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少しの間くらいは・・・」(2006/10/26 (木) 21:20:41) の最新版変更点

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とある放課後 殺「……はぁ」 虚しい。 最近、そんなことばかり感じる。 原因はわかっている。 人を殺していないからだ。 飢えているんだ。 渇いているんだ。 私の心が血を欲しているんだ。 狂「あはは~♪どしたの~?ため息なんて吐いてさ~」 こいつはいつだってこんな調子だ。 キョウのように、細かいことを考えないで生きていけることほど羨ましいことはない。 殺「何でもないさ」 狂「そっか~♪じゃ、私帰るね~」 私の適当な返事で納得したのか、彼女は自分の荷物を持って教室から去っていった。 ふと教室を見渡してみると、生徒は私を含めて三人しかいなかった。 何故か机に突っ伏して寝ている男と、何故か花瓶の花の世話をしている誤殺。 こいつらは暇人か? 男「……ガバッ」 突然、男が跳ね起きる。 男「……キョロキョロ」 首を振り、周りを確認する。 男「あれ?みんなは?」 どうやら、こいつは終礼からずっと寝ていたらしい。 今が、放課後であることすら理解できていないのだろう。 殺「もう放課後よ」 らしくないと思った。 自分から誰かに話し掛けるなんて、普段なら絶対しなかったハズだ。 男「え、みんな帰ったの?」 殺「えぇ」 目を丸くして驚く男の姿に、私は不覚にも少し笑いそうになってしまった。 男「なんで誰も起こしてくれないんだよぉー」 文句を言いながら、鞄の中に教科書を詰め込む男。 ガシャーン 男「うぉ、なんだ!?」 殺「……」 音のした方を見ると、床に飛散した花瓶(だった物)と花を呆然と見下ろしている誤殺の姿が視界に入った。 男「だ、大丈夫?」 机から立ち上がり、誤殺のもとに駆け寄る男。 普段なら怖くて近づくことすらできないくせに、こういう時は行動が早い。 誤殺「ど、どうしよう、先生の花瓶……グスッ」 男「え、あれ?(な、泣いてる?)」 意外だった。 普段あれだけ鋭い殺気を放っている彼女が、こんなことで涙を流すなんて思ってなかった。 男「と、とりあえず、危ないから破片を回収しよう」 誤殺「……ひぅ…グスッ」 緊急事態で頭が回らないのか、二人は破片を一枚一枚素手で拾い始めた。 それじゃ、拾ってるお前らが危ないだろ。 殺「…はい、これ」 男「え……?」 掃除道具入れから持ってきた箒とチリトリを渡しながら、やっぱり今日の私は『らしくない』と思った。 殺「素手じゃあ、怪我するでしょ?」 男「お、おぅ。サンキュー」 そこで私は気づく。 割れた花瓶の一つが、鋭利な刃物に似た形をしていることに。 殺「……」 手にとって見ると、見た目より少し脆さを感じる気がしたが、人を殺すには十分だなと思った。 男「これでよし、と」 集めた破片がゴミ箱に入れられる。 カシャ 殺「……」 自分で持っていた大きな破片もゴミ箱に放り込んでいた。 さっきまでの妄想は、すでに頭の隅へと追いやられていた。 男「そんなに落ち込むなって、誤殺さん。花瓶は俺が割ったことにするからさ」 誤殺「そんな……」 男「いいからいいから」 相変わらず他人に優しい奴だな。 男「でも、意外だったなぁ。誤殺さんが涙もろかったなんてさ」 殺「確かに意外だった」 誤殺「う……////」 顔を赤らめる誤殺を見て、男がニヤニヤと笑う。 男「それに…優しいさつきさんも初めて見れたしな」 殺「は?」 優しい? 私が? 男「じゃ、せっかくだし今日は三人で帰りますか?」 誤殺「…う、うん」 誤殺が自分の荷物をまとめ始める。 おい待て。 勝手に話を進めるな。 気づけば男の腕を掴んでいた。 殺「私が優しいってどういうこと?」 男「そのままの意味だけど?」 それだけ言うと、男は私から離れ、自分の鞄を掴み、再び私の元へと戻ってきた。 男「ほら、帰ろうぜ。さつきさん」 殺「……うん」 飢えている。 渇いている。 血を欲している。 だけど、虚しいとは感じなくなった気がした。 少しの間くらいは、人を殺すのを我慢してみてもいいかなと思えた。 心は暖かかった。 ~終わり

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