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 塔を揺らしたのは、死体を貪り、呪いを暴走させたクランだった。
 死体を喰らい、力を吸い上げて暴走する吸血騎。
 その姿はロケット弾に近い。激突するなり壁を挽き剥がし、床をめくりあげて進撃していく。
 クランは我を忘れ、血の騒ぎ立てる感情に身を任せる。
 身を委ねる。
 その瞬間だけ、彼は彼でなくなり―――
「楽にしろ」
 トン、と。
 彼の首筋を誰かの手刀が打ち抜いた。
 不意に襲い来る、天地がひっくり返るような眩暈。
「ア、く……………ク、クロードの兄貴、じゃねーか…」
「落ち着いたら、とりあえず全身の力を抜け。――呪いが暴れすぎているぞ…」
「そ、そういやよぉ…クロムヘルムの奴は? 会わなかったか? ミライズを探しに塔へ来たはずだけどよ―――」
 と言うと、
『… 捕捉
 脚を床にめりこませ、…この騒動の発端であるミライズが現れた。
「……来んのはてめーか。相ッ変わらず、よくわかんねえ形してやがる。所詮はクリーチャーかよ。…なぁクロードの兄貴、クロムヘルムは―――」
「…………クロスは奴に、…クロムヘルムは、黄金のランスの騎士にやられた」
 その会話の隙を狙って、ミライズが跳ねた。
 弾けたゴムのように天井へ飛び移り、踏みしめる。
 そして一瞬ののち、天井を全力で蹴りつけ自らをバズーカのように発射する!
 剣を突き出して。
 クランを貫くために伸ばされた剣を突き出して!
 地面すら穿つ雷鳴のごとくクランの胸を貫く―――
「あ?」
 否、貫く寸前のところだった。
 クランに1ミリと接近した刹那、なにかがクランの傍を通過したように見えた。
 ソレはミライズを弾き飛ばして思いッきり壁にぶち当てるッ、ミライズはそのまま壁を突きぬけるッ!

  • 20
 鉄がへし砕ける音が3連続で、不細工な打楽器のように鳴り渡る!
 防壁を4枚貫通しようかというところで、ミライズは止まった。
 ボディの損傷が激しく、誰が見ても立てる状態ではない。そもそも、体の半分以上が壁にめり込んだままで動けるはずもないッ。
「…ど、どういうこッたよ………。なんだなんだ、なんなんだよ畜生! クロムヘルムもクロスも、ひょっとしてクルスもクルトも! 今ここにいねぇ奴は皆! ……もう、どこにもいねぇってのかよ…? この空のどこにも……いねぇって言うのかよ…畜生」
『…… damage-half_of_body(損傷率50%) 、imperfect(稼動不完全領域)』
「なんだよそれはぁあッ?! 俺とクロードの兄貴だけかよ! 今はもう俺と、クロードの兄貴しか、アンタしかいないって言うのかよぉぉお?! 皆はどうしたッてんだぁ?? なぁ、どこに行ったんだよぉぉお、うぁぁああぁぁあああッッ!!」
 狂ったような絶叫がこだまする。
 クランの右拳には血がにじんでいる。
 それを見て、ミライズはやっと理解できた。自分をここまで吹き飛ばしたのは、クランというヴァンパイアの放ったわずか1発の拳であったのだと。
 クランは向きを変えると、ぶんっ、と空気を切り裂いて消えた。
 消えた、と思った次の瞬間には、既にミライズの前に立っていたのだが。
「…よォ。苦しいか? あ? …さっさと元に戻りやがれッッぁぁぁああああああ!!」
 雄叫びを上げると、そのまま拳をミライズのボディのど真ん中に突き刺した!
 釘を打つがごとく無骨な拳撃は、塔に大穴を開け、ミライズを埋まっていた壁ごと吹き飛ばし、下の見えない虚空へと投げ出した。
「てめーとは地面までサヨナラだ。てめーが落ちて死んだら、ミライズは宝物に戻るかもな。それからゆっくり回収してやるよ」
 …落ちていくミライズ。
 それを、冷ややかに見つめるクラン。そして―――

