「吸血騎the story7」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「吸血騎the story7」(2010/03/29 (月) 16:09:48) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
-序
塔を揺らしたのは、死体を貪り、呪いを暴走させたクランだった。
死体を喰らい、力を吸い上げて暴走する吸血騎。
その姿はロケット弾に近い。激突するなり壁を挽き剥がし、床をめくりあげて進撃していく。
クランは我を忘れ、血の騒ぎ立てる感情に身を任せる。
身を委ねる。
その瞬間だけ、彼は彼でなくなり―――
「楽にしろ」
トン、と。
彼の首筋を誰かの手刀が打ち抜いた。
不意に襲い来る、天地がひっくり返るような眩暈。
「ア、く……………ク、クロードの兄貴、じゃねーか…」
「落ち着いたら、とりあえず全身の力を抜け。――呪いが暴れすぎているぞ…」
「そ、そういやよぉ…クロムヘルムの奴は? 会わなかったか? ミライズを探しに塔へ来たはずだけどよ―――」
と言うと、
『…&color(green){捕捉}』
脚を床にめりこませ、…この騒動の発端であるミライズが現れた。
「……来んのはてめーか。相ッ変わらず、よくわかんねえ形してやがる。所詮はクリーチャーかよ。…なぁクロードの兄貴、クロムヘルムは―――」
「…………クロムヘルムは奴に、…クロスは、黄金のランスの騎士にやられた」
その会話の隙を狙って、ミライズが跳ねた。
弾けたゴムのように天井へ飛び移り、踏みしめる。
そして一瞬ののち、天井を全力で蹴りつけ自らをバズーカのように発射する!
剣を突き出して。
クランを貫くために伸ばされた剣を突き出して!
地面すら穿つ雷鳴のごとくクランの胸を貫く―――
「あ?」
否、貫く寸前のところだった。
クランに1ミリと接近した刹那、なにかがクランの傍を通過したように見えた。
ソレはミライズを弾き飛ばして思いッきり壁にぶち当てるッ、ミライズはそのまま壁を突きぬけるッ!
-20
鉄がへし砕ける音が3連続で、不細工な打楽器のように鳴り渡る!
防壁を4枚貫通しようかというところで、ミライズは止まった。
ボディの損傷が激しく、誰が見ても立てる状態ではない。そもそも、体の半分以上が壁にめり込んだままで動けるはずもないッ。
「…ど、どういうこッたよ………。なんだなんだ、なんなんだよ畜生! クロムヘルムもクロスも、ひょっとしてクルスもクルトも! 今ここにいねぇ奴は皆! ……もう、どこにもいねぇってのかよ…? この空のどこにも……いねぇって言うのかよ…畜生」
『……&color(orange){damage-half_of_body(損傷率50%)}、imperfect(稼動不完全領域)』
「なんだよそれはぁあッ?! 俺とクロードの兄貴だけかよ! 今はもう俺と、クロードの兄貴しか、アンタしかいないって言うのかよぉぉお?! 皆はどうしたッてんだぁ?? なぁ、どこに行ったんだよぉぉお、うぁぁああぁぁあああッッ!!」
狂ったような絶叫がこだまする。
クランの右拳には血がにじんでいる。
それを見て、ミライズはやっと理解できた。自分をここまで吹き飛ばしたのは、クランというヴァンパイアの放ったわずか1発の拳であったのだと。
クランは向きを変えると、ぶんっ、と空気を切り裂いて消えた。
消えた、と思った次の瞬間には、既にミライズの前に立っていたのだが。
「…よォ。苦しいか? あ? …さっさと元に戻りやがれッッぁぁぁああああああ!!」
雄叫びを上げると、そのまま拳をミライズのボディのど真ん中に突き刺した!
