友は、うんざりしている顔をしていた。
本当は、私も彼女もこんな仕事をしたくなど無い。
だが、仕方ない。
これがディスティニーだったのだと――。宿命だったのだと――。
そう思わなければ気が狂ってしまいそうだった――。
「――準備は出来た?」

我が友、白き聖剣は、私を見つめる。

「ええ。」

白き聖剣の異名を持つ親友は、腰に白く輝く剣を携え風に靡く金髪を押さえ込むように蒼い帽子を被る。
私は、藍色の制服に身を包み、その上から深緑のコートを羽織る。
風が私を突き抜ける。音無く励ますように――。

「さぁ、行きましょう。悩んだって仕方がないわ。」

私と違い、親友は凛々しく剣術に優れた男達にも引けをとらない。
まぁ私は、剣術の初歩を習っただけだ。
大体、剣術より魔術の方が私の性に合ってる。

さぁ、始めましょう。この物語を――。

なんて、言ってみたい。
せめて、この世界に人間として生まれたかった――。
そうして、この世界中を旅してみたかった――。

感傷に浸っている私。
だが、もうすぐ感傷に浸る暇など無くなるのだろうな。
なんて思う自分が憎い。
そして、私達は、最初の目的を果たすために――。
ゆっくりと、ゲームのコマを進めた――。


「ふぁぁあ――。」

――眠い。
俺の脳裏には、その言葉しか浮かばない。
昨日、屋上で寝過ぎたせいで一晩中眠れなかった。
しかも、あの夢が気になってしまい寝ようとすら思えなかった――。

「大変だな。氷の王子も。」

緑の髪が印象的なミドリ・リフェラが俺の肩をポンと叩く。
緑髪が風を受けてサラサラと靡く。
流石、“風使い”の異名を持つミドリだと感心する。

「ルファは?」

無愛想にそう訊くとミドリは、優しく教えてくれた。

「彼奴ならエミリ達にコッテリ油を絞られて、今日もエミリ達に監視されてるみたいだぜ。」

――ふーん。昨日のサボりが響いたか?

「まぁ、ルファなら1時間もせずに逃げ出すだろうけどね。」

そう言ってミドリは、アハハと苦笑いする。
――彼奴なら……か。
確かにそうかもしれない――。
ルファは、元帥と呼ばれるくらい計画的で知識も豊富。
つまり、逃走ルートなどを素早く計算し時を見て実行に移す。

「さぁて、行くか。今日は、転校生が来るらしいぜ。」

ミドリは、欠伸をして「んー。」と背伸びをする。
――一体、誰から転校生が来るなどと言う情報を手に入れたのかが疑問だ。
だが、そんな事を考えている時、
学園のチャイムが鳴る。
のんびりと学園に向かっていた生徒達は、走り出す。
俺とミドリも引けをとらないように風の如く生徒達の中を走り抜ける――。

「マゼンダ・リフェラです。」

――珍しい事にこの学園に転校生が来た。
よくこの学園の基準を上回ったもんだ。
俺、クロウ・フェラードは、そんな事を考えながら頬杖をついている。

今は、HR(ホームルーム)
珍しい赤毛の少女が転校生としてやってきた。
顔立ちは整っていて美しく、深紅の髪は、両サイドで結っている。
この少女。マゼンダ・リフェラがクラスへと足を踏み入れた時、辺りが騒然となった。深紅の髪は、魔性の髪のようで俺以外の男子生徒達は、さっきからマゼンダばかり見ていて。しかも、クラスが熱気で包まれているようだ。
男子はさっき説明したとして、女子は、マゼンダに対抗心を燃やしている。

だが、俺はマゼンダを警戒していた。
――昨日、あの夢を見てからずっと考えていた。
あの夢が予知夢なのかただの夢なのか。
だが、彼奴が。マゼンダがクラスに入った時、俺に、悪寒が走った。
夢でみた赤毛の少女に……  夢で見た深紅の髪の女に……  とても似ていたから――。

「じゃぁ………マゼンダの席は、クロウの隣で☆」

担任の先生。レンフィラ・フェンの巫山戯た声でクラスがザワッとなる。
レンフェラに驚いた訳じゃない、マゼンダ・リフェラを俺の隣にしたからだ。
レンフェラは、ブラウンの髪に紫の瞳。結構、クラスメイト達から親しまれている。
――はぁ!?俺は、心の中で突っ込む。
一応、“物静か”“クール”で通っているから、そう言う事には、気を遣う。

そして、1校時が始まる。
確か、古典。――だったかな?
――本当ならサボりたいが。
1日の始まりの授業をさぼる事は許されない――。
――眠い。
さっきからその言葉しか思い浮かばない。
絶対、2校時から授業は受けねえ。
俺をそう決心させてくれるほど、くだらない雑談だった。

「はい、おっしま~い☆」

担任であり古典の先生であるリフェラの声で授業が終わった。
――つまらなかった。そして、眠かった。
それが、俺の感想だった――。

ルファが来ているか分からない屋上への階段を一歩一歩踏みしめる。
――ルファは、今。何をしているのだろう。
まだ、エミリ達に監禁されたままだろうか(それはないと思うが)
そう思いながら屋上の扉に手をかける。
開いているはずは、無い。
だが、悪戯半分で扉を開けようとする。
“ガチャ〟――ぁ。開いた。

