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お茶飲み

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匿名ユーザー

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男「やっと1人になれた………」
昼休み、食事が終わってからもヒーやクーやシューに追い回された。
騒ぐのはすきなのだが、いかんせん、俺にだって1人になりたいことはある。
ふとそう思ったから、いままで逃げてきた。ずいぶんと時間がかかったけど。
おもいっきり伸びをする。
なんだか、学校内で1人でいるのは久しぶりのように思った。
男「屋上にでも行くかあ」
誰に言うまでもなく、ただなんとなく屋上に向かった。

風が気持ちいい。
屋上に入った瞬間、そう思った。
広い空間を1人占め出来ていると思うと、気分が高まった。
ふつふつと熱いものが胸に湧き上がってきて、無性に何かをしたくなった。
フェンスに近寄って、何を叫ぼうか悩む。
やっぱり、あれだろう。
うん、とうなずいて、出来る限りの空気を吸い込んだ。
男「ヤッホ」
?「あれ、男君だ」
今まさに叫ぼうとした瞬間、後ろから声が聞こえて思わずとめてしまった。
その結果、
男「げっほごっほがはっ!」
むせた。
?「だ、大丈夫?」
そうして俺の背中をとんとんしてくれる。
その人は、
荒鷹「もう、平気?」
右手に荷物を持っている、荒鷹さんだった。

男「あ、ああ、もう大丈夫」
荒鷹「よかったあ、いきなりせきこむんだもん」
にっこり笑いながらも、まだ俺の背中をさすってくれる。
荒鷹「ところでさ」
男「ん、何?」
荒鷹「なんで咳き込んだの?」
男「ぐはぁ!」
また咳き込んでしまった。
荒鷹「別に、あせらなくていいから」
また世話になってしまう。情けない。
男「い、いや、特にたいしたことじゃないから、さ」
いえない。まさかこの年になって「ヤッホー」と叫ぼうとしたなんていえない。
荒鷹「ん、そっか」
特に追求することなく荒鷹さんは納得してくれる。
男「ところで、荒鷹さんはなんで屋上に?」
そう言うと、
荒鷹「こ、れ」
と、手に持っていた風呂敷を揚げる。
そうして、風呂敷を開けていった。
中から出てきたのは、
レジャーシートと、魔法瓶だった。

俺は手際よくレジャーシートを広げる荒鷹さんをボーっと見ていた。
別に、レジャーシートを広げるのに助けは必要ないし。
荒鷹さんは轢きおえると、ぽんぽんと、自分の前の場所を叩いた。
荒鷹「座る?」
俺「あ、おう」
特に断る理由もなかったので、ありがたく座らせてもらった。
荒鷹さんは、魔法瓶の中身をこぽこぽとコップについで、俺に渡してきた。
荒鷹「いる?」
男「あ、どうも」
また断る理由がなかったので、ありがたくいただく。
何か俺、さっきからペースに流されっぱなしだ。
ちなみに、中身はお茶だった。
男「あ、でも、荒鷹さんが飲めなくない?」
そう言うと、
荒鷹「大丈夫」
そう答えて、風呂敷から専用と思われる湯飲みを取り出した。
そして、それにもこぽこぽとお茶を注いだ。
荒鷹「それじゃあ、飲もうか」
それを合図に、俺と荒鷹さんはお茶を飲み始めた。

のどかだ。
ここが学校とは思えないくらい静かだった。
ゆったりした時間が流れていた。
適当に空を見上げて、時間をつぶす。
会話は、なかった。
それが気まずくならないくらい、この雰囲気は心地よかった。
ふと荒鷹さんを見ると、目を細くしてほんわかしていた。
なんというか、なごむ。
ボーっとしながら見ていると、ゆっくりと荒鷹さんの目が開いた。
じっと見ているのは失礼かなとおもったけど、なんとなくその一連の動作から目が離せなかった。
荒鷹「ああ、お茶がなくなったんだね」
確かに、俺のコップの中は空っぽだった。
荒鷹「もう一杯、いる?」
男「お願いします」
またこぽこぽと入れてもらう。
ズズーッと飲む。 
そんな俺の様子を、荒鷹さんはじっと見ていた。
男「どうしたの?」
そう聞くと、
荒鷹「ん、お茶飲んでる男君見てると、和むなあと思ってた」
………どうやら、なごんでたのは俺1人ではなかったらしい。
なんと答えていいかわからず、またコップに口付けた。
そんな俺の様子を、また荒鷹さんはじっと見ていた。

お茶を飲み干すと、眠くなって来た。
目が半眼になっているのが自分でもわかる。
荒鷹「眠い?」
男「おう」
そう答える声も、いかにも寝むいです、といった意味が含まれていた。
荒鷹「膝枕、貸すよ?」
いつもだったら恥ずかしくて断ってしまうけど、
男「じゃ、遠慮なく」
こののほほんとした空気と、眠気で、すぐにぽすっと荒鷹さんの膝を借りた。
それはとてもやわらかくて、すぐに睡魔が襲ってきた。
それに頭を撫でてくれているので、気持ちよかった。
荒鷹「予鈴がなったら、起こしてあげる」
その声に安心して、俺は静かに夢の世界に落ちていった。
いい夢が、見れそうだ。

目の前で眠っている男君を見ながら、お茶を飲んだ。
いま、すごく幸せな気分だった。
いつもはあまり近づけない男君が、こんな近くにいる。
しかも、幸せそうな寝顔で。
何の夢を見ているのかなあ?
もし私が出ていたら、嬉しいなあ。
そんなことを考えていると、顔が赤くなるのを感じた。
湯飲みに残っていたお茶を飲み干す。
でも胸はこれ以上あったかくならないようだ。
またぽんぽんと男君の頭を撫でる。
その無防備な寝顔に、思わずキスしたくなってしまうが、
荒鷹「やっぱり、だめだよね」
口に出して、その行動を律する。
そんなの、ほかのみんなに対して失礼だ。
私だけが卑怯なことは出来ない。
でも、でも---
やっぱり我慢できない。
そして私は男君の顔にゆっくり近づいて、

おでこに、キスをした。

大きな幸福感と、小さな罪悪感。
ごめんね、みんな。
でもこれなら、神様のいたずらってことに、ならないかな?
空を見上げる。
雲1つない青空に、予鈴の音楽が流れていった。

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