無題4 作者:7スレ-703氏


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葛城邸。
テレビの前で一人シューティングゲームで遊ぶアスカ。その後方で、アスカに背を向けて一人ぼんやりとネットサーフィンに耽るカヲル。ゲームのSEとたまに聞こえるダブルクリック音以外の音は何もない。しかしふと、カヲルが思い付いたように口を開いた。

「アスカは俺の嫁。」
「..........」
「俺はっ!アスカとっ!添い遂げるっっっ!!!」
「..............」
「いってみただけ!いってみただけ!!うふふ!うふふふ!」
「....................」
「....まぁ分かってたけど、これは酷いな。僕の存在を完全に無視かい?この温度差はなかなかこたえるなぁ。」
「..............」
「...アスカーーーーーー!!!!!!お前が好きだーーーーーーー!!!!!!お前が欲し...ぶへっ」
カヲルがそう言い終わるや否やで、一瞬のうちにカヲルの背後へと距離をつめたアスカの渾身のグーパンチが、カヲルの後頭部に炸裂した。
「五月蝿い。」
「酷いじゃないか。予告も無しに突然背後から殴るなんて。今舌噛みそうになったよ。」
「あ?だって、殴られるって分かってたらATフィールド展開すんでしょ、アンタ。」
「そんな事したらアスカの拳が砕け散るよ。僕の大切な君に、僕がそんな酷い事すると思うのかい?」
「どうだっていいのよそんな事。それより、頼むから静かにして。自分の家だってのに落ち着いてゲームもできないなんてたまったもんじゃないわ。あとその気持ち悪い妄言は金輪際もう二度と吐かないで。さっきから鳥肌がおさまらなくて参ってんのよ。」
「妄言?何の事?」
「あたしは誰の嫁でもない!結婚なんか一生しない!」
「ああ、『アスカは俺の嫁』っていうのは、別に本気で結婚しようって意味じゃないよ。」
「あ、そう。じゃあ冗談でももう言うんじゃないわよ。足の小指の先ほども面白くないから。」
「分かった。君がそう望むなら、もう言わない。」
真面目な顔でカヲルが言う。そのまま数秒間視線を合わせての沈黙の後、
「分かったなら、いいわ。」
それだけ言ってまたテレビの前に座り込むと、ゲームを再開するアスカ。しかし、程なくしてタイミングを見計らったかのようにまたカヲルが口を開く。
「まあ、結婚なんかしなくたって僕はずっとアスカの側にいるんだけどね。」
それを聞くと同時に、アスカの指の動きが止まる。数秒後にはテレビ画面の中が爆発炎上し、画面にはGAME OVERの文字が浮かび上がっていた。
「あはっ、また同じ場所で死んでる。アスカって、ゲームばっかりやってるくせに指先不器用だね。」
アスカを小馬鹿にしたようなカヲルのそんな台詞を無視してアスカが問う。
「ちょっとアンタ、人の話聞いてた?」
「え?何の事?」
「気持ち悪い事言うなって言ってるでしょ?!」
「はて?今の発言のどこがそんなに気持ち悪かったんだい?同じ場面でいつも失敗してるのを指摘しただけだろう?」
「そうじゃなくて!ずっと側に居るとか何とか、まるでアンタとあたしが付き合ってるみたいに聞こえる発言をやめろっつってんのよ!他人に聞かれたら誤解を招くでしょ!」
「だって、誤解じゃないからいいじゃないか。」
「何?何なのその発想?どこをどう見て解釈したら、あたし達がそういう事になんのよ?!」
「だって、僕がそう決めたから。」
「...........」
開いた口が塞がらない、という表情のアスカ。それとはうってかわって、さも当然の事と言うように飄々とアルカイックスマイルを浮かべ続けるカヲル。
「...あたしに選ぶ権限は無いの?」
「選ぶ?何をさ。」
「一生変態に付き纏われるか、一生独り身でも心安らかに生活するか選べって言われたら、迷わず後者を選ぶわね、あたしは」
「えー?じゃあアスカは一生一人きりで過ごすのかい?」
「それの何が悪いのよ。」
「悪いよ。だって君、寂しがりじゃないか。」
「.........」
アスカは黙ったままだったが、今の一言が核心を突いたのは、アスカの表情の変化を見れば一目瞭然であった。カヲルは勝ち誇ったように言葉を続ける。
「寂しがりの君が強がって一人で居てもいいことがあるわけ無いよ。君の心は本当に繊細だからね。一人で居たらそのうち壊れてしまう。
まあ、虚勢をはる君もかわいいけど... でも、君が壊れないように、僕が君の側に居る。僕自身の意思でそう決めたんだ。
だから、これからはずっと一緒だよ。」
そう言ってニッコリ笑ったカヲルをアスカはただただ冷え切った目で見つめ返す。
「.....................気持ち悪い。」
やっと彼女が搾り出した一言に、思わず苦笑するカヲル。
「僕の一世一代の愛の言葉を、そんな素っ気ない一言で片付けてしまうなんてね、さすがだよ、アスカ。君こそツンデレの真骨頂だ。」
「黙れド変態!そうでもしないとアンタのストーカー行為に終止符を打てないのよ!」
「ストーカーだなんて失礼な。僕は君がいつも『一人ぼっちは嫌』っていう、無言のサインを送ってくるから、その意思を汲んで君と居るんだよ。」
「だからそれを世間ではストーカー行為って呼ぶのよ!」
「でも君は嫌がってないじゃないか。」
「嫌がってるわよ!全身全霊で!」
「その割に、僕が勝手に上がりこんでも何も言わないよね。」
「無視した方が楽だからよ!一般常識の通じないアンタのやることに逐一片っ端から突っ込んでたら、身が持たないって分かったの!」
「そうか!つまりアスカもやっと僕の愛を受け止める気になってくれたんだね!嬉しいよ!」
「だからその超絶プラス思考翻訳やめろ!っていうか、アンタ構ってもらいたいだけなんでしょ?
シンジが帰って来たらいくらでも相手になってもらえんだから、ちったぁ我慢して大人しく待ってなさいよ。
あたしはアンタのお守りなんてまっぴらなの!」
「なんだか変な思い違いをしているようだね。僕は他の誰でもない、アスカに会いに来てるんだよ。アスカと話したり、遊んだり、イチャイチャしたいからここに居るんだ。」
「う、うっさい!どさくさに紛れて何また気持ち悪い事言ってんのよこのド変態!あたしはね、かまってちゃんな男は大嫌いなの!」
「何言ってるんだよ!君の方が寂しがりのくせに!」
「あーもう!アンタとは話にならないわ!」

