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時間6:00 場所2-B 「妹ちゃん、罠に何か引っ掛かっているわよ」 策略姉は木の下で見張りをしている妹へ伝える 罠は現時点から300m離れた場所に設置されている 「あれは・・・・ダンボール?」 目を凝らしてもう一度よく見るがやはりダンボール箱だった 「ダンボール箱が引っ掛かっているの?」 「ダンボール箱に入った誰かが罠に掛かっている可能性もあるわ・・・・」 罠はピアノ線と木材で作られた物、罠から逃げ出そうと動き回るほどピアノ線は体に食い込んでゆく 単純な作りとは裏腹に恐ろしいほどの威力を持つ、故に関係ない物が引っ掛かると十分にその威力を発揮できない 危険とは知りながらも策略姉妹は罠に引っ掛かったダンボール箱を取り除きに動いた。 ---- 《AK-47》威力が高く使いやすい軍事ライフル、それが策略姉の支給品だ。 姉は恐る恐る罠を張った小川へと足を踏み入れる。 確かにダンボール箱が引っ掛かっていた。 おかしい、周囲には建物一つない河川敷。急にダンボール単体が転がってくるとは想像しにくい。 「妹ちゃん、ちょっと外してみて」 周囲に人影がいないのを確認し策略妹はダンボール箱に手をかける 「よい……うわっ!お姉ちゃん!」 妹が声をあげた瞬間ダンボール箱が勢いよく走り出した 「うわわわ!」ドパパパパパパパ!! 突出の事に驚きAK-47を当たり散らす姉、撃ってから妹が目標付近にいる事に気づいた バスッバスッ ダンボール箱に2発命中したがスピードは止まることを知らない 遂にエリアを抜け視界から消えてしまった ---- 時間6:00 場所2-C 先ほどの戦闘により負傷した右脚を引きずりながら湖畔の木々で身体を休める人影がいた。 右脚からは大量の血液が流れ出ている、しかし止血をする手立てはない。 渡辺を追っていた際、陣取った場所に荷物を置いてきたのが失敗かと思われる。 「血が、止まらない………もう潮時」 そう言うと殺人鬼はその場に倒れこんだ。 目の前にはいつもの学内風景が映る、そこには誰からも必要とされていない自分 (私は……独りなんだ) 彼女の意識はそこで途切れた。 そして彼女に近付く不気味な箱が一つ ---- 時間6:00 場所2-D 「……けっこうみんな生き残ってるんだ★」 放送での知らせを聞き身体を休めている少女がいた。 上着は銃撃で破れているが下に着用している防弾チョッキで傷一つなく過ごしている 「私もウカウカしちゃいられないや、モンスター召喚でもしようかな」 ガサッ 「!!誰!?」 人の気配がする、鋭く尖った刃物のような人物………ヤンデレだ 「あらお久し振りねぇ」 静けさの向こう側に感じる鋭い殺気が空気に触れ鳥肌が立つ 「あ、あなたには屈しないわよ☆私は魔法障壁があるんだから!」 ヤンデレは緊迫した彼女を一瞬笑い、そして言い放つ 「まだそんな嘘に頼ってるの?」 「え?」 ---- 「な、何言ってるのヤンデレさん!私は…」 「魔法少女……………とでも言うのかしら少女さん?」 「!!」 ヤンデレは全てを見透かすように答えていく 「貴女は自分に嘘をついている…………名前は少女………」 「貴女は新ジャンル学園の中では異質な部類に 入っているけど実は普通の女の子」 「うわああああああ!!!!」 彼女は足下にあった木の棒に呪文を唱えながらヤンデレ目掛け振り落とした 「攻撃魔法『ルワン・テラクン!』