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-序  未来図(ミライズ)。  宝物の一種。  未来を、使用者の好きなように変質させられる能力を持つ、といわれている。  その実態は、未来と現在の扉を繋ぐ、時空接続機。  未来への干渉を容易にしてしまうという、禁じられたテクノロジーなのだ。  だがクリーチャー化により、その機能は半減。未来からマナによる術式――『呪文』を再現する程度で精一杯の性能と成り下がった。  それでも十分、危険範囲。  不測時マニュアル。  対抗策、なし。  砲撃艦隊をすべて導入して砲撃せよ。火力のみ有効と判  ―――&color(red){マニュアル、維持困難}。  ミライズは未来から不確定のモノを呼び出す能力を秘め  ―――&color(red){表示機停止}。&color(red){ディスプレイ・アウト}。シャットダウン。 -14  塔から飛び出す5つの影。  ヴァンパイアが高速で空を突き抜ける!  塔から出て眼前に、この騒動の原因となっている存在『ミライズ』の姿を確認した。 「アレか!」 「そのようだなぁー……ヘンな形してやがるぜ、所詮はイニシエートかよ」 「奴を倒せば、元の形状に戻るのでしょうか?」 「やってみねーとわかんねぇッ! どっちみち、捕まえなきゃいけねぇん、だろッ!!」  一息吼えると、クランは迷わずミライズの踊る上空へ飛び立った。  だが、その行く手を高速移動する何かが塞ぐ! 「なっ、」 「行かせるわけにはいかぬ…!」  それは、光と闇の混ざり合う異形のクリーチャー、ロスト・クルセイダー。 「我が名は《[[鎧亜の神聖メガロポリス・サンダー]]》。ミライズを手にする使命を果たすッ!」  宣言と同時に、クランは身を反らす。  一瞬前までクランの胸があった場所を、砲撃の光が通過していった。 「てめぇッ……」 「撃て、撃て撃て撃てカースたちっ!」  どこに潜んでいたのか。無数の《[[万呪の使徒カース]]》が、呪文を無限に連射してきた。  その弾は威力を大きく増し、普通の砲艦の数倍もの威力を以ってヴァンパイアたちをなぎ払いにかかる!  嵐のような一斉掃射! 「まずいっ、皆、分散しろぉッ!」 「「――――――!」」  一斉に方向を変え、猛スピードで遠ざかるヴァンパイアたち。 「―――逃げたか。予定通り、後は光の連中がヴァンパイアどもを片付けてくれるわ。我はその間に、ミライズを手にするッ!」  彼の策は、思い通りに進んでいる。 -15  一方。  ダイヤモンド・デスティニーの猛攻は、その手を休めていた。  否、圧倒的な防御に、うかつに手が出せなくなっていたのだ。  ある1体の精霊の力で。 『…&color(green){アクティブ}。《[[天狼の精霊ライラプス]]》、敵陣へ到達』  ライラプス。  その身に秘められたマナは秘奥義「ヘブンズ・ゲート」を編み上げ、究極のクリーチャー「天海の精霊シリウス」による防護壁を展開していた。  強大なクリーチャーたちに阻まれ、その剣を無用に振るうことは躊躇われた。   「…よし、さすがはライラプス。敵の攻撃を即座にとめた…っ!」 『報告、&color(green){「ホーリー・スパーク」、起動準備完了}。いつでも』 「放てぇ!!」  塔から砲艦が突き出され、その先端から空を裂く威光が放たれた。  それは、光文明が繰り広げる幾度とない戦争で長く使われた、沈黙兵器「ホーリー・スパーク」。  それはダイヤモンド・デスティニーを捕縛し、この争いに終止符を打つ…かと思われたのだが。 「ゆけ」  時空を切り裂き、すさまじい速度で現れた《[[守護晴天インスタント・レインボー]]》が、その砲艦前の1メートルとない距離に立ち塞がった。  