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「……では、只今から緊急五文明議会を開始する」

かつてないほどの重い空気がホールを満たしている。
ここは光文明・低高度天空都市の一つであるブロンズ・タワーの最上層には、各文明の使者、各種族の代表者、ナイトとサムライを除くあらゆる組織の長が集められていた。

窓の外、雲海は遥かに続き、その絶え間に青い海、緑の森が顔を覗かせている。

一体、誰が思うだろうか。美しきこの雲海の下で争いの起きている事を。
ナイトとサムライによる争いが起きている事が、彼らがここに呼ばれない理由だった。

そして、この緊急議会も、そのナイトとサムライへの対応について決定するものだった。

「―ナイトの邪眼・天雷・氷牙はサムライの幽朧と勝手に連合軍を組み、地上の各地でナイトの新興一門・因果と私戦…いや、もはやそのレベルを超えて争っている!
今回は皆様方にその処置の決定について話し合って頂きたい!」

そう叫ぶのは、この緊急議会の議長である黙示正義アヴァラノテ


「同じナイト・サムライで争いに参加していない魔光、蒼狼、神祈、武烈に調停役を求めるのはどうかね?」
と提案したのは自然文明の大将、豪激の大地アーリヴァルザである。

「その提案には我々水文明は反対する! 
まず、魔光財閥は没落し、今やその財閥としての体裁も危うい。
我々も神祈に調停を求めたが、悉く無視された。武烈は一門内での勢力争いが激化しており、調停している場合でなかろう。よって、この三門に調停させるのは難しい」
声をあげて反対したのは水文明の科学者サファイア・アルヴィス(未作成、または名前を間違っているよ)

「いや、待て。蒼狼はどうなのじゃ? ナイトとサムライの申し子たる彼らなら上手くやってくれそうなのだが…。
何よりその管轄は水文明ではなかろうか? 何故明言しないのじゃ?」
そう突っ込みを入れたのは火文明大使黄昏の少将W・マツラ

「…お答えする。確かに蒼狼も我々の管轄…であった。
しかし、彼らは先日、我々に対し、《水文明の管轄から脱する》と通告してきたのだ」

「うーん、それでは困りますね……」
光文明代表・不滅の聖霊王NEO・ギャラクシーが表情を曇らせる。

「はっ、そんなの楽じゃねーか」
そう興奮気味に言うのは、闇文明の魔焔の斬佐オルゼキア
かの魔刻の斬将オルゼキアの後裔であり、戦好きとして知られる人物である。

「蒼狼以外のナイト・サムライは管轄を外れて行動しているとはいえ、管轄から脱していない!
それをちょいと利用して、反乱転覆未遂罪で文明内の奴らの拠点を破壊しちまおうぜ。
そうすりゃ、奴らも困るだろうよ。それで戦いが終わるかもしれねェし。
何よりもこの俺様の言う事の聞かねェ奴らなんだからよ!!」

だが、数多の戦いを生き抜いてきた彼のその意見には、説得力があった。
何より、的を得ていた。

最早、平和的解決は望めない。
そうして拠点を奪われれば、争いは沈静化するだろう。
それで例え、文明との争いに発展しても、拠点無き各ナイト・サムライは苦戦を強いられる。
…そして、最終的にはナイト・サムライを反乱罪(未作成、または名前を間違っているよ)として一門ごと処刑、勢力の消滅と文明支配の強化へとつなげる事も不可能では無い。


「魔焔の斬佐の意見に反論のある者は申し出よ」
アヴァラノテがそう言い放つまでもなく、そのホールのほとんどが彼の意見に同意した。

かくして、緊急議会は連合軍と因果を反乱軍と断定、その拠点を破壊することを決定して終わった。




「やめろ! やめてくれ! 俺らの、天雷財閥の《希望の双つ塔(ツインズ・タワー)》が!」

騎士達の抗戦も、新たに編成された光の精鋭部隊の前には無力だった。

最早、その巨大な天を貫く二つの塔はその建立時の荘厳なる姿を喪っていた。
右の塔は歪に傾き、左の塔は中腹から完全に折れ、炎によって紅に、煙によって空と共に灰色に染められていた。