アスカはそう言って踵を返してリビングを立ち去ろうとした。が、カヲルがアスカの手首を掴み、それを阻止する。
「何処行くの?」
「自分の部屋!」
「じゃあ、僕も。」
「脚下!」
「どうして?」
「気持ち悪いからよ!アンタをあたしの部屋に入れるなんて!」
「でも、心配だよ。」
「何がよ?!」
「さっきから顔、真っ赤だよ。手も熱いし。熱があるんだろ?」
言うが早いか、カヲルはアスカの額に自分の額を寄せた。こつ、と、互いの額が触れ合う。焦点が合わなくなる程近くにカヲルの顔があるという現実が、さらにアスカの頭を混乱に陥れる。
「~~~~っっ!バカ!」
そう叫び声をあげて、アスカはカヲルの胸を突き飛ばす。その勢いでそのまま後方に倒れ尻餅をつくカヲル。しかし、それに構わずアスカは自室へと駆け込み、ぴしゃりと音を立てて引き戸を閉めた。

その場に座り込んだまま、カヲルはぼんやりとアスカが消えてて行った廊下の方を見ていたが、玄関の開く音がして、シンジが帰って来たのを悟ると、立ち上がって制服に付いた埃を軽く叩いた。
「あれ、カヲル君じゃないか。来てたんだ。」
シンジは買い物をして来たらしく、両手にスーパーのロゴの入ったビニール袋を提げている。
「やあ、シンジ君。こんにちは。」
「アスカは?」
「部屋に居るよ。」
「え?ずっと?」
「いや、さっきまでリビングでゲームしてたんだけどね。」
「そうなんだ。アスカも気が利かないよね。お客さんをほっといてゲームに夢中なんてさ。せめてお茶くらい出してあげたらいいのにね。」
「仕方ないよ。僕達、痴話喧嘩の真っ最中なんだ。」
「えっ?」


次の日、シンジに「アスカってさ、カヲル君と付き合ってるの?」と問われたアスカは、その質問に答えもせず、一目散にカヲルのもとを訪れ、彼を問答無用でフルボッコにしましたとさ。