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俺鮫希譚06


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めきめきとたびるかもぞぬよ?

閑話休題

南中を移動した太陽は、だけれどその勢いを削ぐ事は無く
執拗なまでに光で照らし続けている

糖尿病にでもなっちまえと呪いをかけた馬鹿と別れて一人歩き
携帯電話で呼び出されていた
あいつって携帯持ってたっけか

友「夏い。いくらなんでも異常だ」

そんな事がどうでもよくなるくらいの熱世界
ふらふらと彷徨いながら、蜃気楼の街を歩く

ぽたぽたと、汗がアスファルトに落ちるがすぐに乾く
眩暈がしそうなほどむせ返る夏の日に



?「そうそう、知ってるか?」
?「何をだよ」
?「あの人が動くらしいぜ」
?「まじか」
?「ああ、まじまじ。あの人、あの事ほんと根に持ってたからな」
?「あー、でもあいつって死んじまったんだろ?」
?「ああ。確かな」
?「じゃー、どーするんだよ」
?「しらねぇのか?あいつ、女がいるんだぜ」
?「へぇ」
?「それがちょー美人って噂だぜ」
?「まじか」
?「あくまで噂だからな」
?「で、その美人さんをどうするんだ?」
?「そんなん決まってんだろ、ふひひひひ」
?「悪趣味だな……」



少し歩いただけで嫌になる
暑い暑い熱いアツイ

蝉の声が余計に暑さを感じさせる
風鈴が醸し出す音響は、だけどその暑さの前には無力で
かきーん、と何処かの家のテレビから甲子園の中継の音が聞こえてきた

俺は何処に向かってるんだっけ?

…………

ふらふら、ふらふら、と
足が勝手に動くに任せていた

友「…………」

静寂と喧騒
現実感が無くなりそうなほど歪む景色

そして現れた影



?「そういやもう一人いたよな」
?「あー、あの殴りこみの時か」
?「そーそー」
?「そいつは生きてるんだろ」
?「ああ。なんかそいつも巻き込むらしいぞ」
?「巻き込むって、どーやるんだ」
?「さあ?誘き出すとかじゃね」
?「ふーん。あの人、かなり前の事なのによくやるよな」
?「そんだけ恨みを持ってたって事なんだろ」
?「ま、事件沙汰にならなきゃいんじゃね」
?「そうだけどさー」
?「おい、お前等。聞いたか?」
?「何をだよ」
?「あの人、ついにやっちまったらしいぜ」
?「……まじで」
?「ああ、皆を呼び集めてる最中だ」
?「へぇ……。じゃあ、噂の?」
?「ああ、これから公開レイプだってよ」
?「悪趣味だな……」



?「おい」
友「……?」

声を掛けられて
でも暑さの所為でそれが幻聴だったのか現実だったのか

?「おめぇ、俺の事覚えてるか?」
友「……?」

誰だこいつは
覚えていないっつーか誰だよこいつ
暑さの所為か頭がまともに働かない

?「ま、俺はただの使いだがな。これを見てもまだそんな態度が取れるかな」
友「……!」

世界がクリアになる
思考が正常に活動し
だけど正常であってもその携帯に映し出された画像は信じられなくて

友「鮫子!!……貴様ッ!」

そこには下着姿で写された、鮫子の姿があった



茹で上がるような暑さと、むせる様な土埃の臭い
そしてずきずきとした痛みで目が覚める

ここは……?

