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吸血騎the story3」(2010/03/29 (月) 06:29:09) の最新版変更点

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-序  墓の、呪い。  それは墓を暴くという行為を指す。  墓を暴き、そして『死者を殺す』。  ヴァンパイアは死者の体に牙を立て、死した力を吸い上げて糧とし、その骸は―――やがて、ヴァンパイアへと変身する。  血にも良し悪しがある。血の感染度の弱い者、姿の弱い者は、ヴァンパイアとしての資格を持たない…。ヴァンパイアの数が圧倒的に少ない背景には、こんな事情がある。  そして濃すぎる血は、より強く死者を墓を求め―――…より多く、仲間を増やし。  そして仲間を、血の苦しみの運命へ道連れにしていく。  …死者を殺すのは苦痛である。  腐肉に、黴に、燻製に、ヘドロに骨に目玉だけの生き物に触手にッ、見境無く散乱する死の塊に、見境無く牙を突きたて死の力を吸い上げる。  そしてヴァンパイアは生存を続け、そして血の呪いは受けつがれ、呪うに値しない者は勝手に朽ちてゆく。 「なんだよこの輪廻…なんだよ、この運命…っ! 助けろよ、助けろよ! あんた、英雄なんじゃねェのかよぉぉぉおおッ……!」  受け継がれゆく呪いを、やがて憎むヴァンパイアが現れる。  彼は血に死に骸にまみれた牙を剥き出しに、誰かに向かって叫ぶのだった。 「助けてくれよ、ほどいてくれよッ! 英雄だろ!? あんた英雄だろ!? 無血調和を成し遂げた英雄だろ、それなのに俺たちは見捨てんのかよっ? どうなんだよ答えろよ、聞いてるのかよ何とか言え、『アウヴィス』ぅぅうううッッ!!」 -08  粉々になったホータス!  雲の波へと沈みながら、ウルトラシールド・プラスが砕け散った。 「……な、何をしたの? クロード」 「いや、ただ魔法を撃っただけだ。それが効きすぎたらしい」  そう言うと、クロードはクルスを抱えたまま、ホータスの背後の向こうを睨んだ。  …無数のガーディアン。  準備が良すぎる。が……今はそれどころではない。 「クルス。『デス・スモーク』は撃てるな?」 「あったりまえだよ。僕のマナをなめないで? 撃てなくても、あんな奴ら素手で十分だよ!」 「よし。んじゃあ、特攻するか」  クロードはちょっと散歩でも行くような気軽さで、雨のように突っ込んでくるガーディアンの群れに、正面から挑んだ。 『報告。&color(orange){守護者軍勢、西、南、勢力半減}。ガーディアンを支援に出しますか?』 「…よい。支援は無し。現状だけで乗り切れ」 『了解。現状維持通達……&color(green){完了}』 「南艦隊へ通達しろ。鼠―――いや、『ヴァンパイアども』を、動く前に片付けてくれるッ。S精霊起動!」 『了解。南艦隊へ要請。&color(green){S精霊起動}、3・2・1、&color(green){オールグリーン}。いつでも』 「起動ッッッ!」  ガーディアンの群れを1人で半壊させたクランは、南の空に浮かぶ、巨大戦艦を見つけた。  巨大戦艦といっても規模は極小。とても戦争に持ち出すモノではなく、せいぜい個人大戦に用いられる程度の戦艦だ。 「ガーディアンは…あの艦から放出されてるみてーだな」 「ですね……。どうですか?」 「どうって?」 「1人で、という意味です」 「なめんな、余裕だ」 「そうですか。では、こちらの残りは私とクルトで。まずそうでしたら、そちらにクロスが向かうでしょう」  クロムヘルムが振り向いた時は、もうクランは戦艦へ飛びかかろうとしていた。 「まったく。落ち着きも無く気も早い……ちょっとは停止できないのでしょう、かっ」  クロムヘルムも手を振りかざす。  クロムヘルム自身のマナが花びらのように散ってしまった。だが彼は無意味にそんなことをしたのではない。  同時に、ガーディアンのマナも剥がされていた。 「私は臆病な部類です。あなたほど楽観的ではいられないんですよ、クラン。………我が魔術《[[血化粧ネガティブ・クロス]]》で、まとめてお相手して差し上げましょう―――」  言い切らないうちに、マナを剥がされたガーディアンたちへ爆撃が落ちた。 「なに喋ってんだ? 早くしねーと、俺が全部喰っちゃうぞ?」 「クルト……私ひとりで十分ですが」 「ああ。でも、2人いれば倍速で、」 「―――3人ならさらに倍、かな?」  クルトに加え、クロスも舞い降りた。  クロムヘルムはため息をひとつ吐くと、振り向きもせず突撃する。それは、他の2人のタイミングと重なった。  …8秒後。