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(side - 魔吏)


  • 序 /side Mari
 遥かな昔。
 5文明が争いを始めた最初の頃。
 闇には覇王がいた。覇王の血族一派は自らの絶対権力を不死性だと悟り、魔術によって生死を操る研究をした。その最古一族であり、研究にほぼ成功を収めたのが、後の不死貴族である。
 もとより闇のマナは生死の扱いに向いていた。なぜなら闇の世界では、生きているか死んでいるかさえ、怪しい定義なのだから。

 そんな不安定な闇の世界にも、ただ1つの根源が存在した。
 争いを起こせ、死を氾濫させよ、という戦闘衝動である。生きる事も死ぬ事も苦しみである彼ら闇にとって、それは苦痛ではなかった。
 階級の構築は帝王的に進んだ。
 “闇は争う軍団である”。その意志を根付かせた張本人、《断罪閻鬼ヤマ・ギャラクシー》が全ての実権を握っていたといっていい。
 ヤマ・ギャラクシーは闇の統治者として君臨し、同時に断罪の権威としても力を振るった。その意向は「戦わずには死を」。戦う意志のない者を「断罪」と称して滅ぼしていった。
 そんな、裁判を取り仕切る彼が強引に結成したのが、「魔法獄吏」と呼ばれる軍団である。
 ヤマ・ギャラクシーに変わって断罪を取り仕切るチーム。彼らは全員がある民族の出身で、呪文とは一線を画す強力な力「魔方」を所有していた。ヤマ・ギャラクシーはその力に目をつけたのだ。
 だが魔吏たちの働きは悪かった。彼らはどういうわけか、進んで断罪を行おうとはしなかったのである。
 というのも彼らは集団での行動を好まず、個々の実力を尊んでいた。そんな彼らを無理に纏め上げようとしていたのでは、反感をもたれるのも当然の事である。
 そんな彼らに、主であるヤマ・ギャラクシーは苛立ちを募らせる。しだいに、両者の関係は悪化していった。

  • 01 /side Mari
ha! sse t seirp "HARMOITAANA"!
 魔吏たちは、故郷に住まう巫仔(みこ)を崇めていた。
 巫仔の名はハーモイターナ。「調和」を意味する言葉である。
 ハーモイターナは魔吏たちの出身である民族で、世界の調和を訴え唄う者。魔吏たち、いや民族全員はその巫仔の唄いに心を奪われ、共に世界の調和を尊ぶようになった。
 「魔方」も、元はこの民族が編み出した古き呪文である。
 彼ら民族はその力を、決して争いの為に使おうとはせず、世界の平和、すなわち調和のために使う事を教えられてきた。彼らの巫仔が慕う神、調和を司る神「ハーモニー」の為に。
sse tseir peh t "HAAMOITAANA", fod og nrev og "HARMONY".(巫仔ハーモイターナ…調和の神「ハーモニー」を司るものよ…。)
 夜になると、彼らは決まって唄い踊る。
 神を崇め、いつか世界の調和を成し遂げて見せると心より誓ったのである。
 過去、世界の調和を達成したという英雄の伝承があった。
 名をアウヴィスといい、その民族に伝わる伝説の人物。巫仔は必ず毎日、鈴を1振りしてその英雄に祈りを捧げていた。
rof yar pd nal le beht gniri AWVITH.(鈴の音と共に掲げよう、英雄アウヴィスへの祈りを。)
 その英雄と同じことを成し遂げよう。自分たちと同じく、神ハーモニーを崇めていた英雄アウヴィスと同じことを成し遂げよう。
 魔吏たちは争いを望んでいない。

 その光景を、ヤマ・ギャラクシーは胡乱げに睨んでいた。

  • 02 /side Mari
 魔吏たちは絶対的な力を持つヤマ・ギャラクシーに逆らう事もできず、悲痛な生活を送っていた。
 この現状に立ち上がったのが、魔吏の中でも力を持つパヴァーナという魔吏だった。彼女は闇の監視から逃れられる場所として、海底を提案した。そこを魔吏たちの隠れ家とし、名前を「スタジオp」とつける。「p」はもちろん「パヴァーナ/pavana」の「p」。
 リーダー格だった《魔吏アレグレット》は光の世界から予言者を手配し、海底からでも外の世界が分かるようにした。
 そして《魔吏シンフォニエッタ》が番人に任命される。《魔吏ドルチェ》と組んで、防御軍団を仕切っていた。
 こうして秘密の隠れ家は完成。魔吏たちはヤマ・ギャラクシーから逃れる事に成功した。