釘を打つがごとく無骨な拳撃は、塔に大穴を開け、ミライズを埋まっていた壁ごと吹き飛ばし、下の見えない虚空へと投げ出した。
「てめーとは地面までサヨナラだ。てめーが落ちて死んだら、ミライズは宝物に戻るかもな。それからゆっくり回収してやるよ」
…落ちていくミライズ。
それを、冷ややかに見つめるクラン。そして―――
「それは残念だ。悪いがミライズは墜ちない。そして貴殿らも―――地上へ帰還する事は、できない」
冷ややかな声。
誰が現れたのかを確認するより前に、クランの視界は光に埋め尽くされた。
それは突風のようにクランの体を運び、…気がついた時には、すでに虚空へと投げ出されていた。
「くっ……」
マントを翻して飛行する。
高速で空を駆け、塔へと戻ったときには―――もう、クロードは駄目だった。
「てめぇぇえぇ何やってんだよぉ―――」
「我が名は《[[王騎士グランド・タイオーン]]》。過去よりの使者、ミライズの守り手。お相手願おう、ヴァンパイアの末裔ッ!」
タイオーンが振るう、黄金のランスによるほぼ完全なる不意打ちの刹那。
足場が爆発し、2人は空中へと放り出された。
-21
殲滅呪文「アポカリプス・デイ」により味方部隊をすべて失ったメガロポリス・サンダーは、未来の世界から新たにロスト・クルセイダーを召喚していた。
それも、並大抵のクリーチャーではない。切り札級だ。物量作戦は通じないと悟ったのか、とにかく巨大なモノを選択したのだろう。
…2体の龍が現れた。
天空を踊る、闇と火を纏った龍《[[神滅鎧亜クラウン・ベルゼルガ]]》。ロスト・クルセイダーでありながらドラゴン種族を持つという、戦闘用に生み出されたクリーチャーである。
そして、もう一方は……確かに龍ではあるが、パワーが強大すぎた。しかもロスト・クルセイダーですらなく、ただの『巨大な龍』だ。その龍はメガロポリス・サンダーの制御を振り切り、召喚と同時に姿も見せぬままどこかへ飛び去ってしまった。彼はとりあえずクラウン・ベルゼルガのみでも十分だと判断し、―――塔への攻撃を開始させる。
それはメガロポリス・サンダーの意図したとおり、ちょうどタイオーンとクランが一騎打ちを始めていた部隊を襲った。
真っ黒な爆炎が、塔の下層をほとんど灰にするっ…!!
空に散った塔がゴミのように風に浚われ、跡形もなく消し飛んだ。
そのゴミの中に、凄まじいスピードで駆ける影が2つ混じっているのが見える。―――クランとタイオーンが空中戦を始めたのだ。
「行くぞ巨大龍クラウン・ベルゼルガッ! あれを焼き尽くすのだ!!」
命令を受け、クラウン・ベルゼルガは2人の戦いへと突っ込んでいく。
…それを見送り、メガロポリス・サンダーは進路を……塔へと変えた。
「タイオーンっ! なぜクロードを刺しやがったッ!?」
「ミライズを奪う者はすべて、我がランスの錆、塵、露ッ! 貴殿も例外なく葬ろう、その友の元へと」
クランの拳を脚を爪をかわし、時にランスで捌きつつ、タイオーンはクランとの間合いを急速に―――詰めた。
「なッ」
電光のごときスピードっ、だがクランの跳躍のように暴風雨じみた乱雑さは持ってない。
むしろ風。静かに音速を超える、神速を駆ける稀代のランサー!
過去において英雄と呼ばれた者の実力!
「ちっ…あぶねぇ、……あんなのもしカスったら、」
おそらく、それだけで腕の1本は飛ぶだろう。
「そして、もし貴殿に当たれば、」
「うぉッ―――!!?」
神速でクランに接近するタイオーン。
ランスは突撃の構えでなく、薙ぎ払う構え!
その横薙ぎのランスを上空へ回避するクラン。…その回避を見透かしていたかのように、ランスは急に上へと進路を変えた!
クランは咄嗟に前転し、ランスを受け流す。そこに突進してきたタイオーンの蹴りが打ち込まれた!
