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*プロローグ &html(<font size="3">カ</font>)ニングの裏路地を、ジークはギャーギャー騒いでいるチンピラどもを無視して歩き回っていた。 ジークは、長身で美顔のためカニングの女性たちに非常に人気があった。 そのうえ喧嘩好きのジークは、自分に刃向かうヤクザやチンピラどもを蹴散らしていたので、 カニングの住人にとっては正義の味方以外の何者でもなかった。 そのため表通りを歩いているとキャーキャー騒がれるので、ジークはあえて裏路地で暇を潰していた。 カニングの住人から見ればジークは『正義の味方』であるが、逆にヤクザやチンピラ側から見るとジークは『一番邪魔な敵』だった。 黒い、羽根のようなコートに黒いズボン。 そして黒い髪に黒い瞳という全身真っ黒なジークは、ヤクザやチンピラから『黒い悪魔』と呼ばれていた。 ちなみに背中に掛けた武器も黒い魔法剣である。 まあそういった理由も重なって、チンピラたちも騒ぐだけでジークに迂闊に手を出せないでいた。 ジークはなかなか突っかかってこないチンピラどもを見兼ねて、両手を頭の後ろに組んで能天気に言った。 「意気地のねぇ糞野郎ばっかだな、ここは」 その瞬間、無数の殺気がジークに集中した。 が、誰一人としてジークに攻撃を仕掛けようとする者はいなかった。 ジークは立ち止まって頭の後ろに組んでいた手を離し、不意に地面に右手をついた。 そして、なぜかその場で片手で逆立ち。 こんな無防備の体勢の相手にも喧嘩売れねぇのか、と言わんばかりの傲慢な顔つきで辺りのチンピラたちを覗き込んだ。 「てめぇ、なめてんじゃねぇぞ!!」 ジークのその態度にとうとう痺れを切らした小柄なチンピラは、サバイバルナイフを片手にジークに斬りかかった。 それを見てジークは満足したように微笑み、小柄なチンピラのナイフが自分に届く直前に、長い足を上から頭にてっぺんに叩き落した。 小柄なチンピラはその場に倒れ、ナイフが転がる音が鳴り響いた。 「ドーン!チンピラA、戦闘不能。次はどいつだ?」 ジークは依然逆立ちしたまま、さらに挑発的な態度でチンピラたちを見る。 チンピラたちはついにブチギレて、今度は全員一斉に飛びかかってきた。 ジークは目の前に倒れているチンピラAの足を右手で掴み、向かってくるチンピラたちに投げ当てた。 そして今度は右手も地面について、まるで空中散歩をしているかのように足をバタバタと振ってチンピラたちを次々とコンクリートの上に沈めていった。 数十秒もしないうちに、残ったチンピラは一人だけになっていた。 「最後まで生き残ったことを褒めてやる、と同時に同情するよ。」 恐怖で膝を笑わせている最後のチンピラを尻目に、ジークは逆立ちをやめ立ち上がった。 小指から一本ずつ数えるように拳を握り、その拳を体の横で肩からグルングルン回している。 「なんせ、俺の鉄拳を受けちまうんだからな!」 鋭い殺気と共に放った拳は、チンピラの顔面の直前のところでピタッと止まった。 チンピラは気絶している。 ちょっとやりすぎたかなと思いつつも、あまりにも画になるもんで大笑いしてしまった。 が、その大笑いも一瞬で止んだ。 今までに感じたことのない強力な魔力を持つ者が突然背後に現れた気配を感じ取ったからだ。 ジークは後ろを振り向かないまま背中の魔法剣の柄を握った。 「まあまあ、落ち着いてください。私はあなたと殺り合いに来たわけではありません。取引しにきたのです」 確かに、全くとは言えないが殺気はない。 ただこれほどの魔力の者なら、殺気を隠す魔法も……いや、そんな魔法聞いたことないが。 ゆっくりと後ろを振り向く。 そこには眼鏡を掛けた、いかにも知的な男が立っていた。 黒いスーツを着ているところを見ると、どうやら殺り合いに来たわけではないというのは本当らしい。 ジークは柄から手を離し、顎を触りながら眼を細めて言った。 「ほほーう、この俺と取引だと?」 スーツの男はニッコリと微笑み、ずれた眼鏡を元の位置に戻した。 「私たちの仲間に加わっていただき──」 「断る」 手をピストルの形にしてスーツの男に向けながら、ジークは即答した。 人の話は最後まで聞くものですよ、と言うだろうと予測して少し吹き出しそうだったが、なんとか堪えて髪を掻き揚げて落ち着いた。 「俺は組織とかそういう類に属することを善としない主義だ」 なんと傲慢な男。 こんな男、我が組織に入ったところではたして本当に役に立つのだろうか。 スーツの男は呆れた表情を見せ、趣味の悪いアクセサリーを掲げた。 「そうですか。しかし、我が任務は絶対に遂行せねばなりません」 その瞬間、髑髏に象られた趣味の悪いアクセサリーが突然輝き始めた。 しまった。 眩い光に眼の自由を奪われ、スーツ姿の男を見失った。 この辺りに先ほどのような強力な魔力は感じない。 ──逃げたか。 そう思ったの束の間、ジークは心の中に聞こえる一つの声に気がついた。 「その呪いを解いてほしければ、我らの仲間に加わることです。良い返事をお待ちしておりますよ、ジーク=フリード」 それは紛れもなく、先ほどのスーツの男の声だった。
