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ダンボール短編


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※この短編の設定は捏造であり、実際のキャラとは何の関係もございません




暗い世界
狭い世界
寂しい世界

私だけの、世界

はたから見れば、ただの馬鹿だろう
高校生にもなって、こんなことをしているのは、馬鹿だろう

だけど、私は仕方なかったんだ
そう、仕方なかったんだ

両親は、死んじゃって
親戚には、いじめられてて
学校でも、同じような扱いで

いつしか私は私の部屋から一歩も出なくなっていた

そんな私を、彼女は見ていた
昔から、ずっと昔から

学校のクラスメート
ま、名簿上のだけのものだったけどね

最初は、ちょっとした好奇心だったのかもしれない
あるいは、ただの偽善だったのかもしれない

彼女は、私を訪ねてくるようになった

私は扉を開けない
一人にならないと、決して開けない

何を話しかけてきても
何度笑いかけられても

無視していた

その扉を開くことは、恐怖以外の何者でもなかったから
そう、恐怖以外の、何者でもなかったのだ

私にはいじめられるだけの理由がある

両親を失ったときついた
顔についた
大きな、大きな傷跡

だから、他人に顔を見せることは、恐怖以外の何でもなかったのだ

彼女は毎日来た
とても長い長い間来た

偽善なんかじゃなかった
好奇心なんかでも、なかった

それだけの時間、彼女は私の部屋の前に居た

いつからだったのだろう
私は彼女と話しをしていた

扉越しではあったけれど
私は彼女に話しかけていた

最初はとても嬉しそうな声をしていた
次にとてもやさしそうな声をしていた
私にとっての初めての、友達

いつだっただろう
彼女は私に小さな箱をくれた

目のところに穴が開いてて
顔が隠れるようになっていた

顔が見せられないなら、せめて私の顔を見てください

それが彼女の願いだった
そう、それが最初のきっかけだった

相変わらず私の引きこもり癖は直らなかったけど
私はかけがえのない何かを取り戻していた

二人で部屋で何度も話をした

勉強の話
将来の話
恋の話
どうでもいい話

それが、とてもとても幸せだった
すごく、すっごく幸せだった


 だけど、ある日を境に、彼女は来なくなった

後から人づてに聞いた話だ

心臓の病を患っていた少女の話
それなのに足しげくどこかに通っていたという話

涙が止まらなかった
ただ、ただ私は泣いた

彼女からもらった、その箱を抱いて、泣いた

ずっと泣いた
一週間泣いた
一ヶ月泣いた

泣いて、泣いて、泣きつくした

両親が死んだときより、泣いた
いじめられたときより、泣いた
たぶんそれまでで、そしてこれからも

アレだけ泣いたのは、人生であれきり

そして私は彼女の話を思い出した
学校
太陽
笑顔

私は部屋の置くから、なるべく大きなダンボールを引っ張り出した

傍から見れば、ただの変な人
普通に見れば、ただの頭の可笑しい人

でも、私は知りたかった
彼女の知っていた世界を

外に広がる、希望の世界を

彼女の話で聞いていた道を歩く
それは思ったよりも長くて
そしてやさしい風景だった

私は決意した

怖かったけど

それでも自分の意を決めた

叔父さんに話した
わりとすんなり、受け入れられた

転校

そして始まる、私の新しい生活

それが私が皆と出会う前の物語
私が笑顔を手に入れるまでの、物語

  • fin-