「がはッ―――!」
空中を吹っ飛び、マントを翼のように広げて停止する。
「小ッ賢しい手使いやがって…! へっ、てめーはアレか、そうやってちょこまかしねーと勝てねぇのかよ?」
「力を誇示した挙句、何もせずに負ける輩よりは随分まともだと…私は思うが。―――それより、私になど気をとられていていいのか?」
「あ? …なに言ってやが、」
クランは咄嗟に振り向―――きもせず、とにかくその場から体を反らした!
そこを通過する電子の剣ッ!
「ミ、――ミライズっ!!」
クランによって落とされたミライズ・ウェルキュラーレが舞い戻ってきたのだ。
さらに隙を見逃さず、音の速さでタイオーンのランスが飛んでくる!
クランがそれを避けると、お次は真正面からミライズの攻撃。
2vs1は分が悪すぎる―――と判断したクランは、高速で2人から距離をとる。が、
「―――それは、逃げている、のか?」
すでに後ろにはタイオーン。
速すぎる。
ランスの柄で思い切り打たれ、クランは空中を吹き飛ばされた。
…すぐにマントで体勢を立て直す。だが…この状況は最悪だった。味方は一切なく、相手は超スピードで駆け回る…しかも空中戦の得意な光文明の戦士。
勝機は逃したか――――――と、クランが諦めかけた、瞬間。
『&color(green){オールグリーン}。キャノン、&color(green){アクティブ}』
-22
巨大な光線が空を引き裂いていった。
それは塔から伸びる主砲から放たれたようだ…。
「誰だ? あの塔にゃもう、誰も残ってねぇはずだが―――」
その時、塔からメガロポリス・サンダーの声が響く。
『いまだクラウン・ベルゼルガ! そいつらを喰らい尽くせッッ!』
叩きつけるような一陣の突風。
それと共に、巨大なドラゴンが3人めがけて突撃する!
「なんだありゃ、…うぉぉおっ!?」
「くつ―――」
クランとタイオーンは紙一重で回避した。だが、ミライズ・ウェルキュラーレはその突撃の感知に間に合わず
【ガアアァァァァアアアオオォォォォオオオオオオァァアアアア!!!!】
ぐしゃり、
と、龍の体躯に触れてぶっ潰された。
「な、なんだあの凶悪な龍は―――」
「おい、タイオーンっ! ぼーっとしてんじゃねえ、今の声の奴は、塔に―――司令室にいるんじゃねーのか!!」
「ッ―――そうだ、先程の砲撃は塔から……」
「きっとあいつだ、未来からきたどうのこうのってヤツだぜ! あいつをほっといていいのかよ!?」
「…ミライズの回収を優先する。止めたくば貴殿で止めればいい」
「俺だってミライズは必要なんだよ、要するにだ、ここはひとつ、決着持ち越しってことでどうだよ? 司令室乗っ取ってるアイツを2人で一緒にとっ捕まえてぶん殴って、さっきの龍と一緒に未来へ帰ってもらおうぜ!? 俺たちの勝負はそれからでもいいじゃねーかよ」
「別に、いま貴殿を葬ろうが同じこと……。…だが、貴殿の協力あらば、あの輩を排除するのも多少は容易になろうな。……よかろう、その提案を呑む」
「じゃあ、―――塔に行こうぜ! このでけぇ龍の相手は後だ、急いで行くぜ!」
「言われずとも」
そう言った次の瞬間、そこをクラウン・ベルゼルガが猛スピードで通過した。
だがそこにはもう2人の姿は無く、この龍が攻撃を失敗したのだと気づく頃には、もう2人は塔へと戻っていた。
『&color(red){司令室へ接近中}。&color(red){司令室へ接近中}』
「構わん。来るなら来い。この、メガロポリス・サンダーより進化した―――《[[静鎧亜ダイア・ヴァレー]]》が貴様らに引導を渡そうッッ!!」
----
目次
-[[吸血騎the story1]]