木の棒よ剣になれぇえええ!」 ガキィン! しかしヤンデレは素早く刀の鞘で受け止めた 「両親は5歳の頃、死別………でしょ?」 ---- 「あら?木の棒は剣にしたんじゃないの?」 「うるさい!うるさぁああああい!!貴女が私の何を知ってるというのよ!!!」 不敵に笑いながらヤンデレは答えた 「恋人の下僕って興味が湧くのよねー」 「恋人………それって男君!?」 その名前を口にした瞬間、彼女は右腕が燃えるような熱さを感じた ザグッ 0コンマ数秒後右手から赤い液体が噴き出し 何者かに引っ張られるかのように地面に倒れた。 「あんたは“君”ではなく“様”でしょ!?」 眼の色が変わったヤンデレが口調を荒げながら答える 「い゙あ゙あ゙あ゙あああああ!!!!て、腕がぁああああ!!!!」 右腕切断は免れたものの傷は深く倒れた際に筋肉がずり落ち白い骨が傷口から覗かせていた ---- 「さてここで問題です」 鞘から刀を抜きながらヤンデレは話しだす 「いままでに7人のクラスメイトが亡くなりました・・・・・・・そのうちこの刀は何人斬ったでしょう?」 意味深な台詞に言葉が一瞬詰まる、妖しく輝く刀には赤い雫が滴り落ちた 「わたしの……さいだ、ぃい……」 斬られた腕の痛みを殺しながら魔法少女は立ち上がった、そして左腕をヤンデレに向ける 「あら何のつもり?答えが分かったの?」 「これから…わたしの最大…攻撃魔…法……いくわよ」 「そう、答えを貴女の最後の台詞にしようと思ったのに……残ねn」 「攻撃魔法『男君もあんたのような病女に好かれて可哀相!』」 ヤンデレの語りに被るように魔法少女は声を張り上げた ---- 「はぁ~?だぁれが病女よ!」ヒュン 魔法少女が言い放つ言葉に素早く反応し刀を彼女の脳天めがけ振り下ろした 刀に映り出された自分の表情を見て死を確信した その直後どこからか鋭い物質が刀を弾き返した。 「そこまでだ!」 声に驚き上を見上げると弓矢を構える荒鷹とクナイを手にしたクールがいた 「荒鷹!撃て!」 ヒュン!ヒュン! 「ちぃ!」 ヤンデレめがけ放たれた矢を刀で弾き返し振り向きもせず斜面を駆け足で滑り降りた。 「深追いするな止血が先だっ……!」 クールは直感した、彼女はもう無理だと。神経ごと断ち切られた腕、多量の出血、たとえこの場が大学病院の手術室であったとしても助かる見込みが低いほどの傷だった。 「クー…ルさん?」 ---- 「喋るな今は止血が先だ」 彼女に悟られないよう精一杯の冷静さを装う、しかし声が震えて手が思うように動かない。 包帯を巻いたらすぐに多量の出血で真っ赤に染まり使い物にならない。 ここが島でなく、糞ゲームでなく、平和な日常ならば今すぐにでも携帯で119へ電話したい。 やっとの思いで飲み込んだ唾は酷く苦い味がした。 「もういいんですよ……」 彼女はクールに呼び掛けた。 「バカを言うな気をしっかり持て、私はお前を見捨てたりしない」 彼女の頬に雨が降ってきた、と同時に自分が泣いている事に気がついた。か細い声で彼女はクールに何かを伝える 「最後に私を……知ってる人に出会えて良かった……男君に会ったら……愛…………って伝えて」 AM6:12、魔法少女はクールと荒鷹に見守られながら息絶えた。最後に両親と思われる名前を数回呟いた。 ---- 魔法少女は17年前、ごく普通の民家に生を受けた。 堅実で真面目な父親と素直で謙虚な母親を持つ子だった。 幼い頃から頭脳明晰で運動抜群の活発な少女は両親やその周りから絶大な期待を受けていた。 