同時、「ホーリー・スパーク」が放たれる。  その光はインスタント・レインボーによって遮られ、ダイヤモンド・デスティニーに届くことは無かった…。  息を呑むヒマはない。  次の瞬間、 『報告、&color(red){天狼の精霊ライラプス、沈黙}! ライラプス班の防衛軍、&color(red){全体沈黙}ッ!』 「な、何ッ? まさか余剰戦力か?! 探知しろ!!」 『余剰戦力サーチ開始……&color(red){ソナーアウト。余剰戦力、確認できず}! 敵は依然として、ダイヤモンド・デスティニー1体!』 「何だとぉッッ? い、1体のみであの防衛軍を破ったというのか! ふざけるな、そんな事があってたまるかぁぁあッ!!」 『報告、&color(orange){エネルギー感知}。敵は本艦に向けてマナによる一撃を………』 「くぅッッ、…聖霊王を呼べ! アルファディオス様を降臨させるのだ!!」 『聖霊王要請…&color(red){要請キャンセル。エンジェル・コマンドの儀式準備が不全です}』 「《[[精霊の杯]]》は?!」 『&color(red){起動不可}。先程のホーリー・スパーク稼動により、マナのチャージング速度が追いつきません』 「《[[ダークネス・コール]]》!」 『&color(red){起動不可}。先程のホーリー・スパーク稼動により、マナのチャージング速度が追いつきません』 「まずい、まずいまずいまずいっ、ど、どうすればぁぁあ……!」 -16 「…こういう事かよ、…あの未来野郎。小ざかしいな…」  クルトはメガロポリス・サンダーの悪態をつきながら、眼前の光景を眺める。  ――そこは、光のテリトリー。  さらにいえば、…封精霊が待ち構える場所。  《[[封精霊バイパー]]》。  《[[封精霊ヤズマ]]》。  2機が睨みを利かせている。 『ヴァンパイア確認。&color(green){包囲完了}。&color(green){完全包囲完了}』  そして、クルトは囲まれた。  いっさいの逃げ場も反撃の余地も、戯言を述べる隙すら与えてもらえず、 『砲撃要請』 『&color(green){オールグリーン}』 『&color(green){オールグリーン}』 『&color(green){オールグリーン}』 「……クルス、おまえのそのガキ面…もっぺん拝みにいかなきゃ駄目みたいだ……。ハハッ」  今はいないクルスに向かって、空を見上げ、そんな事を呟いた。 『『『&color(green){アクティブ}』』』  東の空を光が焼き尽くした頃、 「なんだなんだ、なんだッてんだこりゃぁぁあああーー!!!」 「黙って逃げてくださいッ、気が散るでしょうクランっ!!」  クランとクロムヘルムの2人が、必死に封精霊の追撃をかわしていた。  彼らの逃げた先も、封精霊の領域だったのだ。 「ちっ……おいクロムヘルムっ! 俺が時間を稼ぐからよ、その隙にできるだけ遠くへ行けッ! ついでにミライズの所へ!!」 「デコイ作戦……だが…」 「迷ってる暇はねぇッ、…俺が囮になる、早くいけって言ってんだ!」 「………任せましたよ、クラン」  飛び立つクロムヘルムを見送り、クランは封精霊を見据えた。 「…来いよ」  封精霊は起動する。  リーダー格である《封精霊ホーク》に並ぶと謳われる、《[[封精霊ウルフ]]》。彼は隠してあったガーディアン戦隊を全展開し、クランを包囲に向かう。  そして隙間無く四方を埋め尽くし、クランから逃げ道を塞ぐ。…クルトと同じ手だ。彼らは連携プレーで完全包囲し、殲滅することを好む。  クランは、それが全戦力であることを確認すると―――――― 「やっと全部出やがったか。馬ぁ鹿」  空気の切れる音と共に一瞬で消え去り、直後、左のガーディアンの一団が消し飛んだ。  