-[[吸血騎the story2]]
-[[吸血騎the story3]]
-[[吸血騎the story4]]
-[[吸血騎the story5]]
-[[吸血騎the story6]]
//-[[吸血騎the story7]]
-[[吸血騎the story8]]
-序
塔を揺らしたのは、死体を貪り、呪いを暴走させたクランだった。
死体を喰らい、力を吸い上げて暴走する吸血騎。
その姿はロケット弾に近い。激突するなり壁を挽き剥がし、床をめくりあげて進撃していく。
クランは我を忘れ、血の騒ぎ立てる感情に身を任せる。
身を委ねる。
その瞬間だけ、彼は彼でなくなり―――
「楽にしろ」
トン、と。
彼の首筋を誰かの手刀が打ち抜いた。
不意に襲い来る、天地がひっくり返るような眩暈。
「ア、く……………ク、クロードの兄貴、じゃねーか…」
「落ち着いたら、とりあえず全身の力を抜け。――呪いが暴れすぎているぞ…」
「そ、そういやよぉ…クロムヘルムの奴は? 会わなかったか? ミライズを探しに塔へ来たはずだけどよ―――」
と言うと、
『…&color(green){捕捉}』
脚を床にめりこませ、…この騒動の発端であるミライズが現れた。
「……来んのはてめーか。相ッ変わらず、よくわかんねえ形してやがる。所詮はクリーチャーかよ。…なぁクロードの兄貴、クロムヘルムは―――」
「…………クロスは奴に、…クロムヘルムは、黄金のランスの騎士にやられた」
その会話の隙を狙って、ミライズが跳ねた。
弾けたゴムのように天井へ飛び移り、踏みしめる。
そして一瞬ののち、天井を全力で蹴りつけ自らをバズーカのように発射する!
剣を突き出して。
クランを貫くために伸ばされた剣を突き出して!
地面すら穿つ雷鳴のごとくクランの胸を貫く―――
「あ?」
否、貫く寸前のところだった。
クランに1ミリと接近した刹那、なにかがクランの傍を通過したように見えた。
ソレはミライズを弾き飛ばして思いッきり壁にぶち当てるッ、ミライズはそのまま壁を突きぬけるッ!
-20
鉄がへし砕ける音が3連続で、不細工な打楽器のように鳴り渡る!
防壁を4枚貫通しようかというところで、ミライズは止まった。
ボディの損傷が激しく、誰が見ても立てる状態ではない。そもそも、体の半分以上が壁にめり込んだままで動けるはずもないッ。
「…ど、どういうこッたよ………。なんだなんだ、なんなんだよ畜生! クロムヘルムもクロスも、ひょっとしてクルスもクルトも! 今ここにいねぇ奴は皆! ……もう、どこにもいねぇってのかよ…? この空のどこにも……いねぇって言うのかよ…畜生」
『……&color(orange){damage-half_of_body(損傷率50%)}、imperfect(稼動不完全領域)』
「なんだよそれはぁあッ?! 俺とクロードの兄貴だけかよ! 今はもう俺と、クロードの兄貴しか、アンタしかいないって言うのかよぉぉお?! 皆はどうしたッてんだぁ?? なぁ、どこに行ったんだよぉぉお、うぁぁああぁぁあああッッ!!」
狂ったような絶叫がこだまする。
クランの右拳には血がにじんでいる。
それを見て、ミライズはやっと理解できた。自分をここまで吹き飛ばしたのは、クランというヴァンパイアの放ったわずか1発の拳であったのだと。
クランは向きを変えると、ぶんっ、と空気を切り裂いて消えた。
消えた、と思った次の瞬間には、既にミライズの前に立っていたのだが。
「…よォ。苦しいか? あ? …さっさと元に戻りやがれッッぁぁぁああああああ!!」
雄叫びを上げると、そのまま拳をミライズのボディのど真ん中に突き刺した!