友達にも恵まれ誰からも愛されるまさに天使のような女の子だった それからしばらく経ったある日、悲劇が起こる。反対車線から大型車が両親と少女が乗った車と正面衝突した。 向こうの運転手と父は即死、母も三日後に死亡した。しかし不幸中の幸いか少女は無傷だった。 母親との最後の会話、看護士は今でも鮮明に覚えているという 「少女は人を幸せにする魔法が使えるの、その証拠にあなたは今生きてる、お母さんはとても幸せよ」 その二時間後母親は息を引き取った。彼女の魔法にはそんな想いが秘められている。これは誰も知らない真実だ。 魔法少女死亡 残り34名 ----
時間6:00 場所2-B 「妹ちゃん、罠に何か引っ掛かっているわよ」 策略姉は木の下で見張りをしている妹へ伝える 罠は現時点から300m離れた場所に設置されている 「あれは・・・・ダンボール?」 目を凝らしてもう一度よく見るがやはりダンボール箱だった 「ダンボール箱が引っ掛かっているの?」 「ダンボール箱に入った誰かが罠に掛かっている可能性もあるわ・・・・」 罠はピアノ線と木材で作られた物、罠から逃げ出そうと動き回るほどピアノ線は体に食い込んでゆく 単純な作りとは裏腹に恐ろしいほどの威力を持つ、故に関係ない物が引っ掛かると十分にその威力を発揮できない 危険とは知りながらも策略姉妹は罠に引っ掛かったダンボール箱を取り除きに動いた。 ---- 《AK-47》威力が高く使いやすい軍事ライフル、それが策略姉の支給品だ。 姉は恐る恐る罠を張った小川へと足を踏み入れる。 確かにダンボール箱が引っ掛かっていた。 おかしい、周囲には建物一つない河川敷。急にダンボール単体が転がってくるとは想像しにくい。 「妹ちゃん、ちょっと外してみて」 周囲に人影がいないのを確認し策略妹はダンボール箱に手をかける 「よい……うわっ!お姉ちゃん!」 妹が声をあげた瞬間ダンボール箱が勢いよく走り出した 「うわわわ!」ドパパパパパパパ!! 突出の事に驚きAK-47を当たり散らす姉、撃ってから妹が目標付近にいる事に気づいた バスッバスッ ダンボール箱に2発命中したがスピードは止まることを知らない 遂にエリアを抜け視界から消えてしまった ---- 時間6:00 場所2-C 先ほどの戦闘により負傷した右脚を引きずりながら湖畔の木々で身体を休める人影がいた。 右脚からは大量の血液が流れ出ている、しかし止血をする手立てはない。 渡辺を追っていた際、陣取った場所に荷物を置いてきたのが失敗かと思われる。 「血が、止まらない………もう潮時」 そう言うと殺人鬼はその場に倒れこんだ。 目の前にはいつもの学内風景が映る、そこには誰からも必要とされていない自分 (私は……独りなんだ) 彼女の意識はそこで途切れた。 そして彼女に近付く不気味な箱が一つ ---- 時間6:00 場所2-D 「……けっこうみんな生き残ってるんだ★」 放送での知らせを聞き身体を休めている少女がいた。 上着は銃撃で破れているが下に着用している防弾チョッキで傷一つなく過ごしている 「私もウカウカしちゃいられないや、モンスター召喚でもしようかな」 ガサッ 「!!誰!?」 人の気配がする、鋭く尖った刃物のような人物………ヤンデレだ 「あらお久し振りねぇ」 静けさの向こう側に感じる鋭い殺気が空気に触れ鳥肌が立つ 「あ、あなたには屈しないわよ☆私は魔法障壁があるんだから!」 ヤンデレは緊迫した彼女を一瞬笑い、そして言い放つ 「まだそんな嘘に頼ってるの?」 「え?」 ---- 「な、何言ってるのヤンデレさん!私は…」 「魔法少女……………とでも言うのかしら少女さん?」 「!!」 ヤンデレは全てを見透かすように答えていく 「貴女は自分に嘘をついている…………名前は少女………」 「貴女は新ジャンル学園の中では異質な部類に 入っているけど実は普通の女の子」 「うわああああああ!!!!」 彼女は足下にあった木の棒に呪文を唱えながらヤンデレ目掛け振り落とした 「攻撃魔法『ルワン・テラクン!』木の棒よ剣になれぇえええ!」 ガキィン! しかしヤンデレは素早く刀の鞘で受け止めた 「両親は5歳の頃、死別………でしょ?」 ---- 「あら?木の棒は剣にしたんじゃないの?」 「うるさい!うるさぁああああい!!貴女が私の何を知ってるというのよ!!!」 不敵に笑いながらヤンデレは答えた 「恋人の下僕って興味が湧くのよねー」 「恋人………それって男君!?」 その名前を口にした瞬間、彼女は右腕が燃えるような熱さを感じた ザグッ 0コンマ数秒後右手から赤い液体が噴き出し 何者かに引っ張られるかのように地面に倒れた。 「あんたは“君”ではなく“様”でしょ!?」 眼の色が変わったヤンデレが口調を荒げながら答える 「い゙あ゙あ゙あ゙あああああ!!!!て、腕がぁああああ!!!!」 右腕切断は免れたものの傷は深く倒れた際に筋肉がずり落ち白い骨が傷口から覗かせていた ---- 「さてここで問題です」 鞘から刀を抜きながらヤンデレは話しだす 「いままでに7人のクラスメイトが亡くなりました・・・・・・・そのうちこの刀は何人斬ったでしょう?」 意味深な台詞に言葉が一瞬詰まる、妖しく輝く刀には赤い雫が滴り落ちた 「わたしの……さいだ、ぃい……」 斬られた腕の痛みを殺しながら魔法少女は立ち上がった、そして左腕をヤンデレに向ける 「あら何のつもり?答えが分かったの?」 「これから…わたしの最大…攻撃魔…法……いくわよ」 「そう、答えを貴女の最後の台詞にしようと思ったのに……残ねn」 「攻撃魔法『男君もあんたのような病女に好かれて可哀相!』」 ヤンデレの語りに被るように魔法少女は声を張り上げた ---- 「はぁ~?だぁれが病女よ!」ヒュン 魔法少女が言い放つ言葉に素早く反応し刀を彼女の脳天めがけ振り下ろした 刀に映り出された自分の表情を見て死を確信した その直後どこからか鋭い物質が刀を弾き返した。 「そこまでだ!」 声に驚き上を見上げると弓矢を構える荒鷹とクナイを手にしたクールがいた 「荒鷹!撃て!」 ヒュン!ヒュン! 「ちぃ!」 ヤンデレめがけ放たれた矢を刀で弾き返し振り向きもせず斜面を駆け足で滑り降りた。 「深追いするな止血が先だっ……!」 クールは直感した、彼女はもう無理だと。神経ごと断ち切られた腕、多量の出血、たとえこの場が大学病院の手術室であったとしても助かる見込みが低いほどの傷だった。 「クー…ルさん?」 ---- 「喋るな今は止血が先だ」 彼女に悟られないよう精一杯の冷静さを装う、しかし声が震えて手が思うように動かない。 包帯を巻いたらすぐに多量の出血で真っ赤に染まり使い物にならない。 ここが島でなく、糞ゲームでなく、平和な日常ならば今すぐにでも携帯で119へ電話したい。 やっとの思いで飲み込んだ唾は酷く苦い味がした。 「もういいんですよ……」 彼女はクールに呼び掛けた。 「バカを言うな気をしっかり持て、私はお前を見捨てたりしない」 彼女の頬に雨が降ってきた、と同時に自分が泣いている事に気がついた。