封精霊ウルフは、しばし、何があったか分からない。  そこには腕を振り払うクランの姿。 「馬ぁ鹿、馬鹿馬鹿馬鹿馬ぁぁぁ鹿野郎ぉどもぉぉぁあ!! 俺を誰だと思ってやがるッ!!」  すかさずガーディアンたちが迎撃に向かう。が、  そこはクランの『居た』場所であり、クランの『居る』場所ではない。迎撃に向かった部隊を嘲笑うように、その背後に居た軍団が瓦礫となって消し飛ぶ!  ガーディアンの速度では、クランのスピードにとても追いつけていない!  クランが居た場所にただ到達するための時間と、ガーディアンの背後に回り部隊を撃滅するための時間がほぼ同じだというのだから救いようがないッ!  自転車でF1マシンを追い回すに等しい愚考!! 「俺は闇の呪われた血族ヴァンパイア、その発端ブラックファーザー家の末裔ッ!! つまりは始祖! [[死祖クロイツ>死祖クロイツ・ブラックファーザー]]の末裔ッ! 分かりやすく言ってやろうか、光の脳みそ鋼鉄軍団よぉ?? つまりな、てめーらが相手にしてるこの俺クラン・ブラックこそはよぉ、ハズレもハズレの天中殺! 大凶の中の大凶ッ!! 最悪最強のヴァンパイアなんだよぉぉぁぁああッッ!!」 -17 「奴を止めろぉおーーーーー!!!」  司令官の絶叫は続いていた。  ダイヤモンド・デスティニーの一撃が放たれようとしている、その瞬間なのだ! 「このままでは塔が墜ちるっ! なんとしてでも……そうだ、封精霊をすべて防御に寄せろ!! 塔付近に封精霊をすべてだ!」 『了解。&color(green){封精霊全軍、帰還}!』  その判断は、悲しいほどハズレていた。  とうとう発射されたダイヤモンド・デスティニーの、空間を焼失させかねない一撃。大気を無へ焼き尽くす業火の剣は、その場に集結したすべての封精霊を一太刀で…………轟沈させた。  封精霊全滅の報告が司令室に響き渡る。  そして、その刹那――――――  空が真っ白な光に包まれ、塔の周辺にあったすべての生命を飲み込み、やがて塵へと崩壊させた。 「な……なんだ? 何が起こった…」 『…報告、&color(green){ダイヤモンド・デスティニー、消失}。繰り返し報告、&color(green){ダイヤモンド・デスティニー及び、周辺レーダー内の全勢力が沈黙}。事態は安定しています』 「そ、空で何が………今の光はまさか、『アポカリプス・デイ』……?」 「―――多少、威力は抑えましたが」  誰のものでもない声が響いた。 「なっ、何者だぁッ!」  そこには、黄金のランスを構える騎士の姿。いつのまに司令室に侵入したのか? 「ミライズを回収に伺った所存。貴殿らには消滅してもらう。お覚悟を…」  そういってランスを振るうと、光の粒子とともに…ミライズが姿を現した。  司令官はそれを見て唖然とする。 「………貴様まさか、ミライズを捕らえたのか?」 「否。元よりこれは我が手中に収まるべき代物。過去に約束された宝物。故に、それを取り戻しに伺った所存。…ヴァンパイアとやらが、ロックを解いてくれたようですので」  クリーチャー形態となっているミライズは、メキメキとその姿を変貌させていく。  …《[[ミライズ・ウェルキュラーレ]]》。  更なる凶悪な姿を見せ付けるとともに、砂塵のごとき勢いで司令室を壊滅させた。 ---- 目次 -[[吸血騎the story1]] -[[吸血騎the story2]] -[[吸血騎the story3]] -[[吸血騎the story4]] //-[[吸血騎the story5]] -[[吸血騎the story6]] -[[吸血騎the story7]] -[[吸血騎the story8]]

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