「それは残念だ。悪いがミライズは墜ちない。そして貴殿らも―――地上へ帰還する事は、できない」

 冷ややかな声。
 誰が現れたのかを確認するより前に、クランの視界は光に埋め尽くされた。
 それは突風のようにクランの体を運び、…気がついた時には、すでに虚空へと投げ出されていた。
「くっ……」
 マントを翻して飛行する。
 高速で空を駆け、塔へと戻ったときには―――もう、クロードは駄目だった。
「てめぇぇえぇ何やってんだよぉ―――」
「我が名は《王騎士グランド・タイオーン》。過去よりの使者、ミライズの守り手。お相手願おう、ヴァンパイアの末裔ッ!」

 タイオーンが振るう、黄金のランスによるほぼ完全なる不意打ちの刹那。
 足場が爆発し、2人は空中へと放り出された。

  • 21
 殲滅呪文「アポカリプス・デイ」により味方部隊をすべて失ったメガロポリス・サンダーは、未来の世界から新たにロスト・クルセイダーを召喚していた。
 それも、並大抵のクリーチャーではない。切り札級だ。物量作戦は通じないと悟ったのか、とにかく巨大なモノを選択したのだろう。
 …2体の龍が現れた。
 天空を踊る、闇と火を纏った龍《神滅鎧亜クラウン・ベルゼルガ》。ロスト・クルセイダーでありながらドラゴン種族を持つという、戦闘用に生み出されたクリーチャーである。
 そして、もう一方は……確かに龍ではあるが、パワーが強大すぎた。しかもロスト・クルセイダーですらなく、ただの『巨大な龍』だ。その龍はメガロポリス・サンダーの制御を振り切り、召喚と同時に姿も見せぬままどこかへ飛び去ってしまった。彼はとりあえずクラウン・ベルゼルガのみでも十分だと判断し、―――塔への攻撃を開始させる。
 それはメガロポリス・サンダーの意図したとおり、ちょうどタイオーンとクランが一騎打ちを始めていた部隊を襲った。
 真っ黒な爆炎が、塔の下層をほとんど灰にするっ…!!
 空に散った塔がゴミのように風に浚われ、跡形もなく消し飛んだ。
 そのゴミの中に、凄まじいスピードで駆ける影が2つ混じっているのが見える。―――クランとタイオーンが空中戦を始めたのだ。
「行くぞ巨大龍クラウン・ベルゼルガッ! あれを焼き尽くすのだ!!」
 命令を受け、クラウン・ベルゼルガは2人の戦いへと突っ込んでいく。
 …それを見送り、メガロポリス・サンダーは進路を……塔へと変えた。