釘を打つがごとく無骨な拳撃は、塔に大穴を開け、ミライズを埋まっていた壁ごと吹き飛ばし、下の見えない虚空へと投げ出した。
「てめーとは地面までサヨナラだ。てめーが落ちて死んだら、ミライズは宝物に戻るかもな。それからゆっくり回収してやるよ」
…落ちていくミライズ。
それを、冷ややかに見つめるクラン。そして―――
「それは残念だ。悪いがミライズは墜ちない。そして貴殿らも―――地上へ帰還する事は、できない」
冷ややかな声。
誰が現れたのかを確認するより前に、クランの視界は光に埋め尽くされた。
それは突風のようにクランの体を運び、…気がついた時には、すでに虚空へと投げ出されていた。
「くっ……」
マントを翻して飛行する。
高速で空を駆け、塔へと戻ったときには―――もう、クロードは駄目だった。
「てめぇぇえぇ何やってんだよぉ―――」
「我が名は《[[王騎士グランド・タイオーン]]》。過去よりの使者、ミライズの守り手。お相手願おう、ヴァンパイアの末裔ッ!」
タイオーンが振るう、黄金のランスによるほぼ完全なる不意打ちの刹那。
足場が爆発し、2人は空中へと放り出された。
-21
殲滅呪文「アポカリプス・デイ」により味方部隊をすべて失ったメガロポリス・サンダーは、未来の世界から新たにロスト・クルセイダーを召喚していた。
それも、並大抵のクリーチャーではない。切り札級だ。物量作戦は通じないと悟ったのか、とにかく巨大なモノを選択したのだろう。
…2体の龍が現れた。
天空を踊る、闇と火を纏った龍《[[神滅鎧亜クラウン・ベルゼルガ]]》。ロスト・クルセイダーでありながらドラゴン種族を持つという、戦闘用に生み出されたクリーチャーである。
そして、もう一方は……確かに龍ではあるが、パワーが強大すぎた。しかもロスト・クルセイダーですらなく、ただの『巨大な龍』だ。その龍はメガロポリス・サンダーの制御を振り切り、召喚と同時に姿も見せぬままどこかへ飛び去ってしまった。彼はとりあえずクラウン・ベルゼルガのみでも十分だと判断し、―――塔への攻撃を開始させる。
それはメガロポリス・サンダーの意図したとおり、ちょうどタイオーンとクランが一騎打ちを始めていた部隊を襲った。
真っ黒な爆炎が、塔の下層をほとんど灰にするっ…!!
空に散った塔がゴミのように風に浚われ、跡形もなく消し飛んだ。
そのゴミの中に、凄まじいスピードで駆ける影が2つ混じっているのが見える。―――クランとタイオーンが空中戦を始めたのだ。
「行くぞ巨大龍クラウン・ベルゼルガッ! あれを焼き尽くすのだ!!」
命令を受け、クラウン・ベルゼルガは2人の戦いへと突っ込んでいく。
…それを見送り、メガロポリス・サンダーは進路を……塔へと変えた。
「タイオーンっ! なぜクロードを刺しやがったッ!?」
「ミライズを奪う者はすべて、我がランスの錆、塵、露ッ! 貴殿も例外なく葬ろう、その友の元へと」
クランの拳を脚を爪をかわし、時にランスで捌きつつ、タイオーンはクランとの間合いを急速に―――詰めた。
「なッ」
電光のごときスピードっ、だがクランの跳躍のように暴風雨じみた乱雑さは持ってない。
むしろ風。静かに音速を超える、神速を駆ける稀代のランサー!
過去において英雄と呼ばれた者の実力!
「ちっ…あぶねぇ、……あんなのもしカスったら、」
おそらく、それだけで腕の1本は飛ぶだろう。
「そして、もし貴殿に当たれば、」
「うぉッ―――!!?」
神速でクランに接近するタイオーン。
ランスは突撃の構えでなく、薙ぎ払う構え!
その横薙ぎのランスを上空へ回避するクラン。…その回避を見透かしていたかのように、ランスは急に上へと進路を変えた!
クランは咄嗟に前転し、ランスを受け流す。そこに突進してきたタイオーンの蹴りが打ち込まれた!
