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00.Overture






その日は朝靄が立ち込めていて、
決していい天気ではなかったことを記憶している。


夜もあけていないのにその家は騒がしく、
家の窓からは明かりとりのランプの淡い光が外へと
漏れていた。



「っ!!」

声にならない叫びを上げて、目の前の女性はシーツをつかむ。
そうでもしなければ、この難産を超えられない気がして。

 今では隣で励ましてくれている夫の声も、握り締めてくれている手の感触も感じられないでいた。

子一人産むことが、こんなにも辛い事だったとは露にも思っていなかった。
知識としては知っていたものの、なんとも形容のしがたい
この痛み。

それでも、自分はこの命を世に生み出したかった。

決して口には出したくないが、
愛しい夫との間にできた初めての証なのだから。








―――――気を失う瞬間、つんざくような産声が耳をついた。