「タイオーンっ! なぜクロードを刺しやがったッ!?」
「ミライズを奪う者はすべて、我がランスの錆、塵、露ッ! 貴殿も例外なく葬ろう、その友の元へと」
 クランの拳を脚を爪をかわし、時にランスで捌きつつ、タイオーンはクランとの間合いを急速に―――詰めた。
「なッ」
 電光のごときスピードっ、だがクランの跳躍のように暴風雨じみた乱雑さは持ってない。
 むしろ風。静かに音速を超える、神速を駆ける稀代のランサー!
 過去において英雄と呼ばれた者の実力!
「ちっ…あぶねぇ、……あんなのもしカスったら、」
 おそらく、それだけで腕の1本は飛ぶだろう。
「そして、もし貴殿に当たれば、」
「うぉッ―――!!?」
 神速でクランに接近するタイオーン。
 ランスは突撃の構えでなく、薙ぎ払う構え!
 その横薙ぎのランスを上空へ回避するクラン。…その回避を見透かしていたかのように、ランスは急に上へと進路を変えた!
 クランは咄嗟に前転し、ランスを受け流す。そこに突進してきたタイオーンの蹴りが打ち込まれた!
「がはッ―――!」
 空中を吹っ飛び、マントを翼のように広げて停止する。
「小ッ賢しい手使いやがって…! へっ、てめーはアレか、そうやってちょこまかしねーと勝てねぇのかよ?」
「力を誇示した挙句、何もせずに負ける輩よりは随分まともだと…私は思うが。―――それより、私になど気をとられていていいのか?」
「あ? …なに言ってやが、」
 クランは咄嗟に振り向―――きもせず、とにかくその場から体を反らした!
 そこを通過する電子の剣ッ!
「ミ、――ミライズっ!!」
 クランによって落とされたミライズ・ウェルキュラーレが舞い戻ってきたのだ。
 さらに隙を見逃さず、音の速さでタイオーンのランスが飛んでくる!
 クランがそれを避けると、お次は真正面からミライズの攻撃。
 2vs1は分が悪すぎる―――と判断したクランは、高速で2人から距離をとる。が、
「―――それは、逃げている、のか?」
 すでに後ろにはタイオーン。
 速すぎる。
 ランスの柄で思い切り打たれ、クランは空中を吹き飛ばされた。
 …すぐにマントで体勢を立て直す。だが…この状況は最悪だった。味方は一切なく、相手は超スピードで駆け回る…しかも空中戦の得意な光文明の戦士。
 勝機は逃したか――――――と、クランが諦めかけた、瞬間。

オールグリーン 。キャノン、 アクティブ

  • 22
 巨大な光線が空を引き裂いていった。
 それは塔から伸びる主砲から放たれたようだ…。
「誰だ? あの塔にゃもう、誰も残ってねぇはずだが―――」
 その時、塔からメガロポリス・サンダーの声が響く。
『いまだクラウン・ベルゼルガ! そいつらを喰らい尽くせッッ!』
 叩きつけるような一陣の突風。
 それと共に、巨大なドラゴンが3人めがけて突撃する!
「なんだありゃ、…うぉぉおっ!?」
「くつ―――」
 クランとタイオーンは紙一重で回避した。だが、ミライズ・ウェルキュラーレはその突撃の感知に間に合わず

【ガアアァァァァアアアオオォォォォオオオオオオァァアアアア!!!!】

 ぐしゃり、
 と、龍の体躯に触れてぶっ潰された。
「な、なんだあの凶悪な龍は―――」
「おい、タイオーンっ! ぼーっとしてんじゃねえ、今の声の奴は、塔に―――司令室にいるんじゃねーのか!!」
「ッ―――そうだ、先程の砲撃は塔から……」
「きっとあいつだ、未来からきたどうのこうのってヤツだぜ! あいつをほっといていいのかよ!?」
「…ミライズの回収を優先する。止めたくば貴殿で止めればいい」
「俺だってミライズは必要なんだよ、要するにだ、ここはひとつ、決着持ち越しってことでどうだよ? 司令室乗っ取ってるアイツを2人で一緒にとっ捕まえてぶん殴って、さっきの龍と一緒に未来へ帰ってもらおうぜ!? 俺たちの勝負はそれからでもいいじゃねーかよ」
「別に、いま貴殿を葬ろうが同じこと……。…だが、貴殿の協力あらば、あの輩を排除するのも多少は容易になろうな。……よかろう、その提案を呑む」
「じゃあ、―――塔に行こうぜ! このでけぇ龍の相手は後だ、急いで行くぜ!」
「言われずとも」
 そう言った次の瞬間、そこをクラウン・ベルゼルガが猛スピードで通過した。
 だがそこにはもう2人の姿は無く、この龍が攻撃を失敗したのだと気づく頃には、もう2人は塔へと戻っていた。

司令室へ接近中司令室へ接近中
「構わん。来るなら来い。この、メガロポリス・サンダーより進化した―――《静鎧亜ダイア・ヴァレー》が貴様らに引導を渡そうッッ!!」

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