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がしっ子02


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────どうしてこんなことになってしまったんだろう


オレはいまだに事実が受け入れられなかった
大切なあいつとの思い出
大切なあいつとの絆
大切なあいつとの───

ガチャッ

「おっす」
「………」
「おい、がっちゃん、おーっす!」
「………コクッ」

以前の彼女からは到底想定することのできない変わりよう
あの事故以来、まだがっちゃんは入院している

過去の記憶全てを、失ったまま

窓の外をボーッとしたまま見据えている
太陽を、じっと、じっと
以前なら、もし以前の彼女なら、オレが来たことで多少のリアクションをしめしていてくれた

でも、今は違う

記憶を失った彼女は、オレとの大切な思い出も失ってしまった
オレにすら、関心を持ってくれなくなった
もう以前の彼女はどこにもいないのだ
目の前にいるのは、まるで別人のようだった

怖い

このまま彼女が、オレの手の届かぬところに行ってしまいそうな、そんな錯覚
オレは彼女が寝ている寝台に近寄り、近くの椅子に座った
でも、彼女はオレに関心をしめさない

沈黙が全てを支配した

まるで時が止まってしまったかのような、そんな感覚
ただ、じっと彼女を見る

雪のような白い肌
透き通るようなエメラルド色の瞳
力を入れれば折れてしまいそうな細い首

笑って欲しい
微笑んで欲しい
オレはそんな淡い期待を抱く

だけど、彼女はオレに微笑むどころか、見てくれすらしない

オレは、おそるおそる、名を呼んだ
「……由美」

返事は、ない

「由美」
もう一度呼びかける

少しの静寂のあと、彼女がオレに視線を移した
「……何か、いる?」
我ながら情けない言葉しかかけられない
自分のボキャブラリーの無さを悔いる

「……」

彼女はじっと、じっとオレの顔を見る
その視線は以前の彼女の暖かい目線じゃない
彼女の感情の篭らない、冷たい視線に耐えられなくなる

「……のどが渇いたな」

不意に彼女が言葉を発する
些細な言葉なのに危うく聞き逃すところだった

「わかった、水貰ってくる」
「うん」

オレは静かに席を立った

彼女のいる病室を出て


  廊下で静かに泣いた