か細い声で彼女はクールに何かを伝える 「最後に私を……知ってる人に出会えて良かった……男君に会ったら……愛…………って伝えて」 AM6:12、魔法少女はクールと荒鷹に見守られながら息絶えた。最後に両親と思われる名前を数回呟いた。 ---- 魔法少女は17年前、ごく普通の民家に生を受けた。 堅実で真面目な父親と素直で謙虚な母親を持つ子だった。 幼い頃から頭脳明晰で運動抜群の活発な少女は両親やその周りから絶大な期待を受けていた。 友達にも恵まれ誰からも愛されるまさに天使のような女の子だった それからしばらく経ったある日、悲劇が起こる。反対車線から大型車が両親と少女が乗った車と正面衝突した。 向こうの運転手と父は即死、母も三日後に死亡した。しかし不幸中の幸いか少女は無傷だった。 母親との最後の会話、看護士は今でも鮮明に覚えているという 「少女は人を幸せにする魔法が使えるの、その証拠にあなたは今生きてる、お母さんはとても幸せよ」 その二時間後母親は息を引き取った。彼女の魔法にはそんな想いが秘められている。これは誰も知らない真実だ。 魔法少女死亡 残り34名 ---- 時間6:05 場所2-B北 周り一帯は密林のように草花が生い茂る。そんな中三人の男女が目指すアテもなく歩き続ける。 「もうすぐここを抜けるな」 二人分の荷物を担ぎながら守護者が言った。 「ねえ、何でこんなに歩かなきゃいけないの!?疲れた!」 「それはお前、敵に見つからないようにするためだろ」 そのあとに『守護者がお前の荷物も持ってるのに何で疲れる要素があるんだ』と言いたかったが口を塞いだ。 誤解殺気と別れてから恵は子供でも悟れるほどイラ立っていた。 「恵、この島は広い。多分二~三日その場から離れなくとも人と会う事は無いだろう・・・・・・・・だがそれが逆に怖いんだ。」 「何を言ってるの?あなたは守護者じゃない、怖い事なんていないでしょ?」 「フフッまあそうだな、でも私にも怖い事は一つだけあるぞ、それはな」 「ちょっと待て」 口元に人差し指を近付けて男Aは言った。何か言いたげな恵の口を塞ぎ静かに囁いた。 「俺たちは………何かに狙われてる」 ---- 時間6:05 場所2-B南 奇妙な段ボールが走り去ってから策略姉妹はより一層注意深く周囲を観察するようになった。 「お姉ちゃん、人が見える」 双眼鏡を片手に策略妹が姉に注意を促す。 ここから約1km離れた地点に三人の人影が見える。こちらにはまだ気付いていないようだ。 「あれは!おーいめぐむぃ…!!」 策略姉は咄嗟に妹の口を抑えた。何かに怯えるように姉は微かに震えていた。 (妹ちゃん、私の銃を持ってきて) (目の前にいる人影はきっと恵だよ、そんな必要ないよ!) (甘い考えは捨てなさい、このゲームは私たち以外みんな敵なのよ) その時見張り台の木から枝が二本落ちた、獲物が罠に引っ掛かったのだ。 「このゲームは動かない人間が勝つのよ」 ---- 時間6:05 場所2-B西 「見てなさい、ほら」 ふと小川で肉食女子高生が立ち止まった。彼女は手にしていた朽ちた木の棒を目の前に投げ付けた。 一瞬何かに触れたように浮いたと思うと『メキメキ』と音を立てて崩れ落ちた。 「ピアノ線を使った即席の罠よ、そこら中に張り巡らされているわ」 目を凝らしてようやく肉眼で確認できるピアノ線を即座に見つけた彼女に不良は深く感心した。 「あなたも何か役に立たないと食べちゃうわよ」 不良は両手の平を返して拒否のポーズをしながら言った 「この罠、もちろん作った相手にも伝わっているよね?」 