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02.彼女








彼女が産まれたのは、濃い朝霧が立ち込めた早朝で難産だった。




初めての子を授かった彼女の母親は夫と産婆二人の立会いの元自宅で出産を決行していた。
神術と呼ばれる術のためか、あまり医療の発展が目覚しくなかったこの時代に出産とは生死をかけるものも少なくない。、
彼女の母親もその内の一人だった。





家は町はずれの丘の上で、産婆を連れてくるのにも夫が往復30分程度かけた程離れている。
しかもそこは森に囲まれており、数々の野生動物が生息していた。
きっと昔旅に出ていた彼でなければ30分で行って帰ってこれなかっただろう。





難産だったが、無事に産まれた彼女は元気に産声をあげた。
彼女の母親は瞬間、気を失ってしまったのだが命に別状はなく、後の看病で翌日には目を覚ました。

何もかも順調に、滞りなくすむはずだった―――――産まれたばかりの彼女を取り上げた産婆が、あんな事を言うまでは。



「元気な男の子だ、父親似かね!」


耳がおかしくなったわけでもない。
目がイカレてるわけでもない――――確かに産婆は、そう言った。
母親は気を失っているから聞いてはいないだろうが、彼は確かにそう聞いた。

「な、何を・・」

どう見たって女ではないか。
彼女に男としての特徴はないし、見間違えるとも思えなかった。

「男の子だよ、うれしくないのかい?」







そして、駆けつけてくれた町の友人達も全員、彼女の事を『男』だと言った。
父親によく似た、男の子だと。










原因がわからないまま、彼女は順調に育っていった。
どうやら自分達以外に彼女は彼と認識されてしまうらしく、それが発覚したのも家に珍しく親戚が尋ねてきた時だった。

誰にも彼女は、女と認識されない。
自分達がおかしいのか、皆がおかしいのか―――彼女がおかしいのか。
わからないまま、月日は流れていった。



二年後に正真正銘の男の子が生まれ、彼女は姉となった。
もっとも、世間体では男と認識されているため他人から見れば兄なのだが。
 そんな彼女に対して、父親と母親は男でも女でも、この世で生きていけるように処世術を教えた。
父親は剣術。
母親は礼節と女のたしなみ。

 まあ、たしなみといっても一般庶民のたしなみはたかが知れているのだが。





それ以外に特に問題もなく育っていた、ある日のことだった。
町に占いを家業とする高名な老女が、村を訪ねてきたのは。


その日から彼女の運命は一転してしまった。