*プロローグ &html(<font size="3">カ</font>)ニングの裏路地を、ジークはギャーギャー騒いでいるチンピラどもを無視して歩き回っていた。 ジークは、長身で美顔のためカニングの女性たちに非常に人気があった。 そのうえ喧嘩好きのジークは、自分に刃向かうヤクザやチンピラどもを蹴散らしていたので、 カニングの住人にとっては正義の味方以外の何者でもなかった。 そのため表通りを歩いているとキャーキャー騒がれるので、ジークはあえて裏路地で暇を潰していた。 カニングの住人から見ればジークは『正義の味方』であるが、逆にヤクザやチンピラ側から見るとジークは『一番邪魔な敵』だった。 黒い、羽根のようなコートに黒いズボン。 そして黒い髪に黒い瞳という全身真っ黒なジークは、ヤクザやチンピラから『黒い悪魔』と呼ばれていた。 ちなみに背中に掛けた武器も黒い魔法剣である。 まあそういった理由も重なって、チンピラたちも騒ぐだけでジークに迂闊に手を出せないでいた。 ジークはなかなか突っかかってこないチンピラどもを見兼ねて、両手を頭の後ろに組んで能天気に言った。 「意気地のねぇ糞野郎ばっかだな、ここは」 その瞬間、無数の殺気がジークに集中した。 が、誰一人としてジークに攻撃を仕掛けようとする者はいなかった。 ジークは立ち止まって頭の後ろに組んでいた手を離し、不意に地面に右手をついた。 そして、なぜかその場で片手で逆立ち。 こんな無防備の体勢の相手にも喧嘩売れねぇのか、と言わんばかりの傲慢な顔つきで辺りのチンピラたちを覗き込んだ。 「てめぇ、なめてんじゃねぇぞ!!」 ジークのその態度にとうとう痺れを切らした小柄なチンピラは、サバイバルナイフを片手にジークに斬りかかった。 それを見てジークは満足したように微笑み、小柄なチンピラのナイフが自分に届く直前に、長い足を上から頭にてっぺんに叩き落した。 小柄なチンピラはその場に倒れ、ナイフが転がる音が鳴り響いた。 「ドーン!チンピラA、戦闘不能。次はどいつだ?」 ジークは依然逆立ちしたまま、さらに挑発的な態度でチンピラたちを見る。 チンピラたちはついにブチギレて、今度は全員一斉に飛びかかってきた。 ジークは目の前に倒れているチンピラAの足を右手で掴み、向かってくるチンピラたちに投げ当てた。 そして今度は右手も地面について、まるで空中散歩をしているかのように足をバタバタと振ってチンピラたちを次々とコンクリートの上に沈めていった。 数十秒もしないうちに、残ったチンピラは一人だけになっていた。 「最後まで生き残ったことを褒めてやる、と同時に同情するよ。」 恐怖で膝を笑わせている最後のチンピラを尻目に、ジークは逆立ちをやめ立ち上がった。 小指から一本ずつ数えるように拳を握り、その拳を体の横で肩からグルングルン回している。 「なんせ、俺の鉄拳を受けちまうんだからな!」 鋭い殺気と共に放った拳は、チンピラの顔面の直前のところでピタッと止まった。 チンピラは気絶している。 ちょっとやりすぎたかなと思いつつも、あまりにも画になるもんで大笑いしてしまった。 が、その大笑いも一瞬で止んだ。 今までに感じたことのない強力な魔力を持つ者が突然背後に現れた気配を感じ取ったからだ。 ジークは後ろを振り向かないまま背中の魔法剣の柄を握った。 「まあまあ、落ち着いてください。私はあなたと殺り合いに来たわけではありません。取引しにきたのです」 確かに、全くとは言えないが殺気はない。 ただこれほどの魔力の者なら、殺気を隠す魔法も……いや、そんな魔法聞いたことないが。 ゆっくりと後ろを振り向く。 そこには眼鏡を掛けた、いかにも知的な男が立っていた。 黒いスーツを着ているところを見ると、どうやら殺り合いに来たわけではないというのは本当らしい。 ジークは柄から手を離し、顎を触りながら眼を細めて言った。 「ほほーう、この俺と取引だと?」 スーツの男はニッコリと微笑み、ずれた眼鏡を元の位置に戻した。 「私たちの仲間に加わっていただき──」 「断る」 手をピストルの形にしてスーツの男に向けながら、ジークは即答した。 人の話は最後まで聞くものですよ、と言うだろうと予測して少し吹き出しそうだったが、なんとか堪えて髪を掻き揚げて落ち着いた。 パァン、と手のピストルを打つ素振りを見せる。 「俺は組織とかそういう類に属することを善としない主義だ」 なんと傲慢な男。 こんな男、我が組織に入ったところではたして本当に役に立つのだろうか。 スーツの男は呆れた表情を見せ、趣味の悪いアクセサリーを掲げた。 髑髏に象られた趣味の悪いアクセサリー。 普通の人間なら見ただけでちょっと引くだろう。 「そうですか。しかし、我が任務は絶対に遂行せねばなりません」 その瞬間、趣味の悪いアクセサリーが突然輝き始めた。 髑髏のアクセサリーに似合わない黄金の光が、辺りを覆いつくす。 しまった。 ジークは、眩い光に眼の自由を奪われスーツ姿の男を見失った。 光が消え視力が回復してきたころ、さっきまですぐ目の前にあった強力な魔力が消えていることに気づいた。 ──逃げたか。 ジークは、何事もなかったようにその場を立ち去ろうとした。 その時、ジークの心の中に一つの声が響いてきた。 「その呪いを解いてほしければ、我らの仲間に加わることです。良い返事をお待ちしておりますよ、ジーク=フリード」 それは紛れもなく、先ほどのスーツの男の声だった。

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