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あの人は出るかな


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プリント掲示日 当日 職員室前。

「またえらいもんが始まったな」
「魔王一家くるのか…」
「生き返るっての味わってみたいけど死ぬのは怖いよな…」
「ってか3年出るのに勝てるわけねぇよな」

予想通り、職員室前には人だかり。
1、2年か。

「やっぱあの人出るかな。ところ構わず爆発起こす人」
「ヒート先輩?あの人出んならクール先輩も出るかな?」
「氷の人か…」
「あとあの人。いっつもなんか背負ってる㍉子さん」
「ちょっと前なんか神の使いが転入してきたとか行ってたぜ。先輩」
「見たもの何でも覚える女の人が来たとかも聞いたな」
「しかしこの学校、男弱いよな…」
「…それを言うな…」

渡辺さんがらみ以外では完全に猫をかぶっているのか、
佐藤先輩の話題が出ない。

「お?風が出てきたな」
「…窓閉まってるぞ」
「3年が来るぞ!荘厳先輩だ!」
「先輩ど、どうぞ!どうぞお通りくだしあ<>!」

…軍師会長の言ったとおり、ね…先回り、先回り、と。

「…と、いうわけで皆さんの分、頂いて参りました。
 プロセスさんのおっしゃる通り、下級生で混雑しておりましたが……
 皆さんすぐに道を開けてくださいましたわ」
「荘厳さんに行ってもらって正解だったな」
「……計算通り、です」

ありがてぇ、ありがてぇを連呼しながら
荘厳先輩からパンフレットを両手で受け取る男性陣。
会長からの情報では、ここに要注意人物はいないそうなので無視。

「おっしゃぁぁあぁぁ!出るよな!クーも!でるよなぁぁぁ!」
「出るつもりがあるなら、ヒーもよく読んでおいたほうが良い。
 細かい規定が結構、ある」

腕を振り回しながら絶叫するヒート先輩と、
パンフレットを端から読み込んでいくクール先輩。
ヒート先輩に引きずられてクール先輩も参加、という形になるだろう。
先ほどの1、2年の読みは当たっていたらしい。

会長からの情報では、
ヒート先輩には圧倒的なタフネスと、自身の近くで強力な爆発を起こす能力、
クール先輩には高い機転と、水を操り、氷に変える能力があるそうだ。
爆発、氷共に細かいロジックは不明。
二人とも、詳しく教えてくれないそうな。
後者はともかく前者、ヒート先輩の戦闘では、
懸念していたリングの破損は避けられそうに無い。

「召集禁止ってこれ、絶対私のこと意識してるな」
「上空から掃射、とかされたら運営が困るんだろうし、近隣住民にも迷惑だしな」
「場外もある上、校舎を破損させても反則になるのか……
 大型兵器も却下、か」

会長が最も恐れていたのがこの女、㍉子先輩。
どこかの軍の重役なのか、重火器・爆薬を始め、
戦車・戦闘機等、大型搭乗兵器に飽き足らずハイテク兵器にも精通しており、
また、それらを無遠慮に使用するとかしないとか。
会長曰く、
突発的なイベントで公共物を破損しても、
この学校側が負担してくれるとは思えない。
らしい。
事実、「俺」先輩との会話の中に、兵器使用への遠慮は微塵も感じられない。

魔王一家、とやらが管理してくれるため、リングの破損には気を使わなくて良い、
とシュール先輩は言っていたが、
会長は外部に負担を掛けるのを好ましく思っていなかった。
パンフレットにリングの破損に関して、咎めの記載が無い事には気づかれたくない
と、頭を抱えて呟いていたのを思い出す。

「パワードスーツ辺りが無難なんじゃないのか?」
「そうだな……重火器は積みすぎてもあまり使いどころがないな。
 装甲と移動性能・格闘性能を高めたチューンで行くことになるが……」

携帯……いや、にしては大きい。何かの端末だろうか。
画面を覗き込み、時折画面を指で叩きながら、俺先輩と談義に入る。
リング関連の項目を目立たないように載せていた会長の目論見は成功したようだ。

「ヴァル姐はやっぱでるのかお?( ^ω^)」
「無論だ。こちらに来てから戦闘訓練とはご無沙汰だったからな」

不確定要素、と言っていたか。ヴァルキリー先輩。
槍技に長けていることと、ルーンによって紙を焼き消した事例があること。
転入してから日も浅く、自分のことはあまり話さないため、
この2つしか情報が無いそうだ。
兜を常に外さないそうだが、なるほど。
素人目には飾り文様にしか見えないが、何か呪いが施してあるらしく
異質な気を放っている。
ブラウスの中に落とし込まれているため断定は出来ないが、
首に提げた鎖の延長には、恐らく高位の護符があるとみて間違いは無さそうだ。