辺りを見回すと、それは錆と腐食に侵された建物で

身体を捩ろうとして、手首に痛みが走ったところで自分が拘束されている事に気付く

鮫「……」

しかも服を脱がされている
下着姿で両手を後ろ手に縛られて、まあなんとはしたない姿であろうか

しかして自分は何故このような場所にこのような格好で転がっているのだろうか?
まさか自分でやったなんて事はあるまい
意識を失う直前の事を思い出そうと
だけどその辺りの記憶は泥沼のようにまどろみ深く曖昧で

……確か誰かに声を掛けられたような

その時、軋む番いの音がしてドアが開かれる
そこから現れたのは……



走った、走った、走った
息が切れるまで走って、肺が痛みを訴えてきても走って

友「はぁ、ぜぇ、はっ……」

そこに聳え立つは、今はもう使われていない朽ちた工場跡
人々の記憶に忘れ去られるかのように、ただそこにある風景

だけど今は、その内部に悪意を抱え込んでいる

友「おらぁ!来てやったぞ!」

切れる息を無視して、怒鳴り散らした
閑散と、錆びた用途不明の機械に声が反射して

友「何処だ!出てきやがれ!」

?「ふひふひふひ、まあまあそんな慌てなくても、まだショーは始まってないぜ」

口で息をしながら喋るような、不快な声が奥から



鮫「……あんた」
デブ「ふひふひ、覚えていてもらって光栄だねぇ」

脂ぎった声と顔が、ドアの奥から現れた
思い出したくなくても思い出してしまった
こいつは……

デブ「ふひふひふひ、あの時も思ったけど、美人だねぇ」
鮫「……」

気持ち悪い
大凡同じ人間種族だと思えないくらい醜い豚だ

鮫「……」
デブ「いいねぇ、その目つき。たまんないよぉ。あの時の女も良かったけど、こっちもなかなか」
鮫「……」
デブ「ふひふひふひ、綺麗なその顔を歪ませたいんだよねぇ」
鮫「……」
デブ「何とか言えよブスがぁ!!」