「ええ、ピアノ線を伝って・・・・今頃獲物がかかったなんて喜んでいるんじゃない?」 「なら別方向から同時に罠を切って行くとどうなる?」 何かを悟ったかのように彼女の眼が大きく開かれた 「へえ、面白い事考えるじゃない」 ---- 「Aの見間違いじゃないのか?」 「いや、少なくとも近くに人がいるのは確かだ………それに」 目の前に細く光る何かが見える、それは蜘蛛の糸のように張りがあり目を凝らさないと存在するのかさえ分からない 「何これ…?」 「触るな恵!」 興味本位で蜘蛛の糸を触ろうとした恵を突き飛ばした その瞬間蜘蛛の糸と思われた物質がAの体に纏わりつき肉を裂いた 『ブシュッ』音とともに鮮血が噴出す 「A!!!!」 守護者は救出しようと駆け寄ったがAは傷だらけの腕を延ばし止めた。 「触るな……お前も巻き込まれる恐れがある……」 「でもお前…」 「早く離れろ!お前も死ぬぞ!!」 「そんな事出来るかよ!!」 守護者はブーメランで断ち切った、反動で跳ね返るピアノ線が体に突き刺さるが彼は気にもせずAを抱き抱えた。 「また助けられたな」 「友達だからな」 ---- 『カコォンッ』見張り台からまた一つ木の枝が落ちた。北に設置した罠が作動した証拠だ。 「見なさい、Aが罠に引っ掛かったわ」 姉は双眼鏡を妹に渡しAK-47を構えた 「お姉ちゃん何する気!?やめようよ!」 引き金にかけた手を振り払い姉を突き放した。 「甘いわよ妹ちゃん、放送聞いたでしょ?誰かを殺さないと生きて島を出られないの!」 「でも……クラスメイトを殺すなんて私出来ない!」 「そんなのお姉ちゃんが殺るから」 「それも見たくない!」 妹の瞳から涙が零れ地面に落ちた。それを拭う事なく姉の前に立ちはだかる。 「強がらないで、お姉ちゃん……今からでも遅くない、仲間を探そう?」 「そんな、裏切られたら」 「お姉ちゃんがいるもん、私そんなの怖くないから」 背後で『カンッ』と枝が落ちまた一つ罠が外れた ---- 先程罠から外れた木枝は風に流されたかのように足元へ転がる。枝先には切れたピアノ線が日の出に反射し妖しく光っていた。 「切れてる………」 「お姉ちゃん?」 先程外れた罠と前に外れた枝を拾い見比べた。おかしい、罠に獲物が掛かればピアノ線は全て“持ってかれる”はず、余りが出るなんてありえない。 『カンッ』『キコッ』 見張り台からほぼ同時に罠が外れた、すかさず拾い集める策略姉。北と西の罠だった。やはり線はくくり付けたままだ 『カキンッ』『カランッ』 今度は同時に罠が外れた。南と東の罠だ。 「お姉ちゃん……罠が」 手渡された双眼鏡を覗くと罠は確かに掛かっていた。とその先に丸い反射物が視界に現れた。 「何あれ」 瞬間、体を何か引っぱられた。視界が赤く染まる。 ---- (あれ、何か当たった?熱い………汗かな、目から溢れ……) 策略姉は左手を付いて地面にしゃがむ。左手から体液が滴り落ちた。 「お姉ちゃ……ん?」 妹が何か言っているが聞こえない、ただ「ゴォーー」と響く空洞音が脳から聞こえる。 妹が体を揺すっているのに何も感じない……私は………… 「お姉ちゃん!!」 「獲物にヒットしたわね」肉食女子高生は口元を歪ませ卑しい笑みを浮かべる。頬には笑い皺が寄り、目には醜い微笑を作り出している。 「まだもう一人いるがどうする?」支給品《ハンティングライフル》を手に不良が確認を取る。 