  なぜ、開いたんだ?
   此処の鍵は、ルファの所有物のはず――。
    だったら、ルファは、この先にいるのか?
     その答えは、分からない――。


「――行ってみるか。」

そう呟き、俺は、屋上への扉を開いた――。
“サァァァァァ”
風が、「よく来たね。」と迎えてくれるようだ――。
涼しい風が俺を突き抜け通り過ぎってゆく――。
やっぱり、空は、蒼の世界だった。
例えれば――、
雲という白い絵の具が混ざる前の純粋な蒼。
ルファの心のように澄み切った蒼。
絵に描いたような、異世界に来たような真っ青な空――。
だけど、居たのは――ルファじゃなかった。
深紅の髪を風に靡かせた少女。マゼンダ・リフェラ……だった。

「お前――」

俺は、そうとしか声をかけられなかった――。


  マゼンダは、空を見ていた。
   悲しい眼をしていた――。
    俺が見たものが幻のようで――
     マゼンダが消えてしまうようで――
      俺は、そうとしか
       声をかける事が出来なくなった――。

「ぁ。ごめん。私以外に此処に来る人……居たんだ。」

マゼンダは、空から目を逸らし俺を見た。

「別に――。ただ、昼寝をしに来ているだけだから。」

素っ気なく俺は、答える。

「ええと、クロウ君だったよね。2校時から授業、受けないの?」

マゼンダは、そう言って此方に歩いてくる。
――なぜ、俺に構う。
別に俺が授業を受けなくても君には関係ないじゃないか――。
俺が此処に居ちゃ可笑しいのかよ。

「ああ、授業は、嫌いだからな。」

――俺と君は、何の関わりもないだろ。
そう思う心を抑え、静かに答えた。

「そっか――。えっと、誰か待ってるの?
  クロウ君が此処に来た時、誰かを捜してたようだったけど……。」

――此奴。空を見ていたはずなのに。
なんで、俺がルファを探してた事を。
見透かす――?

「別に、ただ此処に来れるのは、彼奴だけだから――。」

風が、マゼンダを突き抜け俺をも突き抜ける――。
風は、全てを知っていたのだろうか――?
俺がマゼンダと会う事さえも――。

「そう。良かった。私、此処にいたらいけないのかなと思って――」

マゼンダは、笑ってまた空を見る。
笑った時は、明るい緑色の瞳だった。
でも、空を見ている今のマゼンダの瞳は、暗かった――。
瞳の色が変わらなくとも悲しい眼をしているのが一目で分かった――。


  なぁ、なぜそんな瞳をしてるんだ――?
   その瞳は、空を見て何を考えているんだ――?
    なぜ、そんな風に空ばかり見てるんだ――?
     なぁ、答えてくれないのか?


俺の脳裏にそんな言葉が浮かんでくる。
――俺は、何を考えているんだ?
一瞬、昔の自分に戻った気がした――。
友達がたくさんいて、楽しかった日々の自分に――。

「お前――、授業……受けなくて良いのか?」

恐る恐る俺が訊くと、

「ええ、クロウ君も受けないんでしょ?だったら、受けなくても良いじゃない。」

そう言ってマゼンダは笑った。
クラスにいたマゼンダは、高飛車だったような気がしてた。
でも、此処にいるマゼンダは、別人みたいだった。
こんな俺の噂を知らないのか、俺にただ笑いかけてるだけなのか。
そんな事は知らない。

でも、

マゼンダは、俺の周りにいた事のないタイプの奴だと思った。
少しだけマゼンダに興味が沸いた――。
2校時が始まってから30分くらい過ぎた。
俺とマゼンダの間には、沈黙が流れる――。

「いつも、――此処にいるの?」

その沈黙を破ったのは、俺ではなくマゼンダだった。

「ああ、受けたい授業がない時は、対外な。」

素っ気なく俺は答えたのに。
マゼンダは嬉しそうだった。

  なぜ俺に、優しく接するんだ……?
   俺に接してくれる人達は、いつも消えてゆく――。
    姉さんも両親も親戚も……。
     そして、信頼していた親友達も――。
       なぜ、俺を見透かす――?
        なぁ。
       君に、俺の心の中が見透かされている気がしてる。
      ねぇ。君は、どうして俺に優しくする――?
     なんで、俺に構うんだ?
    答えてくれないか――?
   なぁ、マゼンダ。
  なんでだ……?

――俺、何考えてるんだろ。
別にマゼンダは、偶然此処に来ただけだし。
それに、何も知らないから普通に接しただけかもしれないだろ――。
……………。
自分で出した結果に、なんで落ち込むんだ?
別に転校生なんてどうでも良いじゃないか。
なんで、そんな事を考えてるんだ。
可笑しいよ、俺。

「ん?どうかしたのクロウ君――。」

マゼンダがそう言った瞬間、風が吹く……。
マゼンダの声を俺に届けるために――吹いているように思える。
――いつから詩人になったんだよ。俺。

  なんだかマゼンダの前だと自分が自分でないみたいだった。
   自分が壊れていくように思えた――。
    マゼンダが夢で見た赤毛の少女と無関係な気がしてきた。
     自分自身をコントロール出来なくなった気がした。
      こんな気持ちになった事は、初めてかもしれない……。


――クロウ、か。
なんだか私。
彼といると使命を忘れて楽になれる気がする――。
なんでかな?
今までだってそう思う人はたくさん居た。

でもね
彼は、私にとって特別なんだ。
この世界に来て、一番信頼出来そうな気がするんだ。

空よ。
黄昏の空よ。
私の思い――彼に伝わるかしら?
蒼き空よ。
何事もなく使命を果たして――帰る事が出来るかしら?
運命が変えられれば、いいのに。
この世界にずっと居たいのに。
ねぇ。空よ。
神様は、なんと意地悪なんでしょうね――。


―――【A heart of ice】―始まり― fin