光文明、高高度天空都市の一つであり、天雷財閥の拠点である《希望の双つ塔》は西方荒野の赤いたそがれの中、浮力を失い、初めは静かに、そして次第に早くなりなかせら下方の無人の大地に落下していった。


一方、西方荒野でも光文明の部隊がバリアーを破り、天雷財閥の聖地である《眠れる丘》での破壊作戦が終わったところだった。

かの高名な《天雷の龍聖ロレンツォⅣ世》を始めとする数多の天雷の騎士、そしてその総帥たる歴代の天雷大王が眠る墓所は、今となっては悲惨な様子を晒していた。

草は炎に飲まれて焦土となり、林は燃やされ、切られ、異様な姿を晒していた。
数多の騎士が眠る墓石は砕かれた。破壊から免れた僅かな墓石も、記されているその墓碑銘は傷付かれ、読み取ることは出来ず、誰の墓だったのかは永遠に分からなくなった。
またある墓では掘り起こされ、副葬品として眠っていた魔銃を抜き取られていた。
そして、至る所に見せしめとして十字架が立てられ、墓の主が燃やされ、その煙は遥かな天まで伸びて、たそがれの空に溶け込んでいた。


今頃、闇文明もあの邪眼皇ロマノフⅠ世の墓を荒らしているだろう。
墓碑銘を傷つけて破壊し、土を掘り返して棺を引っ張り出し、その封印を解いて開け、中から彼と共に戦ってきた魔銃を抜き取っているだろう。いや、もしくは破壊してしまったもしれない。
そして、数多の騎士の遺体を吊るし、磔にして晒し者にしたあと、燃やしているだろう。
それは、ロマノフⅠ世とて、例外ではない。


光文明部隊が撤退し、西方荒野に数多の煙が天に昇って行く中、唐突には落ちてきた。
その衝撃で《眠れる丘》も墓所も潰れ、土と落下物の下に埋もれた。

騎士達に叫び声と混乱が覆う。

《希望の双つ塔》が与えたのは、皮肉にも一門の歴史が潰れたという絶望だった。
大地は抉れ、折れた塔の上半分が離れた所に見えていた。




西方荒野はたそがれの時。

静かに落ちる夕日に照らされた塔の壁は反射して不気味に、紅く輝いていた。
塔はその役目を再び働かせる事もなく、もはやただ、悠久で広大な年月に飲み込まれて滅ぶだけである。

それまでに何回、太陽が空を回るのだろうか。幾度、争いが起きるのだろうか。

もはや太陽は地平線に沈み、ある財閥の歴史は閉じられた。





後書きと補足

かくて数千年聳えた天雷財閥の拠点《希望の双つ塔》は崩壊した。それは天雷財閥の歴史が閉じられた事を意味するが、誤解してはいけないのは終焉を迎えた訳ではないということである。むしろ、塔の崩壊により、彼らは新たな歴史の始まりに立てたはずである。だが、この事件は彼らの気力を大きく奪うこととなった。因果一門の消滅後もついにそれは回復せず、歴史に敗れ、世界の敗者に成り下がる末路を迎える。しかし、もし彼らが立ち直れていれば、邪眼皇ヴァツァーリーⅩ世の出現を許さないほど勢力を広げられただろう。―惑星文明史第二巻二章「財閥家の歴史」

  • 邪眼皇ヴァツァーリーⅩ世
邪眼の滅公ヴァツァーリーⅠ世の後裔。(ロマノフ皇の血統ではない)
異名は「ヴァツァーリー大皇帝」もしくは「ヴァツァーリー制覇帝」。
邪眼一門の復活と再興に成功し、財閥としての体裁を取り戻す。
それだけではなく、没落していた旧財閥家を取り込み、邪眼帝国を建国、皇帝に就任する。
東方の冥府と激しく対立したが、その最中、正統の騎神装甲ヴァルロマノフ擁するクロムウェルⅠ世の率いるクーデター軍に敗れ、命を落とした。