ガーディアン全滅の報告が、本艦へと届く。  同時に。クラン・ブラックが本艦へ異常接近している、との報も。 -09 「クロード、危ないっ!」  言うが遅い。  空の果てから挑んできた光線は、クロード・スカイグレーを直撃し叩き落したッ…。 「クロード!!」 『―――&color(green){アクティブ。これより戦闘態勢へ移行。}覚悟せよ、ヴァンパイアども……』  見ればそこには、明らかに強敵と分かるモノが存在していて…… 「…誰だよ、おまえたち――――――」 『&color(green){アクティブ}』  不意の角度から、クルスに向かって光の砲撃が放たれた。  悲鳴を上げ、空へ消えていく。  否、雲に叩きつけられる。高密度の雲はクルスも、先程のクロードの体も受け止めていた。 『&color(green){西軍統括のS精霊、集結完了}。……ここで仕留めよ、との仰せ。実行する』 「……なるほどォ。S精霊………か」  クロードはその『精霊』を見上げる。  雲に半分埋まった体は指一本動かせない。  それはクルスも同じのよう。…ぞくぞくと、増援が――いや、余剰戦力が集まってくる。 『いかにも。我々は貴様らと同じ太古の存在、Sealing精霊……。現在名は「封精霊」。貴様らヴァンパイアの反対勢力として、かつて貴様らの血と争った軍団なり』 「やはりな…。ついでにひとつ聞きたいんだけどな、あんたら絶対、俺らがここに来るって分かってただろ…?」 『&color(red){解答拒否}。敵にくれてやる情報は塵1つなし』 「誰から、情報を貰ったんだよ…?」 『&color(red){解答不能}。情報不足。我ら封精霊にその情報は付与されていない』 『&color(green){砲撃準備完了}。&color(green){オールグリーン}。……いつでも許可を』  最初にクロードを撃った封精霊――《[[封精霊マナキン]]》が、クルスを撃った封精霊――《[[封精霊ホーク]]》に並んだ。  …相手が悪すぎた。  マナキンは、相対するだけで吸血騎の力を封じる精霊。  加えて、ホークは『封精霊』のリーダー。  陽動として分散されたこのヴァンパイア2人が相手にまわすには、少々、強大に過ぎたようだ……。 『&color(green){アクティブ}』 『&color(green){アクティブ}』  空が、盛大に裂かれた。 -10 『報告。ヴァンパイア1体、本艦に急速接近中……』 「周辺の封精霊を防御に回せ」 『報告、&color(red){ヴァンパイア、侵入}。封精霊、間に合いません』 「ならば本艦内で仕留めよッ、逃がすなぁぁああッ!」 『報告、&color(orange){ヴァンパイア、宝物庫に急速接近中}。ブザー始動、&color(orange){警告発令}』 「ぬぉぉぉぉおおおお!!」 「うぅぅぉぉおおおらぁぁあああぁぁああ!!!」  空に響く大爆音ッッ!  光の塔の壁を拳でぶち抜き、クラン・ブラックが塔内へ侵入した。  塔の中は整理された、とても通路の広い空洞のような空間。空を飛べる種族である光に、廊下というものはどうでもいいのだろう。 「待ってろ、すぐ戻るっ! 必ず『ミライズ』をゲットして、呪いを解くからよぉぉぉおおっ…!」  ロケットのごときスピードで滑空するクラン。  100メートル近く続く警備のグレートメカオー軍団を、一瞬もたたぬ間に叩き斬った! 『報告、&color(orange){ヴァンパイア、宝物庫に急速接近中}!』 「なぜだぁぁ? なぜこの鼠は、宝物庫へのルートを把握しているのだぁあ! ルートを塞げ、隔壁を下ろせッ!」 『&color(green){隔壁操作開始}。3・2・1、&color(green){オールグリーン}。クローズ&color(green){完了}。………続けて報告、』 「なんだっ?」  司令官の顔には、余裕がない。 『&color(red){けッ……警備機械兵、全滅}ッ! 繰り返し報告、&color(red){警備機械兵、全滅}ッ! &color(orange){宝物庫、無防備状態}。&color(red){防衛率0%}!』 「え、え、…エマージェンシィィィィイイイイッッ!!」 ---- 目次 -[[吸血騎the story1]] -[[吸血騎the story2]] //-[[吸血騎the story3]] -[[吸血騎the story4]] -[[吸血騎the story5]] -[[吸血騎the story6]] -[[吸血騎the story7]] -[[吸血騎the story8]]

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