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01.朝












―――部屋に差し込む光は、少しの闇でもランプがないと
まともに見えない屋根裏部屋内を明るく照らし出した。
 暖かいと感じるにはまだ早い春の陽の光は、
時間がたつにつれて部屋の中を次第に満たしてゆく。

まるでこの世で忌まわしいとされる夜闇を退くかのように、
光は部屋の端にあるベッドに辿り着き―――

まともに直射日光を受けたくすんだ金髪をもつ人物は
鬱陶しそうに眉根をよせた。

「・・・・・もうちょっとくらい、寝かせてくれたって
 いいじゃん・・」

 寝起きの悪いこの人物にしては、
夜明けと共に目をさますなんて奇跡的な事だった。
いつもは家族に起こされるか、町に鳴り響く鐘の音で
目覚めるかのどちらかだというのに、
二度寝しようと再び布団を被っても妙に目が覚めていて
結局ベッドから体を起こした。

目が覚めている、というのに意識はまだはっきりとしない。
 いつものように窓辺に立つと、空気を入れ替えるために窓を開け放った。
澄んだ空気が部屋に満ちてゆく。

鳥のさえずり、肌をなでる春風、木の葉と葉が擦れ合う音。 


今日も一日が始まった。







「え」

着替えを済ましたくすんだ金髪の人物は、
川で顔を洗うため外へときていた。
井戸もある事はあるのだが、家の裏手の山から流れてくる
湧き水を家ではつかっている。
一々釣瓶(つるべ)で汲む事をしなくてもすむし、
なにより井戸は近所との共同だ。
食事を作る時間帯は大体長く待たされる。

「朝っぱらから間抜け顔」

 くすんだ金髪の人物が目の前の、自分より小さい少年に
言い放った。
開けっ広げられていた口はそのままで、大きなはしばみ色の
瞳はその人物を軽く睨んだ。
が、幼い顔立ちの少年からの睨みはまるで効かない。
 そして少年は、こめかみに筋を浮かべさせたかと思うと―――くすんだ金髪の人物に発達途上の手を振り上げた。

顔を洗い終わっていた人物は、次に繰り出されてきた少年の拳を軽く受け止め、笑う。

「っ姉貴・・!放せ!」
「放せ?あんたが自分で向かってきたんじゃない。
 わたしはそれを受け止めただけよ」

姉貴と呼ばれたくすんだ金髪の人物は、意地悪そうに弟の頬をつねった。

「大体、人の顔見て間抜けな顔するのが悪いのよ。 
 朝っぱらから気分悪!」
「驚くにきまってんだろ!?
 姉貴が自力で、しかもこんな朝早くおきたことなんて
 今まであった?なかったよな!?
 オレが間抜け顔になったのも当たり前」
「何いってんのよ、わたしはワザとおきてこないだけよ」

もっとタチ悪いじゃん、と弟がぼそりとつぶやくと、
彼女は深く蒼い瞳で弟を鋭く睨んだ。

「あんたにはもっと、年上に対する敬いってものを教えて
 あげるわ」
「必要ないし!」
「遠慮しないで」

この二人にとって、顔を合わせればこうなるのは常だった。

 姉はお世辞にも綺麗とは言えないくすんだ金髪と群青色の
細い瞳をもち、弟は母親ゆずりの天使の輪つきの鮮やかな
金髪に、薄いはしばみ色の大きめな瞳。
 そして、姉は学ぶことより運動派、弟は動く事より学問派。

そんな性格の違いからか、よくこの二人は意見の食い違いで
喧嘩するが、容姿も性格も誰が見ても似ている所がない
この二人、れっきとした血のつながった姉弟である。

そんな二人の共通点は



「いい加減にしないと、潰すわよ」

「「ごめんなさい、もうしません」」


母親に頭が上がらないということだった。