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『ねぇ、母上!お話、聞かせてっ?』

自分の愛した男と良く似た息子は、私に本を差し出して言った。

『全く、本当に好きなのね・・・ヴァイは・・・。

もう寝る時間よ?』

外はもう暗く、城下からの音もあまり聞こえなかった。

城内も静まりきっており、この広い部屋には彼と母の二人だけだった。

『少しだけ・・少しだけです』

懇願するヴァイに、母・シアはしょうがなさそうな顔をして本を開いた。

『わかったわ』

静かで柔らかな声が、部屋に響く・・・。

        

【これは、世界を救った三人の青年の物語・・・】

話はその言葉から始まった。

 






「英雄・・・セシウス・・・か」

一人の青年は、本を閉じると元あった位置にその本を戻した。

簡素な作りの服を着ているが、彼の服の生地そのものはこのヴァンスレイア王国では手に入らない、

高級な物だった。

腰あたりまで届く長い銀髪を風に晒し、その怜悧そうなアイスブルーの瞳はふと、窓の外を見つめる。

「・・・どんな人、なんだろうな・・・・」

幼い頃から、母に聞いた時から興味を持っていた。

【二刀流の英雄】

刀と呼ばれる片刃の剣を持ち、自分の父ともう一人の英雄と共に戦った、英雄。

どんなに資料を漁っても、名前は三人の中で一番出てくる回数が少なかった。

わかったのは、黒髪で引き込まれるような容姿と、後の二人に劣らない人望ー・・。

住んでる場所は愚か、ほんとうに存在していたかどうかも、今となっては取り立たされている。

父は何も言わないし、もう一人の英雄である「ルード」には笑って誤魔化される。

この王宮には、セシウスについて知っているものはその二人以外にいないだろう。

・・・自分の母は、もうこの世にいないのだから。




「討伐隊・・・?」

それは、一昨日の事だった。

ヴァイこと、ルヴァインは自分の入団している騎士団の第二部隊・隊長に呼び出された。

「ああ、悪いなー。王子。

こっちはどうも抜け出せない用事があってな。

いい加減妻子のトコ帰ってやんないと、離婚突きつけられそうでな!ははははは」

目の前で豪快に笑う男は、どうみたって隊長には見えないが・・自分の上司だ。

信じたくないと何度も思ったが、現実なのだ。

もうその事に関しては諦めがついているせいか、ヴァイは溜め息の一つで済ませた。

「それで、わたしに行けと・・・そうおっしゃるのですか」

「おう!宜しく頼むぜ?」

「・・・・・わかりました。

そのかわり、書類整理くらいやってくださいね・・」

「げ」

げ、じゃないだろうが・・っこの万年サボり中年男っ!

幾ら腕っ節は強くても、なんでこんな男が・・っっ

「ウィントレード隊長・・・?」

青筋を少し浮かべて答えを待つ王子に、ウィントレードはカラッと笑って言った。

「ま、アイツに手伝ってもらうとするか・・」

(また誰かに押し付けるつもりか・・・この人)

「で、何処の町ですか?」

全く・・遺跡を根城にしている盗賊の討伐なんて。

建造物を壊してなければいいのだが・・・。

「ちょっと遠いんだがな。

ここから東に位置する、レアルの街だ」

レアル・・・確か、この王都から片道5日のところ、か・・・。

あの街には、機械遺跡があったハズだ。

機械について知識がある者だったら、確かにあそこは根城にするのには持って来いの場所かも

しれない。

暖炉もないのに、何かしらの機械を作動させると冬は暖かいし、

夏は涼しいと聞く。

四季の変化はこの王都ではあまりないので、自分には良さが理解出来ないが、

山を越えたレアルの街の方では冬と夏の気温差が激しい。

機械で全て出来るのならば、薪も使わないから探す手間も森を切り出す手間もなくなる。

族も考えたものだ。

仲間に機械の知識を持ってる者を入れるとは。


――この世界では、昔、機械での文明が盛んだったが、ある年を境にそれらの機械が急にオーバーロードを起こしたという。

原因はわからず、人々は次第に使えなくなったただの鉄の塊を投げ出していった。

それが今になってまた、少しずつ使えるようになったのはここ最近の事で。

元々、遺跡は機械の捨て場所を遺跡として管理していた王都の所有物である。

許可がなければ入れないのだが――


「わかりました。出発は色々と準備があるので、明後日という事でいいですか?」

「ああ、何か足りない物があったら、オレの所に来てくれよ。

明後日までならここにいるからよ」




8/25.

後の祭り。

ハイ、という事で、今回はもう一人の主人公(?)であるルヴァインの方を書きました。

王子、とか呼ばれてますけど、その事については次の話で・・・。

てか、中世の時代のハズなのに『母上』?

自分でもちょっと・・と思ったんですけど、どうも『母様』とか言うタイプじゃないと思ったんで。ルヴァインは。