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俺鮫希譚04


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俺「行かないのか」

優と同じような事を言う
私が何処で何をしていようが、勝手じゃない

鮫「そういうあんたこそ」
俺「俺はやる事があるんだよ」

代理も立てといたしな、と
本当にあれで誰も気付いてないとでも思っているのだろうか
本当に、おめでたい頭をしている

俺「もうちょっとくらい、皆と打ち解けてみてもいいと思うぜ」
鮫「……」

そんなの、充分に、痛いほどに判っている
判りきっている
なのに――

鮫「いいのよ、別に。私は一人でいるのが好き」

皆の騒ぐ声が、二人きりの飾られた教室に聞こえた

俺「嘘だな」

または戯言

俺「本当は誰よりも、あの中に、あの中で笑っていたい筈なのに」
鮫「……」
俺「自ら歩み寄ろうとしている事を拒否している」
鮫「…………に」

緋昏し空の遠く

鮫「あなたに、何が判るっていうの……」

戯言だ

俺「さあね。例えば……」

戯言

俺「もし歩み寄って、大切な人ができる。その大切な人を失ってしまうのが怖い、とか」
鮫「……」
俺「いや。忘れてしまう事が、かな」
鮫「…………」

戯言だよ
笑えよ

――痛い
こいつの言葉は、何よりも心を抉る
鋭すぎるナイフ
まるで、自らも傷つけているかのように

返す言葉を、私は持ち合わせていない

そんなわけない、と簡単に言い返せる筈なのに

だけど、それすら出来ない

何故なら……

俺「…………」

愁いを帯びた、その横顔
楽しそうに笑う皆を見ているのに
見ているはずなのに

まるで出棺を見送る葬者のようで

私には判ってしまった

――私も、同じ顔をしているのだ

ぴりりりりりり

静寂を切り裂く電子音
俺がポケットから携帯電話を出してスイッチを押す

俺「ああ。判った。そっちに行く」

ぴっ、と切られた電話

俺「んじゃ、俺はもう少しやる事あるから行くけど、お前は皆のとこに行けよ?」
鮫「……」

後方で、再び掃除用具入れの蓋が開く音
そして閉まる音

私は言われた通りに皆のところへ向かう
重い、足を引きずって

痛いよ――
ドコガ?
いろんなとこ――
ダイジョウブ?
……助けて――

鮫「あなた、助けてよ……」

男「皆、それなりにお疲れー」
クー「お疲れだ。……だが俺よ、少しばかり男にくっつきすぎだと思うのだが?」
ヒート「そうだぞおおぉぉ!私もくっつくのだああぁぁ!」
ツン「べ、別にあんたにくっつきたいだなんて……、ちょっとヒート、男が困ってるじゃない」
渡辺「私もくっつくんだよー」
佐藤「……(殺)」
男「はっはっは、皆テンション高いなぁ」
狂「私も抱っこするー。ついでに刺すー」
シュー「愛を米て」
荘厳「採れたての荘厳米ですわ」
男「おいおい、皆落ち着け。って、ちょ……危な!俺君も一緒に潰れ……」
エクレア「……」
男「と思ったら俺君じゃなくてエクレアでした!うははははははははは!」
友「そぉい!」

俺「㍉子ー。ちょっといいかー?」
㍉「うむ、あっちで話そうか」

二人そろって出て行く背中を、何故か見てしまった
意識する事じゃないはずなのに

鮫「……」

無理矢理意識の外に追い出すように、空を仰ぐ
容赦無い日光が、大地を照らしている

鮫「……」

どうしてだろう
世界はこんなにも美しいのに

私の心は、灰色だ

友「……」

そろそろやばいかもしれない
そんな事ある訳無いと思いながら、不安を拭い切れない

校庭の隅で空を見上げている鮫子
あいつの残した最後の願い

守るべき……なんだろう

あいつとは、あれ以来の腐れ縁で
だけど、あいつとの約束も大切で

残された者
託された者
いなくなってしまった者

俺は、どうするべきなんだろうか

俺「軍ちー、ちょっとちょっと」
軍「了解している俺殿」

気が付けば、その背中を目で追いかけている数が多くなっている

嫌な奴なのに
傷つける言葉しか持ち合わせていない奴なのに

それでも、ひどく惹かれる危うい部分を持っていて

どうしてしまったのだろう
私は、変だ

俺「……」
軍「……」
日和「……」
軍「……日和殿、付いて来てもらっては困るのだが」
日和「だめ?」
俺「だめ」
日和「ぷー」

その背中と行動を、もう一つの視線が見守っているのに気が付くのに時間はいらなかった

同じクラスの銀さん
自称偽善者で自己満足の塊の少女
優と、違うベクトルの優しさを持つ可愛らしい子だ

その目に篭る熱の色は、誰の目からしても判る恋する少女だ

……ちょっとからかってやろうかしら

鮫「ちょっと、いいかしら」
銀「何?」
鮫「あいつの事なんだけど、どこまで行ったの?」

その言葉に、すっと顔に朱が射す
次いで、その可愛らしい唇に手を触れる

……おやおや、やる事はやってるってのかい
しかし、見てるこっちが恥ずかしくなるようなその仕草

はは、俺の奴も罪な男だ

鮫「あんな奴の、どこが良い訳?」
銀「さあ、どこなのかしらね」
鮫「判らないの?」
銀「憧れだって、あの人は言ってたわ」
鮫「憧れ?」
銀「Longing/love」
鮫「……」
銀「あこがれ/愛」
鮫「……」
銀「もしかしたら、恋と呼ぶには躊躇われる感情かもしれない」
鮫「……」
銀「だけど、今此処にいる私の中にある暖かいものは、確かに存在しているの」
鮫「……はは」

全く、なんて娘だ
忘れかけていたものを、思い出させるかのように説得力のある言葉

大丈夫よ、銀
それは、確かに誰かを愛している違えようの無い感情

かつての私が、そうであったように