「がはッ―――!」
空中を吹っ飛び、マントを翼のように広げて停止する。
「小ッ賢しい手使いやがって…! へっ、てめーはアレか、そうやってちょこまかしねーと勝てねぇのかよ?」
「力を誇示した挙句、何もせずに負ける輩よりは随分まともだと…私は思うが。―――それより、私になど気をとられていていいのか?」
「あ? …なに言ってやが、」
クランは咄嗟に振り向―――きもせず、とにかくその場から体を反らした!
そこを通過する電子の剣ッ!
「ミ、――ミライズっ!!」
クランによって落とされたミライズ・ウェルキュラーレが舞い戻ってきたのだ。
さらに隙を見逃さず、音の速さでタイオーンのランスが飛んでくる!
クランがそれを避けると、お次は真正面からミライズの攻撃。
2vs1は分が悪すぎる―――と判断したクランは、高速で2人から距離をとる。が、
「―――それは、逃げている、のか?」
すでに後ろにはタイオーン。
速すぎる。
ランスの柄で思い切り打たれ、クランは空中を吹き飛ばされた。
…すぐにマントで体勢を立て直す。だが…この状況は最悪だった。味方は一切なく、相手は超スピードで駆け回る…しかも空中戦の得意な光文明の戦士。
勝機は逃したか――――――と、クランが諦めかけた、瞬間。
『&color(green){オールグリーン}。キャノン、&color(green){アクティブ}』
-22
巨大な光線が空を引き裂いていった。
それは塔から伸びる主砲から放たれたようだ…。
「誰だ? あの塔にゃもう、誰も残ってねぇはずだが―――」
その時、塔からメガロポリス・サンダーの声が響く。
『いまだクラウン・ベルゼルガ! そいつらを喰らい尽くせッッ!』
叩きつけるような一陣の突風。
それと共に、巨大なドラゴンが3人めがけて突撃する!
「なんだありゃ、…うぉぉおっ!?」
「くつ―――」
クランとタイオーンは紙一重で回避した。だが、ミライズ・ウェルキュラーレはその突撃の感知に間に合わず
【ガアアァァァァアアアオオォォォォオオオオオオァァアアアア!!!!】
ぐしゃり、
と、龍の体躯に触れてぶっ潰された。
「な、なんだあの凶悪な龍は―――」
「おい、タイオーンっ! ぼーっとしてんじゃねえ、今の声の奴は、塔に―――司令室にいるんじゃねーのか!!」
「ッ―――そうだ、先程の砲撃は塔から……」
「きっとあいつだ、未来からきたどうのこうのってヤツだぜ! あいつをほっといていいのかよ!?」
「…ミライズの回収を優先する。止めたくば貴殿で止めればいい」
「俺だってミライズは必要なんだよ、要するにだ、ここはひとつ、決着持ち越しってことでどうだよ? 司令室乗っ取ってるアイツを2人で一緒にとっ捕まえてぶん殴って、さっきの龍と一緒に未来へ帰ってもらおうぜ!? 俺たちの勝負はそれからでもいいじゃねーかよ」
「別に、いま貴殿を葬ろうが同じこと……。…だが、貴殿の協力あらば、あの輩を排除するのも多少は容易になろうな。……よかろう、その提案を呑む」
「じゃあ、―――塔に行こうぜ! このでけぇ龍の相手は後だ、急いで行くぜ!」
「言われずとも」
そう言った次の瞬間、そこをクラウン・ベルゼルガが猛スピードで通過した。
だがそこにはもう2人の姿は無く、この龍が攻撃を失敗したのだと気づく頃には、もう2人は塔へと戻っていた。
『&color(red){司令室へ接近中}。&color(red){司令室へ接近中}』
「構わん。来るなら来い。この、メガロポリス・サンダーより進化した―――《[[静鎧亜ダイア・ヴァレー]]》が貴様らに引導を渡そうッッ!!」
----
目次
-[[吸血騎the story1]]
-[[吸血騎the story2]]
-[[吸血騎the story3]]
-[[吸血騎the story4]]
-[[吸血騎the story5]]
-[[吸血騎the story6]]
//-[[吸血騎the story7]]
-[[吸血騎the story8]]