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貴方の正義は何か。

ジャスティスの起源は、光文明の裁判組織の1つにある。……もっとも、その黎明期は人の為、己の正義に殉して生きる組織だったが、時代が移るととなっては世界の恒久平和の為、全生命の抹殺を理想として密かに掲げるようになっていた―惑星文明史第七巻二章「各時代の正義」より抜粋

「五文明は我々の提案した至高戦士計画の実行に躍起になっていますな」

ここ光文明の超高高度天空基地「イカロスii」の宇宙航行船に乗り込んだ私は後ろから声を掛けられた。


「…アルカトラズ副首席か。そうだな、正直うまく行くとは思わなかった」

窓からは遠く、惑星の青い輪郭が見えていた。
その彼方には、二つある月の一つが浮かび、一足先に昼の世界へと消えていった。
静かに船が発進する。


「……そして、魔焔の斬佐に、反乱転覆未遂罪を用いて拠点を破壊するよう、入れ知恵したのも副首席、貴方だな?」

「その通りよ。流石、同胞シクラウスよ。察しがいいな。
ああいう戦狂い程操り易いものは無い」

「そして、我々は秘密裏に崩壊した拠点へ忍び入り、金を奪った」
私は顔をしかめた。
忍び入った際、掛けられていた罠に嵌り、呪いを掛けられてしまった。
それは、《新たに文明と種族を追加》されてしまう、古代の叡智―恐らくは《古代第三世界》のロスト・テクノロジーを用いた物だった。

その呪いを解く方法は、《古代第三世界》亡き今ではもはや存在しない。

「奪ったとは人聞きの悪い事を言うではないか。
というかその体、大丈夫なのか?」

私の体は自然と闇文明を追加された事により、細胞は植物細胞に変化、骨は浮き出て皮膚を破り、外骨格へ適応した。
最も、これほどまでの変化は種族に《オリジン》が追加された、というものもあるが。

「ああ、実に快適だ。太陽光を浴びていれば食事しなくて済むし、大きな怪我を負っても死ぬ事は無くなった」

それと同時に、種族にオリジンが追加されたからが、私はジャスティスの真の思想に目覚めた。

―人の為、己の正義に殉して生きる。

だが、そんな事など実行できる訳が無かった。実行するそぶりを見せた瞬間、速やかに「処刑」される。
危険思想を広ませないためだ。

「死んでもそんな体にはなるのは御免だ。
…だが、こうして頑張ってくれたからこそ、資金が足りた。
見よ、同胞。天の果て、我々の正義が完成しようとしている。数世紀待ち望んだものだ」

そう興奮しながら、ここから更に一万キロ上空、僅かに見える静止衛星軌道に浮かぶ巨大な箱を指差した。
それこそが、今回の目的地である。

―最終審判兵器ヴァニタス。恐らく今、この世で最大の生物であり、兵器だろう。しかし、その人工的に生み出された生体兵器に意思は無い。


「過去、かつて幾つもの、異様な、美しくも恐ろしい帝国が興っては滅んだ。その大半が争いによって、だ」

―だが何だ。それが歴史であり、文明の興亡盛衰上仕方無い事だろう。
私の心は強く反発した。

「過去現在存在するあらゆる宗教も《審判の日》が来て、裁きを下すと説いた。
だが、それは結局、訪れなかった。それ故に戦争は止むことを知らず、世界は荒廃した」

―しかし、その度に生命は団結し、世界を再興させたではないか!
怒りが湧いてきた。
眼下の惑星が青い。戦争の光ずらもここには届かない。

「だから、我々が下すのだ! 全生命に裁きを! 審判を!」

―馬鹿な考えだ。愚かな考えだ。
拳を握った。
目的地に大分近づいた。

「その後、我々が主導に立ち、世界を作り替えていくのだ!」

―下らん。
拳を振り上げようとした。

『目的地到着シマシタ 目的地到着シマシタ 繰リ返シマス 目的地到着シマシタ…』

「開けてくれたまえ」

「分かった」

拳の力を抜き、ハッチを開けた。
私は副首席の後ろに付き、ヴァニタスのコントロール・ルームへと向かった。





後書きと補足

ついにヴァニタスが使用される事は無かった。機能に問題があった訳ではない。外部からの攻撃によって命を奪われ、機能を停止した為である。―惑星文明史第十四巻《ヒルデヴァルトのレポート②-過去へのレクイエム》より

伝説によれば、ヴァニタスを停止させた英雄は邪眼財閥の王、邪眼皇ピョートルⅡ世だった。彼は静止衛星軌道に浮かぶ殺戮兵器の存在を知り、《騎祖神》と《銃祖神》の二柱の神を召喚した。彼は後継者の名前を滅公ヴァツァーリーに伝えた後、神に精神力と生命力を捧げ、天の果てに飛び上がった。

殺戮兵器を眼中にしたピョートルは、精神力を犠牲に古今東西のあらゆる呪文を呼び出し、生命力を犠牲にしてそれを弾幕として空一面に展開させた。アヴァランチ呪文やインビンシブル呪文が殺戮兵器に襲い掛かった。かくして殺戮兵器は崩壊した。

崩壊の際、放たれた粒子光線により、ピョートルは右腕を失い、地上へ落ちて行った。地上へ落ちた彼は心身ともに傷付いていたが、本営に戻らず左手に魔銃を構え、戦場へ舞い戻った。連合軍指揮官に妥協は許されないのだ。何より、仲間の為にも

それは唐突だった。因果軍に囲まれていた氷牙皇帝ニコライ・ロマノフを助けようと単身、敵陣に突っ込み、隻腕とは思えない魔銃さばきで魔弾を放って危機を助けた所だった。《魔弾ロマノフ・ストライク》敵の一人はそう叫び、ロマノフの血統しか使えない魔弾を背後から彼に浴びせた。ピョートルは意味も分からなく振りかえると、それを放ったのは自分がヴァツァーリーに後継者にするよう指定した邪眼皇弟のクロウムルだった。驚きの消えないまま、再び魔弾を受け、戦乱の英雄は散った

その後、邪眼財閥は裏切って因果に加担したクロウムルを処刑、歴史の表舞台から去った。一門の指揮権はヴァツァーリーの一族が握った。クロウムルの子孫は迫害を恐れ、密かに南トバツ市に逃げ延びた。それから数千年、クロウムルの子孫であるクロムウェルⅠ世はヴァツァーリーⅩ世を倒し、邪眼皇は正当なるロマノフの血統に戻った

以上は惑星文明史を中心とする数多の書物より抜粋した。