- 第八話 -
図書館――
逃げ込んだのは俺、理ンデレ、ヒート、ツンサメ、ツンバカの五人であった。
今すぐにでも飛び出して化け物と戦おうとするヒートを理ンデレが制止する。
ツンバカが無意識にボケて鮫が突っ込み、俺が苦笑いする。
ツンバカが無意識にボケて鮫が突っ込み、俺が苦笑いする。
まさに平和な日常を再現するかのようなやりとりが繰り広げられていた。
ガチャッガチャガチャッ!
突然ドアノブが回り始めた。
バカ「ま…まさかお化け!?」
鮫「まあ化け物はお化けと言えなくもないかもね」
俺「…ツンサメさんなんでそんなに冷静なの?」
バカ「ま…まさかお化け!?」
鮫「まあ化け物はお化けと言えなくもないかもね」
俺「…ツンサメさんなんでそんなに冷静なの?」
ヒートがいつでも飛び出せるように身構えて叫ぶ。
ヒート「誰だお前はあああぁぁ!!名を名乗れぇぇぇ!!!」
化け物は返事をしないだろう……とその場のみんな(ヒートとバカ除く)が思ったが、驚いたことに返事が返ってきた。
ヒート「誰だお前はあああぁぁ!!名を名乗れぇぇぇ!!!」
化け物は返事をしないだろう……とその場のみんな(ヒートとバカ除く)が思ったが、驚いたことに返事が返ってきた。
葬儀屋男「……俺だ、開けてくれないか?」
バカ「はいはい、いま開けま―すっ、と。あら?」
鮫「それ鍵じゃなくてドアノブ。」
バカ「あ、あはは…ごめんね」
ガチャリ。
鮫「それ鍵じゃなくてドアノブ。」
バカ「あ、あはは…ごめんね」
ガチャリ。
そこにいた葬儀屋男の姿を見て、全員が驚愕した。
常に黒づくめで身を固めている葬儀屋男の上半身が、真っ赤に染まっていたのだ。
常に黒づくめで身を固めている葬儀屋男の上半身が、真っ赤に染まっていたのだ。
俺「葬男、大丈夫か!?」
ヒート「凄い血だぞぉぉぉ!!?どうしたんだあぁぁ?!」
バカ「ま、まずは血をとめなきゃ…」
ヒート「凄い血だぞぉぉぉ!!?どうしたんだあぁぁ?!」
バカ「ま、まずは血をとめなきゃ…」
駆け寄ったツンバカの腹部を、化け物のものと同じ黒い手が貫いていた。
―――?
葬儀屋男は、闇の中にいた。
葬儀屋女と一緒に逃げていて
後ろから化け物に襲われて
そして俺をかばったあいつが―――!!!
後ろから化け物に襲われて
そして俺をかばったあいつが―――!!!
違う 嘘だ 死
返り血がこんな…に…
返り血がこんな…に…
俺…
俺のせいで
俺のせいで
俺が
コロシタ
コロシタ
男の脳内では女との様々な思い出がリフレインしていた。
その記憶の中にノイズが混じる。………狂うだ。
その記憶の中にノイズが混じる。………狂うだ。
狂うは以前、葬儀屋男にこう言っていた。
「あなたは、人を殺せる人間」だと。
「あなたは、人を殺せる人間」だと。
数多くの死を見つめ、すべてを背負っていた心は疲弊し――
支えであった女の死によって、崩壊を迎えた。
葬儀屋男?「……グアアアアアア!!!」
まさにまばたきをする間の出来事に、ツンバカは状況を飲み込めないまま消滅した。
全員、動けない。ヒートですらもあっけにとられていた。
葬儀屋男の姿はみるみるうちに変化する。
眼は紅く充血した爬虫類の瞳に変わり、牙が生え揃い髪は逆立っている。
黒い両手の黒い爪は異常に長く、30cm程はある。
そして背中からは悪魔のような、黒色の翼――
もはや彼は、ヒトではなかった。
眼は紅く充血した爬虫類の瞳に変わり、牙が生え揃い髪は逆立っている。
黒い両手の黒い爪は異常に長く、30cm程はある。
そして背中からは悪魔のような、黒色の翼――
もはや彼は、ヒトではなかった。
鮫「!!…っ!」
ガブ!