がすっ
音がして、ワンテンポ遅れて走る鈍い痛み



それから幾度と無く、蹴られ、転がされ、ぶつかり
身体中から痛みを訴えている
それでも、私は――

鮫「……」
デブ「生意気なんだよぉ!!あいつも、てめぇも!死ね!死ね!死ね!」

がす、がす、どす、ばき、がすがすがす

鮫「……」
デブ「ふひ、ふひ、ふひ。あ゙ー、ぎも゙ぢい゙ぃな゙ぁ~」

もはや抵抗する気力もない
ただ、蹴られ、転がされ、ぶつかる、肉人形と化していた

痛い
イタイ

痛みで訳が判らなくなってきた
どうして、いたい、なんで、いたい、こんな、いたい

「―……!」

何処からか誰かの声がして

デブ「ふひふひふひ、もう一人のお客さんも来たようだねぇ」



友「てんめぇ……!!」
デブ「ふひふひふひ、馬鹿だなぁ君も」
友「鮫子に手ぇ出してねぇだろうな!!」
デブ「ふひふひ、落ち着きたまえよぉ君ぃ~」

今すぐにでもその面をぶん殴ってやりたかった
だが鮫子が向こうの手にある以上、迂闊な行動は出来ない

デブ「まさか君、あの女の事が好きだったりしてぇ~?」
友「っざけんなてめぇ!!」

鮫子は――
あいつから俺に託された最後の約束、そのものなんだ
てめぇみてぇな豚野郎から守れって、任されたんだ

デブ「ふひふひふひ、まあ、君も馬鹿だったって事でぇ……」

ぱちん、と豚が指を鳴らすと、何処に隠れていたのかわらわらと雑魚が

友「……」
デブ「ふひふひふひ、おら!やっちまいな!」



㍉「俺殿、頼まれていた物が届いたぞ」
俺「お、さんくー」

㍉子から渡された制服に腕を通し、身体を動かしてみる
うん、文句無しに良い出来だ

㍉「それと、こっちの資料もだ」
俺「重ね重ねすまないね」
㍉「なに。俺殿には助けられているからな」

俺は渡された資料に目を通しながら、㍉子に感謝の言葉をかけた

㍉「それと、余計なお世話かと思ったがこんな物も用意させてもらった」
俺「……うほッ!いい物」

俺はそれらを手に取ると教室を後に



銀「行くの?」
俺「ん?ああ……」

教室を出て行こうとした俺の前に、銀の字がいた

銀「……」
俺「……」

その表情は、無言だが確実に何かを俺に訴えていて

銀「ねえ。約束、覚えてる?」
俺「ああ……」
銀「なら良いわ。行ってきて」
俺「……」

何も、返す言葉がない
昔に比べれば、良い笑顔をするようになった
だけど、今は――
あの頃の様な、自分を殺した表情で笑っていて

俺「すまない」
銀「……馬鹿」

小さな、泣きそうな、崩れそうな
俺を非難する声が胸を叩いた



友「……がはっ」

腹部に吸い込まれるような、急所を的確に狙った一撃
足から力が抜け、倒れそうになるが
――倒れない、倒れてなんかいられない
渾身の力を込めてぶん殴る
また一匹、雑魚が無様な悲鳴を上げて倒れる

DQN「死ねよ!」
不良「こいつ殺ったら、あの女とやらしてくれるってまじっすか?」
ヤンキー「こいつ、しぶてぇ~」

倒せども倒せども、その数が減った気がしない
一体何匹いやがるってんだ……

デブ「ふひふひふひ、いい気味だなぁ」
友「て、めぇ……」

拳はもう限界だった
殴りすぎて感覚もないし、膨れ上がっている
それでも俺は止まる訳にはいかない
あいつとの、最後の、約束が……

がすっ

後頭部に、鈍い痛みが……



気絶していたのはほんの数瞬

倒れてから気付くまでにそんなに景色が変わっていないのがその証拠
だが――

友(身体が、動かねぇ……)

後頭部、腹部、腕部、脚部
痛くないところなんて無かった
だが、それよりも――

友(情けねぇ……)

心が痛かった

友(やっぱ俺じゃ、駄目なのか……)

言う事を聞かない身体
折れそうになる心
その全てが、情けなかった

友(くそ、くそ、くそ、くそ……!動け、動いてくれよ!!)

いくら罵れど、ぴくりとも身体は動かない



デブ「ふひふひふひ、無様だねぇ」

豚野郎の耳障りな声
辛うじて視線だけを動かす
すると、そこに――

鮫「……」

虚ろな目をして、身体中傷と痣だらけになった鮫子の姿があった

友「て、め、ぇ……ころ、す……」
デブ「ふひふひふひ、弱っちぃ君に何が出来るってのさぁ」

いやらしく笑う豚の顔
殴りたい、殴ってやりたい、ぶん殴って殴って殴って殴って殴って殴って……

だけど身体は言う事を聞かず

デブ「ふひふひふひ、さぁてお待ちかねのショータイムなんだなぁ」

豚の汚い手が、鮫子の白い肌に残された下着に……

友「やめろ……、やめてくれ!……うあああああああああああああああぁぁぁ!!」

奇跡は、起きない



DQN「ん?なんだてmぶべらッ!!」
不良「どうしtひでぶッ!!」
ヤンキー「を、っんだてmたばわッ!!」

下着に手がかかるかかからないかの瀬戸際
もう視線を動かす気力もなく、その光景を見ながらただ己の無力さを噛み締めている時だった
心の中で、今はもういないダチに謝っていて
だけどそれをもふっ飛ばす何かが……

少しだけ視線を動かすと、その場にいた雑魚が、豚さえもある一点を見ていた
何やら起こっているみたいだが、顔すら痛みで動かせない
騒動が、声が、俺に近づいて来ているような、そうでないような

目の前に、見覚えのある靴が見えた

その靴の持ち主は、すぐ近くに立って、俺を見下ろしていて……
涙が出そうになった
俺はこの瞬間ほど、神に感謝をした事は無い
そいつは俺を見ながら、周り四面楚歌でありながら余裕をかました声で、こう言った

俺「無様だな」

奇跡が、起きた