DQNと遭遇した時から不良は猟銃を所持し、武器の優劣的に勝率がないと判断した相手は協同作戦を持ち掛けたのだが…… 扱いには為れていないようだ。その証拠に次の装填に手間取っていた。 「お姉ちゃん?ねぇ、起き……!!」 弾丸は姉の顔左側面を一瞬で抉り飛ばした。空洞音の原因はその脳に空いた穴から聞こえていた。 妹は尻餅を付き後ろへ倒れこんだ。 ---- (どうしようお姉ちゃんが…いやだ…死んじゃう嫌だ……逃げないと嫌だ、嫌だ嫌だ!!!) 「お姉ぢゃん死んじゃいやだぁー!!!!」 策略妹のパニックを余所に策略姉は状況を冷静に理解しようとしていた。 (妹ちゃんは無事そうね。言葉は……喋れない……、喉に血が溜まっているな……痛みは………) 『私の銃を持って守護者の所へ逃げなさい』 右手で地面に文字を書いていく策略姉、文字の所々には血が土と溶け合い固まっていた。 「お、お姉ちゃんを置いて行けないよ!!」 妹からの問いに少し俯きながら答える 『心配しないで、撃ってきた奴をやっつけてすぐ追い付くから』 そう書くと策略姉はアサルトライフルを押し渡し妹を北へ行かせた。 「本当……信じるよ」 策略妹は振り返る、朝日の逆行で目を細めたが、姉は笑っているような気がした。 ---- 後ろから誰かの気配がする。 「あーお腹すいたー」 制服からチラリと見えるお腹を左手で擦りながら女子生徒が草むらから現れた。 右手には四角く巨大な中華包丁を握っている。 その横で恐らく策略姉を仕留めた猟銃を掲げた若い男性が生徒リストを見ながら出て来た。 「罠の設置といい、破られた後の機転の利かせ方といい………あんた、策略の姉だね」 男が聞く。口調は穏やかだが眼は鋭く力が籠っている。 「そんな目してたら警戒しちゃうわよ、次からはやめてよね」 「次から」の言葉に戸惑っていると中華包丁を手にした女性に肩を捕まれた。 「ほーんとうは2人同時に仕留めたかったんだけど、まっいいか 妹の行く方へ罠を仕掛けておいて正解だったわ」 ---- 姉は焦った。「マズい、こいつらはそこまで計算して私たちを狙っていたのか」 姉の妹完璧脱出計画に妹の安全面までは計算されていない。 策略姉は彼女の手を振り払いすぐさま北を見渡した。 「なーんて、ね!!」ドスッ、そんな音がしたと思っていたら左胸に中華包丁が刺さっていた。肉食女子高生は引きつり笑いを起こす。 「ひひっ、アーハッハッハッハッハァ!引っ掛かってやんの!!」 そう言いながら包丁を背中まで一気に切り落とす。その時初めて痛みを感じた。背中に通る神経に触れたのである。 「あっ(アア嗚呼あ嗚呼あ嗚呼あああアアアア嗚呼!!!)」 脚を引きつかせヒクヒクと痙攣している姉を見て、ますます彼女は刃物を突き刺す ---- 「声上げろよ、妹呼べよ、一緒に遊んでやるからさ!」 「ぁ、ぁぃぃ(があああああ嗚呼ああ嗚呼あうアアあぐぅうう!!)」 瞳からは血の混じった涙、下半身からは透明の液体が噴き出しながらも声を上げぬ策略姉に彼女は気が苛立った。 「いい加減声を上げろよ!!」 渾身の一撃を策略姉の背中に刺し込んだ。 ビクッ、一度大きな筋肉の伸縮を見せ彼女は動かなくなった。 「ふん面白くない、でも妹の行く先は分かったし、狩りは楽しくやらないと」 彼女の危険な発言を気にしつつ不良は策略姉だった物に向かい手を合わせた。 根が真面目なのか家柄がそうなのか、それともただの気紛れなのか。 策略姉死亡、残り33名

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