  • 03 /side Mari
 成功していなかった。
 ヤマ・ギャラクシーとその部隊による一斉攻撃が、スタジオpに向けて開始されたのである。
 スタジオpの存在を密告したのは水の住人。ヤマ・ギャラクシーはその報告を頼りに全部隊を率いて、スタジオpを襲撃させたのである。
 魔吏たちはこれに応戦。防御軍団を一瞬で壊滅させられ、たじろぐ魔吏たち。《魔吏スフォルザンド》が強大な魔力を発揮して部隊を弾き飛ばすが、互いの数が違いすぎる。
 仕掛けてあった《魔海の手》も通用しない。
 魔吏たちはようやく、これを調和を乱す不協和音と認定。「魔方」の執行を開始した。
 そうして劣勢は優勢へ。魔吏たちはヤマ・ギャラクシーの部隊を退けていく。
 しばらくの攻防の後、ヤマ・ギャラクシーの部隊は攻撃をやめ、退却していった。自分たちの負けを認め、魔吏たちを自由にするのだという。
 こうして束縛を解かれ、滅びかけたスタジオpを去る魔吏たち。
 彼らの仲間、民族の故郷へと帰っていった。
 調和の願いを唄う為に。
 そして絶望的な光景を見る。壊滅した民族。滅んだ故郷。
 ヤマ・ギャラクシーの本当の狙いは、魔吏たちの崇める、巫仔ハーモイターナの断罪であった。

  • 04 /side Mari
 混乱を願う闇の審理にしてみれば、調和を願う巫仔の教えは罪である。
 ヤマ・ギャラクシーはハーモイターナの断罪を、一切躊躇せず執り行った。スタジオpへの襲撃など囮だった。
 魔吏はこれに大激怒する。怒りの納めようがない魔吏たちは総じて、ヤマ・ギャラクシーへの最終戦争を仕掛けた。
liv eyar peh tsi yhw!(何故その祈りは悪なのか!?)
del lik sa wsse tseir peh t yhw!(何故巫仔が殺されるのか!?)
ekil t ono duo yya rpeh tsi, liv eyno mrahg nipoh!(調和を願うという祈りは、そんなにも気に食わない罪なのか!?)
 応じて、ヤマ・ギャラクシーも対抗する。彼ら民族の故郷から回収した魔道書物により、魔吏たちの力を統べる能力はすでに得ている。
 ヤマ・ギャラクシーは魔吏の力を使って、魔吏と戦った。
 さらに断罪の部隊も加わり、一気に劣勢に持ち込まれる魔吏たち。ヤマ・ギャラクシーの起動させた《血の魔法陣》によって大半が倒された。そこで意を決し、伝説の王の召喚を実行。
gni keh t "MELLA", tirip syloh eh tot esol cera uo y.(王メーラ、精霊と共に!)
 魔吏たちの儀式によって《煉獄王メーラ・デハーキス》が降臨。断罪の部隊を一掃した。
 そしてヤマ・ギャラクシーとメーラの直接の死闘の末、闇の魔術《デーモン・チャージャー》によってメーラが倒された。だが魔吏たちの攻撃は止まらない。ヤマ・ギャラクシーも最後の力を振り絞り、民族の力を執行する。
esa el prevoh traeeh t. "FINAL" e l cri cci gam, tra t sesa elp.(世界よ終れ。最終魔法陣、起動!)
la vit sef, tra t sesa elp. "BADDEST" e l cri cci gam, tra t sesa elp.(祭りよ始まれ。最凶魔法陣、起動!)
 魔吏たちの《最終魔法陣》と、ヤマ・ギャラクシーの《最凶魔法陣》の戦いである。
 大地に眠る生命達が呼び出された。同時に断罪の部隊が蘇った。
 最後の死闘。乱戦を勝ち抜けたのは魔吏たち。ヤマ・ギャラクシーは破れ、滅びていった。

  • 05 /side Mari
 生き残った魔吏たちは、帰る場所を失っていた。
 巫仔は死に、生命も精霊も枯れ絶えた故郷。破壊された英雄の像。跡形も無い民族。
 絶望に苛まれた魔吏たちは、しかしその信念だけは忘れていない。
 ―――世界の調和を、いつか。
 だがもう彼らにはそんな力は残っていない。生存者の1人アレグレットは、予言者を用いて未来を視た。予言者によると、いつか必ず世界は滅びるのだという。
 魔吏たちはそれを聞き、眠りにつく事にした。
 いつか世界は滅びる。その何も無い世界なら…0からの世界なら恐らく、自分たちの力で、調和の世界を作れるのではないだろうか。
 そう考えたアレグレットは、パヴァーナに頼み、スタジオpごと魔吏の生き残りを海に眠らせようとした。海なら誰にも邪魔されない。世界が滅びる時にまた目覚める為に、アレグレットはパヴァーナと《失いの約束》を結ぶ。
hsi repll iwh traeeh t yade mos. emi tta h tta, uo ytee mlli widna.(いずれ世界は滅びる。その時に、また会おう。)

 魔吏たちは海の底へと消えていった。水の住人たちも気づかないほど深く深く、暗闇の中に身を封じた。
 こうして、世界の滅びを待つ宿命を得た魔吏たち。
 物語は数万年の先に繋がる。

 世界の滅びへ続く その時まで。

peel sec inae vah, fo ev irt "STUDIO=P".(静かに眠れ、スタジオpの眷属。)


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