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うなるサイレン あわただしく駆ける人ごみ どうして? 何があったの? 5時間目 体育の時間 突然がっちゃんが倒れた 原因不明の昏睡状態 救急車が呼ばれる 今にも泣き出しそうなタケさん(タケル) 私はただ、がっちゃんを乗せた救急車が走っていくのを、見ていただけだった 呆然として、呆けていた私 体育は中断され、教室へと戻るクラスメート 雑踏が、移動していく いきなりだった 前ぶれなんてなかった まるで電池が切れたように、目の前で倒れこんだがっちゃん 何が起こったのか、私はそれを知ることができなかった 教室へと戻り、着替えをすます まるで何もなかったかのように、6時間目が始まった もちろん誰しもが運ばれていった少女の容態を気にはしていた だけど、がっちゃんという役者が運び出された劇は、まだはじまったばかりだった そのあとは何事もなかった 6時間目が終わって、HRが終わって 下駄箱で履き替えて学校を出る 『じゃーねー!ぎんちゃーん!』 いつもはかかる声 今日はかからない なぜ、彼女は倒れたのだろう その理由に、まだ気づくことはできなかった いや、気づこうとしなかった 今日は部活がなかったから、放課後は暇だった 近くの土手に寄る 幼い頃、いつもがっちゃん達とここで遊んだ そのことを思い出した がっちゃん─── タケさん─── 皆─── 私のいる高校に進んだ幼馴染は、私とがっちゃんとタケさんだけ だから二人がつきあい始めたのも、最初は当然だと思った でも、不意に気がついた 私は、取り残されたのだろうか 二人に、置いていかれたのだろうか 不安になる そんなことはない がっちゃんに限って、そんなことはない タケさんも、がっちゃんと同じぐらい、私のことも大事にしてくれてる だから、置いていかれてなどいない      「本当に?」 背後から声がかかる 「本当にそう、言い切れる?」 「え?」 それはとても冷たく、鋭い声 そして、どこかで聞いた事のある声 「あなたは独りよ」 「……違う」 「違わない」 「あなたは誰?なんでそんなこと言うの?」 「私が誰かって?」 イラッとして振り向こうとする でも、身体が動かない 首も動かない 声だけをかろうじて出すことができる 急に怖くなる 「誰?誰なのあなた?」 「私?私は───」 急に突風が吹いた 草がざわめき、掻き消える声 「え?聞こえない!何なの!?」 急に身体が軽くなる すかさず振り返った     ───そこには、誰一人いなかった その場を急いで後にする まだ心臓の鼓動が激しい 太陽が沈む、薄暗い夕暮れ 不安が私の心臓を、わしづかみにする 時々背後を振り返る まるで、誰かが私を追いかけてきている気がする 足の速度が少しずつ速くなる 今、私は走っていた でも、どれだけ走っても、不安をもたらす気配が消えることはなかった ──ガチャン いつの間についたのだろう どこをどう走ってきたのかも覚えていない 私はアパートの自分の部屋にいた 身体が軽い いつの間にか気配は消えていた 窓から見える、沈んでいく太陽 それは、まだ序章にしか過ぎなかった 第一話 「バック」 完
うなるサイレン あわただしく駆ける人ごみ どうして? 何があったの? 5時間目 体育の時間 突然がっちゃんが倒れた 原因不明の昏睡状態 救急車が呼ばれる 今にも泣き出しそうなタケさん(タケル) 私はただ、がっちゃんを乗せた救急車が走っていくのを、見ていただけだった 呆然として、呆けていた私 体育は中断され、教室へと戻るクラスメート 雑踏が、移動していく いきなりだった 前ぶれなんてなかった まるで電池が切れたように、目の前で倒れこんだがっちゃん 何が起こったのか、私はそれを知ることができなかった 教室へと戻り、着替えをすます まるで何もなかったかのように、6時間目が始まった もちろん誰しもが運ばれていった少女の容態を気にはしていた だけど、がっちゃんという役者が運び出された劇は、まだはじまったばかりだった そのあとは何事もなかった 6時間目が終わって、HRが終わって 下駄箱で履き替えて学校を出る 『じゃーねー!ぎんちゃーん!』 いつもはかかる声 今日はかからない なぜ、彼女は倒れたのだろう その理由に、まだ気づくことはできなかった いや、気づこうとしなかった 今日は部活がなかったから、放課後は暇だった 近くの土手に寄る 幼い頃、いつもがっちゃん達とここで遊んだ そのことを思い出した がっちゃん─── タケさん─── 皆─── 私のいる高校に進んだ幼馴染は、私とがっちゃんとタケさんだけ だから二人がつきあい始めたのも、最初は当然だと思った でも、不意に気がついた 私は、取り残されたのだろうか 二人に、置いていかれたのだろうか 不安になる そんなことはない がっちゃんに限って、そんなことはない タケさんも、がっちゃんと同じぐらい、私のことも大事にしてくれてる だから、置いていかれてなどいない      「本当に?」 背後から声がかかる 「本当にそう、言い切れる?」 「え?」 それはとても冷たく、鋭い声 そして、どこかで聞いた事のある声 「あなたは独りよ」 「……違う」 「違わない」 「あなたは誰?なんでそんなこと言うの?」 「私が誰かって?」 イラッとして振り向こうとする でも、身体が動かない 首も動かない 声だけをかろうじて出すことができる 急に怖くなる 「誰?誰なのあなた?」 「私?私は───」 急に突風が吹いた 草がざわめき、掻き消える声 「え?聞こえない!何なの!?」 急に身体が軽くなる すかさず振り返った     ───そこには、誰一人いなかった その場を急いで後にする まだ心臓の鼓動が激しい 太陽が沈む、薄暗い夕暮れ 不安が私の心臓を、わしづかみにする 時々背後を振り返る まるで、誰かが私を追いかけてきている気がする 足の速度が少しずつ速くなる 今、私は走っていた でも、どれだけ走っても、不安をもたらす気配が消えることはなかった ──ガチャン いつの間についたのだろう どこをどう走ってきたのかも覚えていない 私はアパートの自分の部屋にいた 身体が軽い いつの間にか気配は消えていた 窓から見える、沈んでいく太陽 それは、まだ序章にしか過ぎなかった 第一話 「バック」 完

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