「開催に魔王が絡んでいる、というあたり、あまり乗り気はしないが……
 まぁこの際だ。戦乙女の力、とくと見せ付けてやる」
「や、やっぱ羽とかも出すのかお?(^ω^;)」
「出すに値する相手がいれば、だがな」
「飛べるって素敵だおwwwブーン⊂二二二( ^ω^)二⊃」

フン、と不敵に笑うヴァルキリー先輩。
兜の細工・護符・飛行能力について、会長は触れていなかった。
報告の必要があるかもしれない。

渡辺先輩の向かいで、頬杖を付きながら
片手でパンフレットを流し読みしている佐藤先輩。
会長曰く、
徒手空拳で戦うので、運営上特に心配は無い
とのことだった。が、しかし。

「武闘大会かぁ……あたしには関係ないなぁ……」
「……」
「佐藤さんはどうするの?」
「……わからない。興味ない」

この学校で唯一、この私よりも先に、購買に並ぶことの出来る人。
この異質な学校の、誰よりも早く。
軍師会長が ㍉子先輩が そしてこの私が仕掛けた罠をも
容易く掻い潜り、最上階である3年の教室から、私より早く。
1年の、教室が2階にある私より早く。

この"拙者"より、早く。

正直、この目で強さを見たい。
動きを観たい。確かめい。

「……考えとく」

パタン、とパンフレットを閉じ、鞄に直した後、
渡辺先輩と楽しそうに談笑していた。

3年教室前、廊下。
賑わうクラスを、ただただ眺める女子生徒が二人。

「貴方はでないの?」
「当然よぉ。出ないに決まってるわ」

狂先輩と、殺先輩。
……隠れて観ているだけだというのに、
背中が汗ばんでくるような間隔に襲われる。それほどまでに、歪んだ空気。

「あら、意外ね。
 人前で、堂々と、自由に殺せるのよ?貴方の理想なんじゃない?」
「……ほぉんと、嫌な性格してるわねぇ……そぉいうあなたはどうなわけ?」
「ふふっ……貴方と同じ理由」

頭を垂れ、空ろな瞳で笑う殺先輩と、
貼り付けたように穏やかな微笑の狂先輩の視線が、交錯する。
瞬間、歪みを増す空気。

「私は男を愛している。この世の、あの世の誰よりも、そしてもちろん、この私よりも。
 私にとってこの世にはただ、私の愛した男がいればいい。
 だから私は、男以外を殺す。殺す。殺し尽くす。

 そして私の愛した男が、永遠に私の愛した男で在り続けるように、殺す。
 最後に、私が、私の愛した男を永遠に愛し続けられるように、殺す」
「わたしの殺しに、そんな大層な理由は無いわ。
 あなたのように、特に殺したいわけでもないし。
 でもわたしは、殺さなくてはわたしの中に、わたしを見出せないの。
 だからわたしは、わたしが殺せる限り、殺す。
 そうよ、

     『私たちにとって、殺しは娯楽ではない』


二人の声が重なる。
それらが、まるで、背中から聞こえた気がして、無意識に目を逸らしてしまった。

この2人は、危ない。
参加意思がないと分かれば長居は無用。
今日はもう、引き上げよう。
逸らした目を戻すことが出来ぬまま、逃げるように運営本部へと駆けた。

「……行ったわね……」
あの分だと、「運営」はホント忙しいみたいね。
まぁ何にせよ、アタシはアタシの仕事をするだけよ。
「ツンドロ、なんか言ったかお( ^ω^)」
「ん?別に何も?
 それより今日お昼、どこで食べる?」
「今日はいい天気だお。久しぶりに屋上で食べるお(^ω^)」
「……そうね。そうしましょうか」
「ブーン⊂二二二( ^ω^)二⊃」

運営本部、もとい視聴覚室・裏部屋。
淡々と事務処理をこなす軍師と、その脇に立つニンデレ。

「……以上、状況報告でござる」
「ありがとう。大いに助かる」

予想どおり、厄介どころは全員参加、か。
まぁ初日でわかっただけ、有難いと思っておこう。
対策を考える時間が増えたわけだ。

「にしてもすごい汗だな。何かあったのか?」
「……この気温の中ずっと屋根裏でいれば、
 流石の拙者も汗ぐらいかくでござるよ……」
「そうか……それもそうだな。すまなかった」

「軍師殿は、参加しないのでござるか?」
「私は罠師だからな。リングの上ではただの一般人、だ。
 そういうお前はどうなんだ?腕に自信がない訳でもあるまい」
「拙者の術は、何かを衛るための術でござる。
 競い合うためのものではござりませぬ。
 今は拙者は、軍師殿の忍。ご自身の腕と思ってお使い頂とうござります」

鼻息荒く、ふんぞり返って言う。

「頼りにしているぞ。今日はもう休め」
「御意!」

忍は白い歯を見せて、無邪気に笑った。

……と思うと、次の瞬間には消えていた。