ガブ!
悪魔の首にツンサメが喰らい付く。ツンサメにしては珍しい、感情的な行動。
――ツンサメはどうしても許せなかったのだ。
ツンバカには確かに抜けているところがあった。
しかし底抜けに『いい人』だったのだ。
ツンバカには確かに抜けているところがあった。
しかし底抜けに『いい人』だったのだ。
そのツンバカの優しさが死を招いたという報われない事実が、許せなかった。
ツンサメの頭の片隅に残っていたクレバーな思考回路は溜め息をつく。
ツンサメの頭の片隅に残っていたクレバーな思考回路は溜め息をつく。
あ~あ。どうせ『ゲームマスター』を捕えればみんな生き返るんでしょ。
熱くなりすぎたわ……
熱くなりすぎたわ……
ドス。
鋭い爪が脳の半ばまで刺さり、ツンサメも…すぐにツンバカの後を追った。
鋭い爪が脳の半ばまで刺さり、ツンサメも…すぐにツンバカの後を追った。
悪魔葬男「…ルルルウゥゥ…」
理ンデレはふるえていた。
理屈では。『ゲームマスターを捕えればみんな生き返る』のだから、何人死のうが構わないはず。
理屈では。『ゲームマスターを捕えればみんな生き返る』のだから、何人死のうが構わないはず。
しかし、もう一つの、『最悪』の可能性が拭いきれない。
もしも、『ゲームマスターを捕えられなければ』?
もしも、『ゲームマスターを捕えられなければ』?
ひたすらに『ゲームマスターに勝つ』方法を模索し、辿りついた結論は―――
ただ一つしかなかった。
理「…ヒート。俺君。私が合図したら図書室の入り口まで走って」
理ンデレは液体の入った試験管を数本取り出した。
理「けっして、振り向かないで。そしてそのまま逃げて頂戴」
理「けっして、振り向かないで。そしてそのまま逃げて頂戴」
…ヒートの感じた、違和感。
まさか理ンデレは――
ヒート「私達の身代わりになるっていうのか!?駄目だあっ、みんなであいつを倒して――」
理「ヒート。私達がゲームに勝つにはこれしかないの。」
まさか理ンデレは――
ヒート「私達の身代わりになるっていうのか!?駄目だあっ、みんなであいつを倒して――」
理「ヒート。私達がゲームに勝つにはこれしかないの。」
残った三人が死ぬよりも、もっとも弱い一人が身代わりになったほうがいい。
それは非情な決断だった。
理「じゃあ、俺君。ヒートをよろしく、ね」
理ンデレは悪魔へと駆け出す。『ゲームに勝つ』ために。
それは非情な決断だった。
理「じゃあ、俺君。ヒートをよろしく、ね」
理ンデレは悪魔へと駆け出す。『ゲームに勝つ』ために。
悪魔はゆっくりと理ンデレを睨む。
理ンデレは試験管を投げつけ、叫んだ。
理「今よ!」
理ンデレは試験管を投げつけ、叫んだ。
理「今よ!」
ヒート「!!!」
俺「……行こう、ヒート!」
俺「……行こう、ヒート!」
ガシャン!
試験管の中の硫酸が悪魔の動きを一瞬だけ、止めた。
その隙を突いた俺がヒートの手を引き、図書室から脱出する。
悪魔葬男「――ルルルゥ…!!」
ガシャ、カシャン!
全ての試験管を使いきった理ンデレの目前に悪魔の手が伸びて――
試験管の中の硫酸が悪魔の動きを一瞬だけ、止めた。
その隙を突いた俺がヒートの手を引き、図書室から脱出する。
悪魔葬男「――ルルルゥ…!!」
ガシャ、カシャン!
全ての試験管を使いきった理ンデレの目前に悪魔の手が伸びて――
あとはみんなに任せたわ――。
グシャリ。
理ンデレの頭をザクロのように砕いた悪魔は、ただ血に飢えていた。
逃がすものか。
…………る
……てやる
殺してやる
殺してやる……!!
悪魔「ふは…はははははははははは!!」
逃がすものか。
…………る
……てやる
殺してやる
殺してやる……!!
悪魔「ふは…はははははははははは!!」