無題1 作者:o.p


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ある日、シンジ、カヲル、アスカの三人が一緒に学校から下校していた。
カヲルはシンジとばかり話していて、アスカが話に参加しようとしても相手にしてくれなかったから、アスカは内心穏やかではなかった。
シンジと別れると二人とも黙ったまま歩いた。気まずい沈黙。だがカヲルにはそれを気にしている様子はなかった。
別れ際、カヲルはアスカに、
「今日はどうかしたのかな。元気がなかったみたいだけど」
アスカは怒りを押し殺して、
「本当にあんたって自分勝手よね」
と言った。
日曜日、アスカが遅めの朝ご飯を食べていたらケータイからメールの着信音が鳴った。
見てみるとカヲルからの、「よかったら公園で散歩でもしないかな」というメールだった。すぐに、「ちょっと待ってくれるならいいわよ」とメールを返信したら、「待つよ」と返ってきたので大急ぎで身仕度を整えた。
アスカは自転車で公園の入り口に着くとケータイで、「今着いたわよ」とメールを送った。冬の空気は冷たかったが、自転車を立ちこぎで飛ばして来たからその冷たさが心地よかった。
ケータイの着信音が鳴った。カヲルからの電話だった。
「もしもし? ずいぶん遅かったね」
「いきなり誘ったくせに何言ってんのよ。レディには色々しなきゃいけない事があるの」
と文句を言いつつもアスカの声は嬉しそうに弾んでいた。
「アスカはレディっていうよりはガールじゃないかな」
アスカが反論しようとしたらすぐ近くから、
「やあ」
と声がして、そっちを見たらカヲルが居た。
アスカはケータイの通話を切って、
「あたしはガールなんかじゃないわ。レディよ。……それにしてもなんで突然公園で散歩なの?」
「この公園、近くにあるのに来たことなかったんだ。アスカはある?」
「ないわ。日本の公園ってつまんないだもん」
実際にその公園の中を歩くと、道には起伏があり、大きな樹木もあり、隅々まで管理されたつまらない公園ではなかった。
アスカは、何もしゃべらずに先を歩いているカヲルがわからなかった。なんであたしを誘ったんだろう。木の枝に冬の太陽が遮られて暗いせいなのか、他に歩いている人が少ないせいなのかすこしさみしくなった。
「ぼくは缶コーヒー飲むけどアスカも飲むかい?」
突然話しかけられたのでアスカはびっくりして、
「うん」
とだけ答えた。
二人はベンチに腰掛けて缶コーヒーを飲んだ。
「いい公園だね。人工物が少なくて」
とカヲル。
「でもなんだか暗くてじめじめしてる感じ。あたし好きじゃない」
アスカは違うと思った。公園なんかどうだっていい。
「ヨーロッパの公園は違うのかい?」
「もっと明るい感じ。あんまり行ったことないけど」
「西洋人は自然を征服しようとする。ここの公園は森に近いみたいだ」
好きじゃないのはこの公園なんかじゃない。好きじゃないのは、……嫌なのは、こいつはここに居るのはあたしじゃなくてもいいんじゃないかってことだ。
「なんで今日あたしを誘ったの?」
「うーん、公園を歩いてみようと思ったんだ。それでアスカにメールを送ったんだ」
アスカは苛立ちのにじんだ声で、
「それってあたしじゃなくてもよかったってこと?」
「どうなんだろう。アスカと歩いてみたいと思ったのは本当だけど」
とカヲルはなんでもない顔をして言った。
アスカはこれ以上問い詰めるのが嫌になってきた。いつもこいつの行動はなんとなくで自分勝手だ。シンジとだけ話したければ、あたしも居るのにシンジとだけ話す。カヲルは何かへの興味しかない。
なんでこんなやつ好きになっちゃったんだろ。あたしの気持ちにはすこしも興味がないんだ。もういい。今日はこいつと一緒にいたくない。いらいらする。帰ろう。
アスカが、
「あたしもう帰る。寒くなってきたし」
と言うと、カヲルは、
「そうだね」
と言って、なぜか自動販売機で缶コーヒーを買ってきてアスカに
「はい」
と言って渡そうとした。
「何これ? 要らないわよ」
「寒いんだろう?」
アスカは苛立ちをあらわにして、
「今飲みたくないんだけど」
「今飲まなくてもいいじゃないか。手で握っていると温かいよ」
「……そう」
と言ってアスカは熱い缶コーヒーを受け取った。
帰り道、アスカは缶コーヒーを両手で握り、先を歩くカヲルの後頭部を見ながら、やっぱりこいつって何考えてるのかわかんないなと思った。
この前、本当にあんたって自分勝手よねって言ったのに全然気にしてないし。いつもそう。どんな事があっても全然気にしない。もし、あたしがあんたのことが好きって言ってもなんとも思わないのかな。