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シューと佐藤さん&渡辺さん


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 私の名前は学、学習型クールとも呼ばれる。
 正確には「学習型クール」とは 以下略

 さて、シューの観察を開始してから数時間
 早くもめげそうになっている私だけれどその程度でへこたれるようでは学習型クールは名乗れない。
 あの一見意味など無いような一連の行動にもちゃんとしたパターンがあるはずだ。
学「必ずそれをつきとめてみせる」
日和「みせる」

 今は昼休み。
 学食へ行く者、購買へ行く者、お弁当を持ってきた者、……時々この時間中に外食する猛者もいるらしい。
 教室にいる生徒はみな思い思いの昼食を持参し、友人達と談笑を交えながら楽しそうに食事をしている。

学「ちなみに私の昼食はカロリーメイト……」
日下「たこさんウィンナー、あげようか……?」
 ……泣いてない、泣いてないもんね!
 だめよ、誘惑に負けちゃ、私情を捨てるのよ私。
 そう、他人の観察に、特に素直シュールといった手ごわい相手の観察にかさばるような食事は禁物。
 魅力的だけれど、たこさんウィンナーはただの障害でしかないのだ。
 べ、別にたこさんウィンナーが嫌いってわけじゃないんだからね、いやマジで。

 ここいらでウィンナーは置いといて。
 シューはというと、お弁当を出すことも学食へ行くこともせず先ほどからぼーっとしている。
 お弁当、忘れたのかしら? カロリーメイト、あげようか……?
 私がカロリーメイト(チョコ味)の一本目を食べ終わると同時に
渡辺さん「わー、今日は私の大好物ばかりだよー」
佐藤さん「良かったね……」
 ……という会話が聞こえた。
 その時だった。

 ―――――ガタッ

 シューが動いた。
 私はカロリーメイト(チョコ味)の二本目を齧りながらシューのことを目で追った。
 彼女はまっすぐ渡辺さんと佐藤さんの席に向かっていき、二人に向かってこう言った。
シュー「マジックショー!」

学「………………は?」
渡辺さん「マジック…………?」
佐藤さん「…………?」
 いきなり何を言い出すのだろうかシューは。
 しかも高らかな声で、宣言するように。
 マジックショー? マジックのショー? 手品劇? 今から始めるのか?
 彼女が何を考えているのかまったくわからない。
 今や彼女を見ているのは私だけではない。
 教室中の視線がシューに集まる中、ぽかんとした表情で見上げる渡辺さんも気にせず、
 佐藤さんに怪訝そうな瞳で睨まれるのも気にせず、なんでもないことのように彼女は

 ――――――いきなり渡辺さんのお弁当を、食べた。

 …………流石に逃げた方がいいかもしれない。
 佐藤さんから荘厳さん並のオーラが湧き出ている。
 あれはマズいと思う。
 間違いない、次の瞬間にでもこの教室は阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。
 そんな中平然と渡辺さんのお弁当をガツガツ食べるシュー。
 ちなみに渡辺さんは何が起こったのかわからないという風にますますぽかんとしている。
 そして水を打ったように静まり返った教室。
 ―――――なんて、シュールな光景

 最初に沈黙を破ったのは㍉子だった。
㍉「さ、佐藤さんを止めろ!シューも止めろ!!」
 次の瞬間蜂の巣を突いたような喧騒に覆われる教室。
 幸い、佐藤さんの怒りはまだ爆発していないのでみんなで止めにかかる。
 ……といっても、万が一佐藤さんが暴走しても被害を受けないような位置から彼女をなだめることくらいしか出来ない。
 だからといってシューに飛び掛っても何が起こるかわからない。
 結局、いつ爆発するかわからない爆弾に遠くから水鉄砲で水をかけるような処置しかできていない。
 そろそろ本当に逃げた方がいいかも、と皆が思いはじめた瞬間、口を開いたのは当のシューだった。

シュー「まぁ、落ち着け、マジックショーとさっき言ったじゃないか」
 彼女はそういうとハンカチを取り出し、空っぽになった弁当箱をそれで隠した。
シュー「ちゃらららららー♪ちゃららららちゃーららーん♪」
 マジックをする際におなじみのあの曲を口ずさみながら妙なダンスをするシュー。
 くねくねはあんな感じの動きをするのではないか、と思うようなモザイクものの動きだ。
 え、そんなことまでしちゃうの? それは流石にまずいだろう。
 ああやめろ、あ、何だ、そうそう、それならよし。

 そんな妙な時間が数十秒ほど続いた後、ようやく曲が終わり、シューの周りにかかっていたモザイクも取れた。
 彼女はハンカチを手にかけて
シュー「さぁ、とくと見よ!」
 と言うと同時にそれを勢いよく取った。

佐藤さん「…………!!」
渡辺さん「わぁー!凄ーい!!」
 そこには、元気に走り回る弁当の姿が……もとい、元の状態に戻った弁当があった。
 ミートボール、卵焼き、ホワイトソースのかかったミニハンバーグ、ポテトサラダ、そしてごはんの真ん中に梅干。
 おかずのラインナップも、それぞれの位置も、全て完璧に食べてしまう前の状態に戻っている。
 何と、シューはこの衆人環視のなか、本当にマジックショーをやらかしてしまったわけである。
 そして何故かクラス中から沸き起こる拍手。
 無表情で手を振るシュー。
シュー「ありがとう、ありがとう諸君、ありがとう」

学「…………」
 どうしてあんなことをいきなりしだしたのか。 どうして弁当が元に戻ったのか。
 わからないことだらけで、私はまためげそうになった。
学「……とりあえず、たこさんウィンナー頂戴」
日下「え、ごめん、もう食べちゃった……」